最も必須のビタミン B の名称が変更された理由

Fact Checked(事実確認)
コリン

早分かり -

  • コリンは認知機能と肝臓の健康のために決定的な機能をしています。かつてはビタミン B4 と呼ばれていましたが、1998年に初めて必須栄養素に指定されました
  • コリンは筋肉の機能を支持するため肉体的能力のために必須です。オキアミ油は集中的強度肉体運動の最中と後にコリンの血清濃度を維持するために役立ちます
  • 血清コリン濃度が高い人は肝細胞がん(肝臓がん)での生存率が高いことを示した根拠が存在します
  • オキアミ油はサプリメントに通常使用される酒石酸水素コリン塩より高いレベルの重要な代謝生成物を生み出します
  • コリンが豊富な食品には、玉子の黄身、草で育てた牛のレバー、魚卵、野生のアラスカサーモン
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Dr. Mercolaより

コリンは必須栄養素ですが、通常ビタミンとしては分類されていません。Biology Onlineによると、ビタミンとは、「正常な成長と代謝プロセスのために必須であり、微量のみ必要な低分子有機化合物」です。ある程度のコリンは肝臓で生産されるため、ビタミンに分類されていません。

身体は最適に機能するために油溶性と水溶性のビタミンが必要です。油溶性ビタミンは脂肪組織と肝臓に蓄えられます。この種のビタミンにはA、D、E、Kがあります。水溶性ビタミンは容易に貯蔵されず、余分な量は尿から排出されます。水溶性ビタミンにはビタミンCおよびビタミンB群が含まれます。

コリンは食品の中の油溶性と水溶性成分に含まれています。体内で酵素がコリンを食品中の化合物から遊離させ、小腸から吸収されて肝臓へ輸送されます。次に、コリンは全身をめぐり、細胞膜の形成に役立っています。

体内で自然に生産されるコリンでは需要を満たすことはできません。このため食品から得る必要があります。コリンの濃度は通常測定されませんが、米国ではほとんどの人がコリンを含む食品の推奨日量を得ていません。

歴然とした栄養素の欠乏による症状は健常な子供や成人においてまれですが、コリン不足は神経変性や肝臓病につながることもあります。コリンの体内における機能にはビタミンB群と共通する部分があるため、もともとコリンはビタミンB4と呼ばれました。

コリンはかつてビタミンとみなされていた

コリンについて初期の記録に残る情報はアドルフ・ストレッカーがレシチンを加熱すると新たな化学物質を生成することを発見した1862年に遡ります。ストレッカーはその化合物をコリンと名付けました。三年後、オスカー・リーブレイクが人間の脳内から新たな分子を特定し、これを「ニューリン」と名付け、その後コリンと同一の物質であることが判明しました。

ほぼ100年後の1954年に、ユージーン・ケネディーは人体がコリンをフォスファチジルコリンに統合する経路を解明しました。その頃までにビタミンB群の多くはすでに発見されていました。

しかし、1998年になって初めて、全米医学アカデミーの栄養部会がコリンを必須栄養素として初めて指定しました。2020年秋、サンタ・クラーラ・バレー医療センター外来栄養サービス部門のエレーナ・ガグリアルディ氏がU.S. News & World Reportとの会見でコリンがビタミンではないことを説明していました。

むしろ、コリンは「体内で多くの機能をするために必須の化合物です。」アデニンはフラビン・アデニン・ジヌクレオチド(FAD)の成分で、コリンを糸粒体基質に変換するために役立ちます。

アデニンとコリンは密接に関係しており、アデニンをビタミンB4とも呼ぶ人もいれば、これらの用語を同義に使用する人もいます。いずれにせよどちらの用語を使うかが問題なのではなく、コリンは健康とウェルネスのために必須の栄養素です。

コリンは認知機能と肝臓の健康のために必須

Nutrition Todayに掲載されたある論文によると、コリンの適切目安量(AI)はこの物質が一般人口の体内濃度が比較的あまりよく知られていなかった頃に算定されました。実験的決定論に基づく計算値や摂取量の推計値ではなく、コリンが欠乏してから肝臓障害が起きた成人男性に関するある研究に一部基づいて計算されました。

これに基づいて他の人のAIレベルを標準的基準体重を基に補間推計しまいた。しかし、近年のある分析からは、米国に居住する人のほぼ90 %がコリンの豊富な食品をじゅうぶんに食べていないことがわかりました。この結果に加え、2015年から2020年のアメリカ人のための食生活ガイドラインには需要を満たすだけ十分なコリンが豊富な食品が推奨されていません。

コリンが不足すると多くの悪い影響が出ます。例えば、コリン作用性機能障害が認知症の発症に影響することは示されています。コリン作用性機能障害がアルツハイマー病に寄与する仮設を裏付けるいくつもの研究や文献レビューは存在します。

その後、アセチルコリンを合成するためにある酵素が必要な神経系においてアセチルコリンが中心的機能をしていることが判明しました。その酵素はアセチルトランスフェラーゼといいます。この関連性はおそらく少なくとも部分的には、コリン作動薬が高齢者の短期的認知障害に効果があることを説明しています。

これらの薬はアセチルコリンに作用し、筋肉の収縮に影響するまた記憶と学習を処理する脳の中枢に作用するシグナルを送ります。ある研究では、脳卒中が起きたことがある347人の参加者に12か月間シチコリンを投与しました。これはコリンとシチジンを組み合わせたサプリメントです。

12カ月の経過時点にこのサプリメントが参加者の認知力低下を改善し、「脳卒中後の回復を改善するための有望な薬剤であると思われる」ことが特定されました。コリンはまた、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)における主要な要因でもあります。

部分的にはNAFLDは肥満やインスリン抵抗性によって引き起こされ、線維症につながり、その後肝硬変や肝臓がんにつながることを科学者は発見しました。脂肪肝にはアルコール消費と関連しない二つの形態があります。第一は簡素な脂肪肝あるいは非アルコール性脂肪肝(NAFL)、第二は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)です。

NAFLは少々の炎症あるいは細胞の損傷をともないますが、NASHの場合は線維症や肝硬変、肝臓がんに悪化することがあります。Journal of Nutritionに掲載されたある研究で、コリンを食事から最も多く摂っていた正常体重の女性は非アルコール性脂肪肝のリスクがより低いことが判明してます。

コリンにはより多くの体内系統に大きく影響する

クリス・マスタージョン博士によると、コリン欠乏は果糖の摂りすぎよりNAFLD発症により大きく影響するそうです。栄養学博士の同氏は食生活の変化が原因で脂肪肝が増加していると見ています。

医学文献を検討したマスタージョン博士は、1型糖尿病の研究時に当初特定されたコリンと脂肪肝の関連性を発見しました。その関連性を次のようにご説明されています:

「しかし、1949年に研究者らは蔗糖とエタノールが同じく脂肪肝とそれに伴う炎症性損傷の原因になり、タンパク質を多く食べ、メチオニン及びコリンをさらに摂ればこの影響から完璧に保護しうる。

この逆に、さらに近年の研究からは、蔗糖がメチオニン及びコリン欠乏(MCD)モデルにおいて脂肪肝発症のために必要条件であることがわかっている。脂肪肝のMCDモデルは最も古く、最も普及しているモデルである。

MCDモデルは肝臓脂肪の蓄積を促すだけではなく、人に起きうる最悪の形態の脂肪肝と同様の広範囲の炎症も起こす。この食事について誰も言及していないこととは、それが主に蔗糖から構成されており、その脂肪がコーンオイルのみから構成されるということである!

これらの研究から明らかにわかる構図とは、脂肪あるいは肝臓内で脂肪に変換される物なら何でも、例えば果糖及びエタノールは脂肪肝発症のための必要条件であるということである。しかしこれに加え—圧倒的にコリン欠乏であるように思われる— [同じ]要因が肝臓の脂肪排出機能を損なうに違いない。」

Nutrition & Metabolism誌に掲載されたある研究では、肝臓がんと新たに診断された866人の患者が被験者となり、血清コリン濃度と比較した生存率を試験しました。血清コリン濃度が高い患者はこの濃度が低い人より肝臓がんでの生存率が優れることをデータが示しています。

コリンはアセチルコリンとフォスファチジルコリンの構成要素であり、後者は超低密度脂質たんぱく質(VLDL)の構成要素です。脳はフォスファチジルコリンを使用し、認知機能に影響するアセチルコリンを生産します。フォスファチジルコリンは胆嚢病、月経前症候群、肝炎等いくつかの病変の治療にも使用されます。

オキアミ油はコリン濃度と肉体機能の維持に役立つ

イリノイ大学食品化学・人間栄養学部ドナルド・レイマン博士は運動の成果とコリンの関係について説明しています:

「運動でエネルギー支出が増え、身体組成の維持に役立ち、体重を管理できます。毎日運動することが重要なことは皆承知していますが、よい栄養の選択が最適な筋肉の性能に欠かせないことは忘れがちです。

具体的にみると、コリンは神経伝達物質アセチルコリンという筋肉収縮を刺激するシグナルの一部をなしており、これが筋肉の動きと性能を支持しています。コリンはたった1時間の運動、また長距離走、サイクリングあるいはテニス試合の後に失われることもわかっています。」

コリンは筋肉機能の維持のために機能しています。血清濃度は高強度集中運動の間に枯渇します。ある研究ではアイアンマンレースとオリンピック・トライアスロンに25歳から61歳のトライアスロン選手47人を募りました。この人たちを二つのグループに分けました: 24人はレース前に五週間オキアミサプリメントを飲み、23人はサラダ油混合物からなるプラセボを毎日飲みました。

レース前、レース直後、翌日に選手の血液を検査しました。血清コリン濃度とその代謝生成物を分析しました。血清濃度は全てのレースで大きく減少したが、オキアミ油を受けた人はプラセボを受けたグループよりより多くの血清コリンを維持していることがデータから判明しました。

ある実験室分析では、オキアミ油には69種類のコリン含有リン脂質が見つかり、「オキアミ油のリン脂質組成の複雑性」が確認されました。「無機塩中のコリンの60 %は腸内細菌によりトリメチルアミン(TMA)に変換されて損失することが示された」ため、オキアミ油のコリンはより生体利用能が高いこともわかっています。

次に酵素の働きでTMAはトリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)というインスリン抵抗性と心臓の異常の生体マーカーに変換されます。その研究者らによると「ホスファチジルコリン(PC)形態のコリンはオキアミ油の単回投与試験からTMAに相当変換されにくいことが実証され、おそらくコリンをより効率的に放出するはずである」としています。

例えば、健常な若い成人に28日間、オキアミ油サプリメントを投与したら、コリン濃度が増加したことを示す根拠が存在します。この研究ではさらに: 「TMAOとカルニチンの血漿濃度に不利な影響は観察されなかった」としています。

コリンを多く摂り込む方法

オキアミ油に含まれるフォスファチジルコリンさらに、酒石酸水素を比較したある研究で、他のコリン源と比べてオキアミ油のほうが重要な代謝生成物ベタインおよびジメチルグリシン(DMG)が増え、健康の異常につながるTMAOが減ることがわかりました。

オキアミ油にはエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)という心臓の健康によく、降圧効果があり、全身の炎症を下げ、リウマチ性関節炎やうつ病の影響を削減し、アルツハイマー病の進行を遅くするのに役立つより多くの栄養素も含まれます。

玉子の黄身はもう一つの優れるコリン摂取源です。玉子を食べない人では2.4 %とは対照的に、玉子を食べる人のうち約57 %が適正レベルのコリンを得ていました。

実際に同分析では、確かに、可能な限り食事から栄養素を得るのが優先されますが、コリンは玉子やサプリメントを摂らない限り、十分に摂るのが「極めて困難」であることが研究から判明しています。その他のコリンが豊富な食材:

草で育てた牛のレバー

有機の放し飼い鶏

天然捕獲したアラスカサーモン

魚卵

タイセイヨウダラ

小豆

キノア

芽キャベツ

ブロッコリー

椎茸

カリフラワー

ひまわりの種