Dr. Mercolaより
何十年も悪者扱いされてきたバターが復帰してブーム期に入りました。復帰しただけではなく、売上高が急増しており、(米国の)人口一人当たりバター消費量はこれまでの十年間(2011年から2020年まで)に24 %増加しました。コロナ禍のため食習慣が変わり、2020年はバター需要がさらに増大し記録的レベルに達しました。乳製品協同組合Land O’Lakesの推計では、昨年中に売上高が対前年20 %増で、約124,738トンから136,078トンの売上を達成しました。
コロナ禍のためアメリカでは自宅で調理したり焼いている世帯が増えていることが引き金となったバターの小売り需要の増加は、レストランからのバター需要の落ち込みをカバーしてなお余るほど伸びています。財務報告によると同社の2019年から2020年の対前年同期の利益増分が5400万ドルに達し、さらに次のように報告しています:
「ポートフォリオ全体で非常に好調な業績を上げたため、利益金は第三四半期に対前年同期比5,400万ドル増加しました。小売売上高が堅調であるため、乳製品の利益がより伸び、COVID-19のインパクトによる外食サービスでの売上不振や商品市場の暴落率を相殺してなお余るほど成長しました。」
1900年代初頭に米国では国民一人当たりバター消費は年間約6.8 kg以上でしたが、マーガリンの消費が増えるにともない急減していきました。マーガリンが1869年に登場して以来、最初から乳製品業界は対抗しました。
1886年にオレオマーガリン法(当時マーガリンはこう呼ばれていた)が通過し、もともとト殺場から仕入れた余剰の獣脂から作られたマーガリンに1ポンド当たり2 %が課税されるようになりました。「合成バター」を黄色く染色して本物のように見せかけることもこの法律により禁止され、ニュー・ハンプシャー州は一時期だけマーガリンをピンクに着色するよう義務付けたことがありました。
初期に不利を被ったものの、マーガリンは安価で健康的効能が優れるという触れ込みにより全世紀中ばまでに人気が急伸し、1957年にはバター消費を追い抜きました。
飽和脂肪への人気が薄まるにつれ、公衆衛生当局は心臓病リスクの削減と体重減量のためにはバターほどの健康的な脂肪を回避するようにと、不正に操ったため、精製サラダ油とトランス脂肪で製造されるようになったマーガリンが最優先されるスプレッドや調理のお供になりました。
今では精製サラダオイルこそ最悪の食品であることは通念になり、1997年に心臓血管病に及ぼすマーガリンの影響を調査したある卓越した研究は、マーガリンが心臓発作リスクを増大させることを解明しました。それにもかかわらず、マーガリンはその後もバターより人気があり続けましたが、2005年にようやくバターが一位の座を奪回し、消費量はそれ以来着実に成長しました。
バターはいまだに多くの人が本来食べてはならないが、とてもよいため、どちらにせよ溺れてしまうほどの食品の一つとして罪深い歓喜と見なされるほどです。実際には、バターは特に、草で育った乳牛から作る限り健康的な食品であるため、罪の感覚は不要で耽ることが認められる一例です。
高度加工されたマーガリンとは異なり、バターは人体が必要としている栄養素を含む自然食品です。例をあげましょう:
バターの栄養素
最も吸収性の良い形態のビタミンA
ラウリン酸
レシチン - コレステロール代謝と神経の健康のために必須
抗酸化物質
ビタミンE
ビタミンK2
Wulzen因子 — 関節炎や関節の凝りを予防するホルモン様物質(低温殺菌で破壊されてしまう)
脂肪酸、特にオメガ3とオメガ6の比率が最適な短鎖と中鎖
共役リノール酸(CLA) — 抗がん剤、筋肉増強成分、免疫力強化剤
ビタミンD
ミネラル(セレン、マンガン、クロム、亜鉛、銅を含む)
非常に吸収のよい形態のヨウ素
コレステロール
アラキドン酸(AA) — 脳の機能と健康な細胞膜の形成
スフィンゴ糖脂質 - 胃腸感染を防御する脂肪酸
いくつもの研究はバター消費が健康によいことを裏付けています。ある研究では15の国別コーホートを含む9件の研究に関する体系的レビューおよびメタ分析の結果、バターの消費と心臓血管病、冠動脈疾患あるいは脳卒中との関連性は有意ではないが、多く消費すると糖尿病発生率は下がることが証明されました。
バターの脂肪に含まれるいくつもの化合物には健康的効能があります。最もよく知られるのはCLAで、これは抗がん作用があるだけではなく、心臓の健康によく、抗炎症性、さらに肥満防止効果もあります。
バターにはこのほか、セラミドやスフィンゴミエリン、セレブロシド、スルファチド、ガングリオシド等のスフィンゴ脂質も含まれます。これらの化合物は細胞の調整機能によい効果があり、コレステロールの吸収を阻害すると同時に、抗菌作用や免疫力アップの効果もあります。潜在的な抗がん作用もあります。Advances in Food and Nutrition Researchによると:
「スフィンゴミエリンを体内に摂り込むと、スフィンゴメリナーゼによってセラミドに変換され、セラミドが消化されてスフィンゴシンと遊離脂肪酸に変換されてから吸収されます。セラミドはがん細胞死の誘発物質として周知のものです。スフィンゴミエリンを摂り込むと、マウスと人間の大腸がん予防効果のあることを確認しました。」
乳脂に含まれる抗がん化合物である酪酸も含まれます。酪酸およびその塩である酪酸塩は腸のためによく、エネルギーのホメオスタシスや肥満予防、免疫系強化、がん予防、脳機能のためにメリットがあります。ミリスチン酸は乳脂にも豊富に含まれる長鎖飽和脂肪酸です。
この酸は基幹的な代謝プロセスに関わっており、適量であれば体内のオメガ3濃度が増え、このため心臓の健康改善につながると考えられています。乳脂に含まれるミリスチン酸を取り込むと、HDLコレステロールが増加し、トリグリセリドが減少し、さらに顕著な免疫強化作用もあります。
このためバター等の全脂乳製品を食べるとよいことを裏付ける研究がますます増加していることはうなづけます。Lancet誌に掲載されたThe Prospective Urban Rural Epidemiology (PURE、都市部農村部予測的疫学)研究はその一例です。
オンタリオ州ハミルトンのマクマスター大学上級研究客員・栄養疫学研究員のマーシド・デーガン主任研究執筆者は、今回取り上げた研究の中で、「この研究の結果から、乳製品の総消費量と死亡率および重度心臓血管病の間に逆比例関係があることが判明した。脳卒中リスクは乳製品の消費が多いほど顕著に低いことを確認できた。」としています。
バター脂肪の脂肪酸組成は乳牛の餌次第で決まるため、バターの栄養価は乳牛の飼育方法により決まることを忘れないでください。最も最高級のバターは草で育った牛から作った生(非滅菌)製品で、優先すべきはオーガニック認証を受けた製品です。
次は、草で育ったまたは放牧した有機乳牛から作った滅菌バター、次が、普通のスーパーマーケットで売られている滅菌バターです。たとえ後者二種類のバターでもマーガリンやその他のサラダオイル系スプレッドよりは健康的です。草で育った乳牛から作るバターを選ぶべき理由は?放牧した牛の乳はビタミンEやベータカロテン、健康的な脂肪オメガ3やCLA(共役リノール酸)を含む多くの栄養素がより豊富であることが示されてきました。
草で育った乳牛から作る有機乳や乳製品の脂肪酸組成は優れており、オメガ6とオメガ3の比がほぼ1対1で、従来式生産による全乳では同比が5.7対1とあることと比較すると優れています。このことは、平均的アメリカ人はオメガ3脂肪の10倍から15倍ものオメガ6を食べているため、重要です。
「オメガ3脂肪酸や共役リノール酸のその他ほとんどの調達源より国民一人当たりの乳製品消費量が比較的多いため、草で育った乳[草を食べさせた乳牛から取ったミルク]にみられるこうした差異は脂肪酸のかつてあったバランスを回復させることが可能であり、心臓血管病やその他の代謝疾患のリスクが低下する可能性がある」と、研究者は説明しています。
Critical Reviews in Food Science and Nutrition誌に掲載されたある研究も異なる飼育方法で育った家畜から同じ食品を食べた後の人間の健康の違いを強調しています:
「いくつもの研究は、穀物飼料ではなく放牧で育った動物から得る食品ががんから保護するような、オメガ3脂肪酸や共役リノール酸等の栄養素がはるかに多く含まれることを示してきた。
過去数十年間の食品から脂肪消費をしないようにという全般的推奨のため、放牧された家畜の副産物が健康やがん予防に及ぼす効果の差異に関して科学的対話は従来欠如してきた。」
実際にその研究者は全体的脂質濃度は比較的横這いのままできた一方、動物性食品が草または穀物飼料で育った家畜由来かに応じて炎症マーカーとリン脂質濃度に大きな差異が見られました。
「赤肉、バター、チーズ、玉子は回避するようほとんどの栄養関連の推奨が勧めてきた栄養面の子取り鬼であると概して扱われてきたが、これら個々の食品は栄養価が大きく異なり、それにともなう消費者への効果にも大きな差異が見られる。
草で育った牛のバター、n-3強化玉子、狩猟で得た肉の血清脂質への影響は大きな差異がないようであるが、いくつかの炎症因子が減り、健康改善効果があると思われる。
異なる飼育方法による動物から生産された全く同じ食品を食べて著しく異なる生理学的効果を表す有意なデータは存在し、この研究結果は、今後の研究で対照試験を行えば全人口に対する食生活推奨内容に大きく影響しうるはずである。」
酪農業全体としてはコロナ禍のさなかに大きな課題を投げかけられた一方で、バターの売上高は新記録更新し続けていることは皮肉な事実です。2020年春、酪農家はレストランや学校からの需要が激減したため、牛乳を破棄せざるを得ませんでした。その後半年間で乳製品業界は50億から100億ドルの売上喪失を被ると予測されていました。
牛乳の(米国)二大メーカーDean FoodsとBorden Dairyはコロナ禍の始まる前、すでに2019年11月と2020年1月に米国の牛乳売上高の落ち込みに伴い破産申告をしていました。しかし、その後、コロナ禍のため米国の牛乳小売売上高が2020年1月から2020年7月1日まで8.3 %増加し、有利な影響を受けました。前年同期比売上高は2.3 %ダウンしていました。
バターメーカーLand O’Lakesの売上は通常冷蔵庫にストックするほどの量のバター在庫に及ばないほど、2020年夏を通して急増しました。
Bloombergとのインタビューで、Land O’Lakesのベス・フォードCEOは、「普通なら、小売部門でさえ牛乳生産のピーク時期であるため大量のバターを生産し、主に売れ行きのよい季節[休暇期間]のために貯蔵します。しかし購買が非常に多く、生産ラインからそのまま出荷していたため、在庫に回せませんでした。」
ますます多くのアメリカ人は実質的な栄養が得られ快適さを感じられる伝統的な自然食品を求めているようで、これこそバターが両面とも満たしてくれることは確かです。
すでに触れたように、極上のバターを求める際はCAFO牛乳(密集家畜経営体産の牛乳)を避け、草で育てた乳牛のミルクから作ったバターを販売する小規模な農家を支援しましょう。近所の生産者直売場で地元の農家が見つからない場合、乳製品にある全米草飼育協会(AGA、American Grassfed Association)のロゴを探しましょう。このロゴ付きなら最高品質の草で飼育された乳製品です。
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