血糖が体幹温度を上げ睡眠阻害につながる

Fact Checked(事実確認)
就寝前に食べると睡眠に影響する

早分かり -

  • 就寝前に食事すると血中ブドウ糖とインスリンが増えるため、体温調節機能とホメオスタシスに悪影響が及んで安静的な睡眠ができなくなりやすいです
  • 糖尿病と高血糖により運動中と回復中の熱保持度が高まり、熱の発散機能が乏しいと睡眠の質も下がります
  • 睡眠の質は夜間の体幹温度低下に依存しますが、皮膚温度には影響しません
  • 就寝の3~4時間前以降は食べないようにし、遅く食べてしまったときは寝る前にシャワーを浴びるようにしましょう。また、震えるほどではなく、光を遮断した涼しい寝室で寝ましょう
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Dr. Mercolaより

よくある2つの健康の異常はインスリン抵抗性と睡眠阻害で、これらが関連しあっていることがわかっています。インスリン抵抗性は2型糖尿病の始まりです。

ジョセフ・クラフト医師が行った経口ブドウ糖許容度検査を使った14,000人以上のテストから、ブドウ糖応答が正常な人でもインスリン濃度が異常に高くなる場合があることがわかりました。

同氏はこの状態をイン・シチュ(in situ)糖尿病と呼んでおり、インスリン抵抗性につながる高いインスリン濃度を下げると血管系の損傷を直接的にも間接的にも防止することができます。

クラフト医師のテストからは、もともと考えられたよりインスリン抵抗性ははるかに蔓延しており、糖尿病の推計人数より多いことがわかりました。同様の理由で、毎晩じゅうぶんに質のよい睡眠がとりにくい人の数も想像以上に多いです。

The Mattress Firmは睡眠習慣と毎晩の睡眠時間について見たアンケートを数年間実施しました。2019年に出たその結果から、アメリカ人はより短時間しか寝ておらず、睡眠の質により満足していないことが判明しました。

回答者の52 %は毎晩6時間以下しか寝ておらず、40 %が睡眠の質を「あまりよくない」あるいは「まったく悪い」と評価していました。この事実は、テレビを見る、食べる、ビデオゲーム等寝室で通常行っている活動によるためであるようです。

米国では睡眠阻害が7000万人に発生しています。睡眠阻害による障害には睡眠中無呼吸症、不眠症、睡眠発作、脚不穏症シンドロームを含みます。しかし、医学的異常だけが睡眠阻害の唯一の理由ではありません。昼食後の長い昼寝や就寝前数時間以内の食事、カフェインの取りすぎも睡眠の質と量に悪影響することを専門家が発見しています。

血中ブドウ糖とインスリンで体幹温度が上がる

身体は常時温度調節しており、この機能は視床下部、筋肉、神経系、血管系統の複雑な相互作用によっています。周囲温度と体内の発熱に応じてこの過程で体温が狭い範囲に制御されています。

身体はこのホメオスタシスのためと酵素やたんぱく質、ホルモンが継続して機能できる安定した体内環境の維持のためにこうした調節が必要です。体温が若干変化しただけでも健康や生命に壊滅的影響が及ぶことがあります。体幹温度を維持するバランス機能は一種のホメオスタシスで、これはブドウ糖制御とインスリン濃度から影響を受けます。

クラフト氏が証明したように、高インスリン血症はインスリン抵抗性や糖尿病の症状より前に起きることはしばしばあります。スクリプス研究所の研究チームは高濃度のインスリンで体幹温度が上がることをある動物モデルで発見しました。

すなわち、炭水化物が多い食事をするとインスリンの分泌が増え、インスリン抵抗性がなくても体幹温度は上がる傾向にあります。血中ブドウ糖濃度も体温の発散機能を下げる場合があり、体温維持に影響してきます。

発汗によって代謝や活動、外的刺激により発生する余分な熱を発散します。体温調節のための発汗は主に視床下部が制御します。体幹温度が上がると心臓血管系と血糖制御に悪い影響が出ます。

研究者は糖尿病の合併症があり、血糖制御能力が低い人は特に体温調節がよく機能しないことを特定しました。しかし炭水化物が多い食後に血糖が増えると、糖尿病の有無に関わらずだれでも体幹温度は上がります。

ブドウ糖が増えると運動しにくくなり睡眠の質が下がります

代謝や運動で発生する余分な熱を除去するため、血管は正常であればサイズが変わり、温度調節をしやすくします。器官や体幹周囲の血管は収縮し、皮膚により多く血液が回るようになり、外界のより涼しい空気に暴露するようにします。

血中ブドウ糖が多いと血漿の浸透圧に影響し、このため身体は血液を抹消(皮膚)に送る機能が低下するため発汗しにくくなります。この問題が生じると深い睡眠能力に大きく影響するため、少々暑く感じる以上の暑さになります。

ある研究は1型糖尿病患者の体温を解析しました。10日間連続して起きている間と寝ている間の皮膚体温を記録しました。被験者の温度調節の変化が眠りを浅くすることを研究者は特定しました。

その結果、体温が最も下がるはずの一日のうちの5時間の間、1型糖尿病患者は上がったままでした。「放熱効率が低いためである」と考えられました。

運動中の放熱機能もホメオスタシスの維持と生命保護のために重要です。研究者は心臓血管がじょうぶな人は運動中の放熱能力が高いことを特定しました。

しかし、比較的活発な2型糖尿病の人でさえ糖尿病でない人より熱発散機能が劣ることをデータは示します。

60分の運動の間に、糖尿病の人は1.54倍多くの熱を保持し、発汗による放熱が低いことを研究者は発見しました。さらに、糖尿病の人は運動後60分間以内に体内により多くの熱を保持していました。

深い睡眠と体幹温度の関係

これまでに熱すぎたり寒すぎて目が覚めたことがあれば、周囲温度がいかに睡眠の質に影響するかおわかりでしょう。たとえわずかでも室温や体幹温度が変わると睡眠によかれあしかれ影響してきます。体温周期は睡眠覚醒周期とともに推移し、寝ている夜間に下がり、日中は上がっています。

体幹温度と皮膚温度は睡眠環境や衣服、掛物、マットレスの種類、室温、遅い食事等いくつかの要因から影響を受けます。皮膚の温度がたった0.4 ℃上がるだけで夜間の覚醒感が無くなり、深く眠れます。

米国で765,000人について断片睡眠を主観的に測定したデータは、夜間室温が上がると睡眠不足の報告者数が増すことを示します。その他の研究は室温が高いと、睡眠の客観的と主観的要素にも影響し、次の影響が生じることもわかりました:

  • 睡眠時間の短縮
  • 浅い睡眠
  • 睡眠時の安静度低下
  • 不眠症
  • 睡眠の不満足感

より涼しい部屋で寝ると睡眠阻害されにくくなります。全米睡眠財団(NSF)が示すように、最適な寝室温度はだいたい15.5℃(華氏60度)~19.4℃(華氏67度)です。極端な温度は、(熱くても寒くても)覚醒させる熱調節防御機構を活性化しやすいので避けるべきです。

より涼しい部屋で寝るとよい第二の理由は、褐色脂肪によい影響があるためです。この種の脂肪はカロリーを燃やして熱を生み、体幹温度の維持に役立ちます。涼しい(19℃)部屋で4週間寝たある研究のボランティアの褐色脂肪が倍増し、同時にインスリン感度も改善され、睡眠の質改善に役立ちました。

震えは褐色脂肪に熱を発生させ、カロリーを燃やさせるメカニズムであると考えられますが、震えるほど寒い部屋では寝るにはよくありません。自分に最適な涼しい温度範囲を見つけましょう — 不快なほど涼しくなくて、寝やすくて褐色脂肪が増える程度の涼しさで十分です。

精確な最適睡眠温度は人それぞれですが、涼しい部屋で薄めのシーツと毛布だけで寝るのが皮膚の温度を暖かく維持するために基本的に十分であり、涼しい睡眠温度の効能を得られ、快適です。

健康のために欠かせない深い睡眠

私のニュースレターの読者なら質の良い睡眠が全体的な健康にいかに重要かはお分かりのはずです。デボラ心肺センターの呼吸器科医ズィーシャン・カン先生がKYWラジオのレポーターと睡眠阻害、質のよい睡眠の重要性、心臓血管病との関連性について話していました:

「想像しうるほぼどの心臓病の発生率は睡眠中無呼吸症に関連していることがわかっています。心臓病、心不全、不整脈、脳卒中、さらに糖尿病等の炎症性異常、肥満の悪化等リストは尽きません。」

平均的に言えば、同氏によると毎晩7時間睡眠は必要であると考えられますが、米国では約35 %がこれより少なくしか寝ていません。「ここは睡眠阻害国です」と同氏。こうした睡眠阻害は断片的な睡眠としても発症するもので、夜間よく目が覚める、時には寝直せなくなることがあるといった問題です。

カリフォルニア大学バークレー校の研究者は被験者1,600人について断片睡眠がいかにアテローム硬化症に影響するかを調べました。その研究の執筆者の考えでは、そのデータには睡眠の質改善が「炎症状態とアテローム硬化症リスクの削減のためになる健康な睡眠を焦点にした公衆衛生政策を強化する予防戦略である」ため意義が高いとしています。

別の研究は質のよい睡眠が認知力の健康に与える効果について実証しました。イタリアの研究者は、睡眠が阻害されると、正常な状態であれば不要になった神経接続をj廃棄する脳内のグリア細胞の一種、星状細胞が健康なシナプスを分解し始めることを実証しました。

睡眠阻害は高くつき、質の低い睡眠は事故確率が高まる、糖尿病や高血圧になるリスクが高くなる、余命の短縮等とも関連します。

深い睡眠を可能にする簡単な身体対策

睡眠を改善する一つの簡単な方法は体幹温度に対処することです。ニューヨーク州プレスビテリアン/ウェイル・コーネル・メディカルセンターの睡眠障害専門医ディアンヌ・オジェリ先生: 「就寝前には体温を上げないことが大切です。冷ますことが寝る頃になったというシグナルを送ります。」

晩遅い食事によってこのプロセスが妨害され、血中ブドウ糖とインスリン濃度が上がり、体熱の発散機能が下がると、寝付くプロセスをさらに困難にし、深い睡眠状態になりにくくなります。

就寝の3~4時間前過ぎてから食べてしまったら、就寝の1時間前ぐらいに温めのシャワーを浴びて体幹温度を下げやすい状態にします。

身体がホメオスタシスを維持しようとして闘い始めてしまうので逆効果になるため、冷たいシャワーを浴びないでください。温めのシャワーを浴び、ゆっくりとタオルで体を拭くことで熱を発散させやすくするだけで、寝付きやすくなるはずです。

すでにご説明したように薄手のシーツと毛布で涼しい部屋で寝るのに加え、私の記事「日常の睡眠を最適化するためにいちばん効く33個のヒント」を活用すると寝付きやすくなり、寝続けられるようになるために役立つかもしれません。