アスタキサンチンで脳の老化が遅延する

Fact Checked(事実確認)
アスタキサンチン

早分かり -

  • 過去の研究に基づいて研究者はアスタキサンチンが、脳の老化を遅くすると考えられる脳由来神経栄養因子(BDNF)の増加を含む、いくつもの経路を持つことを特定しました
  • アスタキサンチンは視力や皮膚、心臓にメリットがあることや、抗腫瘍効果もあることをいくつもの研究が証明しています
  • アスタキサンチンには余剰電子や細胞の水溶性と脂溶性要素の保護、酸化促進剤になれないという事実を含め、固有の特性があるため、一種の抗酸化物質と呼ばれます
  • 科学者はアスタキサンチンの固有な特性は死亡リスクが高くなる重症COVID-19における大きな要因であるサイトカインストームを阻止する機能を発揮することも特定しました
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Dr. Mercolaより

アスタキサンチンは病気を予防するための実に様々な栄養剤用途がある天然のカロテノイドです。アスタキサンチンには脳の老化を遅延する老化防止剤として大いに有望視されています。アスタキサンチンは鮭、鱒、エビ、その他の海産物のピンクや赤の色素です。

Science Directによると、「リコペンやビタミンE、ビタミンA等他の抗酸化物質より」アスタキサンチンは優れており、「抗酸化物質の王様」とよく呼ばれるそうです。この物質はアスタキサンチンを強い紫外線(UV)から守る保護メカニズムとして生産する、ヘマトコッカス藻由来です。

人体において、アスタキサンチンは抗酸化物質として作用し、反応性酸素種や酸化から保護するのに役立っています。これらのプロセスは老化や心臓病、アルツハイマー病、パーキンソン病に効果があります。アスタキサンチンは皮膚を紫外線から内外ともにフリーラジカル損傷から保護することはデータが示しています。

2015年にNASAは第66回国際宇宙飛行会議で、天然資源から得たアスタキサンチンによって宇宙空間で飛行士に発生する放射線への暴露による害や目の損傷、その他の健康への害を防止しうることを示すことを発表しました。

強力な抗酸化物質で脳の老化が遅くなる

Marine Drugs誌で研究者は寿命が延びるに伴う脳機能の維持や健康な生活という課題を認識しています。アスタキサンチンが実験モデルでは脳の老化を遅くする神経保護効果を有することについて、近年の諸研究が評価してきました。

科学者は文献を検討した結果、アスタキサンチンが脳の老化を遅くするいくつかの経路を見つけました。その科学者らは病気と身体障害を評価項目の尺度とした臨床検査の結果を評価しました。

その結果わかったことは、いくつかの研究がアスタキサンチンが長寿に直結する転写因子と遺伝子を含む生体メカニズムを調節することを発見したことでした。アスタキサンチンが調節する主な因子の一つがDNA結合ドメインFox(Forkhead box)を持つForkheadファミリーのサブグループ「O」に属する転写因子(FOXO3)です。この因子は人間の寿命に大きな影響があるたった二つの遺伝子の一つです。

さらに、文献検索の結果、同科学者はアスタキサンチンで脳内の脳由来神経栄養因子(BDNF)濃度が増え、DNA、脂質、タンパク質の酸化損傷を軽減しうることを特定しました。

同科学者はアスタキサンチンが長寿を促し、老化を遅くしうるという結論に至りました。その神経保護作用はアスタキサンチンがミトコンドリアの機能をよくし、老化に伴う遺伝子発現の調節不良を回復させるだけではなく、酸化ストレスと炎症も減らす作用をすることによるものであると、考えられます。

脳の老化が精神機能に悪影響を及ぼす

アスタキサンチンが脳の老化を遅延しうることを示すデータは神経の老化プロセスが認知力と直結するため重要な意義があります。発生しうるけれども必ずしも普通のこととは言えないような認知力の変化には単語が思い出せないとか名前がすぐ出て来ない、並列作業が困難、注意力の衰えが挙げられます。

米国の国立老化研究所によると、脳内に老化に伴い発生する共通した変化は脳体積減少、血流減少、炎症、ニューロン通信の効果低減が挙げられます。こうした変化毎に認知力に悪影響を及ぼします。

40歳を過ぎると、脳体積が10年当たり5 %ずつ縮小することをデータが示しています。この減少率は70歳を過ぎると増えやすいそうです。この縮小の主な要因は不明ですが、性別に関係すると考えられるニューロン数ではなく、体積自体の縮小であることを科学者が示しています。

老化とともに思考力が劣っていく一般的な変性があることを専門家が発見してはいますが、加齢に伴って読解力や語彙力、口頭での筋の通った話がよくなることも指摘しています。老化による異常変性があれば、認知症関連の記憶力、問題解決力、挙動に影響するような重篤な認知障害が起こり得ます。

アスタキサンチンの何がそれほど独特なのでしょうか?

アスタキサンチンはベータカロテンやルテイン、カンタキサンチンと関連してはいますが、その分子構造は固有であり、他のカロテノイドより効力があります。主な相違点の一つはアスタキサンチンには余分な電子があり、フリーラジカルを中和するにともないこの電子を付与することです。

抗酸化物質は電子が欠落しているフリーラジカルに余っている電子を与えて安定化させます。しかし、抗酸化物質も電子を与えたら不安定になる場合があります。しかしアスタキサンチンにはもともと余分な電子があるため、不安定化せず、何個もの電子を与えることができます。

アスタキサンチンのより独特な特徴の1つは、細胞の水溶性部分と脂溶性部分の両方を保護する能力です。この特性こそアスタキサンチンが強力である点です。いくつかの抗酸化物質と効果を解析したある研究のデータは、アスタキサンチンの抗酸化力がアルファリポ酸、緑茶のカテキンCoQ10ビタミンCより大きいことを示しています。

ほとんどの抗酸化性カロテノイドは水溶性か脂溶性のいずれかですが、アスタキサンチンは水と油の間に介在しうるため、効果が大きいです。アスタキサンチンはさらに血液脳関門も通り、脳神経の健康を強く保護する効果を発揮します。

最後に、アスタキサンチンは、酸化防止ではなく酸化促進性の分子である酸化促進剤としての機能ができません。他の抗酸化物質は十分濃度がある限り、酸化促進剤になる場合があり、このため抗酸化物質サプリメントを飲みすぎてはならないのです。しかし、アスタキサンチンは大量に体内にあっても酸化促進剤として機能することは決してありません。

アスタキサンチンには全身へのメリットがある

アスタキサンチンには全身へのメリットがあることを示した根拠があります。いくつもの研究は、アスタキサンチンが皮膚の健康にメリットがあり、太陽光線の紫外線によるダメージから保護することで、皮膚の弾力性が増し、小じわが減る効果を証明しています。皮膚の一部にサンスクリーンを使用するのとは異なり、アスタキサンチンは紫外線を阻止せず、皮膚がUVB光線からビタミンDを生産し続けられるメリットを得られます。

この効果は全身への照射や火傷の悪化から保護しうるほど強力です。皮膚組織に良い効果があるのが見てわかるのと同じように、アスタキサンチンはさらに内蔵器官や組織にもとてもよい効果があります。

ある二重盲検プラセボ対照試験では、1日当たり12 mgのアスタキサンチンを8週間摂取した人は、心臓病マーカーのひとつであるC反応性タンパク質(CRP)のレベルが20.7 %低下しました。Atherosclerosisに掲載されたある研究では、プラセボかアスタキサンチンを12週間、一日に6 mgまたは12 mgあるいは18 mgのいずれかを参加者に無作為に割り当てました。

試験前後で、アスタキサンチンを飲んだ人の場合、トリグリセリドとHDL濃度によい効果が表れ、これは脂肪組織に含まれるブドウ糖を調節する一種のタンパク質アジポネクチンの増加と相関性がありました。アスタキサンチンは高齢者の失明の最もよくある原因である加齢性黄斑変性症の予防と治療にもとても効果があります。

アスタキサンチンは実験室研究では網膜細胞を酸化ストレスから保護することが実証されています。文献を調べるとアスタキサンチンは「糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症、緑内障、白内障を含む」いくつかの目の病気の予防と治療に効果があることを示しています。

他の研究には、アスタキサンチンががんにもたらす効果についても論じられています。生体内外での前臨床的な抗腫瘍効果は様々ながんのモデルにおいて実証されています。2015年に発表された研究によると、アスタキサンチンの効果は以下のように記されています。

「…シグナル伝達物質と転写活性化因子3( STAT3)、活性化B細胞の核因子κ-軽鎖エンハンサー(NF-κB)を含む様々な分子および経路を介してその抗増殖性、抗アポトーシスおよびペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)が抗浸潤作用を発揮する。したがって、[アスタキサンチン]は、がんの化学療法剤として大きな可能性を秘めている。」

抗酸化物質はサイトカインストームを抑止する

この強力な抗酸化物質のメリットの度合はいまだに掘り起こされています。最近のCOVID-19流行病では、研究者が天然のアスタキサンチンを他の療法と併用してCOVID-19の患者にメリットがあることを示す適応症を特定しました。

研究ライブラリーウェブサイトSSRNに掲載された最近のある論文では、アスタキサンチンには固有の分子構造があるため細胞膜を通過でき、反応性酸素種とフリーラジカルを細胞膜内外で安定化することが可能であるることを特定しました。この作用は酸化ストレスから卓越した保護効果があります。その研究者らは次のように報告しています:

「臨床面とのかかわりでいうと、アスタキサンチンの安全性は卓越しており、異なるメリットがあることは示されているほか、DNA酸化損傷の防止、C反応性たんぱく質(CRP)やその他の炎症関連の生体マーカーの低減効果があることが判明している。以前の研究から天然アスタキサンチンはサイトカインストーム、急性肺損傷、急性呼吸器症候群等を緩和するよい効果を及ぼすことが判明している…

SARS-CoV-2がウィルス負荷の増加ではなく、炎症関連の遺伝子の発現増大と不可避の二次感染併発による潜在的な敗血性ショックを起こし、致命的な切迫した結末に及ぶALI [急性肺損傷]、ARDS [急性呼吸器機能低下症候群]による遂次的帰結への炎症応答の増大を誘発しうることは、蓄積された根拠に基づいた最新の知識から示唆されている…

…この進行の主な段階を標的としたサイトカインストームの緩和は結果を改善しうる。…シーその他の研究者は、COVID-19患者の潜在的治療への二段階アプローチを示した。これらは、重症ではないCOVID-19症例を対象とする免疫防御に基づく保護段階と、第二の重症COVID-19患者を対象とした炎症による損傷段階である。」

その執筆者によると、アスタキサンチンはSARS-CoV-2から細胞を保護するために固有の適性があると考えられています。その科学者は重症COVID-19におけるサイトカインストームを効果的に阻止するかもしれないアスタキサンチンに既知の作用があるいくつもの経路をリストアップしています。それによると、アスタキサンチンは:

「…何件もの前臨床および人体実験によりすでに裏付けられ実証された抗炎症性と抗酸化性およびアスタキサンチンが非常に安全であることに基づいて、COVID-19に対して試験するのに最も有望な候補の一つでありうる。

総合的にとらえると、COVID-19治療における賦活的対抗措置としてのアスタキサンチンの意義は、死亡率低下と急速な回復という有益な結果が得られる抗酸化物質と抗炎症性化合物としての二重の目的を果たしうると考えている…」

まとめて言うと、アスタキサンチンは免疫応答の調節や細胞媒介とホルモン性免疫応答ともに強化することを含め、COVID-19の症状を軽微にするために多くの重要なメリットがあります。私の記事「アスタキサンチンはサイトカインストームの抑制に役立つ」にさらに詳しくご説明していますのでご参照ください。

+ 出典および参考資料