ナイアシン(B3)の主なメリットについてご説明します

Fact Checked(事実確認)
ナイアシン

早分かり -

  • ナイアシンは紫外線のDNA損傷と酸化ストレスから保護する非常に重要な機能をし、皮膚がんの発症率増加を食い止めるのに役立ちます
  • ナイアシンを長期的に使用するメリットは全原因死亡率リスクも下げることをある研究が発見しました
  • ビタミンB群は免疫系を強くするのに役立つB3はNADの前駆物質であり、COVID-19によるサイトカインストームとブラジキニンストームによる最悪の結末を阻止するのに役立つようです
  • 食事からB3を摂るのがいちばんよいです。高用量のサプリメントでは皮膚が発赤して痒みを生じるナイアシンによる顔面紅潮やほてりが生じることがあります。煩わしいですが、無害な症状です
文字サイズ:

Dr. Mercolaより

ビタミンB3ともいう水溶性のビタミン、ナイアシンは食品に自然に含まれるほかにも加工食品に添加され、サプリメントとしても利用できます。ナイアシンは400種類以上の酵素においてなくてはならない機能をし、ある研究によるとナイアシンが豊富な食生活をすると皮膚が紫外線(UV)の害を受けなくなります。

ペラグラ(ニコチン酸欠乏症)ともいうナイアシン欠乏は最悪の場合致死性の病気です。20世紀の初め頃は一般的だったペラグラはたいていの加工食品がナイアシン強化されている工業化諸国ではあまり見られません。現在、ペラグラはナイアシンやたんぱく質が乏しい食生活をしている貧困層でしか発生していません。

特徴的症状は下痢(diarrhea)、皮膚炎(dermatitis)、認知症(dimentia)、死亡(death)という英語の頭文字Dが4つあることです。この疾患の症状には日光に当たった皮膚の褐色化、明るい赤色の舌や嘔吐、便秘、下痢が挙げられます。神経系の症状もあり、頭痛や倦怠、記憶喪失、抑うつ状態が挙げられます。

放置しておくと、この疾患は視覚的、聴覚的幻覚をともなう精神分裂症になったり自殺行動を取るほど進行し、死に至ります。工業化諸国ではこのビタミンが欠乏することは稀ですが、不足するといくつかの病気の原因になり、研究から次のようなことがわかっています:

「ナイアシン サプリメントのメリットはがんと心臓血管病、皮膚の健康、精神衛生、酸化性の肺損傷の実験的モデルで確認された。」

ナイアシンは皮膚を紫外線から保護する

ナイアシンには主に三種類あり、これらはニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)の前駆物質として食事から摂れます。これらの物質はニコチンアミドリボシド、ニコチン酸、ニコチンアミドです。イタリアで研究者は非悪性腫瘍性皮膚がんから皮膚細胞を分析し、異なる用量のニコチンアミドで48時間、24時間、18時間処置した後、紫外線を照射しました。

ニコチンアミドで前処理した細胞は紫外線によるDNA損傷も含む酸化ストレスから保護されることを実験室研究が証明しました。さらに、ナイアシンが局部炎症を軽減し、反応性酸素種の生産を減らすこともデータから判明しました。その研究に参加したローラ・カミッロ氏はプレスリリースで次のように述べています:

「この研究は日常の食事から容易に得られるビタミンB3をより多く摂りこむと皮膚が紫外線暴露の一部から保護されるようになり、非悪性腫瘍性皮膚がんの発生率が下がる可能性があることを示している。しかし、ビタミンB3は効果持続時間が短いため日光に当たる遅くとも24時間から48時間前には摂りこむ必要がある。」

最新の実験室研究は過去に同じ結果が出た実験室研究のデータと整合的です。ある動物実験では、ニコチンアミドは光線による発がんを阻止し、皮膚をUVA光線とUVB光線から保護するのに役立ちます。研究者はさらに、皮膚がんの先行症状である光線性角化症の患者を使った人体実験で一日二回ニコチンアミドのサプリメントを試験しました。

二か月目と四か月目に測定した結果、この研究で使用したプラセボに比べニコチンアミドのサプリメントによって光線性角化症が35 %削減されました 。この結果は第41回欧州皮膚科学研究年次学会2011で発表されました。

American Health & Drug Benefitsに掲載されたある論文の執筆者は、経口ニコチンアミドを皮膚がんリスクが高い人に使用することについて調査したある研究について報告しました。そこに掲載されているデータにはプラセボと結果を比較した結果、このサプリメントが扁平上皮と基底細胞の悪性腫瘍(がん)が新規診断される確率が一年間投与後に23 %削減されたことを示していました。

さらにナイアシンは光線性角化症に進行するリスクも下がりました。この高価とはいえないサプリメントで国民医療費が毎年480万ドルほど節約しうると推計されていました。その研究者は皮膚がんの既往症がある人に関する結果であり、他の人々には適用されないことを強調しました。

また、研究者はビタミンB3を治療としてではなく予防戦略として利用しうると考えています。シドニー大学のこの研究の主任研究者は、この予防方法が日常的管理と皮膚検査に代わるものではないことに注意を促し、次のように説明しています:

「この種の予防方法は安全で高価ではなく、一月に約10ドルで済み、入手しやすい。皮膚がんの既往症があるリスクが高い患者の場合は医院で直ちに使用しうる。これは皮膚がん予防のための新たな機会である。」

ナイアシンの長期的健康へのメリット

ニコチン酸は脂質異常の管理を補助するために40年以上前から利用されてきました。ある慎重な監視の下で行われた研究では一日用量1,000 mgから2,000 mgのニコチン酸サプリメントを利用してHDLコレステロールを増やし、LDLを減らしました。しかし、これほど多い用量では副作用が出る場合があります。

いくつかの治験はナイアシン治療を受けた患者では心臓血管系の事象や死亡が少ないことを実証しました。その他の治験はそれほどプラスの効果が得られませんでした。文献を精査した結果、米国FDA(食品医薬品局)は次の結論を公表しました:

「…科学的根拠に基づき、スタチンを投与した患者において薬剤で誘発したトリグリセリド濃度の低下やHDLコレステロール濃度の増加によって心臓血管事象リスクが低下するという結論はもはや裏付けられない。」

私は以前記事の中で述べましたが、HDL、LDL、トリグリセリドどうしの比率こそ心臓の健康をよりよく予測させる要因であり、各物質の絶対値を見ても予測はつきません。すなわち、FDAの声明は危険なスタチン薬によるLDLコレステロールの低下を支持しつつも、高価ではない安全なサプリメントでHDLとトリグリセリドの濃度を変えても心臓の健康に何ら効果はなかろうということを示しています。

Journal of the American College of Cardiologyに掲載されたある研究では、1966年から1975年までのデータに基づいて母集団8,341人の男性における五種類の薬の効能と安全性を研究者が評価しました。

二種類の薬は有害事象が原因で早期に打ち切られました。ナイアシン治療は心臓発作の発生数を削減するために適度な効果がありましたが、全原因死亡率は下がりませんでした。しかし、参加者がこのナイアシンの使用を止めてからほぼ9年を経た15年後に被験者グループの追跡調査を行いました。

全原因死亡率がナイアシンを除く全薬でプラセボグループと変わらないことが判明しました。参加者がこのナイアシンの使用を止めてからほぼ9年後も、健康によい効果が持続し、プラセボグループに対して全原因死亡率が11 %低いことがわかりました。

ビタミンB群は最悪のCOVID症状のリスクを下げうる

かつて私はビタミンCとD等の栄養素がCOVID-19の治療にどの程度役立つかについて精査したことがあります。最近公表されたある論文でもビタミンB群の潜在的価値が強調されていました。その論文はオックスフォード大学、アラブ首長国連邦大学、オーストラリアのメルボルン大学の研究者による国際共同研究でした。

ビタミンB群のCOVID-19患者への効能を評価した研究はありませんが、その科学者はこのビタミン群が免疫系と免疫力に異議があることを強調して、さらに研究を進めることを提唱しています。その論文はビタミンB群がCOVID-19を特に予防したり治す可能性があることは示していません。

科学者が幾度も発見してきたように、ビタミンまたは栄養補助食品を一品だけでは効果がなく、他のサプリメントとバランスを取りながら利用するべきです。COVID-19は別の病気がある人や高齢者の場合免疫系の過剰反応を起こし、サイトカインまたはブラジキニンの過剰な発生につながるため、危険なことがわかっています。

ナイアシンとニコチンアミドはNAD+の前駆物質であるため免疫系の健康のために重要です。これは加齢にともなって自然に減少する非常に重要なシグナリング分子です。ハーバード・メディカル・スクールのデビッド・シンクレア博士によると、NLRP3炎症がハイレベルになることがサイトカインストームの原因の一つであり、NAD+の濃度により影響を受けます。

ナイアシンはNADとNADPの構成要素です。この構成要素はCOVID-19等のウィルス感染症の際に起きるような炎症を抑えるために必須の物質です。ビタミンB群の研究を進めるよう支持している科学者によると:

「NAD+が炎症初期に放出され、免疫力を調節し、炎症促進性サイトカインIL-1β、IL-6、TNF-αを削減することは周知である。

最近、IL-6を標的とするとCOVID-19患者の炎症性ストームを抑えるのに役立つことを示す根拠が見つかった。さらに、ナイアシンは好中球の浸透を削減し、換気装置に誘発される肺損傷を受けた患者に抗炎症効果がある…

さらに、ニコチンアミドはウィルス(ワクシニアウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、腸内ウィルス、B型肝炎ウィルス)の複製を抑制し、人体の防御メカニズムを強化する。ナイアシンの肺を保護し、免疫力を強くする特性を考慮すると、COVID-19患者のための賦活治療として利用しうる。」

ナイアシンによる顔面紅潮やほてりにご注意

ナイアシンは鶏肉や牛肉、魚等の動物性食品、さらにナッツや穀物等非常に多くの種類の食品に含まれます。パンやシリアル、乳児食等多くの加工食品はナイアシンの添加によって強化されています。

B3が最も豊富に含まれる食材は草で育った牛のレバーですが、ぶつ切りの玉ねぎ半カップでさえ一食分にナイアシンが0.1 mg含まれます。その他ナイアシンが豊富な食材には玄米、牛肉、鶏肉、ソックアイサーモンが挙げられます。

ナイアシンのサプリメントを利用しようと思うのであれば、共通する副作用の一つ、ナイアシンによる顔面紅潮やほてりにご注意ください。この副作用はこのビタミンを大量に飲みかつニコチン酸を使っているときしか通常は起きません。ニコチン酸には紅潮の副作用は通常ありませんが、コレステロール濃度に対しても同じく効果がありません。

ナイアシン紅潮はナイアシンが豊富な食品を食べたときは発生しません。この異常の症状は胸、首、顔の焼けるようなまたはくすぐったいような感覚が特徴的な症状です。皮膚に触ると温かい感じがし、紅潮した、赤い外見になります。ごく一部の人の場合はナイアシンのサプリメント50 mgでさえこうした副作用が起きることがあります。

煩わしく時には憂慮すべきこともありますが、危害はありません。時限放出サプリメントを使ったり、食中にいっしょに飲むか、たくさんの水といっしょに飲むと紅潮が減る場合があります。より少ない用量を一日に分けて飲むのも反応が出る可能性を低くできるでしょう。