胸やけ処方薬の長期使用は糖尿病につながる

Fact Checked(事実確認)
PPI

早分かり -

  • 胸やけに対するプロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期使用で2型糖尿病のリスクが24 %高くなることがわかりました
  • PPIを長期継続すると体重増加、胃がん、慢性腎臓病、いくつものその他の病気のリスクも高くなります
  • これに替わる市販薬はロケット燃料にかつて使用されていた発がん物質が検出されたため他の処方薬とともにリコールされました
  • 胃が生産する酸量の目安として簡単なテストを検討し、胃や胸やけを危害のある薬を使わずに治すための手順を始めましょう
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Dr. Mercolaより

胸やけは逆流性食道炎(GERD)の主な症状の一つです。これはろっ骨の裏に焼けつくような感じがして、さらに首や喉にこの焼け付く感覚が移動する場合があります。酸っぱい、苦い液の味も感じることはときどきありますが、これは食道から胃液が逆流しているためです。GERDが起きた人によっては喘息や咳、咽頭炎等のその他の症状も起きることがあります。

GERDは一般に蔓延してきたよく起きる異常になりました。従来この症状は中年から高齢者に多かったです。しかし、GERDの治療を受ける若い世代(30歳から39歳)が近年増えています。

胸やけの程度は主な生活上のストレスと関連しているようです。この程度が持続的ストレスによるのではなく気分に応じて変動するかは研究でまだわかっていませんが、持続的ストレスは胸やけ症状を悪化させます。

現在の流行病のため2019年同期より抗不安薬や抗うつ薬、抗不眠症薬をより多く服用する多くの人のストレスが増えました。処方薬の増大は2015年から2019年までに処方された抗不安薬と抗不眠症薬の減少とは対照的です。その研究の執筆者は次のように指摘しています:

「多くのアメリカ人が症状を軽減くするため薬に依存していることを示したこの分析は、COVID-19が我が国の精神衛生に及ぼしている重篤な影響を明らかに示す。」

糖尿病につながる胸やけ薬

ニクシウム、プレヴァシッド、プリロセック等の胸やけ対策用プロトンポンプ阻害薬(PPI)を長期的に使用すると、重大な健康の異常につながることがわかっています。BMJのうち「Gut」という専門誌に最近掲載されたある研究の執筆者らは、PPIの日常的服用と2型糖尿病の関連性を評価しました。

その研究者らは看護師の健康調査を含む三件の継続中研究に参加した204,689名の予測調査を実施しました。このコーホートのうち糖尿病は10,105症例特定されました。PPIを日常服用していた人は使用しない人より糖尿病のリスクが24 %増えていました。

日常的使用により2型糖尿病のリスクが高くなること、このリスクはこの薬を服用する期間と比例することをその研究者らはは特定しました。結論: 「従って、内科医らはPPIの特に長期的使用を処方する場合は注意すべきである。」

PPIが腸内フローラを変性し2型糖尿病につながるという根拠は存在します。健常な1,827組の双生児に関するある研究では、PPIの使用により腸内細菌が減り、細菌密度が減ることが判明しました。

別の研究では口内細菌叢はPPIを使用した人の便細菌叢に異常に検出され、「腸内細菌叢の健康低下と」整合的であることが発見されました。こうした変性は「クロストリジウム・ディフィシルの感染症に罹りやすくなる既知の変性とも関連し、PPI服用者の腸内感染リスクが高くなっていることを説明しうる」とその研究者らはしています。

さらに、PPIにより「体重増加、慢性肝臓病、メタボリックシンドローム」のリスクが増えます。こうした異常のどれも2型糖尿病のリスクを高くします。

PPI糖尿病関連性研究は観察研究であって、研究者らがPPIの用量や頻度、ブランド名等の交絡要因を除外できなかったため限界があると、 Medpage Todayで指摘されていました。Medpage Todayのその記事で引用された研究者らの説明:

「人口全体で見ると、PPIは抗生物質等他の一般的に使用されている薬より腸内細菌にはるかに大きく影響するようであり、PPIの過剰な使用を警告すべきであり、PPIの長期的使用による続発症についてさらに調査が必要である。」

汚染された市販代替薬

処方薬PPI以外にも胸やけ対策の市販薬はあります。そうした薬のうちザンタックとアキシドの二つは発がん物質N-ニトロソジメチルアミン(NDMA)(かつてはロケット燃料の商業生産に使われていた)が検出されました。

動物実験の結果から、この物質ががんのリスクを大幅に高くすることが示され、この化学物質は現在、研究のみに使用されています。2020年2月、胸やけ薬やその他の薬はNDMAに汚染されているためリコールされました。この化合物は環境や食品、たばこ、薬から吸収されるため、FDAは一日の摂取量96 ng(ナノグラム)の許容限界値を策定しました。

比較までに、この量は1 mgの0.000096に相当し、一粒の塩が約1 mgです。リコールされた降圧剤バルサルアンの1ロットにはこの限界値の200倍が検出されました。2019年にBloombergに掲載されたレポートの執筆者はこの汚染が品質検査より利益率を優先し、製造工程を合理化した結果であると伝えていたことは懸念される事実です。

しかし、NDMAがジェネリック医薬品に混入したのはそれが初めてではなく、FDAには薬の安全性を確実にする能力があまりないことがわかる深刻な疑問を抱かせます。Bloombergによると、ある降圧剤には1錠に17 μgもこの汚染物質が含まれ、欧州の医薬規制当局がこの量では3,390人に1人にがんが発生すると推計した量です。

懸念の多い点として、品質検査がまやかしであることがわかった査察が甘いFDAのアプローチは頻繁に見られます。BloombergはFDAの検査データベースを運用するマイケル・デラトッレ氏から情報を得ました。

トッレ氏によると、2019年までの5年間にFDAは偽データへの応答としてたったの25 %分にしか警告通達を発行していませんでした。結局は、こうしたことが暴露されたのは主に病気の根本原因を全く治療せず、対症療法の薬にしか依存しないことの帰結です。

危険物リストはあっても特定の長期使用監視は無し

私は以前にも記事にしたことがりますが、PPIはいくつかの健康への害悪があります。例えば、プロトンポンプ阻害薬を長期的に使用すると、消化管内で細菌が異常増殖し、栄養素の吸収不良につながり、このため胃壁が炎症を起こします。

PPIはマグネシウムの吸収も低下させます。マグネシウム不足は吐き気、倦怠、筋肉収縮、人格変貌、不整脈につながります。PPIは胃液量を減らすことにより、胸やけ、消化不良、鼓脹、下痢、ガスのリスクを高くします。

胃液が減るとカルシウムの吸収も減り、骨粗しょう症につながります。長期的な用量依存の使用により股関節骨折リスクが高くなることは研究データから判明しています。

JAMAのある記事によると、慢性腎臓病の人が増加しているのは、PPIを使用する人が増えていることによるものであると科学者らは考えています。この研究の主執筆者でオーストラリアのブリスベーンにあるクィーンズランド大学のベンジャミン・ラザルス氏によると:

「これらの処方の最大70 %は適応症が無く行われ、PPIの長期的服用者の25 %は治療を中止しても症状が進行しないはずであることを研究の結果が示している。実際に、PPIの不要な使用の削減を求める動きはすでにある。」

PPIを使用すると胃がんリスクが二倍以上増えます。胃がん発生に感染症が作用しうる潜在的機能を研究者らが要因として含めて研究した結果、PPIを毎日服用していた人は一週間に一回この薬を服用した人より胃がんリスクが4.5倍高いことがわかりました。

これらの病気はどれも潜在的に長期的リスクです。しかし、最近行われた86,602人の回答者に関するある研究では、一日二回PPIを飲んでいた人はこの薬を服用していなかった人より四倍リスクが高いことが発見されました。

PPIには危険な副作用があることをまだ確信していない人がいます。その研究に関与していなかったコロンビア大学のダニエル・フリードバーグ医師は、Medpageとの会見でその結果が「非常に弱い」と言っています。

プロトンポンプ阻害薬には重篤なおそらく危険な副作用があることを示す科学的根拠は増え続けているにもかかわらず、臨床ガイドラインを策定する医事協会であるアメリカ胃腸病学会はPPIの長期使用患者の監視を勧告したことはなく、現在の研究はこの現状維持を変える可能性は相当低いと、フリードバーグ氏は指摘しています。

胸やけの原因

食品の消化は咀嚼により断片化され唾液と混ざる口の中から始まります。胃に入った食物は塩酸と混ざり、小腸に進みます。胃の中には下部食道括約筋という筋肉弁があり、これが食物や胃酸の逆流を阻止します。

この括約筋が不適切に弛緩すると、胃酸が食道に逆流し、酸性の強い低pHに耐えられない組織が焼けます。以前の記事で取り上げたことがありますが、ごく稀な場合、胃液逆流は胃の中に過剰な胃液があることによって起きます。しかし、胃液逆流、胸やけ、GERDはほぼ全てが以下の点に関連します:

  • 胃酸の不足
  • ピロリ菌のアンバランス
  • 裂孔ヘルニア
  • 食物アレルギー

次の簡素な試験を胃が生産する胃酸の量についての目安になる指標として考えてください。胃酸が不足していることがわかると、慢性痛を減らす計画を立てやすくなります。

  1. 冷たい水約240 ccに重曹を小さじ1溶かし、朝一番朝食前に飲みます。胃の中で重曹と胃酸が混ざることで二酸化炭素が発生するので、げっぷが出ます。
  2. げっぷが出るほど十分二酸化炭素ガスが胃の中に発生するまでの時間を見ます。普通は二三分ですが、これより早く、反復する場合は胃酸が多い徴です。五分してもげっぷが出なければ、胃酸が十分に生産されていません。

これより正確な検査は、検便してもらい、酵素や塩酸不足になっていないかを調べることです。この場合、異常を起こしているかもしれない細菌や真菌のアンバランスも特定できます。

GERDを癒し胸やけを予防するための手順

ザウアークラウトとキャベツのジュースは胃酸の生産を促すことも研究からすでにわかっています。生のザウアークラウトから作った発酵ジュースを食事の前に飲むと、貴重な細菌によって腸内を自然に平衡させ、栄養を与え、消化がよくなります。

腸に善玉菌を植え直すと腸内フローラのバランスに役立つだけではなく、自然にヘリコバクター属を減らしたり解消するのに役立ちます。発酵食品や高品質のプロバイオティクサプリメントでこれらの目標を達成しやすくなります。

覚えておくべきことは、穀類やマメ類等のレクチンが多い食品は強力な酵素阻害物質であることです。このため消化系の機能を弱め、胸やけを生じさせるあるいはさらに悪くすることがあります。

危険な薬なしで胸やけに対処する

PPIを今服用している人はいきなり絶たないことが大切です。突如止めると重篤な胃酸のリバウンド異常分泌につながります。むしろ、段階的に薬を減らしていき、体内からこの薬の毒を無くし、解消するために時間を掛けましょう。

最小限の用量にしたら、薬の代わりにシメチジンやタガメット等の市販H2ブロッカーを服用し始めます。PPIの代わりにH2ブロッカーを二三週間続けたら、このブロッカーもだんだんと減らしていきます。

この過程で、胸やけを軽くするための代替方法を始めます。胸やけは辛いですけれども、食道に以下のような慢性焼けによる長期的副作用も起きます:

  • 好酸球性食道炎
  • バレット食道
  • 腺がん
  • 消化性食道狭窄
  • びらん性食道炎

胸やけやGERD(胃食道逆流症)、消化不良は危険なあるいは習慣性になる薬を使わず効果的に自宅で治せる方法があります。

+ 出典および参考資料