ハスキーボイス(嗄れ声)この栄養素欠乏が考えられます

Fact Checked(事実確認)
嗄れ声

早分かり -

  • 声帯ヒダ麻痺を併発した進行性嗄れ声のある男性の症例研究で、ビタミンB12の欠乏が原因であることがわかりました
  • 声帯ヒダ麻痺は声帯ヒダのうち1つか両側とも麻痺して正常に動かなくなると起きます。声帯が1つ正常に動かないと、嗄れ声になります
  • その男性はビタミンB12の補完後症状がなくなりました
  • 別のある症例で2型糖尿病の55歳の男性も嗄れ声になっており、声帯ヒダ麻痺がビタミンB12欠乏のためであることがわかり、ビタミンB12濃度を増やしたら症状が解消しました
  • ビタミンB12欠乏の症状はわかりにくいか他の疾患を鏡面反射する場合があり、臨床医が見過ごしてしまうか誤診しやすく、声帯ヒダ麻痺の症例ではビタミンB12欠乏を考慮することが必須です
文字サイズ:

Dr. Mercolaより

コバラミンという水溶性のビタミンB12はDNA合成を含む、人体のいくつもの生化学反応や神経機能のために一翼を担っています。人体はビタミンB12を生産できないので、食事やサプリメントから取らざるを得ません。

このビタミンが欠乏すると人格障害、立腹しやすさ、うつ状態その他関節痛、「ちくちく感、差し込み感」、しびれ、息切れも含むいくつもの症状を併発する多くの関連する異常につながるほど重篤になります。

しかしあまり知れ渡っていな症状の一つが声に影響します。頻繁に嗄れ声になれば、ビタミンB12欠乏のためかもしれません。

B12欠乏による嗄れ声、声帯ヒダ麻痺

イースト・カロライナ大学の栄養学部の研究者らはビタミンB12欠乏の89症例について検討して、原因と症状、治療結果について調べました。神経的、精神的、口腔、皮膚、その他の「稀な兆候や症状」があることがわかり、症状の出方にばらつきが大きいことがわかりました。

症例研究のうち一見はアルコールの飲みすぎのためビタミンB12欠乏になっていた61歳の男性について調べました。この男性の症状には段階的に進行するハスキーボイスに声帯ヒダ麻痺が併発していました。

声帯ヒダ麻痺は声帯ヒダのうち1つか両側とも麻痺して正常に動かなくなると起きます。声帯が1つ正常に動かないと、嗄れ声になりますが、声帯ヒダが両側とも機能しないと呼吸困難になります。

声帯ヒダ麻痺は甲状腺の手術や頸動脈の手術あるいは首や胸の腫瘍の手術等の外科処置に関連することがよくありますが、原因はあまりわかっていません。The Journal of Laryngology & Otologyにもともと2011年に掲載されていた最初の症例報告で研究者らがこう伝えています:

「61歳の男性が嗄れ声と両脚の衰弱が8週間段階的に進行し、救急処置区に紹介された…患者の嗄れ声は定常的に発生し、繰り返し咳払いする必要があった。」

その男性にビタミンB12を補完したら症状がなくなりました:

「…追跡観察でその患者の声と声帯ヒダ機能が改善したことが注目を集めた。声と両脚の機能ともに改善し続けた。その後三か月間、患者は全治し、血清B12濃度の正常化を反映していた。

この症例はビタミンB12の欠乏と声帯ヒダ麻痺の強い相関性を示すものと考えている。」

B12欠乏、ハスキーボイスにつながるメトフォルミン

別のある症例では、2型糖尿病の55歳男性は嗄れ声にもなっており、耳鼻咽喉科(耳、鼻、喉のお医者さんのこと)クリニックに行きました。両側声帯ヒダ麻痺がビタミンB12欠乏の結果であることがわかり、その研究者らによると、ビタミンB12濃度が増加した後異常が解消しました:

「患者の嗄れ声は一か月処置後に回復した。… 3ヵ月後、患者の神経障害が回復し、声帯は正常と判断された。」

この症例で男性患者はインスリンと、バルサルタン、メトフォルミンを五年間服用していました。メトフォルミンという糖尿病薬は以前からビタミンB12を欠乏させることは周知でした。ある研究では、メトフォルミンを服用している人の平均ビタミンB12濃度が低く、4 %に不足し、プラセボ対照群では不足者数が2 %にとどまっていました。

さらに、メトフォルミンを服用していた患者の約20 %はボーダーラインの低ビタミンB12濃度となっており、プラセボを服用した人では10 %であったのと対照的でした。メトフォルミン投与群の人は貧血傾向も高く、これはビタミンB12の欠乏と関連します。

その症例研究を行った研究者らによると、「声帯ヒダ麻痺の進行評価の際、メトフォルミンの長期投与がビタミンB12欠乏につながることを医師は念頭に置くべきである」としています。

The Journal of Laryngology & Otologyで研究者らは声帯ヒダ麻痺症例において、臨床医はビタミンB12欠乏を考慮することが必要であるとも注意しており、「迅速な特定や処置が永続的な神経障害の防止に有用であるためビタミンB12欠乏を原因としてとらえることが重要である」としています。

ビタミンB12欠乏症状には見過ごされがちなものがある

ビタミンB12欠乏症状はわかりにくいか他の異常の鏡面反射であることがあり、臨床医が欠乏状態を見過ごしたり、誤診するおそれがあります。欠乏による影響の一つは巨赤芽球性貧血という血液の病気です。このビタミンが欠乏していると骨髄が未熟な血液細胞を吐き出し始め、これでは 全身にじゅうぶん酸素を送れなくなります。 結果は倦怠感や蒼白な皮膚です。

巨赤芽球性貧血症の人は皮膚や目が若干黄色くなる黄疸も起きます。ビタミンB12欠乏の人のなかには目のひきつけや瞼のけいれんを訴える人がいます。今回取り上げた研究で、B12欠乏の74歳のある女性も目がかすむほかにも、歩行障害や平衡感覚障害が併発していました。

精神衛生の問題もB12の兆候である場合があり、うつ病で入院した患者の最大30 %はB12欠乏らしいこと、うつ症状のある高齢者においてはB12欠乏で抑うつ状態に70 %余計なりやすいことが確認されました。その研究者らはビタミンB12が抑うつ状態の原因ではないかとまで疑っています。

ビタミンB12はCOVID-19のために効くかもしれない

ビタミンB群は細胞の機能、エネルギー代謝、免疫機能でも重要な機能をしており、COVID-19の治療のために有用な可能性があり、ビタミンBレベルをCOVID-19の患者さんでは評価すべきるとする研究者グループもいます。

「ビタミンBは自然免疫と獲得免疫の応答をともに正常に活性化させるための補助となり、炎症促進性のサイトカイン濃度を下げ、呼吸機能を改善し、内皮細胞の完全性を維持し、異常凝集を予防し、入院期間が短くなる」と、Maturitasに掲載された研究にあります。

特にビタミンB12は腸内フローラを調節し、このビタミンが不足すると炎症と酸化ストレスが増します。ビタミンB12のサプリメントがCOVID-19関連の器官損傷と症状を軽減しうることもある研究が示しました。

シンガポール総合病院およびシンガポール国立大学デューク医学校の研究者らもビタミンD、マグネシウム、ビタミンB12の併用が50歳以上のCOVID-19患者の予後を改善しうるかを同定しようとして研究しました。

17人の患者さんに入院と同時にビタミンD3 (1,000 IU)、マグネシウム(150 mg)、ビタミンB12 (500 mcg) — DMBと総称 — の投与を開始し、平均5日間続けた一方、DMB非投与の患者さん26人を対照群にしました。

DMBグループではとてもよくなり、17.6 %の患者さんしか入院中に酸素療法が必要でなく、対照群では61.5 %が必要でした。酸素の必要性は集中処置の必要性リスク増大に関連しており、DMB群はこの領域でもメリットを受けました。

酸素補助が必要になったDMB群の患者さん(17人中3人)のうち2人はICU処置が必要でしたが、1人は不要でした。対照群では酸素補助が必要になった全員がさらにICUでの支持も必要になりました。DMBを投与した患者のうち9人は症状が出た初週中にこの組み合わせを受け、このうち1人のみが酸素療法が必要でした。

ビタミンD、マグネシウム、ビタミンB12はCOVID-19に対処する3本柱の固有な手法であるとし、「ビタミンB12は自然免疫と獲得免疫両系統の発達と機能のために重要な機能をする健全な腸内フローラの支持に必須である」と、その研究者らはしています。

ビタミンB12が欠乏しやすい人は誰でしょうか?

アメリカ人のほぼ2/5はビタミンB12の最適濃度を下回っており、9 %が欠乏、16 %は185 pmol/L未満でこちらはすれすれで不足と見られることが済めされています。B12は動物性食品から得られるので菜食主義者やベーガンがなりやすいですが、肉食者でも吸収の問題が蔓延しているので欠乏することはあります。

B12はタンパク質と緊密に結合しており、この結合を分解するには高酸性が必要です。人によってはB12をタンパク質から分離できるだけ十分な胃酸がありません。高齢になるほど食品からビタミンを吸収する機能が減退していき、以下の状況とならんで、欠乏リスクが高くなります:

B12は肝臓に貯蔵されるので、アルコールをよく飲む人。

身体がB12を吸収できなくなるクローン病やセリアック病などの自己免疫疾患のある人。

一日にコーヒーを四杯以上飲む人はコーヒーを飲まない人よりビタミンB欠乏になりやすい。

胃のバイパス手術を受けたことがあり、このため消化系が変化してB12吸収力に支障がある人。

一酸化二窒素(笑気、N2O)に暴露された人。この物質は体内のB12備蓄を枯渇させます。

50歳以上の人。加齢に伴い内因子の生産能力が逓減する。

ピロリ菌感染者。内因子はB12吸収のために必須の胃細胞が作るタンパク質です。ピロリ菌は内因子を破壊し、B12吸収を阻害します。

制酸剤を飲んでいる人。これは経時的にB12吸収を阻害する傾向が出る薬。

B12吸収に干渉し欠乏リスクを倍増させるメトフォルミンを低血糖対策に飲んでいる人。

プレバシドやネキシウムなどのプロトンポンプ阻害薬(PPI)あるいはペプシドやザンタックなどのH2遮断薬を飲んでいる人。PPIを二年以上継続すると、B12欠乏リスクが65 %高くなることを研究が示しています。

エストロゲンが吸収を阻害するため、避妊薬を長期服用している女性。

抗生物質はビタミンB12欠乏を誘発させることは周知であるため、抗生物質を飲んだ人。

成人の場合、B12欠乏はおよそ6年で進行し、これは身体のB12備蓄が枯渇する期間です。したがって、脳や神経の発達障害は損害が発生してからでは修復するのが困難であるため、B12の取得量と欠乏状況を早期から意識することが重要です。

草で育てた牛のレバーや野生ニジマス、野生紅鮭(ソックアイサーモン)等B12がとても豊富な食品を日常食べることが適正濃度を維持するために欠かせませんが、自分には欠乏しているのではないかと疑われる場合、週一回B12の注入または高用量の日常サプリメントが必要でしょう。

食品に含まれるビタミンB12の自然な形態であるメチルコバラミンはほとんどのサプリメントの形態であるシアノコバラミンよりはるかに吸収性がよいです。