鉄濃度の管理が健康のために必須である理由

鉄 管理

早分かり -

  • 鉄は体内の酸素輸送、細胞成長の調節、脳機能の維持、代謝、内分泌機能の維持、エネルギー生産や免疫機能にも関与しています
  • 鉄の過不足ともに重大な影響をともないます。鉄欠乏はよく検査されますが、鉄過負荷については実際は大問題になっていることのほうが一般的であるにもかかわらず、見過ごされたり注意もされないのが現状です
  • 鉄が過剰になると既往症がいずれも加速的に進行するようになり、肝臓や心臓血管病関連の病理につながります。幸いにも、処置しやすく、安価です: 輸血すればよいのです
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Dr. Mercolaより

鉄が人間の生命のために必須な理由はさまざまあります:

  • 鉄が酸素と結合し、組織における代謝の必要性を賄う酸素を供給するためのヘモグロビン(赤血球細胞のタンパク質)を形成する
  • いくつものタンパク質をはじめ、細胞の酸化反応を触媒する酵素の主要成分である
  • 細胞の増殖と分裂の調節を補助する
  • 脳の機能や代謝、内分泌機能の維持を補助する
  • エネルギー生産と免疫機能に関係している

鉄の過不足はいずれも重篤な健康への害につながり、鉄欠乏貧血は一般的に検査されていますが、多くの医者はいまだ鉄の過負荷の危険というはるかに蔓延している問題について深刻なほど誤った情報しか得ていません。

実際に、男性と閉経後の女性は規則的に出血せず、鉄排出が非効率的なため、鉄過剰リスクが高く、血液損失は、身体に鉄の能動的な排出メカニズムがないため、過剰な鉄を減らすために必要です。

体に、過剰で危険なレベルの鉄が蓄積する血色素症と呼ばれる遺伝病があります。治療せずに放っておくと、器官を損傷し、癌、心臓病、糖尿病、神経変性疾患、その他の多くの健康上の問題が起きやすくなります。

鉄過剰は治療が簡単で安価な点には助けられます。血清フェリチンおよび(または)ガンマグルタミントランスペプチターゼ(GGT)レベルをモニターし、鉄のサプリを避け、定期的に献血することによって、重大な健康の問題を予防できます。

鉄の過不足による健康上の問題

ちょうど必要なだけの鉄が体内に存在することが重要であり、これがないと、身体は正常に機能できず、過剰になれば、鉄は体内でいくつもの破壊的な害を生じさせます。以下は過不足による異常の一覧です:

鉄不足であると起きやすい疾患 鉄過剰であると起きやすい疾患
貧血 慢性貧血
倦怠 インスリン抵抗性、2型糖尿病、メタボリックシンドローム
線維筋痛 早い老化
炎症性腸疾患 アテローム硬化
甲状腺機能低下症 拒食症
うつ病/不安 バセドウ病
注意欠陥障害 (ADHD) 不整脈
パーキンソン病 がん
神経変性疾患 鉄芽球性貧血
セリアック病 非アルコール性脂肪肝(NAFLD).果糖の取り過ぎはNAFLDの主な原因ですが、鉄過剰もこの疾患の進行を促すもう一つの要因です
脚不穏症シンドローム 肝臓障害、肝臓病。毎年、肝臓病でおよそ36,000人が亡くなり、約6,000人が肝移植を受けます
抜け毛 スチル病
筋肉衰弱、運動能力減退 血色素症
精神異常、記憶喪失 血球貪食症候群

最低な鉄の濃度はどれほどでしょうか?

血清フェリチン検査は蓄積された鉄を測定します。成人の場合は、血清フェリチン検査を年一回は受けて過不足がないことを必ず確認することをお勧めします。鉄過剰は、ビタミンD欠乏と同じく健康のあらゆる面で危険になりうる状態です。

その他多くの検査と同様、血清フェリチンの「標準」と言われる範囲は全く最適な濃度ではありません。一部の検査会社では、鉄濃度200から300 ng/mLが女性と男性それぞれについて正常範囲としますが、これは最適な健康のためには高すぎます。実際にはこれほどあると病気になることはほぼ間違いなしと言えるでしょう。成人男性や閉経後女性の最適濃度は40~60 ng/mLの範囲です。20 ng/mL未満や80 ng/mLを超えないように維持しましょう。

健康な鉄濃度の維持は妊娠中にも非常に重要です。60~70 ng/mLもあると妊娠の結果がかんばしくない確率が高まります。しかし、妊娠中の鉄欠乏も同様に問題が多いです。臨床検査で鉄欠乏の判断基準としてよく使われるのは12~15 ng/mLです。

遊離鉄を調べるGGT検査

もう一つ行うべきテストとしてγグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)テストが有用です。GGTで肝臓の酵素を計測します。この検査から肝臓が損傷しているかわかるほか、過剰な遊離鉄のリスクを示すスクリーニングマーカーとしても使用でき、突然心不全死のリスクをよく示す指標でもあります。

女性にとって健康なGGTレベルは約9 U/L(1リットル当たり単位)です。しかし一般に女性のGGT検査で「正常な」最高値は、40~45 U/Lです。男性の場合、16 U/Lが最適ですが、一般的な検査会社による検査範囲が65~70 U/Lになることもあります。

過剰鉄の悪化を引き起こすもの

鉄過負荷の主な原因のうち二つを取り上げます:

1. 血色素症の遺伝子が一つまたは両方ともあること(軽度あるいは重度の形態であることを示す)。下のビデオで、マスタージョン博士はこれら二つの遺伝子マーカーについてまとめて説明しています。米国で推定1億人、3.5人のうち1人は血色素症の一つの遺伝子があります。

およそ100万人が両方の遺伝子変異体を持っており、これは肝臓病合併症になる遺伝子型と考えられます。しかし、診断により確定して適切な治療を行う前に、鉄の過負荷が生じた場合しか重大な問題になりません。

2. 不適切な鉄の排出。成人男性と閉経後の女性ともに毎月出血しないのでリスクが高く、この出血こそ、過剰な鉄を排出するための最適で最も効率的方法なのです。

鉄過剰のもう一つのよくある原因はアルコール消費であり、呑むと食事の中の鉄が吸収されやすくなるからです。例えば、ステーキにワインを飲むと、必要以上の鉄が吸収されやすくなります。鉄高濃度の別の潜在的原因には次のようなものがあります:

  • 鉄鍋や鉄フライパンでの調理。こうした鍋やフライパンで酸性の食物を調理すると、吸収される鉄濃度がさらに高くなる
  • 鉄添加加工食品
  • 鉄成分が多い井戸の水を飲む。この場合は鉄を沈殿させる物質か、逆浸透膜でろ過することが要です
  • マルチビタミンとミネラルのサプリメントをともに飲むと、これらは頻繁に鉄を含む

鉄過剰がとても危険なわけ

人体はミトコンドリアの中の電子伝達系によりアデノシン三リン酸(ATP)を生産するために、炭水化物と脂肪から電子を奪って酸素に付加することでエネルギーを生産しています。95 %の酸素は水に変換されます。しかし残りの0.5 %から5 %が反応性酸素種(ROS)になります。

鉄はミトコンドリア内膜で過酸化水素と反応します。これは細胞の有酸素呼吸の正常な部分です。しかし鉄が過剰にあると、過酸化物から過剰の水酸基フリーラジカルが発生する触媒となり、このフリーラジカルがミトコンドリアのDNAやミトコンドリアの電子伝達タンパク質、細胞膜を破壊します。

こうして、鉄過剰によって既往症がいずれも加速的に進行して、肝臓や心臓血管病関連の病理を発生させます。残念ながら、この反応の分子生物学を把握している医者がほとんどおらず、このため鉄過剰が見過ごされがちなのです。

不健康な量の正味炭水化物(総炭水化物から繊維質を控除)を食べると、鉄イオンが多いだけでも発生する水酸基フリーラジカルに加えさらに30 %から40 %多いROSが発生するので、主な燃料として炭水化物を代謝する状態ではこの状況はさらに悪化します。

残念ながら、この記事をお読みのたいていの人は炭水化物を主な燃料として燃やしています。何らかの慢性病があり、鉄濃度が高く、正味炭水化物が多い標準的な食生活をしておられる方は、鉄濃度を最適にし、ケトン食生活を行うと助けになります。

ROSは重要なシグナリング分子としても作用するため、鉄過剰だけでも生じる、あるいは高炭水化物食と合わせて生じるROSを解消するためにさらに多くの抗酸化物質を取り込んでください。それらはすべてが悪いわけではくありません。過剰に生産された時だけ、害を引き起こします。

最適な方法は、生じてからROSを鎮圧しようとするのではなく、多く発生しないようにすることです。最も簡単で効果的な方法の一つとして、健康的な脂肪が豊富でタンパク質がほどほど、正味炭水化物が少ない食生活を送ることです。特に鉄過剰の場合、健康な脂肪をよく食べればこうした害悪を減らせるでしょう。

鉄不足対策

鉄不足の方は以下の方法で鉄濃度を増やせます:

鉄が豊富な食品、すなわち、肝臓等のもつ、さらに草で育った赤肉、色の濃い七面鳥の肉、アサリ、ほうれん草、南瓜の種、キノア、ブロッコリ、ダークチョコレート(カカオ成分70 %以上)、海藻。

基本的に動物性食品から取れる鉄は吸収性がよく、植物系のものは生体利用能が低いです。鉄強化食品を避ける。こうした食品に含まれる鉄は無機質で、最適なものではまったくなく、実際には酸化ストレスが増え、胃腸に副作用を起こすこともあります。

ビタミンCを摂り込むと食品中の鉄の生体利用能が高まりやすくなります。鉄が豊富な食品とカルシウムが豊富な食品をいっしょに食べない。カルシウムが鉄と結合するので、吸収性が落ちます。

リポゾーム鉄サプリを飲む。子供向けマルチビタミンにも含まれる多くのマルチビタミンには硫酸鉄という鉄の一種があるので要注意。これには毒性があり、これが原因で発生しやすい問題が多くあります。最大の危険は急性過剰投与で、致死性の危険があります。安全な形態のサプリメントはカルボニル鉄です。

しかしカルボニル鉄も含めあらゆる鉄のサプリメントは子供の手の届かない所に保管することです。さらに、血色素症や血鉄症あるいは、鎌形赤血球貧血やタラッセミア(地中海貧血。ヘモグロビンの形状異常をきたす一種の遺伝性貧血症)がある人はいかなる鉄のサプリメントも避けるべきです。

鉄過剰対策

(ビデオは英語のみ)

鉄濃度が高すぎれば、最も簡単で最も効果的な方策は輸血することです。成人男子ならば、あなたの鉄レベルが正常ならば、年間2~3回献血することがよいでしょう。フェリチン濃度が200 ng/mL以上もあれば、より積極的な瀉血療法が推奨されます。

トランスフェリン飽和度検査を受けるのも賢明です。最適なのは飽和値が30 %から40 %であるべきです。これを超えており、フェリチン濃度が高ければ、残念ながら、鉄過剰状態であり、ミトコンドリアが損傷を受けています。心臓病及びがん等の慢性病リスクを下げたい限り、以上の必要な対策を行うべきです。

上のビデオでマスタージョン博士が説明しているように、鉄が多い食品を避けて高濃度鉄の管理を試みると、多くの貴重な栄養素も取れなくなるので、いくつもの有害な影響が出てきます。最適には、検査値が正常範囲になるまで年に二三回輸血することです。輸血ができない場合、医師から治療としての瀉血処方を受けることはできます。

輸血すると、通常は400 cc以上抜かれますが、多くの人には抵抗があるでしょう。これより少量の輸血を頻繁にするほうがほとんどの人にとっては輸血に耐えられる量でしょう。つまり、ご自身やお知り合いが輸血をするなら、数週間に一回約60 ccから 180 ccくらい輸血するほうがより賢い戦略であると思います。

Frontiers in Molecular Neuroscienceに掲載された最近のある研究によると、鉄制限食生活は「脳野別の脳内フェリチン濃度、ドーパミン代謝、細胞プリオンタンパク質に影響」します。こうした影響があるので、脳全体の健康と神経性疾患予防のために適切な量の鉄が重要なのです。

しかし、鉄濃度が高ければ、ビタミンCは鉄の吸収を促進するので、ビタミンCが多い食品と鉄が多い食品をいっしょに食べないほうがよいです。一方、カルシウムは鉄と結合し吸収を制限するので、カルシウムが豊富な食品を鉄が豊富な食品と食べ合わせると助かります。

しかし、フィチン酸塩やフィチン酸(IP6ともいう)を使って鉄吸収を阻害して鉄の錯体を排出するするのは避けたほうがよく、これは、亜鉛欠乏等他のミネラル欠乏にすぐなりやすいです。これよりずっと安全な代替策はクルクミンです。クルクミンは強力な鉄のキレート化剤として作用し、鉄が異常に多いとき有用なサプリメントです。