バクテリアが異常な細胞増殖をいかに拡散させるか

Fact Checked(事実確認)
バクテリア

早分かり -

  • フソバクテリウム・ヌクレアタムが大腸がんに関連していることが約9年前にわかり、今では直腸結腸がんやある種の乳がんの転移とも関連することがわかっています
  • よく存在する真菌は膵臓癌にも関連しており、その細菌叢を殺すとがんの増殖が遅くなります
  • 最大95 %のがんは代謝疾患の結果であり、この点でがん治療の焦点を化学療法から食生活の変更に転換すべきです
  • グルコースの制限、定期的なケト食、食事のタイミング、鉄濃度の正常化はミトコンドリアと代謝の健康状態を最適にするために私が優先する戦略のひとつです
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Dr. Mercolaより

がんと診断されると恐怖感と憤怒、不安、悲哀の強い感情を起こすことがあります。米国国立がん研究所の推計によると、2020年中に606,520人、一日換算で1,661人ががんで死ぬ見込みです。さらにがんの新症例数は(今年中に)1,806,590件になるとも推計されています。2020年中にがんと診断される人が驚くべき毎日4,949人に上ることになります。

乳がん、肺がん、前立腺がん、直腸結腸がんは最もよくあるがんです。2020年中に、前立腺がん、肺がん、直腸結腸がんで男性の全がん症例の43 %を占める見込みです。

女性に最も多いのは乳がん、肺がん、直腸結腸がんで、これらを合わせると新規診断数の50 %を占めると推計されます。世界全体の統計は同様に圧倒的な数値を示しています: 2018年に、1810万人ががんと宣告され、950万人ががんで死にました。この数は2040年までには急増すると専門家は予測しており、2950万人ががんと診断され、1640万人が何らかのがんで死ぬと見られています。

多くの出版物はがん死の90 %は転移によるものであるとしていますが、ある全米調査の主任らは固形腫瘍による転移での死亡比率が66.7 %であることを特定しました。

がんの転移に関与している一種類の細菌

昨年、三つの別個の研究チームがフソバクテリウム・ヌクレアタムが大腸がんの転移においてこれまで想像されていなかった能動的な機能をしていることを特定しました。最初の関連性は大腸腫瘍の組織からこのバクテリアのDNAが発見されたほぼ九年前に発見されました。

それ以来、他の科学者らは、腫瘍細胞内でこのバクテリアに感染すると、化学療法耐性があり、直腸結腸がんの転移といった、予後が乏しくなるリスクが高くなることを特定しました。

時間順に整理すると、最初の論文はフソバクテリウム・ヌクレアタムの直腸結腸がんの転移における機能を評価した科学者グループによるものでした。この研究では転移がある患者から得た組織では細菌が多数発見されました。

そのデータを基に、その細菌がオートファジーを統括して転移を制御しており、これを標的にすると、直腸結腸がん転移の予防と治療の戦略を開発するために利用可能であるという結論になりました。

二番目の研究は、細菌の存在により患者の予後が乏しくなることに関連するという前提から研究を開始しましたが、研究者らのねらいは、細菌が転移に関与するかの解明でした。その動物実験結果からは腫瘍感染が体内の移動を促進することがわかりました。具体的には、肺への転移が遺伝子調節の変化により誘発されることを特定しました。

3番目はある実験室での研究で、医者らがヒト大腸腫瘍の細胞を使用した結果、この細菌が直腸結腸細胞に侵入すると、炎症性サイトカイン IL-8とCXCL1の分泌を促すことを発見しました。両者とも転移の初段階である細胞移動の促進に関わっています。その事実から細胞シグナリングと移動の直接的および間接的変調がつきとめられました。

バクテリアはがんと闘うのを助けると考えられているのですが、実際には悪化させるわけです。生化学者ダニエル・スラデ氏はこれが「火に油を注ぐようなもの」と表現しています。

へブルー大学の微生物学者はフソバクテリウム・ヌクレアタムが検査した細胞の30 %から検出された、ある乳房腫瘍の研究から得られたのと同じ結果について伝えています。興味深いことに、この現象は表面に糖質分子を持つがん細胞に最も共通して観察されました。

動物モデルにおいてはこの感染は乳がんの増殖と転移を促すようです。微生物学者ギラド・バクラック氏はScientific Americanからのレポーターに、「データからしてこのフソバクテリアはがんの原因ではないが、進行を加速するようである」と説明しています。

がんには真菌も関与する

2011年に、ScienceBasedMedicine.orgのオズ博士から私を恥ずかしながら同氏が主催したショーに登場させていただきました。その理由の一つは、私がかつて、がんは一般的によくいる真菌により発生しうること、このため重曹で治療しうるという画期的仮説に関して公表したことがあったからでした。

この仮説の初期の提唱者二名、トゥッリオ・シモンチーニとマーク・サーカス博士は旧来の医学界に理解させようと試みましたが失敗し、その説を提唱したことで中傷を受け軽蔑し去られました。

その後、2019年10月、The New York Timesは名誉ある専門誌Natureに掲載されたある研究の結果を伝える記事を掲載しました。研究者によると:

「毒素症は大腸がんや肝臓がん等の悪性腫瘍の発がん性に伴っており、膵管腺癌(PDA)の発病に関与することが近年明らかになった。しかし、粘膜細菌叢(ミコビオーム)は腫瘍発生に関与しないことは明らかにならなかったた。

ここでは真菌が腸管内腔から膵臓へ移動すること、およびこの移動がPDA発病に関与することを示す。ヒトおよびマウスモデルにおいて、PDA腫瘍は、正常な膵臓組織より真菌が約3,000倍に増加するとを示す。」

具体的には、これは膵管腺癌組織に含まれる真菌共同体 — マラッセズィア — でした。同チームはこの粘膜細菌叢を殺すと保護効果があり、腫瘍の進行が遅くなることを発見しました。これらの腫瘍を真菌を使って動物モデルで再度増殖したところ、腫瘍増殖が加速しました。

少々の予防

がんの進行や転移における細菌と真菌の機能についての情報は重要ですが、少々の予防措置は常により大きな癒しの効果を生む価値があるものです。毎日私たちが行う小さいライフスタイルの選択の多くが健康全体には長期的に効果を及ぼします。

あなたの担当医が勧めると思われる予防措置の一つは直腸結腸がんのスクリーニングツールとしての腸内視鏡検査です。しかし、この措置を受ける前に全ての要因について考慮することは欠かせません。

処方なしでも自宅で始められる簡単な予防措置としてははミトコンドリアの健康状態を最適化することです。私がかつて過去の記事に詳しく取り上げたように、がんは代謝疾患であり、遺伝子が根本原因ではないので、ミトコンドリアが健康で機能する限り、がん確率は大きく減ります。

がんは遺伝子疾患であるというのが旧来の見解でした。しかし、1931年に悪性細胞の代謝について発見したことよりノーベル生理学賞だったか医学賞を授与されたオットー・ワーブルグ博士は別の見解を取ります。同氏が把握した事実は、がんが主にミトコンドリアに起きる細胞エネルギー代謝の異常により起きることでした。

当時、ミトコンドリアについてはよく把握されていませんでした。しかし科学者らは今や、これらの小さい発電所がいかにエネルギーを供給し、機能するかについてよく把握しています。2016年に、Mercola.comはトーマス・セイフリードボストン大学生物学教授にがん代謝とケト食生活分野の先端専門家そして研究者としてGame Changer Award(画期的研究者賞)を授けさせていただきました。

がんの起源は治療戦略を変えうる

欠陥のあるミトコンドリアががんの観察が可能な特徴の一つであるなら、この病気をいかに処置することができるでしょうか?私の見解では、様々な専門分野において敬意をよく受けている独立科学者らによる研究の同氏による編纂作業はこの科学分野における最大の貢献のひとつでした。

同氏はご自分の業績をまとめて、がんが代謝疾患であり、遺伝子変異によるものではないという理論の科学的根拠を確立しました。遺伝子変異はミトコンドリアの中のエネルギー代謝異常による帰結的影響であり、がん増殖の進行契機をなさないと同氏は考えます。

がんは遺伝子疾患であるという発想が治療研究の予算配分を決定し、がん全産業を推進しています。2018年、セイフリード博士はピーター・アッティア博士のインタビューに答えており、アッティア氏がご自分のサイトでポッドキャストとして掲載しました。そのインタビューで、セイフリード博士はがんのメカニズム、がん細胞の増殖する理由、旧来の医療が治療に関しては誤っている経緯について詳しく説明しています。

インタビューの終わりのほうで、セイフリード博士はがん治療を検討している人のために次のアドバイスをしています:

  • 生検は転移につながるので可能な限り避けること
  • 手術は有用であるが、代謝治療を実施する限りできるだけ延ばしたほうがよく、腫瘍が小さくなり、余白部分をより正確に定義できるようにしてから、容易に除去できるようにすること
  • 結局は腫瘍解消のために必要な免疫系に支障を通常きたす放射線治療と化学療法を避けること
  • より多くの人ががんによるより、がん治療により死亡していることを把握することが肝要であること

セイフリード博士はミトコンドリアの健康維持のためにケト食生活を勧めます。がん細胞を攻撃することに関してこの食生活による作用のメカニズムは明らかです。このメカニズムはワーブルグ博士による先駆的発見と細胞呼吸の性質および作用に基づいています。

代謝治療がいかにがんを予防し治療しうるか

セイフリード博士の研究は、がんの増殖と進行はグルコースやグルタミン等の発酵可能代謝生成物から、ケトン食生活を続けることにより形成されるケトン体を中心とする呼吸代謝生成物への、全身的転換を利用すると管理しうることを実証しました。

私の記事、「がんを新陳代謝疾患として処置すべき理由」の中でセイフリード博士の研究を取り上げています。同氏の研究ではこの転換により腫瘍による血管新生と炎症を削減すると同時に腫瘍の細胞死を促すことが発見されました。ケト食生活は、がん細胞が嫌気性(無酸素状態)発酵を好んでエネルギーを取得し、これが乳酸の過剰生産につながっている事実を活用します。

好気性(有酸素)呼吸はより効率的ですが、がん細胞は正常な細胞とは別の態様を示すものであり、酸素100 %の中に置いても大量の乳酸を生産し続けます。このためワーブルグ博士はがん細胞の呼吸系に欠陥があると結論に至りました。

この場合、呼吸系は生物の肺を指さず、細胞が酸素を処理する方法を意味します。推計では全がんの5 %から10 %が遺伝子変異または家系的リスク要因が原因で発生します。乳がんリスクを高くするBRCA1や卵巣がんリスクを高くするBRCA2はその例です。

しかし、セイフリード博士はミトコンドリアの呼吸系を損傷しない限り、これらの変異で必ずがんになるとは限らないことを注意しています。有用な教訓として、ミトコンドリア呼吸が健康なままなら、がんリスクは比較的低いです。

ではどんなライフスタイルがミトコンドリアを健康に維持できるでしょうか?主に、有毒な環境要因を避け、健康的なライフスタイル戦略を実施することでミトコンドリアの健康によい影響があります。

ミトコンドリアの健康を最適化しやすい方法としては私のリスト上位6つの戦略があります。これらには定期的ケト食生活、食事のタイミング、鉄濃度の正常化、特定の栄養補助食品を含みます。