Dr. Mercolaより
トラビス・クリストファーソンは代謝の健康最適化に関して三つの本を書きました。三番目の最新作は「Ketones, The Fourth Fuel: Warburg to Krebs to Veech, the 250 Year Journey to Find the Fountain of Youth」(ケトン、第四の燃料:ワーブルクからクレプスさらにヴィーチまで、若さの泉を発見するまでの250年のジャーニー)といいます。
興味深いのは、代謝面の健康状態を最適化するのがCOVID-19に感染しても軽くて済ませるようにできる効果的な方法であるようです。その理由は柔軟な代謝が可能になるとインスリン抵抗性が発生しないからです。インスリン抵抗性と糖尿病は病気になる重要なリスク要因です。
ケトン食は1920年代には小児てんかんの標準的ケアでしたが、30年代に抗てんかん薬が登場すると棚上げされてそのうち忘れ去られました。絶食も同じ運命を辿りました。クリストファーソンが説明しているように、治療のための絶食は60年代には主流でしたが、この戦略のメリットは低脂肪運動が定着してしまったので医学史から忘れ去られました。
「[ケトン食]は2000年までに今日見られるような注目すべき再興を果たしており、ケトンが本質的に第四の燃料であること、想像していなかったほどの治療効果があることが認識されるようになりました」と、クリストファーソンは書いています。」
今日、インスリン抵抗性が疫病的に蔓延し、これに関連する糖尿病、心臓病、ウィルス感染にしやすくなった事実等健康への悪影響を見るとき、ケトン食が今以上に関連性が深いときはありませんでした。
四つの燃料とは炭水化物、脂肪、タンパク質、ケトンです。炭水化物と脂肪が主な燃料源です。タンパク質は通常体を作るための材料として使用されますが、分解され燃料としても使用されます。緊急時の飢餓対策燃料以外のことのためにタンパク質は貯蔵されません。
タンパク質は糖新生経路により変換されてグルコースに戻ります。絶食中、タンパク質は代替燃料として使用されますが、最適な燃料はケトンです。クリストファーソンは炭水化物、脂肪、ケトンの代謝の相違を次のように説明しています:
「ある理由により、生命はグルコースを主な燃料として選択しました。炭水化物は全て同様の解糖経路に入り、10個の酵素処理段階を経て代謝されるか処理されてアセチルCoAになり、これがクレプス回路に入ります。次にここから基質が分離し電子伝達系に入ってエネルギーを発生します。
脂肪の燃焼方法はインスリンに非常に依存します。したがって、炭水化物をたくさん食べると、一日中インスリンが分泌し続け、基本的に脂肪処理を停止し、脂質発生が活発になり、つまり脂肪が溜まり、これが全てインスリンを巡って発生しています。
従って、インスリンが多いとき、ベータ酸化という脂肪の代謝が止まります。絶食中やケトン食をしているときにインスリンが少ないと、ベータ酸化が開始されます。つまり、脂肪が投入され、処理されます。脂肪の特徴的なこととしては、あまり取り上げられていない反面、非常にエネルギーレベルが高いことです。この燃料源にはたいへん多くの燃料が潜んでいます。
つまり、肉体はミトコンドリアを破裂させずに処理する方法が実際にあることが必須なわけです。その処理方法とは、電子伝達系複合体IIで脂肪の一部を処理し、この過程により脂肪内のエネルギーが調整されて、ミトコンドリアを破裂させずに処理されます。
次にアセチルCoAがクレプス回路に入り、通常の代謝を経ます。重要なポイントは、炭水化物が多すぎると脂肪が代謝されなくなることです。しかしケトーシスになると、脂肪が代謝され始め、脂肪が代謝されるときのベータ酸化が発生すると、ケトンが発生します。
従って、低インスリンになると脂肪細胞(アジポーズ細胞)は蓄積されている体脂肪トリグリセリドを放出し始め、これが細胞に入る循環に入り、次にベータ酸化が始まります。肝臓の中ではここがケトーシスの中心的器官で、肝細胞はケトン体を作る製造ラインです。
ベータ酸化が増大するにともない、クレプス回路の最終代謝生成物オキサロアセテートが消費されてグルコースになりますが、これは身体がグルコースの基本的レベルを維持する必要があるからです。アセチルCoAはクレプス回路の最終基質とは結合できず、肝細胞内に蓄積されます。
次にこうしたアセチルCoAの大量の蓄積を待機している酵素があります。この酵素がアセト酢酸塩に輸送し、これが次にベータヒドロキシ酪酸というケトンに変換され、第四の燃料として血流に入り、この燃料こそ優先すべき燃料であり、非常に効率的な燃料です。したがって、これこそ三つの燃料源の代謝面の相違です。」
アメリカ的今日の標準食ではほとんどの人がこうした脂肪燃焼とケトーシスの状態に到達できないことは問題です。炭水化物を常時取り込み、こうしたインスリンが多い状態で脂肪を代謝することができません。そのうち代謝機構が消耗していき、インスリン抵抗性になり、肥っていきます。
クリストファーソンが説明するように、グルコースは非常に硬直的な平面分子であり、これが血流に入ると、内皮細胞や神経、その他諸々の組成を損傷します。このため、身体はこれを速く除去する必要があります。インスリンは細胞にグルコースを分解するようにシグナルを送り、血中のグルコース濃度を下げます。
次に細胞にシグナルを送って解糖の最終段階つまりピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体を作動し、グルコースは処理されます。これらの二つの「機構」が消耗すると、インスリン抵抗性になります。つまり細胞はインスリンに反応しなくなり、その結果血糖が高いままになります。
さらに代謝される燃料が減り、このため全ての代謝プロセスが逓減していきます。これがインスリン抵抗性につながります。クレプス回路に入るグルコースが減り、ATPの生産が遅くなります。例えば、身体が抗酸化物質と神経伝達物質を生産する効率が減ります。ケトン代謝のとてもよい点は、以上の経路を全て通らないことです。インスリン経路に依存しません。
つまり、ケトンを生成しているとき、血中ケトン濃度が高くなり、ケトンはモデルとなるカルボン酸輸送タンパク質を通って細胞に入ります。インスリンが増えなくても、細胞は効率的に燃料を得られます。
ケトンはさらにピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体が不要です。ケトンはクレプス回路に直行します。したがって、それまで逓減してきた代謝経路が突然復活し、エネルギー、抗酸化物質、その他の物を生成できるようになります。脳も最適な機能のための必要な燃料を得られます。
ケトンにはいくつものメリットがあります。最初に、熱力学的、代謝的に効率性が高く、グルコースよりきれいな燃料であり、フリーラジカルによる損傷が少なく、体内の炎症が減ります。クリストファーソンによると:
「ベータヒドロキシ酪酸は代謝のために卓越した燃料です。熱力学的に二炭素単位当たりグルコースより多くのエネルギーがあります。従って、これがよい段取りとなります。ベータヒドロキシ酪酸が代謝されると、複合体Iと補酵素Qペアの間での電子伝達系のギャップが広まります。
電子伝達系は、燃料を代謝するとき、電子が分離され、電子伝達系の複合体を通過します。この過程で、陽子がミトコンドリア内の膜空間に入ります。陽子勾配がATPを生成します。
ベータヒドロキシ酪酸はこのギャップを広げます。さらに多くのエネルギーを取得できます。ここで行われる一つのことが、代謝をとても高めることです。
ヴィーチとクレプスがこれら四つの代謝センター、補酵素共役結合を研究していたとき、ATPがその一つで、これが全ての代謝を促進しますが、彼らは、これらの全ヌクレオチド補酵素の潜在エネルギーが増える方法があれば、治療的に代謝のための大きなメリットになりうることに気づきました。
彼らはこのための方法を知りませんでした。ビーチがカヒルと組みこの点について研究を開始したとき、ベータヒドロキシがこの機能をすることを特定しました。代謝的にいうと、この物質にはATP、NADP、NADPH、アセチルCoAのエネルギー量を増やす能力が多くつまっています。
次に、例えば内部の抗酸化物質等の生成といった機能を見ると、これはNADPHの電荷に依存します。ケトーシスにおいては、この電荷が急増します。したがって、フリーラジカルをはるかによく処理できます。」
NADPHのコンセプトはとても重要でありながら、あまり評価されていません。特に内生的な細胞内抗酸化物質の補充に関していうと、NAD+と同じくらい重要です。クリストファーソンによると、細胞の抗酸化状態を判断する唯一の基準は、NADPHの酸化還元比であり、この酸化還元比を変える唯一の既知の方法はベータヒドロキシ酪酸の代謝です。
抗酸化物質を取り込めばフリーラジカルを減らせるという単純な思いが蔓延していますが、これは実証されたことがありません。クリストファーソンによると:
「クレプスはこの点に関してリヌス・ポーリングに伝えました:『ビタミンCに関してご自身が言っていることをご自身が把握できていない。』この点に関して本の中で説明しようとしているのは、抗酸化物質は全てNADPHによって再処理される必要があります。つまり、NADPH比こそ抗酸化物質の機序を決定要因です。
抗酸化物質を食べるとは、食料品店を全て持っているのに似ています。レジが10個あるとすると、10人のレジ担当者がいます。いかに客が早く支払を済ませられるかは、10人の担当者にかかっています。担当者を20人にしても効果はありません。いかに多くの客を処理できるかが10人のレジ担当者にかかっています。
抗酸化物質についても同じです。抗酸化物質を食べて細胞内抗酸化物質の備蓄を増やせても、速く再処理されるようになるわけではありません。つまり抗酸化物質の機能については誤解が多いです。ケトーシスに切り替えると、抗酸化物質の生産に関して治療的に深淵な効果があります。」
クリストファーソンは、マウスに放射線を照射後、ケトンエステルを投与すると、普通の炭水化物餌を与えたマウスより染色体損傷が50 %削減されることを示した研究を取り上げています。X線撮影や飛行機で飛ぶときはケトンエステルを取り込むのが勧められると同氏は考えます。ケトンエステルは老化の普通の荒廃を防止するにも有用です。
ベータヒドロキシ酪酸は老化防止のために最も重要な経路の一つと考えらえるFOXO3aも活性化します。FOXO3aはその他何百もの遺伝子の発現を変化させます。
これらの遺伝子の中にはカタラーゼやスーパーオキシドディスムターゼ等の体内の抗酸化物質生産を調整するものがあります。これらはNADPHによる再処理が必須であるような従来知られている抗酸化物質とは異なります。これらの物質はスーパーオキシドが過酸化水素次に水に変換される従来のケトン分解により機能します。
ケトン食を常に続けるのがよいと思っている人は多いですが、こうしたアドバイスには従わないほうがよいです。低炭水化物食を常時続けるのはむしろはるかに効果がないと思います。
グルコースはインスリンを増やし、常時インスリンが多い状態である限り、インスリンはひどい結果を生じます。しかし、修復のためにIGF-1やこれら全ての抗生経路を開始させる同化ホルモンでもあります。
柔軟な代謝が可能になり、インスリン感度がよくなるまでは低炭水化物食を継続するのが重要で、実に肥りすぎの人にとって、これには数か月や数年かかりますが、その状態になってからは炭水化物を(運動量に応じて)増やすほうがよく、一週間に一回や二回は一日100 gあるいは150 gまで増やすことができ、特に運動前後はこうしてもよいです。
脂肪とグルコースの代謝切り替えを円滑にできるようになりたいので、こうすれば柔軟な代謝が可能になります。すでにご説明したように、グルコースは利用可能であり続けるべき普遍的な燃料です。ただし常時これを消費する必要がないということです。
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