世界的研究で判明した大気汚染とうつ病や自殺との相関性

Fact Checked(事実確認)
大気-汚染

早分かり -

  • 16ヵ国のデータを分析した研究者らは、PM2.5の大気汚染とうつ病、PM10と自殺の相関性を特定しました
  • 汚染限界値を減らせば肥満、がん、心臓病、早死等の健康上の異常に深い効果があるようです
  • 中国から得られたデータはPM2.5暴露が生徒の数学や語学の能力を一年間の教育課程が無駄になるほど減少させることを示しています。その影響は酸化ストレス、神経炎症、神経変性に関連しているようです
  • ラッシュアワーの間は屋外運動をせず、大気汚染指数がよくないときは屋外にいる時間を最小限にし、屋内大気汚染への暴露を減らす方策についても検討しましょう
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Dr. Mercolaより

大気汚染に関連するリスクについて考えるとき、たいていの人はまず呼吸器の異常が思い浮かびます。2016年には実際に大気汚染が呼吸器感染症の原因で5歳以下の幼児543,000人の死亡につながっていました。しかし、呼吸器系だけが大気汚染の影響を受けるのではなりません。

世界保健機関は先端の専門家数十人による公表研究に関して報告しており、そこからは子供の健康リスクの一部が大気汚染によることが明らかにされていました。これには肥満や喘息、小児がん、幼児の死亡、重篤な出産異常が挙げられます。さらに出生前の暴露が老後の心臓血管病や肺病リスク増加につながる根拠も示されています。

2017年の国際会議で発表されたアメリカ胸郭学会によるある研究は、大気汚染が睡眠の質も悪くすることを示していました。睡眠阻害や睡眠品質の低さと関連するいくつもの健康への影響があります。

これには事故や心臓血管病、高血圧、がん、骨粗しょう症のリスク増が挙げられます。研究者らはさらに、睡眠の質がよくなるとうつ病の症状が減ることを特定した睡眠とうつ病の双方向性の相関性を調べました。

世界規模の研究が大気汚染と自殺やうつ病との相関性を実証

大気汚染はPM(粒子状物質)サイズで計測します。2.5 μg (PM2.5)より小さい微粒子物質は屋外大気汚染の優れる指標です。PM2.5が多くの研究の焦点です。

これらの粒子は肺まで吸入され、血流に吸収されるほど小さいので重大です。体内に入ると脳を含むどの器官系統にも蓄積します。PM2.5への急激な暴露が不安や自殺未遂の子供による精神科の救急処置が増加していることと相関性があることが近年のある研究からわかりました。

近年の研究についてのケンブリッジ大学のチームによるメタ分析は、子供のPM2.5への暴露増加が19%増のうつ病、さらに若干増の自殺につながることを特定しました。この分析は14本の研究と被験者684,859人のデータを調べ、PM10はうつ病や自殺と相関性がなく、これでは粒子が大きすぎて血流に侵入して脳に影響しないことがわかりました。

しかし、別の分析で、16ヵ国のデータを調べた研究者らはPM2.5とPM10が増えるほど、うつ病の増加や自殺者数増加と相関性があることを特定しました。

この系統的な研究とメタ分析はEnvironmental Health Perspectivesの2019年12月号に掲載されています。研究の執筆者の一人ロンドン大学カレッジのイソベル・ブレトウェートさんが研究結果について注釈しています:

「大気汚染が心臓病から肺病、脳卒中、認知症リスク増加まで含むいくつもの肉体的健康の危険すあり、健康に悪いことはすでに周知である。本研究において、大気汚染が私たちの精神衛生にかなり大きな害悪の原因であり、私たちが呼吸している空気の清浄化がますます急務となっている。

対象に含めた研究全体から長期的大気汚染への暴露とうつ病の相関性が、その他の要因の調整後でも高いままであることが判明しており、整合性の高い結果を特定した。この関連性は全原因死因等の粒子状物質によるいくつかの肉体的健康への影響について特定されたものとほぼ同程度であると見られる。」

EUの公害限度に準拠すると世界的に効果あり

これらの研究ではPM10粒子状物質への暴露と自殺数の相関性も報告されています。研究者らはこのリスクはPM10が少ない期間よりも三日間多かった後に大幅に増加することを特定しました。

これらの研究で、天気の変動や曜日等の交絡要因は自殺リスクの短期的変動と相関性がなく、社会経済的要因あるいは近隣の環境も関連性がないことがわかっています。PM10と自殺の相関性のほうがうつ病との相関性より高いことがわかありました。別の研究の執筆者ジョセフ・ヘイズさん:

「この研究結果は今年公表された他の研究と整合的であり、若者やその他の精神衛生の異常につながっていることが判明した。この相関性に因果関係を示すとはまだ断定できないけれども、大気汚染だけでも重篤な精神衛生の異常をきたすリスクが高くなることはおそらく確かである。

大気汚染削減のために行える多くのことは他のしかたでも精神衛生を改善しうるので、ドライブする代わりにサイクリングやウォーキングする、公園を頻繁に歩く等が可能であるはずで、こうすれば活発な移動や都市の緑地を促進しやすくなる。」

その科学者らはこの相関性が因果関係を示すとすれば、PM 2.5への暴露を44 µg/m3から25 µg/m3に削減できれば、うつ病の全体的リスクは15 %削減しうるという仮説を立てました。PM 2.5の世界的濃度はデリーでは114 µg/m3に対してカナダのオタワで6 µg/m3までの範囲に及んでいます。

イギリス国内で研究者らは平均が12.8 µg/m3であることを特定しました。WHOは限界値10 µg/m3を推奨しますが、このレベルでうつ病のリスクが約2.5 %下がる可能性があることを研究者らは推計していました。WHOの目標値は10 µg/m3ですが、EUのガイドライン25 µg/m3という緩い目標値を達成できるだけでも精神衛生や肉体の健康に世界的によい効果があるはずです。ブレトウェートさんは次のように説明しています:

「汚染大気内の最も小さい粒子状物質は血流と鼻を通して脳に至ること、大気汚染が[脳]炎症、神経細胞の損傷、ストレスホルモンの分泌変動に影響すること、このため精神的健康が悪くなることをすでに把握した。」

大気汚染に関連する高齢者の早死

次に影響を受けやすいのは高齢者です。ハーバードの研究者らが2017年に公表した研究で、PM 2.5とオゾンへの長期的暴露により早死リスクが高くなることを特定したと説明しています。この相関性は大気汚染レベルがEPAによる国家環境空気品質基準未満でも確認されました。

PM 2.5レベルを1 µg/m3だけでも減らせば毎年12,000人の命が救われると推計されていました。研究者らは7年間を通して65歳以上のアメリカ人6000万人のメディケア申請統計を使いました。研究の知見の根拠となる対象者の数が非常に多かったので、研究者らはその研究を「対象人口の規模からしていまだかつてなかった統計的有意性がある研究」としています。

公害がIQを低下させ、期待余命を短くする

想像がつくように、PM2.5は気分や心臓血管系に影響するだけではりません。中国で回収されたデータから、語学能力や数学能力は一年分の教育課程を無駄にするほど各自に悪影響があることを明らかに示します。

香港技術工科大学のデレック・ホー博士によると、その研究結果は同氏の研究結果とほぼ同じであるとしています。大気汚染の認知力の影響は重要であり、「大気汚染が人間の酸化ストレスや神経炎症、神経変性と相関性がありうる」ので実際に発生しうると同氏は考えます。

大気汚染への暴露が原因で早死にする人の推定数は以前の推計値のほぼ二倍あります。この新たなデータは2015年に大気汚染により880万人が早死にしていることを示しています。比較までに取り上げると、WHOでは喫煙が原因の早死人数が年間700万と推計しており、これは大気汚染によって死ぬ人の数より少ないです。

大気汚染暴露を制限する注意が必要

寿命を縮め、老化に伴い自律的に生活できなくするおそれがある大気汚染への暴露と相関性がある肉体的、精神的健康のリスクは大きいです。自宅の中でも屋外でも公害への暴露を制限するよう注意するのが賢いです。

  • ラッシュアワーの間屋外運動をしない
  • 幹線高速道路沿いでは自転車に乗ったりランニングしない
  • 居住地の空気質指数(AQI)に注意する
  • 渋滞中は内規循環モードで車内の暖房やエアコンを使用する
  • 新車の場合特に定期的に車内の空気を入れ替えるプラスチックやカーペット、溶剤、オーディオ機器は車内の毒性化学物質の混合を促します。詳しい情報は、「新車の匂には何がある?」をご参照ください

屋内の待機汚染も屋外で吸い込むPM2.5やPM10と同じく危険です。エネルギー支出を抑えるため、新しい住宅はますます気密にできており、空気があまり入れ替わりません。暴露の削減戦略を以下にご説明します:

高効率粒子状物質エアフィルター(HEPA)を暖炉やエアコンに設置する。

HEPAフィルターの掃除機で定期的にきれいにする。標準のバッグやバッグレスの掃除機では屋内空気をかえって汚染します。「HEPA同等」フィルターがあるという売り込みの安価なノックオフ型に気を付けましょう。本物を購入しましょう。

無毒な掃除用品(重曹、過酸化水素水、酢等)やより安全なパーソナルケア製品に切り替える。数千種類の化学物質を放出するエアロゾルや市販のエアリフレッシャー、アロマキャンドルを使用しない。「家庭用商品で死ぬ?」に挙がっている戦略で毒素負荷を減らしやすくなります。

屋内の植物は屋内空気を著しくよくします。ヒントやガイドラインは「大気汚染をなくす10種類の屋内植物」をご参照ください。

使用後に空気中に浮遊しているのでパウダーを使用しない。多くは粒子が小さいのでアレルギー性であり、呼吸器の異常につながります。

有毒な粒子を室内に入れないため、ドア際で履物を脱ぐ。

化学物質が拡散しやすいようにドライクリーニングから持ち帰った衣類は一日から二日屋外に吊るしておく。

喫煙や電子タバコを使用しない。

燃焼器具が正しく喚起されるようにする。

屋内やガレージに塗料、接着剤、溶剤、その他の有毒薬品を保管しない。

加熱により毒素を放出するのでノンスティック調理器具を使用しない。

一日に15分でもよいので窓を開けて空気を入れ替え、自分が呼吸する空気の質をよくする。アティックファンならエアコン費用が下がり、屋外の新鮮な空気を取り込めます。

光触媒酸化(PCO)を使用している高品質の空気浄化器は現在利用できる技術のなかで最も優れるものです。PCOは単に空気をろ過するのではなく、紫外線で空気を清浄にしますPCOは汚染物質を無毒の物質に転換します。屋内で使うのに加え、ポータブル空気浄化器なら仕事や旅行に持って出かけられます。

認証機関により塩素除去検査に合格したNSF/ANSI 177グレードのウォーターフィルターを使い風呂やシャワーに入り、気中塩素を減らしましょう。

肺がんにつながる無色ガスであるラドンが存在しないか検査する。このガスは建物に建設中封止されていることがあり、時間の経過とともに屋内空気全体に漏れ出して来ることがあります。ラドン検査キットを使うと、安く簡単にリスクを知ることができます。