ご自身もおそらくコリンが欠乏しているでしょう

Fact Checked(事実確認)
コリン

早分かり -

  • 食事ガイドライン顧問委員会(DGAC)は2020年の研究の中でアメリカ人のほぼすべてにコリンが欠乏していることを特定しました
  • コリンは一生、発育のために必須であり、認知、記憶、集中、体力、代謝のために機能しています
  • コリンの欠乏は非アルコール性脂肪肝の発生や筋肉損傷の原因です
  • 妊婦や授乳中の女性は発育する胎児のために必要量が増えているのでコリン欠乏リスクが高いです
  • ビーフレバーや玉子の黄身には最も豊富にコリンが含まれています
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Dr. Mercolaより

2020年7月15日に食事ガイドライン顧問委員会(DGAC)は2020年のレポートを公表しました。これはアメリカ人の栄養状態と健康状態についての独立的科学研究で、懸念すべき事実が挙がっています: ほとんどすべてのアメリカ人は必須栄養素ではあるけれどもほとんど議論の対象になっていないコリンが不足しています。

コリンと葉酸塩の研究で国際的に定評が高い国家資格栄養士マリー・コーディル博士によると、このレポートに報告されている最も警鐘を鳴らすべき事実とは、コリンを余計に摂ったほうがメリットを受けられるはずの人たち — 妊婦と授乳中、乳幼児、子供 — に特に不足していることです。

妊婦の場合、コリン欠乏は胎児の神経管欠陥リスクの増大に関連しています。一般人口において、コリンが不足すると非アルコール性脂肪肝や筋肉損傷につながりやすいです。

コリンはどんな機能をするのでしょうか?

コリンはよくビタミンB群に含まれて扱われますが、技術的にはビタミンではありません。むしろビタミンに似た栄養素です。コリンは一生を通して最適な健康状態を維持するのに必須です。健康的な胎児の発育、認知力と記憶力の維持、体力アップ、健康状態の改善、健康な肝臓の維持を助けます。

脳や神経系は筋肉の制御および気分や記憶の調節を補助する適量のコリンが必要です。コリンは代謝にも関わっています。コリンには次のような機能もあります:

健康な胎児の発生促進 — コリンは神経管の適切な閉鎖、脳の発達、健康な視力のために必須です。研究によると、コリンを十分にとっている母親は子の脳の海馬(記憶の中枢)の発達をよくするので子は一生記憶力がよくなります。コリン欠乏はさらに、早産や出生児の体重不足、子癇前症のリスクも高くなります。

心臓血管疾患リスクの削減を助ける — ARYA Atherosclerosis誌に掲載されたある研究によると、コリンはホモシステインをメチオニンに転換することで心臓血管疾患の予防に寄与することがわかっています。ホモシステインは血中で増えると心臓病や脳卒中リスクが高くなるアミノ酸です。

リン脂質の合成、とりわけよく知られているのがホスファチジルコリン、通称レシチンであり、この成分は細胞膜の40 %~50 %、リポタンパク質及び胆汁に含まれるリン脂質の70 %~95 %を成します。

神経系の健康増進 — コリンは健康な筋肉、心臓、記憶力に係る神経伝達物質アセチルコリンを作るために必須です。

細胞シグナリングの強化、これは細胞シグナリング化合物を生産することによる。

脂肪の輸送及び代謝 — コリンは肝臓からコレステロールを運び出すために必須であり、コリン欠乏は過剰な脂肪及びコレステロールの蓄積につながるようです。

DNA合成の調節において、葉酸塩やB12等他のビタミンと並びこの合成プロセスを補助します。

認知力の改善 — フラミングハム・オフスプリングの男女住民を対象に行ったある研究で、コリンを食事から豊富に摂ると認知力が高くなるという関係が発見されました。1,391人の男女グループにおいて認知力はコリンをより多く消費した人ほど高くなり、栄養がいかに脳の老化に違いを生むかについての根拠をさらに強めました。

特定の精神異常を管理しやすくなる — 研究によると、コリンが不足すると不安レベルが高くなることが示されています。この栄養素は急速交代型躁うつ病(双極性障害)の治療にも利用されてきました。Biological Psychiatry誌に掲載されたある研究は、コリンのサプリメントが躁うつ病の人の偏執性と気分変動の症状を削減することが示しています。

メチレーション反応への影響

健康なミトコンドリア機能の補助

コリン欠乏にともなう問題

食事からコリンが十分に摂れていないと、さまざまな健康への悪影響が出るコリン欠乏になってしまうことがあります。コリンは脂肪の代謝に必要なので、これが不足すると肝臓に脂肪が蓄積しすぎます。コリン欠乏は肝臓の損傷や筋肉損傷にもつながります。

コリン欠乏は妊婦と授乳中の母親においてもより懸念が多い事態です。コリンは発生中の胎児の適切な脳の発達のために必須です。さらに妊娠中の適切なホモシステイン濃度の維持にも必要です。

American Journal of Epidemiologyに掲載されたある研究によると、妊婦が一日に 300 mg より少ないコリンを消費していると、一日に 500 mg 消費する妊婦より新生児の神経管欠陥リスクが高いことが示されています。

コリンは胎児に適量を供給するために母体の血液から摂り込まれるので、妊婦と授乳中の女性はコリンの必要量が高いのですが、5 %の妊婦や授乳中の人しか十分に摂れていないことがある研究で判明しています。妊婦と授乳中の女性に加え、以下に挙げるのがコリン欠乏リスクが特に高い人たちです:

  • 耐久スポーツ選手 — マラソンやトライアスロン等の耐久運動はコリンを枯渇させます。こうしたストレスが高い運動の前にコリンを補完すると血中コリン濃度が下がりすぎないようになることが研究からわかっています。
  • アルコールを多く飲む人 — 過度のアルコール消費はコリン欠乏リスクが高まりつつさらにコリン需要が高まります。
  • 閉経後の女性 — 閉経後の女性にはエストロゲン濃度が低く、コリン不足の食生活に応答して器官の機能障害リスクが高くなります。
  • ベジタリアンや厳格な菜食主義者(ベーガン) — ビーフレバーや玉子、オキアミ油などの動物性食品は食事から摂れるコリンが最も豊富にあります。ベジタリアンやベーガンはこうしたコリンが豊富な食品の一部またはすべてを全く食べず食生活を制約されているので、食事のみからこの栄養素を適量摂り込むことが困難になります。

必要なコリンの量はどれほどでしょうか?

肝臓は若干のコリンを生産しますが、健康のために十分な量ではなく、コリン欠乏の悪影響を防止することはできません。このため食事から適量を摂り込まなければなりません。

コリンの必要量は年齢や性別、妊娠中か授乳中かによって異なります。国家衛生研究所による一般的なグループ別必要量:

年齢 妊婦 授乳中

0~6ヶ月

125 mg/日

125 mg/日

7~12ヶ月

150 mg/日

150 mg/日

1歳から3歳

200 mg/日

200 mg/日

4歳から8歳

250 mg/日

250 mg/日

9歳から13歳

375 mg/日

375 mg/日

14歳から18歳

550 mg/日

400 mg/日

450 mg/日

550 mg/日

19歳以上

550 mg/日

425 mg/日

450 mg/日

550 mg/日

しかし、コリンの必要量が多くなるような遺伝子多型を持つ人の場合や特定の民族、人種はコリン不足になりやすいことを覚えておいてください。クリス・マスタージョン栄養学博士によると、(概して健康な)飽和脂肪が多い食生活もコリン需要を高くします。

コリンをさらに摂り込む方法

草で育ったビーフレバーは100 g当たりコリン430 mgと最も豊富に含みます。しかし二番目にコリンが豊富な玉子ほどアメリカ人の食卓ではビーフレバーは定番ではありません。玉子一個にを50 gとすると、コリンが169 mg含まれます。

しかし、注意すべき点があります: コリンの大部分あるいは139 mgは黄身に含まれます。玉子の黄身はレシチンというコリンの前駆物質である脂肪酸も豊富です。玉子の白身のみ食べるとよいという時代遅れの全く誤ったアドバイスにいまだに従っている人は、玉子の栄養分の大部分を摂れないでいることになります。

オキアミ油はオキアミから取れますが、これは主に鯨やペンギンその他の海生動物が食べる甲殻類で、コリンの豊富な食材でもあります。2011年、Lipids誌に掲載されたある研究によると、オキアミ油には 69 種類のコリン含有リン脂質が存在します。

これらのリン脂質のうち 60 種類はホスファチジルコリン類で、これが肝臓病(肝炎やアルコール依存症の人の肝硬変を含む)の予防、消化管炎症の軽減、潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群等の炎症性異常に関連する症状の緩和効果があります。その他のコリンが豊富な食材:

草で育てた牛のレバー

有機の放し飼い鶏

タイセイヨウダラ

アラスカサーモン

小豆

キノア

芽キャベツ

ブロッコリ

椎茸

カリフラワー

DGACによるとほとんどすべてのマルチビタミンサプリメントにはコリンが十分含まれていません。コリンのみのサプリメントは見つかりませんが、健康的な食生活によって必要量を取るのがベストです。