睡眠不足が続くと脳は自食し始める

Fact Checked(事実確認)
慢性 睡眠

早分かり -

  • 睡眠遮断は脳の浄化と再生に関わっている星状細胞の異常活性につながります
  • 星状細胞の機能が異常になると、健康な脳のシナプスを浸食して破壊し、アルツハイマー病やその他の神経変性疾患のリスクが高くなります
  • 一貫した睡眠スケジュールは脳の健康を維持し、その他の慢性的健康の問題を防止するために重要です
  • 必要な正確な睡眠量は個人別に年齢、全体的健康状態により異なりますが、成人の場合は原則的には概して7時間から9時間がよい時間です
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Dr. Mercolaより

ヘルシーなライフスタイルのために規則正しい睡眠が必須であることはすでにお気づきだとは思いますが、十分に寝ていないと脳が自食始めることはご存じでしたか?

ここで自食といっても字義通りのことを言っているのではなく、イタリアのマルケ技術工科大学のある研究が、脳内の一種のグリア細胞であり通常は不要な神経接続を廃棄する働きをする星状細胞が、慢性睡眠遮断への応答として健康的な神経シナプスを分解し始めることを示しました。

その研究ではマウスをよく休息(6~8時間睡眠)、自発的に目が覚める(周期的に目が覚める)、睡眠遮断(8時間追加的に目を覚まし続けさせる)、慢性睡眠遮断(5日間寝かさない)の4つのグループに分けました。

次に4群ごとの星状細胞活性を観察しました。よく休息したマウスでは、脳シナプスの5.7 %に星状細胞の活性が見られました。自発的に目が覚めるグループでは若干増えて7.3 %になりました。睡眠遮断グループと慢性睡眠遮断の場合は、この数値がそれぞれ8.4 %と13.5 %とさらに増加しました。

脳の正常な機能のし方

こうした星状細胞活性の増加が意味することを把握するには、まず、脳の正常な機能のし方を理解する必要があります。身体と脳は常に細胞浄化しています。脳内には老朽化したまたは損傷した細胞やシナプスを除去するグリア細胞が二種類存在します。

小膠細胞(微小グリア細胞)は食作用というプロセスを開始し、脳から残骸、病原体、死んだ細胞を廃棄します。星状細胞は構造的支持、表面の絶縁、炎症や負傷時の脳保護を担う支持細胞です。これらは、睡眠中の修復や復元を助け、翌朝一日の準備が整うようになるための補完的機能です。正常な時はこれ自体よいプロセスです。

しかし寝不足すると、星状細胞の活性が増し、小膠細胞に似た挙動を実際に示し始めるようになり、廃棄物を食し、過度のクレンジングをし始めます。この生理学的プロセスを星状細胞の食作用といいます。

この作用が始まると、死んだり損傷した細胞のみを標的にすることを超えて、星状細胞は健康なシナプスも食し、破壊し始めます。時が経つと、この現象がアルツハイマー病等の慢性脳病やパーキンソン病等その他の形態の神経変性につながります。

睡眠遮断に伴うその他の健康の問題

これ自体大きな問題ですが、星状細胞の異常活性と脳シナプスの破壊だけが慢性睡眠遮断に関連する問題ではありませんじゅうぶんよい質の睡眠がとれていないと、以下に挙げるようないくつかの急性や慢性の症状および病気にもつながることがあります:

注意力が散漫になり反応時間が長くなることによる事故のリスク増加

倦怠感、落ち着きのなさ

作業を行う能力の低下

認知力や記憶力の低下

やる気が出ない

仕事の生産性低下

心臓病、糖尿病、高血圧リスクの増大

空腹時のホルモンアンバランスと体重増加

抑うつ状態や不安、精神障害になるリスクの増大

いらいら感の増加

免疫力の逓減、感染症を受けやすくなる

アルコール濫用の可能性が高まる

余命の短縮

必要な睡眠の量はどれほどでしょうか?

脳損傷や慢性的健康の問題を防止するために十分睡眠を取るよう心掛けることが大切です。では、どの程度寝れば十分でしょうか?原則的には、8時間は寝ることですが、個人別に何時間寝ればよいかは年齢や全体的健康状態、日常活動により異なります。

全米睡眠財団(NSF)では、十分睡眠を取れるように年齢別推奨時間を分けて勧めています:

年齢 推奨睡眠時間

0~3ヶ月

14~17時間

4~11ヶ月

12~15時間

1歳から2歳

11~14時間

3歳から5歳

10~13時間

6歳から13歳

9~11時間

14歳から17歳

8~10時間

18歳から64歳

7~9時間

65歳以上

7~8時間

しかし、これらは全般的目安にすぎず、ライフスタイルや健康状態、気分の状態しだいでこれより一時間前後変動しても適切な範囲です。7時間寝れば生産力が上がり、活気が出て、幸福感を感じられ、健康でいられるのなら、これをチャートに合わせて8時間まで無理に増やす必要はありません。

夜もっとよく寝るためのヒント

よい夜間睡眠とは、速く寝つき、深い修復的睡眠に達し、睡眠状態が継続することを意味することを覚えておいてください。午後10時就寝しても、朝6時まで寝返りばかり打っているのではよい8時間睡眠ではありません。

よい夜間睡眠ができずにいる場合、睡眠衛生をよくするためにいくつもの方策を行うことができます。よい食生活をするのと全く同じく、以下に挙げる睡眠のためのヒントを最優先することで最適な休息を確保するのが大切です。日常的に以下の方策を全て試せば、よい夜間睡眠ができるようになり、脳が健康でいられるためによい方向です:

寝室を睡眠のためのオアシスにする — 寝床は睡眠を取り快適に休息する場です。寝床で行ってもよい二つのみの活動は、読書とパートナーとの緊密なひと時を過ごすことです。仕事やコンピュータ、携帯電話、テレビ視聴等それ以外のことは睡眠の質を悪くします。

ペットや屋外活動によるノイズを下げましょう。ペットは寝室から出し、ホワイトノイズマシンで屋外からのノイズを打ち消すこともできるでしょう。

気が落ち着く就寝前の日常的行為を定着させる — 人間は習慣の生き物です。気を落ち着かせる就寝時のお決まりのことを確立すると、寝つきがよくなります。暖かいお風呂、よい本を読むあるいは少々リラックス運動をしてから就寝すると寝つきがよくなることもあるでしょう。

ある晩なかなか寝付けない日があれば、寝床を出て、静かに何か読むほうが、無理に寝付こうとするよりましです。その際ブルーライト遮断眼鏡を使って、読書灯がさらにメラトニンの分泌を減らさないようにするよう強くお勧めします。

一定のスケジュールを守る — 毎日、同じ時間に就寝して起床するようにすれば、体はその習慣に慣れます。これにより、概日リズムの調節によく、寝つき易くなり夜中寝通すことができるようになります。週末でさえ一定した睡眠スケジュールを守りましょう。

午前中と正午にふんだんに明るい日差しを浴びる — 朝いちばんでまず明るい光に当たると睡眠促進ホルモン、メラトニンの分泌が止まり、身体に起きる時間んであることを知らせるシグナルが送られます。屋外で日光に当たるのが最適なので、少し屋外を散歩してみてはいかがでしょうか。屋外で歩く — 朝いちばんにまたは正午前後に太陽が高いときに歩くと、明るい日光に当たれます。

私は毎日海浜で明るい日光の中を一時間歩き、ビタミンDレベルを増やすと同時に、概日リズムをしっかりと定着させるので、寝付きの問題はほとんど起きません。

日没になったら照明を落とす(あるいは琥珀系の眼鏡を掛ける) — 晩(午後8時ごろ)は明かりを落とし、電子機器はオフにしましょう。普通なら、脳は夜9時~10時にメラトニンを分泌し始めるので、これらの装置から出る光がこのプロセスを阻害し、概日リズムの調子を狂わせ、睡眠を阻害します。

日没後照明が必要なら、黄色やオレンジ色または赤系の低ワット数の照明に切り替えましょう。5ワット電球で照らす塩ランプは、メラトニンの生成を妨害しない理想的な解決策です。コンピュータやスマートフォンを使用する場合は、f.luxのようなブルーライト遮断ソフトをインストールすれば、一日の時間が経つにつれ画面の色温度を自動的に変えて、夕方になると青色波長を除外するようになります。

しかしいちばん簡単な方法はブルーライトを遮断する琥珀色の眼鏡をかけることです。AmazonでUvexの製品(S1933X)が$10以下であり、これを私は青光前面カット用のお守りのように使用しています。これなら持っている全てのマシンにプログラムをインストールする手間がなく、晩用の特殊ランプを買う必要もありません。眼鏡をかけたら光源が何かは問いません。

寝室に電磁場(EMF)がないか確認する — EMFは松果体とメラトニン分泌を阻害し、その他有害な生体への影響があります。これを測定するには、ガウスメーターが必要です。約50ドルから200ドル程度から始まる、様々なモデルはオンラインで買えます。家のブレーカーを落とすことを推める専門家もいます。

毎日運動する — 身体は動かし運動することで繁栄し、心臓血管病や代謝障害のリスクが減少します。運動すると、寝つきが良くなり、ぐっすり眠れるようにしてなるでしょう。一方で、運動中は体がコルチゾールを放出し、これがメラトニンの分泌を抑えてしまうこともあります。就寝の遅くとも3時間までに、できればそれより前に運動してください。

部屋は涼しくしておく — 最適な睡眠のための推奨室温は約15~20 ℃です。これより温度が低かったり高かったりすると夜間に休息しにくい睡眠しかできなくなってしまうでしょう。サーモスタットを最適な睡眠温度に設定してみて、よりよく夜間寝られるようにしてください。

ふとんと枕を調べる — ふとんと枕が快適で、睡眠を支持してくれるものならより休まる睡眠ができるようになります。ふとんは9年から10年で交換するのがよく、この辺りがよい品質のふとんの平均的耐用年数です。

精神面の運動は就寝前にシフトダウン — 就寝の遅くとも1時間前まで、優先すべきは2時間前までに仕事を仕舞いましょう。寝付く前に翌日の計画や期限のことを気に掛けずリラックスする時が必要です。

テレビや電話機等の電子機器を就寝の遅くとも30分前までには消しましょう。

就寝前のアルコールやカフェインを避ける — アルコールやカフェインを寝る前に飲むと夜間よく眠れなくなる可能性が高いです。ナイトキャップが必要な人は、カモミールやラベンダー等のリラックスしやすくもしてくれる自然なカフェインの無いハーブ茶に切り替えましょう。