Dr. Mercolaより
認知症は多くの高齢者に影響するので、しばしば老化のあたりまえの現象と見なされますが、実はそうではありません。実際に認知症につながりうる脳損傷はしばしば貧そな栄養や栄養失調特にビタミンB群とドコサヘキサエン酸 — DHAで知られるオメガ3脂肪 - の欠乏によります。
DHAが乳幼児の正常な脳の発達に寄与し、成人の正常な脳の機能を維持することに寄与することは周知なのですが、今だに、研究の多くはDHAと認知症特にアルツハイマー病の予防の確固とした関連性を特定できていません。しかし、南カリフォルニア大学の研究者らは以前の研究では効果が出るほどの用量を使用しなかったからではないか、と見当をつけました。
EBioMedicineに掲載された2020年のある小規模な臨床検査では、アルツハイマー病リスクがある33人の参加者を二つのグループに分けました。一つのグループには毎日1 mgのビタミンB12、ビタミンB6が100 mg、葉酸800 mcg(葉酸塩すなわちビタミンB9の人工産物)、 2,152 mgのDHAを六か月間投与しました。二つ目のグループにはプラセボを投与しました。
六か月の試験期間後、研究者らは採血と脳髄液を採取し、DHAが脳に到達しているかを分析しました。サプリメントを飲んでいた参加者はプラセボグループより血中DHAが200%多いことがわかりました。脳髄液中のDHAは28%増加していました。
この研究について注目すべき点は、およそ2,000 mgものDHAと、ほとんどの以前の研究で使われていた平均値1,000 mgの二倍を投与したことです。DHAが実際に脳にどれくらい到達しているかを見るために採血以外に脳髄液も分析した点が以前の研究とは異なります。
この研究は、これら二つの要因に基づいて高用量のDHAにビタミンB群も加えると認知力低下を予防しやすくなるようだが、小用量ではメリットが出ないようであるという結論に至りました。
ビタミンB群と高用量DHAが認知力低下を阻止しうる機序を把握するために、認知症の進行にともなう脳内の生理学的、物理的変化を理解すると把握しやすいです。
健常な成人の脳は約1000億本のニューロンがあります。各ニューロンは周囲の他のニューロンと連結する枝状の突起があります。このシナプス結合により神経は相互にシグナリングし、これが思考、記憶、気持ち、感情、技能を生み出します。
認知症の人の場合、記憶や学習、思考の中枢である脳野のニューロンが損傷したり破壊されます。この病気が進行するにつれ、歩行や飲み込む動作の中枢である他の脳野が損傷したり破壊されます。脳は炎症や委縮を起こし、あるいは収縮し、劣化して損失していきます。
こうした進行が原因で認知症は経時的に悪化の一途をたどる変性疾患と位置付けられます。実際に、こうした脳の変性は症状が始まるはるか10年から20年前から始まることは研究から周知です。
中枢神経系には細胞の成長、成熟、維持のために機能するニューロトロフィンという成長因子を含みます。脳由来神経栄養因子(BDNF)という特定のニューロトロフィンは特に神経細胞の成長と存続のため深く関与しています。
低濃度BDNFは認知症やアルツハイマー病その他パーキンソン病やハンティントン病、精神分裂病等の脳障害の発生に関連することはわかっています。低濃度DHAは少なくとも低濃度BDNFに部分的に関与しています。
脳内のBDNF量を多く維持するのを助けるほかにも、DHAは新しいニューロンの生成、既存の神経の存続と神経の可塑性を含むいくつかの異なるニューロンのプロセスにある機能をしていることも判明しています。DHAは神経のシグナリングと神経パルスの伝達、新しい神経シナプスの生成、学習や記憶に関与している脳内プロセスにも機能しています。
2011年、PLOS Oneに掲載されたある研究は、特に脳の成熟期に食事からDHA摂取が不足すると、成人になってから脳の機能や神経の可塑性に負の影響があることを発見しました。その一方、適量のDHAを摂取することは脳の性能の最適化、健康なニューロンの構築、神経障害からの保護のために必須です。
ビタミンB群が身体のプロセスを助けるほか、DHA、ビタミンB6、B9 (葉酸塩)、B12も加齢にともない認知機能を支持するため特に重要です。これらのビタミンは老化に関連する認知力低下やアルツハイマー病の発生からよく保護することが判明しています。
主な理由の一つはホモシステイン濃度の増加です。ホモシステインは主に肉を食べることから得られるアミノ酸ですが、これらのビタミンB群の摂取が不足するとホモシステインの血中濃度が高くなります。2005年、The American Journal of Clinical Nutritionに掲載されたある研究は、720人の高齢イタリア人について認知力試験を実施しました。認知力試験の後、採血し、ホモシステイン濃度とビタミン濃度を測定しました。
その結果、ホモシステインの血中濃度が高いと認知症とアルツハイマー病のリスクが高くなっていました。結論として、血中の高いホモシステイン濃度は直接脳を損傷させ、アルツハイマー病の特徴であるアミロイドのプラーク発生を増大させることがわかり、血清中の低葉酸塩とビタミンB12不足が原因の一つではないかとしています。
その後、2010年にNutrition Reviewsに掲載されたあるレポートは、ビタミン B6、B9、B12は、ホモシステインのメチオニン変換を補助するメチレーションプロセスに必須の補酵素であることを指摘しています。このメチオニンは、「主役の抗酸化物質」グルタチオンを含む、体内の多くの異なる化合物の作成に使用されるもう一つの必須アミノ酸です。
B9 (葉酸塩)、B6、B12を十分に摂取していることを前提として、身体はホモシステインを自然に解消できます。2010年、PLOS Oneに掲載されたある研究の参加者は、プラセボまたは一日800 mcg の葉酸(人工B9)、500 mcg の B12、20 mg の B6 を24ヵ月投与されました。
試験期間後、B群で処置したグループはプラセボを受けたグループよりはるかに脳の萎縮が少ないことがわかりました。その研究結果: 適量のビタミンB群を取り込んでホモシステイン濃度を管理できる限り、脳萎縮を削減しうる、従って、アルツハイマー病の発生も遅延しうる。
2013年、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of Americaに掲載されたある研究は、概してビタミンB群が脳の縮小を遅延しやすくするほかにも、アルツハイマー病の場合重篤な影響を最も受けることが判明している脳野の縮小を700 %削減することも示しています。
しかし、ホモシステイン濃度だけが問題なのではありません。ビタミンB群が脳の健康や認知症等の病気に深い効果を及ぼすもう一つの理由は、神経細胞を覆う脂肪性の鞘すなわちミエリン鞘の維持に必須であることです。
この保護被膜が損傷すると神経シグナルが遅くなり、途切れ始めます。結局認知力が低下したり、運動機能が劣り、気分の変動にもつながります。
ビタミンB6、葉酸塩、B12も気分の制御に関与しているセロトニンやメラトニン、GABA、ドーパミン等の脳内化学物質の合成と分解も調節します。このためこうしたビタミンB群のうちいずれかが不足すると不安や抑うつ状態の症状が出やすくなります。ドーパミンの減少およびこの神経伝達物質を身体が調節する機序も認知症に関連することがわかっています。
ビタミンB群とDHAはそれぞれ単独でも貴重ですが、いっしょに摂取したほうが最適な効果が得られます。2016年、Journal of Alzheimer’s Diseaseに掲載されたあるレポートは、DHAが不足していると、ビタミンB群による処置は認知力低下に何ら効果がなかったが、DHAが正常な範囲でも多めにあると、ビタミンB群がオメガ3脂肪酸と相互作用し、認知力低下が遅延されやすくなるとしています。
すなわちB群とDHAの効果を最大限得るには、全栄養素がよく取れる高品質な食品が豊富な食生活をすることが重要です。認知力低下を阻止しやすくなるビタミンB群を得るためにお勧めする項目:
ビタミンB6
七面鳥、草で育ったビーフ、有機の放し飼い鶏肉、天然鮭、さつまいも、じゃがいも、ヒマワリの種、ピスタチオ、アボカド、バナナ、食用酵母。
葉酸(B9)
新鮮で生の有機の緑葉野菜特にブロッコリ、アスパラガス、かぶの葉、さらに各種の豆、特にレンズ豆のほかにも、ピントマメやひよこ豆、インゲン豆、シロインゲン、黒豆。
ビタミンB12
ビタミンB12はビーフ、牛のレバー、羊肉、 フエダイ、二枚貝、鮭、蝦、ホタテ貝、鶏肉、玉子、乳製品等の食品二しか含まれていません。
食用酵母もB12が豊富で、菜食趣味の方や完全ベジタリアンに特にお勧めです。1回の用量(大さじ2)には天然のビタミンB12が4 μg含まれています。
DHAが最も多い食品:
天然捕獲したアラスカサーモン
ニシン
イワシ
サバ
ニジマス
牡蠣
黒むつ
マダラ
タラの肝油やオキアミ油等の高品質魚油サプリメントからもDHAを取ることはできます。食品の品質を最優先して実に様々な物を食べるようにすると脳の健康維持に欠かせない栄養素を全て摂り易くなります。
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