日本の科学者が絶食の新たなメリットを発見

Fact Checked(事実確認)
絶食

早分かり -

  • 絶食すると抗酸化物質が増産され、年齢に関連する代謝生成物も増えます
  • 低炭水化物の朝食をすると減量しやすくなり、晩遅くに夕食を摂るとグルコース不耐性と糖尿病のリスクが高くなることがわかりました
  • 間歇的絶食で体重管理を支持し、インスリン抵抗性を削減します。加工食品を毎日食べる食生活をしつつ絶食することはお勧めできません
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Dr. Mercolaより

絶食とは、24 時間またはこれより長い時間を一貫して食事を制限するいくつものアプローチを指した用語です。よく普及している一つのアプローチは、一日のうちで食事時間帯を制限する間歇的絶食です。間歇的絶食にはいくつものアプローチがあり、どのアプローチが他より優れるているわけではありません。

人によっては 24 時間食べなかたり、ひと月に 2 回から 3 回食べないのを好みます。これより長時間の絶食や断食は可能ですが、追加的なサポートと知識がないと準備不足から来る悪影響を受けます。

冷蔵庫やレストランがどの街角にもあるわけではなかった人類の祖先にとって、長時間食物が無いことはたぶん普通にあったことでしょう。間歇的絶食はダイエットではなくライフスタイルですが、結局は、代謝と健康に大きく効果を持つ食べ方の一つです。

絶食は代謝を積極的に刺激する

Nature に掲載されたある研究で、科学者が 58 時間の断食をした参加者のデータを公開しました。沖縄科学技術大学院大学のチームは、絶食(断食)開始後 10 時間と終了時の 58 時間後に参加者から採血して絶食の効果を評価しました。

絶食状態の身体はグルコースから脂肪を燃料にするように切り替わり脂肪の代謝の結果として、ケトンが発生します。このほかに周知の脂肪代謝生成物には酪酸類、アシルカルニチン、分岐鎖アミノ酸があります。4 人の参加者は 58 時間の断食を選び、開始から 10 時間、34 時間、58 時間後に採血しました。

化合物のなかには 34 時間後にピークを示したものがありますが、その他の化合物は 58 時間経ってもいまだ横ばいに達しませんでした。トータルで 44 種類の絶食中に変化した物質が特定されました。過去の研究では 14 種類しか特定されませんでした。

さらに、肥満だと絶食中のマーカーが変わるので、参加者はいずれも肥満ではありませんでした。10 時間時点に「ほぼ見えない」ほどの二種類の酪酸類が特定されましたが、これらは「絶食開始後 34 時間と 58 時間に大きなピークを示し」ました。酪酸類は腸壁のバリアーと粘膜免疫を保護して腸内のホメオスタシスの維持を補助します。

このほかにも、周期に関連するトリカルボン酸 (TCA) 化合物が特定され、「絶食中に組織内のミトコンドリアの活性を増大させたことを示し」ていました。動物を調べた過去の研究では、絶食が寿命を延ばしうることが証明されました。今回の研究では、「人間の絶食による未知の健康的効果」を調べました。

絶食の代謝生成物はアンチエイジングを支持

加齢に伴い減少する三種類の代謝生成物は、ロイシン、イソロイシ、オフタルミン酸です。しかし、絶食した人はこれらの寿命延長を助けるかもしれない代謝生成物が増えたことが検査からわかりました。

さらに、絶食中にピリミジンとプリン体の代謝が盛んになることもわかりました。これらの物質は、遺伝子の発現のために欠かせないもので、絶食するとたんぱく質細胞を再プログラムし、ホメオスタシスを促進するのを助けると考えられることを示しています。ピリミジンとプリン体の代謝は抗酸化物質の生産に効果があり、これは 58 時間の断食中に大幅に増加していることをその研究者らは発見しました。

抗酸化物質の生産は若者には豊富にあっても、高齢者には枯渇している、「年齢に関連する数種類の代謝生成物の生産を増やす」ことが可能な絶食のマーカーであると考えられることが、データから把握できたと、その研究者らは考えています。照屋貴之博士はこの研究の主任執筆者で、次のように説明しています:

「長年老化と代謝について研究してきましたが、人間の絶食による未知の健康的効果の研究を行うことにしました。当初の見込みとは裏腹に、絶食はむしろ代謝活性化の誘発を進行させました。

絶食やカロリー制限が動物モデルと同様に人間の代謝異常疾患を予防し、寿命を延ばす効果を享受しうるかについて注目されています。絶食による代謝の変化を把握すると健康を維持するための知恵を得られることに期待できるでしょう。」

低炭水化物朝食は減量の努力を後押しする

食事をするのに最適な一日のうちの時間帯も間歇的絶食と同じように重要です。多くの人にとって、間歇的絶食は減量を行う実現可能な一つの方法です。患者 70 人が参加したある研究で、炭水化物を抑えた朝食か典型的な地中海スタイルの食事と同量のカロリーを摂る朝食との相違点を研究者らが評価しました。

参加者グループのうち、58.6 % は体重過剰から肥満で、うち 1/3 が糖尿病の女性でした。そのグループを二種類の朝食に無作為に割り当て、残りの一日中の食品は同じにしました。

平均摂取量は一日に 1300 から 1500 kcal でした。研究が終わるまでに両方のグループで改善が見られましたが、炭水化物を抑えた朝食を摂っていたほうは地中海式と同量カロリーを摂ったグループより、印象的な 3.5 kg もの減量を達成できました。

研究終了までに、炭水化物抑制グループの全員は、体重の少なくとも 5 % が減り、対照群では 65.7 % が同じだけ減量していました。

グリセミック指数の結果に関連するものを含む低炭水化物朝食グループのその他の改善点は見られませんでした。研究結果はディミトリオス・ツィリンギリス博士が 2018 年の糖尿病研究欧州学会会議で発表しました。同氏のその結果についての説明:

「炭水化物抑制型の朝食は、体重管理を継続する取り組みをしやすくすることで、いくつかのメリットがあると考えられ、この食べ方により確認された急速な原料は長期のダイエット導入に利用しうる可能性がある、もしくは、試験したわけではないが、体重維持のための追加的機能になりうると考えられる。

つまり、このようなダイエットを行うと肥満関連の 2 型糖尿病の管理に有用になりうる。しかし、こうした食事はしばしば、多用性に欠け、低炭水化物の入手可能性がこの方式の継続を困難にする場合がある。通常は夜間に絶食しており、朝になると朝食を摂るのでインスリンが増え、昼食に向かって減っていく。

インスリンが減るに伴い、貯蔵された脂肪が使用される傾向があり、エネルギー物質として機能する。理論上は、低炭水化物朝食後のインスリン応答の低下を誘発すると[一晩を通した]低インスリンと脂肪の消費状態を長期化し、減量と体脂肪削減に実質的効果がある。」

晩遅い夕食で糖尿病リスクが高くなる

何をいつ食べるかが健康に大きく影響しますが、特に、肥満と糖尿病のリスクに影響します。Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism に掲載されたある研究は、ジョンズホプキンズ大学のチームが主導して行われました。この研究には、健康な 20 人の若い成人が参加し、科学者が参加者の食事と睡眠時間を構成した臨床検査ユニットの中で二つの期間を過ごしました。

その目的は、晩遅い夕食の代謝への影響を分析することでした。一期間中に、参加者は普通の夕食を午後 6 時に食べ、二回目を午後 10 時に食べました。両方の食事でカロリー摂取量は同じにしました。

一晩中毎時と朝に一回、インスリンと血漿グルコース、トリグリセリド、脂肪酸の酸化度を計測しました。参加者は睡眠検査も受けました。

結果から、晩遅い夕食はグルコースを増やし、脂肪酸の酸化を削減することが示されました。上級研究執筆者のジョナサン・ジュン博士がこの研究について説明します:

「…遅い夕食がいかにグルコース耐性を悪化させ、代謝される脂肪が減ることが新たに解明された。単一の食事により観察された代謝効果が長期的に起きれば、晩遅い食事は、糖尿病や肥満等の帰結につながりうる。

これらの影響が経時的に継続するか、むしろ行動要因(食事直後の睡眠)または身体の概日リズムにより起きることかを判断するために、さらに実験を行う必要がある。」

間歇的絶食で代謝の健康がよくなる

何をいつ食べるかが健康に大きく影響することは増え続ける根拠が明らかにしています。間歇的絶食は代謝の健康と免疫系の間の関連性である、免疫代謝に影響します。

新興医学において、これが最も重要な分野の一つであり、研究者らには周知であってきたこと、すなわち、代謝の健康こそ堅固な免疫機能のために必須であると考えられます。

国家認定精神科医で国家認定栄養学者のポール・サラディーノ博士と私が行ったインタビューで、サラディーノ氏が重症 COVID-19 病を起こす並存疾患の多くの根底にあると考える、インスリン抵抗性の重要性について話し合いました。包括的な原理は、長寿のために最も意義があることは、免疫年齢と代謝年齢で、生物学的年齢ではないということです。

このインタビューとさらに詳しい内容は「COVID-19 の予後改善における代謝の健康の役割をご参照ください。この記事の焦点は、重症 COVID-19 のリスク削減のために代謝の健康を支持することですが、これらの原則は慢性病や感染症から保護するのを補助する全体的な健康の良さを支持するために重要です。

一日三食という観念を捨て、間歇的絶食法を試すことで、身体が継続的に食餌を与えられるように設計されないようになるためになります。一日中食べると、身体はグルコースを主な燃料として使用することに適合します。これでエネルギーが脂肪として貯蔵され、ますますインスリン耐性になるリスクが増えます。

間歇的絶食は一種の減量法であると多くの人は思っていますが、インスリン抵抗性を改善したり、ヒト成長ホルモンの生産を促し、脂肪の代謝を促進し、血圧を下げ、ミトコンドリアのエネルギーと効果、整合性を増やします。

間歇的絶食で健康を管理する

間歇的絶食が多くの人にとって有益なことはおそらく確かでしょうが、いくつかのことを念頭に置いておきましょう:

  • 間歇的絶食はカロリー制限が不要 — 絶食しても虚弱感は無く、無力感が起きません。目的は、食べる時間帯を限ることです。
  • 糖分の渇望は一時的 — 身体が脂肪を主な燃料として代謝し始めると、18 時間の絶食がしやすくなり、空腹感と糖分渇望が消えます。
  • 加工食品を毎日食べている人に間歇的絶食はお勧めしません — このプロセスは健康不良に対する万能薬のように聞こえるかもしれませんが、必ずしも間歇的絶食だけがあらゆる効能をもたらしてくれるわけではありません。食生活の質は決定的な機能をします。

間歇的絶食の考え方を初めて聞いた人なら、朝食を抜き、昼食と夕食を 8 時間枠内で済ませることから始めことを検討してください。就寝の三時間前までには食べるのを確実に止めましょう。今回取り上げた研究で実証されたように、就寝に近い時間に食べると、夜間のグルコース不耐性が増え、体重増加リスクが増えます。

程ほどの健康的たんぱく質を含む食事に注視し、炭水化物ではなくバターやココナッツオイル、生のナッツ等の健康的な脂肪を食べることで、正味炭水化物の摂取量を最小限にしましょう。全体的にこの戦略を取ると身体が脂肪燃焼モードに切り替わります。

慣れるまで数週間かかるかもしれませんが、慣れると 18 時間何も食べずに(水分以外)いて、空腹感がないまま過ごせるようになります。自然食品中心の食生活にし、間歇的絶食を実行すれば、ほぼ全ての健康の側面もよくなり始めます。