絶食で高血圧は下がるでしょうか?

Fact Checked(事実確認)
絶食

早分かり -

  • 絶食すると血圧を下げやすくなり、効果を持続しやすくなることがデータからわかります
  • 絶食すると腸内細菌叢、臭覚、味覚が改善される可能性が高まります。さらに、認知症リスクが下がり、インスリン抵抗性が削減されます
  • 食品は血圧によくも悪くも影響します。アルグラやピスタチオ、トマトは血圧によい効果がある食品の例です
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Dr. Mercolaより

血圧は血液が全身を流れる際、動脈に及ぼす力の尺度です。通常の場合この圧力は一日を通して上下します。しかし、常時高止まりになると、心臓に損傷が発生し、その他の健康の問題を起こします。

米国心臓学会(AHA)とその他の健康関連組織が高血圧の定義を変更したとき、それ以前は健康的であると考えられた多くの人が突如として高血圧と診断されるようになりました。

130/80という基準でAHAは1億300万人のアメリカの成人が高血圧であると推定します。高血圧は、高血圧であることを知る唯一の方法が測定しかないので「サイレント・キラー」と呼ばれます。これを制御することは健康の保護のために最適な手段の一つです。

高血圧は大小の血管への力を高め、このため損傷が起きるというのが一つの説明です。高血圧は、心臓病、認知機能低下、認知症、腎臓病、視力喪失、脳卒中につながることはすでにわかっています。

絶食は血圧によい効果がある

2000年頃、絶食の健康への効能について研究していた科学者らは、絶食で174人の被験者の血圧が下がっただけではなく、その効果が予測より長期継続したことを発見しました。血圧が 140/90を超えていた人は、平均10日から11日間医師の監督のもとで水だけの断食療法を受けました。

断食開始の二日から三日間、食事を果物と野菜に限定しました。断食後、研究者らは、被験者の89%が血圧140/90以下になり、これは研究時点の高血圧カットオフレベルであることがわかりました。

平均低下量は大きく飛躍し37/13もあり、最も血圧が下がった被験者は、最も高血圧の人でした。180/110以上の被験者では、研究終了までに平均削減60/17でした。

食べ始めた後さらに血圧低下が起き、断食は持続させることが可能と見られるような、血圧の正常化を作動させたと考えられます。

研究者らは、27週後に被験者のうち42人の追跡調査を行い、このグループの平均血圧が健康的な123/77であることを特定しました。結論として、一般論としては言えないと思われるが、結果から、高血圧の人はバランスのよい食生活を継続すると持続可能な効果を得られるということでした。

絶食で脂質とインスリンの調節によい効果が及ぶ

2017年の別の小規模パイロット研究で、2型糖尿病患者についても同様の結果を研究者らが公表しました。参加者は、一週間のブヒンガーの断食療法 — 自分の脂肪のみ身体の燃料にするタイプの断食 — を行い、液体を一日300 カロリーまで許された後はで、段階的に食品を再び食べ始めることが認められました。

この療法をすべて完了したのは32人でした。4ヵ月後、対照群では平均体重の減少が2.0 kgでしたが、絶食に参加したグループでは約3.5 kgで、血圧測定値も減りました。

ボーダーラインの高血圧の中度肥満の女性が参加したこれより以前のある研究で、48時間の絶食後に血圧が急速に下がりました。研究者らはさらに、短期的間歇的絶食により研究室で測った血圧が下がりましたが、自宅で測った中央値や測定値には影響がないことを発見しました。

絶食に関する研究は、血圧の変化を測定しただけではありませんでした。ある研究の執筆者らは、肥満の人が絶食によりいくつかの経路でメリットを受けることを特定しました。110 人からなるグループが断食療法のため一週間病院に滞在しました。

医師が監督した絶食食生活を三週間行った後、参加者らの血圧と脂質が減り、インスリン感度を含む、血糖調節機能が改善しました。

絶食で改善ポテンシャルが上がる

長生きにはいくつかの要因があり、これは自分で制御できないものなのかもしれませんけれども、食事の内容と食事のタイミングが重要な役割を演じています。絶食は細胞の保護と再生を促進する身体の機能を作動させるために最適な方法の一つです。

実際には絶食で臭覚や味覚さえリセットできます。臭覚は食品の選択に影響します。研究者らは、インスリン濃度が上がると参加者の臭覚が鈍くなり、味覚も変化しました。味覚は、24時間の絶食により改善されました。

絶食すると腸内細菌叢がよい影響を受けます。腸内フローラは免疫系や体重管理、慢性病の発生にインパクトがあることはすでにわかっています。動物実験の結果からは、生涯のカロリー制限が、「腸内細菌叢の全体的構成を大きく変え」、長生きを助長することが示されています。これらの変化により以下のことが起きました:

「…リポ多糖体と結合するタンパク質の血清濃度が下がり、カロリー制限した動物は、腸からの抗原負荷の低下により宿主の健康によい効果があると考えられる腸内細菌叢の構造がバランスするような構成を確立しうる。」

絶食と腸内細菌叢の変化により効果を受ける一つの慢性病が2型糖尿病です。この病気の根底はインスリン抵抗性で、これが絶食で影響を受けます。インスリン感度をよくすると体重管理しやすくなり、糖尿病を逆転することができるようになります。

認知症は、絶食と時間制限式の食生活によりよい影響を受けるもう一つの病気です。アメリカでは500万人以上が認知症の一種であるアルツハイマー病になっています。

絶食をはじめとして、最適な細胞の再生と機能のために必要なプロセスであるオートファジーを盛んにしやすく、これらの病人の数が減る強力な影響がある簡単なステップが存在することを忘れないことが重要です。絶食がいかに認知機能によい効果があるかについての詳しいことは、「食事時間の制限 — 強力な認知症予防戦略」をご参照ください。

神話だらけの印象的な代謝的対処

著作「The Complete Guide to Fasting: Heal Your Body Through Intermittent, Alternate-Day, and Extended Fasting」(絶食の完全ガイド:間歇的、隔日式、長期的絶食で体を癒す)のなかで、ジェイソン・ファン医師は、絶食プログラムのやり方とその課題のいくつかを克服する方法を紹介しています。

これらの課題の一つは、絶食にまつわる神話をまったく忘れ去ることです。よくあるのは、絶食すると筋肉が代謝されないか、というものがあります。ファン氏はこの本のなかで、絶食に応答するタンパク質の異化作用のプロセスとその抑制、成長ホルモンの増大が筋肉の損失にはつながらないことについてわかりやすく説明しています。次のような説明をされています:

「興味深い事実は、脂肪を約450g食べると、約3,500カロリーに相当します。1,800カロリーから2,000カロリーを一日に食べるとすると、1ポンドの脂肪を燃やすためにまる二日の絶食が必要な計算になり、このことに人はとても驚きます。

もし約45 kgの減量を目指すとすると、理論的には、これだけの脂肪を全て燃やすだけで200 日の絶食に相当します。一般人は24時間の絶食が心配です。私は、『200日だってできるかもしれない。』ならばそれで『OKだ。それなら24時間食べるにいるのはおそらくだいじょうぶ』といった感じでいます。」

絶食を人がしたがらない二番目によくある神話は、身体が飢え、どんなカロリーでも保持しようとするだろうという思いです。しかし、これは絶食では起きない効果です。むしろ、エネルギーを得るための効率的な方法です:

「人が言っていることとは、身体の代謝が、一日に2,000カロリーを燃やさずに、1,000カロリーを燃やすかもしれないほど大幅に遅くなるということです。

この場合、例えば一日に1,500カロリーしか食べなくても、リバウンドが起きることになります。これこそまさに、カロリーロスで起きることです。わかっていることは…カロリーを減らすと、カロリー支出も減ります。

カロリーをカットしようとして実際にカットすれば飢え状態になるのは確実です。しかし、興味深いことは、断食するとこれが起きないことです。断食中に何が起きるかというと、断食開始から4日経過すると基礎代謝率は実際には断食の開始時点より10%高くなります。

身体はシャットダウンしたわけではないのです。実際に起こっていることは燃料源が切り替わったのです。つまり食物から体脂肪の燃焼へ切り替わるのです。ひとたび体脂肪が燃え始めると、『たっぷりある素材を使ったほうがよい。2,000 カロリーを燃やそう 』という状態に切り替わります…」

インスリンの役割がキーポイント

エネルギーの貯蔵か消費かを決定するために身体が使用する主なホルモンはインスリンです。食べるとインスリン濃度が上り、インスリンが増えるほど、身体にエネルギーを貯蔵するように指示します。インスリンが減るとこの逆のことが起き、身体にエネルギーを消費するように言います。

インスリン抵抗性がある間、インスリン濃度は高止まりになり、身体は脂肪を一定して貯蔵し続けます。ここでは、エネルギーを消費せよという信号がないので、疲れた、けだるい感覚になります。インスリン抵抗性があると減量しにくくなる一つの理由がこれです。

このサイクルを断ち切るには、インスリン濃度を低く維持する必要があり、ここで絶食の効能がものをいいます。絶食中、インスリン濃度は減り、貯蔵されているエネルギーをも燃やすことができます。ファン氏は患者が診察室へ戻ってきて、絶食中本当に空腹感が無いといって彼らの驚きを伝えることを描写しています。

その理由は、身体が脂肪を燃やすようになり、これが十分になるので余分のエネルギーが必要でないからです。インスリン抵抗性と高血圧の間の関係ではこの話はさらに掘り下げられます。しかし、鶏か玉子のどっちが先かという疑問でした。

研究者らは解答を探し求めてきましたが、頻繁に状態が並存する一方では、どちらが先に起きるかがわからないままでした。そこで、絶食で血圧が下がるようになる一つの経路は、iインスリン抵抗性の低下によるものです。

特定の食品は降圧効果がある

絶食で血圧を下げやすくなりますが、食品でも可能です。健康の質は食生活から直接影響を受けます。血圧は健康の孤立した側面ではなく、むしろ身体の他の機能と密接に結びついているので、血圧の正常化によく注意することが大切です。

正常血圧を維持するために食べないほうがよいものと食べ始めるとよいものが存在します。地中海地方に生活する人が世界で最も健康で長寿であることは注目に値します。地中海沿岸諸国はオリーブやオリーブ油、新鮮な野菜、果物、海産物が豊富で、赤肉はあまり食べないことで周知です。

この食生活は適度のタンパク質を含みつつ、糖分が少なく、新鮮な果物と野菜が豊富で、健康的な脂肪を含んでいます。スティーブン・シナトラ医師は、「糖質を含む食品、精製された白い小麦粉、部分水素化オイル、加工フルーツジュース、コーンオイルやサフラワーオイル、大豆油、カノーラ等のオメガ6オイル」を避ける汎アジア修正型地中海式(PAMM)食生活を勧めています。

ケト絶食では周期的なケト食と間歇的絶食に周期的な部分的断食を組み合わせますが、これは健康を最適にするもう一つの方法です。私のケト絶食方式には満腹感を促し、オートファジーを加速する健康的な脂肪を取り入れています。

心臓の健康に良く、おいしいいくつかの食品なら、毎日の食事に容易に含めることができます。アルグラはカリウム、マグネシウム、カルシムが豊富で、これのミネラルは心臓の健康のために必須です。ピスタチオ、オリーブオイル、トマト、セロリーは動脈を柔軟に維持しやすくし、降圧を助けます。私の記事「血圧を下げるのによい最適な食品」にさらに他の食品を含めなぜよいかについて詳しくご説明しています。