高血圧でCOVID死のリスク倍増

Fact Checked(事実確認)
高血圧とCOVID-19

早分かり -

  • 高血圧の人は高血圧でない人よりCOVID-19で死ぬリスクが二倍高い
  • 糖尿病でも死ぬリスクが高くなり、2型糖尿病患者のリスクが二倍高く、1型では3.5倍高い
  • 男性型脱毛症はCOVID-19重度の予測因子であり、脱毛症、2型糖尿病、高血圧に共通する要因はインスリン抵抗性
  • 健康を最適によくし、リスクを下げるポイントは、インスリン抵抗性を含む根本原因を解決すること
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Dr. Mercolaより

疾病管理予防センター(CDC)が挙げる死因上位10項目に、糖尿病と高血圧が挙がっており、これらは心臓病、脳卒中、アルツハイマー病、糖尿病、腎臓病という五大疾患の原因に寄与しているかまたはそれらの原因です。2017年、全米心臓学学会(ACC)と米国心臓学会(AAA)は高血圧のパラメータを再定義しました。

この変更は恣意的なものではありません。かつては正常と見なされていた血圧の人が、高血圧の人と同じ疾患になっていることを示すデータに基づいて行ったのです。

新たな高血圧判断基準が140/90から130/80に引き下げられた際、米国心臓学会は高血圧の人数が米国人口の32%から46%に飛躍的に増加しうると推計しました。

この変更は、前期糖尿病診断の基準値を110 mg/dlから100 mg/dlに引き下げた国際専門家委員会による2004年の変更と同様でした。Diabetes Careに掲載されたある研究者によると:

「かつて、糖尿病の判断基準値が細小血管系合併症リスクの精確な閾値をなすと考えられていたが、こうした閾値が存在しないことは明らかである。」

2018年、全米糖尿病学会によると米国では3420万人が糖尿病でした。このうち2680万人はすでに診断されていた人で、730万人は未診断だったと推定されていました。多くの慢性病と同様、糖尿病も高齢者に多いです。

米国全人口の10.5%に当たる糖尿病または前期糖尿病患者のうち、65歳以上の1430万人が二つの慢性病のいずれかに罹っていました。しかし、2019年のデータによると、米国人口の87.8%は、代謝の柔軟性がなく、糖尿病の特徴であるインスリン抵抗性があったたことからして、総計はこれより多いと考えられます。

高血圧でCOVID-19死のリスクが高くなる

中国の医師らは、COVID-19患者の治療を始めて間もなく、死亡症例のほぼ半数は高血圧(高血圧症という病気の)患者でもあったことに気づきました。研究者らは、この関連性を評価するため中国の武漢市で起きたこの感染症の治療に特化した一病院の遡及データを用いました。

解析した患者2,877人のデータのうち29.5%に高血圧の既往症がありました。高血圧患者は正常な人より死亡リスクが二倍高いことがわかりました。これには高血圧の既往歴がありながら薬は飲んでいなかった患者も含めました。

他の国々の報告も、高血圧患者のほうがCOVID-19死のリスクが高いことを示しています。過去には高血圧治療薬ACE阻害剤が重病リスクを高くすることが示されていました。

近年の研究からはこれが間違っていることがわかっています。このことはEuropean Heart Journalに掲載されたある最近の研究が裏付けています。ACE阻害剤を含むレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害剤に影響が及ぶ薬を服用している患者の死亡率は、RAAS阻害剤を服用していない患者と変わらないことを科学者らは発見しました。研究者らの結論:

「高血圧症と降圧剤治療の終了で死ぬリスクが高くなると考えられるが、この遡及的観察では、COVID-19患者に対してRAAS阻害剤の害があることは見出されなかった。」

Reutersは、その解析結果がACE阻害剤を使用する患者に有利なトレンドを示すとは研究者らが想像していなかったと、伝えています。この解析では過去の研究から得たデータを含め、降圧剤で死亡率が減ると考えられると特定しました。

糖尿病で重症COVID-19リスクが高くなる

重病や死亡率増加を伴う二番目の併存疾患は糖尿病です。研究者らはイギリスの国民健康保険サービス(NHS)から得たデータを使い、重症COVID-19になりうるイギリス人の特徴を把握しました。

この情報は2020年2月6日から2020年4月18日まで166の病院から得たものでした。研究者らは被験者者の多くが他の臨床検査や治療研究にも参加していたことを報告している世界保健機関(WHO)から得た事前承認アンケートを利用しました。

そのデータから、COVID-19の入院患者のメディアン年齢が72歳で、平均入院日数が約7日であることがわかりました。最もよくある併存疾患は、慢性心臓病、糖尿病、慢性肺病でした。

これまでにまだ不明なことは、糖尿病患者のほうが感染しやすいかということですが、明らかなことは、糖尿病の人ほど重症で入院するケースが異常に多いことです。イギリス人口の6%は糖尿病であることが推計されていましたが、イギリスNHSのデータによれば、入院患者のうち19%が糖尿病で、これは一般人口に占める比率のほぼ三倍高いです。

糖尿病のない人がウィルスで死ぬ確率より、2型糖尿病患者はCOVID-19死のリスクが二倍高く、1型糖尿病だとこれが3.5倍であることに着目することも重要です。

174人の患者についての別のある研究では、科学者らは糖尿病患者のほうが重症肺病、過度の制御不能炎症、グルコース代謝障害のリスクが高いことを特定しました。彼らの結論:糖尿病患者はCOVID-19が急性になりやすく、予後は芳しくないという彼らの読みをデータが裏付けている。

初期データから脱毛症でCOVID-19の重度を予測できることが示された

ブラウン大学のあるチームは、このウィルスで特定の人が重症になる理由は男性ホルモンに関連するアンドロゲンの活性機能ではないかと考えています。このチームはスペインで二つの研究を実施しました。

最初の研究は、両側肺炎でかつSARS-CoV-2が陽性だった41人の白人男性入院患者について評価しました。このグループのうち71%は、臨床的に有意な男性型脱毛症(AGA)でした。

スペインの白人男性におけるAGA蔓延率は不明ですが、研究者らは最大53%はあると推定します。この研究で研究者らは、AGAを目視でのみ診断しており、各自とは話していませんでした。彼らの仮説:AGAがリスク要因であることがわかれば、抗アンドロゲン療法で症状の重度を軽くできるはず。

「…最近、抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンに注目されているのは興味深い。ヒドロキシクロロキンの類似物質である燐酸クロロキンは齧歯類のテストステロンを削減することがすでに証明された。…COVID-19に対する処置としてヒドロキシクロロキンを使用する裏付けデータが限られており、COVID-19患者への副作用は不明ではあるが、アンドロゲンとの関連性は有意であると思われる。」

初期研究ではサンプルが小規模だったことを念頭に置き、その研究チームはデータ解析を二度行い、結果をJournal of the American Academy of Dermatologyに公表しました。この研究ではある皮膚科医が、122人が男性、53人が女性で、男性の79%、女性の42%がAGAである175人の患者コーホートにおけるAGAを診断しました。

ここでは女性のメディアン年齢が71歳であり、男性では62.5歳であったことは重要です。ここでも研究者らは重病で入院していた人のうちかなり多くがAGAだったことを特定しました。

AGAは男性型脱毛症で、女性の場合女性型脱毛症といいます。診断は、老化、多嚢胞性卵巣症候群、インスリン抵抗性、前立腺がんを含むリスク要因についての既往歴とこれらを評価する検査に基づいています。

インスリン抵抗性が根本原因

重症COVID-19に関連する慢性病患者に共通する根本要因は、インスリン抵抗性です。ブラウン大学の研究者らは、患者には重症になるリスクが高い高齢者を含むことを認めています。

その他の研究で、研究者らが特定したことは、肥満が顕著なリスク要因であり、60歳以下でCOVID-19により入院するリスクが二倍高いです。肥満は最も多い原因ですが、別の研究ではこれよりも重病の患者は一つ以上の疾患がありました。

ニューヨークシティーの5,700人に関するある研究では、最も共通する併存疾患は高血圧、肥満、糖尿病で、これらは全てがインスリン抵抗性によるものです。この被験者グループのうち、56.6%が高血圧、41.7%は肥満、33.8%が糖尿病患者でした。

死亡症例のうち、糖尿病患者のほうが他の患者より換気装置の使用あるいはICU処置の比率が高いことを研究者らは特定しました。興味深いことに、高血圧患者は高血圧でない患者より、死亡前に換気装置やICUで処置されることが稀でした。

2型糖尿病、インスリン抵抗性、メタボリックシンドロームの特徴である高血糖値は、ウィルス複製とサイトカインストーム(放出症候群)のために重要な機能をしているようであり、これらこそ重症COVID-19で発生します。さらに詳しい説明やその他の情報については、「真の世界的流行病はインスリン抵抗性」をご参照ください。

長期的リスクを削減するにはインスリン感度を回復する

高血圧、糖尿病、心臓血管病患者が増加するのは西洋の社会では当たり前のこととして受け入れられてしまったようです。しかし、こうした慢性病は年齢に関わらず普通のことではありません。

何であれ次の世界的流行が起きた時に生き残るため、皆の健康がよくなることこそ最も大切です。人体が自然に対抗できるものを治すために薬やワクチンを待つのは間違っています。対症療法ではなく、病気や異常の根本原因を解決すべきです。

COVID-19やインフルエンザ、普通のかぜに効果的に対抗するには、丈夫な免疫機能の支持が必要で、その他ほとんどの伝染病に関しても同様です。インスリン抵抗性の解決こそ慢性病を削減し、健康を改善するためのカギです。

そのために必要なこと:加工食品をカットし、自然食品をもっと食べる。The New York Timesで全米臨床内分泌医師会のサンドラ・ウェーバー会長によると:

「血糖を正常に制御できないと、現在の[COVID-19]も含むウィルス感染リスクが高まり… [血糖制御が正常になると]免疫力が高まります。」

インスリン抵抗性を撃退するために何を食べるか、食べるタイミングについて、詳しくは私の以前の記事「コロナウィルスに勝ちたいですか?糖尿病と高血圧の対策をしましょう」をご参照ください。この記事では、健康になり健康を維持し、代謝を健康的に維持するための主な方法をいくつかまとめました。COVID-19のその他の療法や役立つヒントについては、Coronavirus Resource Page(コロナウィルスの情報源)をご参照ください。

柔軟な代謝機能とインスリン抵抗性の解消を実現する方法についてさらに詳しく把握するには、私の著作をぜひお読みください。「Fat for Fuel」(脂肪を燃料に)。この本ではしなやかな代謝を実現し、免疫系を強くするための包括的プログラムをご説明しています。これらをよくすることは健康と病気予防のために決定的な要因です。