メラトニンには抗炎症効果と代謝効果がある

Fact Checked(事実確認)
メラトニン で 炎症が減る

早分かり -

  • メラトニンは睡眠/覚醒周期の制御に関り、炎症や体重増加の防止のため必須の機能をしています
  • メラトニンは免疫系、腸の健康、痛みの程度、血圧、脳卒中や脳外傷後の回復に影響します
  • いろいろ方法があるなかでも朝のうちに少なくとも15分日光を浴びるのが最もメラトニン濃度を自然に高める効果があります
  • メラトニンには副作用がほとんどなく安全ですが、長期的影響はまだ知られていなく、薬を服用していたり特定の病気の治療中にこのサプリメントは安全ではないかもしれません
文字サイズ:

Dr. Mercolaより

身体は最適に機能するために質の良い睡眠が必要な複雑な組織です。身体の概日リズムは代謝や心理的機能などあらゆることを調節している体内時計の組み合わせからなります。睡眠をおろそかにすると体内時計の異常につながります。

身体機能の同期を司るメインの時計は脳に存在するけれども、組織や細胞にも固有の体内時計が存在します。2017年に公表されたある画期的研究は周期的にオンオフさせる概日リズムで制御される遺伝子の半数を特定しました。

全身の概日リズムは主に松果体が制御しており、ここでメラトニンすなわちN-アセチル-5-メトキシトリプタミンが分泌されます。このホルモンは身体に寝るべき時を知らせることで概日リズムを正常に保っています。メラトニンの生産は身体が光を浴びて吸収するタイミングと量で決まります。

この内分泌腺は脳の中心辺りにあり、普通は午後9時頃からメラトニンを分泌し始めます。睡眠不足や日光によく当たらないとこの濃度が自然に下がります。研究者らはメラトニンと炎症減少の相関性を発見しました。

メラトニンはマウスの炎症と肥満マーカーを減らす

ブラジルとイタリアの大学が共同研究を行い、肥満な人に共通する異常の改善のためにメラトニンがどう機能するかを特定しました。この研究では肥満にしたマウスを10週間メラトニンで処置しました。

目的はこのホルモンが食べすぎによる損傷を効果的に遅延させるか阻止するかを判定することでした。研究者らはメラトニンのサプリメントでトリグリセリドや総コレステロール、LDLコレステロール濃度が下がる等のマウスに大きな影響があるという仮説を裏付けるいくつもの結果を得ました。

そのほかにも、サプリメントにより脂肪組織の発生を減らし、白脂肪の分解能力が増えることで体重増加を阻止することが判明しました。こうした効果が相乗して食べすぎによる脂肪細胞の肥大が阻止されました。

さらに、研究者らはサプリメントにより、マクロファージが脂肪組織に侵入する肥満検体に見られた特徴的な炎症プロセスの減少に着目しました。マウスはさらに、遺伝子発現にともなう炎症関連因子も減りました。

全体的に、10週間の試験終了時に、メラトニン無しで過剰に食べさせたマウス群は普通の餌にした対照群より体質量が49%増加しました。メラトニンサプリメントを与えたマウス群は対照群より体質量が28%増加したが、メラトニン無しで過剰に食べさせた群より13%低かった。

研究者らの考えでは、実験データからメラトニンは肥満検体で発生する代謝と炎症の軽減効果がある物質であろうということでした。

メラトニンの睡眠/覚醒周期に対する重要性

体内の多くのホルモンと化学物質と同様、メラトニンには1つ以上の機能があります。メラトニンについては睡眠/覚醒周期の制御機能が最もよく知られています。この一般によく知られる機能は睡眠が全身と精神の健康のために重要な役割をすることに基づいています。

アメリカ人の推定40%は毎日睡眠障害状態にあり、一晩5時間未満しか寝ない人が多いです。何百万人もが寝つきが悪く、睡眠を継続できない課題をかかえている人も多いです。朝早すぎる時間帯に目が覚めてしまう人もいます。

いくつもの危害がある睡眠阻害については、以前の記事「ノーベル賞受賞科学研究が健康に欠かせない良質な睡眠を強調」をご参照ください。

メラトニンは身体が一日のうち何時頃かを覚ることに影響するマーカーです。これは実際の時刻に関わりなく起きます。正常な夜間の睡眠中、メラトニン濃度は約12時間増えたままです。日の出とともに体内濃度がほとんど検出できなくなるまで松果体が生産を減らします。

概日リズムが狂うと、メラトニンの生産量が減り、睡眠の質が劣ります。これは夜間シフト勤務時、時差ボケあるいは夜間光に暴露されると起きます。

メラトニンには睡眠以上の効果あり

このホルモンが不足すると炎症の増加や免疫力低下、がん発生率増加等深刻な生物学的リスクにつながります。このホルモンは様々な段階の睡眠を制御し、他の器官や免疫細胞に存在する受容体たんぱく質と相互作用します。

さらに、メラトニンはグルタチオン等他の抗酸化物質も増やす強力な抗酸化物質です。メラトニンは細胞レベルでエネルギーが生産される身体の発電所ミトコンドリアの健康や生存のために機能します。

メラトニンは子宮内膜症患者のペイン管理にも有望です。ある研究では1日10 mgで痛みが39.8%、月経困難症は38.01%減少しました。局部に塗ると日焼けを防止し、経口サプリメントは他の薬より150倍も耳鳴り治癒に効果があります。メラトニンにはさらに以下のような保護効果もあります:

睡眠相遅延症候群

血液脳関門の強化

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

移植術による合併症の軽減

脳卒中や脳外傷からの回復

糖尿病

視力と目の健康

パーキンソン病

血小板減少症

腸の健康

時差ぼけ

血圧と心臓の健康

胃液逆流

老化

生殖力

メラトニンを自然に増やし方

メラトニンのサプリメントはありますが、自然に増やすこともできます。研究者らは睡眠の衛生の改善や運動、よく心する姿勢-瞑想等の不眠症に対する薬を使わない方法があることを認識しています。

簡素な習慣を習得して自然な生産量を増やし、全体的健康と睡眠をサプリメントなしで改善するほうが筋が通っています。簡素な方策の例を挙げます:

午前中日光に当たる — メラトニンは光と闇の中にいることで影響を受けます。光があればメラトニンの生産は自然に減少します。午前中に少なくとも陽光を15分浴びるとメラトニン生産の調節を助け、日中の正常レベルまで下がるので、日中は覚醒していると自覚でき、夜間によりよく眠れます。

暗闇の中で寝る — 身体は闇の中でメラトニンを生産して分泌し、就寝して寝続けるのを促します。目覚まし時計、テレビあるいはその他の光源から出る明かりもなく、真っ暗な部屋で睡眠を取ると、睡眠の質が良くなります。

トイレのため夜起きても、メラトニンの生成が停止しないよう、明かりを消しておくことが重要です。日没後はブルーライト暴露を防止するためのブルーライト防止眼鏡も使用しましょう。

ストレス軽減とコルチゾール減少 — メラトニンの分泌はノルエピネフリン(ノルアドレナリン)という他のホルモンの分泌量に応じます。極度なストレスやその結果としてのコルチゾール分泌により、ノルエピネフリンの分泌が阻害され、よってメラトニンも阻害されます。就寝前のストレス軽減法に役立つかもしれないのは、ヨガ、ストレッチ、瞑想そしてお祈りなどです。

マグネシウムが豊富な物をもっと食べる — マグネシウムは夜間の脳活性を下げる機能をし、リラックスして寝つきがよくなるようにします。これはメラトニンと並行して機能します。高濃度のマグネシウムを含む食品としては、アーモンド, アボカド、かぼちゃの種、緑葉野菜が挙げられます。

サプリメントと副作用

メラトニンの効能は主に抗酸化作用であることが知られています。Timeマガジンにミシガン大学睡眠概日研究所ヘレン・バージェス副所長が語る:

「炎症が多い人—肥満が原因であったり、移植術のため[集中治療室]にいる患者—にメラトニンを6 mgから10 mg投与すると炎症マーカーが減ることが最近の新科学から明らかになりました。」

過去の研究ではメラトニン欠乏と肥満の相関性を見ていました。また、サプリメントが炎症プロセスに関わる酸化ストレスの軽減やアディポカインの調節に関連しているので炎症対策にもなります。18か月までの服用は比較的安全であると考えられますが、これより長期の使用による副作用はまだ知られていません。

てんかん患者や血液希釈剤ワルファリンを使っている人に有害な相互作用があることはすでにわかっています。メラトニンは睡眠障害のある子供に効能があるため時々使用されますが、子供への長期的影響はまだ知られていません。思春期のメラトニン服用がホルモンの自然な生産を阻害することを示した研究がありました。

ある研究を主導している研究者らは、サプリメントは注意欠陥多動性障害(ADHD)の患者には避けるように注意しています。サプリメントは慢性の不眠症も併存する患者のみに使用するよう勧めています。メラトニンはホルモンであり、長期的なホルモンサプリメントは身体に未知の影響が及びうるので注意が必要です。

以上の自然な生産を増やす方策以外にも、「日常の睡眠を最適化するためにいちばん効く33個のヒント」でかつてご説明したことがある睡眠習慣に関する情報をご参照ください。