運動がいかに病気の予防や予後に効果があるか

Fact Checked(事実確認)
運動 脳卒中 予防 回復

早分かり -

  • 運動は(BMIで測る)体脂肪よりも脳卒中後の機能回復のためのパワフルな指標であることがわかっています
  • 脳卒中が起きた不活発な患者は、脳卒中後に入浴や食事などの基本的機能を自分でこなせるようになる確率が18 %低下することがわかっています
  • 週三回以上きつい運動をした人のほうが脳卒中の前後を問わず機能性がよくなり、自立性が優れることがわかっています
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Dr. Mercolaより

運動が病気の予防だけではなく、病気になってからでも予後を大きく改善しうることは、いくつもの(またいまだに)増え続ける研究結果からすでに照明されています。米国では20件の死亡のうち1件を占める死因である脳卒中に関し、運動のほうが体脂肪よりはるかに重要な要因であるようです。

少なくとも2/3のアメリカ人は喫煙や高血圧など、脳卒中の主なリスク要因があります。

米国連邦厚生省(疾病管理予防センター(CDC))によると、米国では毎年、185,000人に二回(またはそれ以上)の脳卒中が起き、610,000人が初めて脳卒中に罹っています。

高齢者に頻繁ですが、脳卒中は前触れもなく、どの年齢層でも起きることはあります。脳卒中が起きた人の半数以上が運動機能の障害を引きずるように、重篤な長期的障害を被る主な原因です。

この重大な病気のリスクを削減し、脳卒中が起きても機能性を保護できるためには、今すぐ活発になることが最もよく、最もやりやすい対策です。

運動する人は脳卒中後の自立度が高い

50歳以上の18,000人を対象にしたある研究で、運動は脳卒中後の機能性に関する強力な指標であることがわかりました。脳卒中が起きた不活発な患者は、脳卒中後に入浴や食事などの基本的機能を自分でこなせるようになる確率が18 %低下することがわかっています。

さらに、脳卒中から三年後に日常の買い物や金銭管理等複雑な行動を行える確率が16%下がることもわかっています。週三回以上きつい運動をした人のほうが、脳卒中の前後を問わず、機能性がよくなり、自立性が優れます。

こうした相関性が解明されたのはこれが初めてではありません。Neurologyに2008年に掲載されたある研究も、脳卒中前に肉体的に活発だった人は脳卒中前に運動していなかった患者より重篤な異常が少なく、早く回復し機能がよいことも特定しました。

さらに、2012年にカナダの研究者らは運動した脳卒中患者は六か月後、ほぼ50 %まで記憶力や思考力、言語能力、判断力の問題を改善できることを特定しました。

運動していた脳卒中患者の場合、筋力へのメリットや早く正常に歩けるようになるほかにも、注意力、集中力、計画性、整理能力もはるかに改善しました。

体脂肪より運動のほうが脳卒中の予後を知る重要な要因

身長と体重に基づく体脂肪尺度、肥満度指数(BMI)は脳卒中前後の独立機能性と相関しません。考えうる理由は、体脂肪率増加こそ病気のリスクが高くなる一方、BMIは体重をリスクの尺度として用いる不備のある尺度だからです。

体重は例えば骨格の密度により異なるので、骨太な人は体重が重いでしょうが、だからといって体脂肪が多かったり脳卒中リスクが高いわけではありません。

運動選手と体型異常な人のBMIが同じことはあり、非常に筋肉質の人が実際には脂肪を除いた正味の筋肉量により平均以上に体重が多いのに、BMIで測ると「肥満」に分類されやすいのです。

BMIはまた、体内のどこに脂肪が着いているかまでわからず、この点は病気のリスクに関して重要な判別要因です。このため、研究者らは体脂肪計器等体脂肪のよりよい尺度を使ったほうが異なる結果を見ることはじゅうぶん考えられます。

しかい、主任研究者であり執筆者のボストン・ブライガム婦人病院で疫病学助手のパメラ・リストさんはTime誌にこう語っています:「肥満や体重過剰の人だからといって、脳卒中の予後について見通しがつくわけではありません。」

運動で脳卒中リスクは下がる

脳卒中後の自立性維持に役立つほかにも、運動するとまず何より脳卒中が起きにくくなります。不活発な人は、週に少なくとも4回は汗をかくほどじゅうぶんに運動する人より、脳卒中や軽微な脳卒中 (一過性虚血発作)リスクが20 %高いです。

女性の場合、週に少なくとも3時間はウォーキングすると、脳卒中リスクが下がり、さらに、2009年にNeurology誌に掲載された別の研究でも、きつい運動をすると男性の脳卒中リスクが下がるだけではなく、脳卒中が起きても回復がよく、速いことが特定されています。

研究者らの結論:「適度からきつい肉体活動は脳卒中リスク低下を目指すために主な予防方法になる」 - 私はまったくその通りだと思います。事実、全米脳卒中協会は運動を含む健康的なライフスタイルで脳卒中の80 %は予防できるとしています。

運動は脳卒中生存者の脳の健康を改善する

最も多い脳卒中は、脳梗塞(虚血性脳卒中)であり、これは脳へ血を送る血管が詰まるので起きます。

このため脳が損傷し、認知症や記憶障害、言語障害、読み書き困難、話の理解力低下等多くの認知面の問題が起きます。

しかしこれらも運動により助かる問題です。今回取り上げた研究では、運動すると脳卒中後の肉体的機能、認知面の機能ともに改善しやすく、リストさんはTimeで「この研究の仮説のひとつが、脳卒中後に肉体活動と認知機能の維持を促すというものです。」

2017年、13件の臨床検査の検討の結果からも、運動で脳卒中患者の認知力がよくなることがわかりました。脳卒中後に運動した人は — 4週間から12週間でも — 運動しなかった人と比べて 一部の精神機能がよくなり、これには注意力や処理速度も含みます。

運動が脳のためになる理由

運動は脳の健康をよくすることはいくつもの経路で可能なので、想像がつきます。運動は最初にFNDC5と呼ばれる蛋白質の生産を刺激し、これが次に、脳由来神経栄養因子(BDNF)の生産を促します。

BDNFは既存脳細胞の保全だけではなく、脳幹細胞を活性化して新たなニューロンへの変換を促し、脳の成長が最適化されます。

この他にも運動すると炎症が減り、これは脳の健康によいもう一つのメリットです。最適な運動はどんなものかについて、「心拍数が高くなり、汗をかく」ものなら何でもよいが、筋トレやバランシング、ストレッチ体操も効果があります。

私なら高強度インターバルトレーニング(HIIT)もこれに加えます。注目に値することは、認知面のメリットは運動を脳卒中の数か月後からでもあるいは一部の症例では数年後から始めても効果があったことです。

早死にしやすいのは肥満ではなく不活発さ

全身の健康に関して運動と体脂肪に関して話を戻すと、体脂肪よりも運動不足のほうが脳卒中が起きやすいです。データが物語っていることは、肥満ではなく運動不足によるほうが死亡症例が少なくとも二倍多いです。

専門家のなかには、一般人の健康のためには肥満を減らすより運動を増やすことのほうが重要であると考える人もいます。最も大きな利点は、座ってばかりのライフスタイルから肉体的に活発になった人に見られます。また運動の頻度や強度を上げてもメリットは大きくなります(ただし一定の水準までであり、あまりやり過ぎると逆効果)。

運動すると、精神疾患から心臓病、糖尿病、癌まで、多くの成人病の危険は著しく低下する「最良の予防薬」であると研究者らが呼ぶようになったほど、運動は慢性病リスクを下げます。確かに健全な体重の維持は重要ですが、主な焦点は健康的で活発なライフスタイルを送ることに置くことです(始めれば通常は体重も減る)。

さらに別の研究では、日常的に、活発に運動した人々と比較して、座ってばかりいる人は、15年の間に心臓病で死ぬリスクが6倍高いことがわかりました。心臓病には脳卒中と共通する同じリスク要因があり、この点でも運動は重要で — 多くの病気のリスクが下がる一石二鳥以上の効果があります。

動き続けることがカギを握る

運動ではない動作も運動より重要であるとは言えなくても、等しく重要です。座る時間が長い等不活発さや動作の欠如が非常に多くの慢性病を促し、こうしたリスクは非常に元気であったり、規則的に運動していても起きます。

理想的なのは、終日動き続けることを目指すこと、これには座らず立っていることや動くことも含めます。着座を一日3時間未満に限定するよう心掛け、もっと歩くようにしましょう。立ち上がりデスクはこの目的に合致します。動くといっても、立っているだけではなく、座るだけに限らず、動作不足こそ代謝機能障害につながる要因です。

フィットネストラッカーを利用して一日の推奨歩数7,000から10,000を達成しやすくなりますが、10,000歩で止めることはありません。時間が許す限り、元気の続く間二倍歩くことや、ガーデニング、階段を使う、様々な自重運動等他の形態の動作でも構いません。

その他に脳卒中リスクが下がる要因

運動以外にも、脳卒中リスクが下がる要因はあります。以下に挙げることに気を配りつつ、健康な食生活のための私の栄養計画をご利用ください。

1. 日光 皮膚が日射を受けると一酸化窒素が発生しますが、一酸化窒素は血圧最適化のために必須の化合物であり、心臓発作や脳卒中のリスクがともに下がります。一酸化窒素は血行を促し、血管の弾力性を増し、脳内と免疫系でシグナリング分子として機能します。

さらに、当然のことながら、皮膚を日光に当てると、ビタミンD濃度も最適化でき、これが不足すると脳卒中につながる

2. 裸足で歩く 「アージング」とか「グラウンディング」と呼ばれるように地面を裸足で歩くと、強力な抗酸化効果があり、全身の炎症を抑えます。さらに、血液が異常に凝集しなくなるので、つまり血栓ができにくくなり、脳卒中リスクが下がります。

身体と大地の間にエネルギーが常時流れています。裸足で地面に立つと、足の裏から大量のマイナスに帯電した電子が体に吸収され、血液細胞が凝集しにくくなります。

科学的に言い換えると、グラウンディングすると赤血球のゼータ電位が増え、反発し合うようになり、血液がどろどろにならず、天然抗凝結剤のように作用します。

地上の自由電子が地表から血流に届き、血液を転換するまで約80分を要するので、草地や濡れた砂地を時間があれば約90分から2時間足で歩くようにするとよいです。

3. 繊維質 — 繊維質をもっとよく食べると脳卒中リスクが下がることをStroke誌に掲載されたある研究が明らかにしました。この研究によると、毎日繊維質を7 g食べるごとに、脳卒中リスクが7 %下がります。種子類(特にチアシードやサイリウム、ヒマワリの種、有機麻の実)もよいですが、野菜類が繊維質の最適な摂取源です。

脳卒中の警鐘を察知する:すぐ行動する

脳の救急血栓溶解剤を利用できます。すぐに対応すれば、救急薬で永久的な脳神経の損傷を防止または逆転させられますが、脳卒中が起きてから通常は処理を一時間以内に行うことが必要です。すなわち、ご自身または家族の人に脳卒中が起きたら、いち早く治療を受けるのが生死または永久的障害の有無の差を生みます。

警戒すべき兆候に早く気付くほど、予後はよく、以下に挙げる兆候や症状を少々の時間ですから目を通して、把握しておくとよいです。全米脳卒中協会によると略語FASTを脳卒中のために銘記しておくのがよく、必要ならすぐ行動が取れることが肝要です:

F = 顔 — 笑うように言う。顔の片側がうなだれますか?

A = 両腕 — 相手に両腕を上げるよう頼みます。片腕がずずっと下がりますか?

S = 発話 — 単純な句を繰り返し言うように相手に頼みます。発話があいまいになったり変異なりますか?

T = 時間 — これらのいずれかでもあれば、直ちに119番しましょう。