ベンチレーターでCOVID-19の致死率が高まった

Fact Checked(事実確認)
機械的換気の効果

早分かり -

  • シカゴ大学医学部の医師たちはベンチレーターではなく高流速の鼻カニューレ(HFNC)で「実際に著しくよい」結果が得られたとしています。HFNCのおかげで10日後に呼吸器機能が低下したCOVID-19患者24人のうち挿管が必要になったのは1人しかいませんでした
  • これより複雑でも有望な方法は膜酸素化(ECMO)で、これは患者の血液を対外で酸素化してから血流に送り込みます。ECMOはベンチレーターでは応答しない、併存疾患がほとんどない比較的若い患者に勧められています
  • COVID-19患者5人をHBOTで処置後に「有望な成果」が上がったと中国の医師たちが伝えており、ニューヨーク大学ランゴーン・ヘルスは現在HBOTと標準ケアのみを比較する研究のためにCOVID-19患者を募っています
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Dr. Mercolaより

最近数週間にベンチレーターで処置しているCOVID-19患者は死亡リスクが高いことを何人もの医者や公表された論文が指摘しています。Business Insiderの2020年4月9日号は、ベンチレーターを使用したニューヨークのCOVID-19患者のうち80%が死亡していることを伝えており、医師たちはその使用を疑問視し始めています。

The Associated Pressによると、「中国とイギリスでも同じことが伝えられ始めている。イギリスではあるレポートがベンチレーターを使用した患者の致死率が66%であると伝えている。武漢市の非常に小規模な研究は … 86%が死亡したと伝えている。」

酸素は必要でも換気は不適切

カメロン・カイル=シデル医師は担当している患者の症状は肺炎より高山病と似ていると指摘しました。ルチアーノ・ガッチノネ医師とジョン・マリーニ医師による最近の論文にもCOVID-19の発症にはL型とH型と呼ぶ二種類あると説明されています。

一部の患者は機械式換気の効果があっても、他の患者にはよくありません。ロジャー・セヒュールト医師はこの論文について取り上げたほか、COVID-19を高地肺水腫(HAPE)とも比較しています。

分析結果からベンチレーターは大多数の患者に不適切であることがわかり、シカゴ大学医学部の医師たちはベンチレーターではなく高流速の鼻カニューレ(HFNC)で「実際に著しくよい」結果が得られたとしています。プレスリリースでは以下のように説明しています:

「高流速の鼻カニューレ(HFNC)は非侵撃的鼻カニューレを鼻孔の下に置き、温かい加湿した酸素を大量に鼻そして肺に吹き入れます。

シカゴ大学医学部救急室のチームは呼吸機能が低下したCOVID-19患者24人にベンチレーターではなくHFNCで処置しました。全員とてもよく乗り切り、10日後1人のみ挿管が必要になりました…

HFNCは通常鼻カニューレを置き、患者は腹ばいになって呼吸を補助する手法です。このチームはシカゴ大学医学部の医師らと協力して数十人のCOVID-19患者に挿管しなかったところ結果は良好であったと、シカゴ大学医学部救急部門長トーマス・スピージェル医学博士が述べています。

『うつ伏せと高流量の鼻カニューレで患者の血中酸素飽和度は40%程度だったのが80%から90%まで増加したので、とてもよい結果が出たと思います』と、スピージェル医師が述べています…

『挿管しないことがカギです。当市全体では医師のほとんどが挿管しておらず、他の救急室もこの手法を詳しく検討するよう願っています。』と、スピージェル医師。」

体外膜酸素化法

もう一つのこれより複雑な膜酸素化(ECMO)による処置が有望なことが判明しました。このシステムは管やフィルター、ポンプから成る複雑なシステムで患者の血液を酸素化し、代謝産物を対外へ除去してから血流に戻します。

COVID-19でのECMO利用法は2020年3月30日号ASAIO Journalに紹介されました。概して、ECMOはベンチレーターでは応答していない、併存疾患がほとんどない比較的若い患者に勧められてます。ミシガン大学の2020年4月24日プレスリリースによると:

「4月21日現在… COVID-19が疑われるか確認された患者470人以上をECMOセンターで処置しており、そのデータが公表されました。患者の大多数は40代から50代前半の男性でした。約半数は肥満、5分の1が糖尿病患者でした。

COVID-19のためにECMO処置を受けている患者の大多数はいまだこの治療を継続しており、患者が自立的に呼吸できるようになるまで数週間かかります。この間患者を熟練した看護師や呼吸治療法専門医、技術者、内科医のチームがケアする必要があります…

患者をECMOセンターで評価してから移動し、症状が悪化しないようにします。ECMO開始前に7日以上患者にベンチレーターを使用してはならず、すなわち、挿管決定後間もなくECMOを検討すべきである。

ミシガン大学ECMOプログラム医療部長ジョナサン・ハフト医学博士は『ECMOで患者を処置するにはかなり多くのリソースが必要だが、死にそうな一部の患者に適切な方法であると考えている』と述べています。」

高圧酸素療法

従来の高圧酸素療法(HBOT)が見過ごされているのは悲しむべきことで、この方法は私が思うには卓越した治療法です。Orthomolecular Medicine News Serviceの編集長アンドリュー・ソル医師が「A Review of Helpful Antiviral Strategies(効果的抗ウィルス療法の検討)」でこう説明しています:

「患者の重度に応じた方法で酸素を供給するのがカギです。人体が酸素を取り込む能力にとても優れていること、そうでなければ人類が生存できないことを思い出すべきです。そして肺には膨大な量の吸収空間が存在します。要するにこれが肺の機能そのものです。人体のとても卓越したシステムです。

酸素は拡散して広まります。無理に入れるものではなく、身体は酸素が体外のほうに多ければ単に吸収するようにできています。豊富な吸収面を供給しさえすればよいのです。小さい肺胞をすべて広げたら莫大な面積になります…

したがって、酸素を供給し、身体が吸収しているかを最初に見ます。新鮮な空気と運動、屋外に出たり、遊ぶことで、このことは予防的に行われます…

酸素がさらに必要になれば、若干加圧して患者がよくなれば、それを行います。しかしムスタングのような加給器式に酸素を無理に押し込むのでは、人間にはよくありません…

[肺胞は]とても小さい袋です。肺胞には非常に微小な膜で成り立っています。顕微鏡で見てください。肺胞は非常に傷付きやすいです。機械を使えば侮辱に傷を加えるようなものです。」

機械的換気は、無理に空気を肺に入れるので肺が損傷しやすいです。しかし、HBOTの場合は加圧室で単に空気や酸素を呼吸するだけで、身体がより高率の酸素を吸収できます。

肺に直接無理に気流が押し込まれません。HBOTだとミトコンドリア機能も改善し、デトックスを助け、炎症を阻止し抑え、身体本来の癒やし能力を最適にします。これについては「Hyperbaric Oxygen Therapy as an Adjunct Healing Modality」(賦活療法としての高圧酸素療法)に詳しく説明されています。

COVID-19でのHBOT試験

この点に関しては現在ニューヨーク大学ランゴーン・ヘルスでHBOTを使った研究にCOVID-19患者を募集中なので、今後結果が出てくるはずです。その研究は2020年4月2日に投稿されました。ClinicalTrials.govのサイトに次の説明がありました:

「この研究は単一施設における前向きコホート・パイロット研究であり、新型コロナウィルス疾患COVID-19患者のための緊急検査装置としての高圧酸素療法(HBOT)の安全性と効果を評価する…

高圧酸素療法の担当医師による通気中断有無の両方で絶対気圧2.0 ATAの高圧酸素を90分間投与する。処置完了と同時に病室へ戻し、標準ケアを受け続ける…

この研究のなかで介入処置を行うとき、図の検討を行い、処置患者と標準的ケアを受けた患者の結果を比較する。」

中国の医師からもCOVID-19患者五人をHBOTで処置後「有望な成果」ありとも伝えられています。二名が危機的状態、五名が重症でした。国際高圧療法協会によると:

「COVID-19患者を処置している病院で高圧酸素を現行の包括的治療に追加して行い、用量圧力1.4~1 ATAで90~120分投与した。

結果は一回目から急速に症状が緩和されるなど、五名の患者が大幅に回復したので有望であった。

この処置を追加した理論的根拠は、COVID-19で生じうる進行性低酸素血症(血中酸素不足)を処置しやすくするためである。高圧酸素法によると血流に酸素を多く追加できる…」

病院こそSARS-CoV-2の伝染する場

ジョン・イオアニディス医師が3つの初期研究の結果について考察しています。重要な点は、院内感染 — 病院の中の環境が原因で起きる感染 — がCOVID-19による致死率が例えばイタリアやスペイン、ニューヨーク首都圏といった特定の地域で特に高い原因のようです。

これらの地域に共通することは多数の病院職員がSARS-CoV-2に感染しており、これがもともと免疫力が弱い患者に広まっていることです。

「病院こそCOVID-19と戦う最悪の戦場」と同氏は言っています。「実際に重症の症状がない限り、COVID-19症状があっても最適な処置としては入院させるべきではなかったのです。」

本質的には恐怖感がために病院へ多くの人が不要に行くことで、病院での連鎖により感染が拡大しました。多くの人は自宅で簡単に治療できたはずです。

こうした事実から病院での非常に厳密な感染管理が必要なことは明らかで、無症状の職員から患者に移らないようにできます。さらに、これらの事実から治療の必要性をもっと慎重に評価する必要があることも明らかになりました。

職員や脆弱な患者への伝染リスクが高まるだけなので、COVID-19症状が軽いまたは中度の人は病院に駆けつけるべきではないと、イオアニディス医師は強調します。

病院職員のCOVID-19による死亡リスクは推定0.3%しかなく、世界保健機関が主張する3.5%よりはるかに低率なことを示すデータも同氏は取り上げています。このデータやその他のデータもCOVID-19の致死率が季節性インフルエンザとたいして変わらないことを示すことも同氏は指摘しています。

自分の生命に対する恐れを抱きつつ悲痛な環境で勤務する人が多い病院職員にとって、この事実は励しになると、同氏はしています。結局こうした恐怖感はたいへん大げさであり、不要です。

敗血症はCOVID-19患者共通の合併症

軽度から中程度の症状は自宅で対処するほうがよいと同時に、敗血症の兆候に注意し続けることが重要です。COVID-19の症状が悪化し、敗血症の兆候があれば — 「敗血症の兆候と症状の識別」を参照 — 緊急に治療が必要です。

直ちに診断、処置しないと、敗血症は多臓器不全そして死に至ります。毎年、敗血症は世界中で死因の20%を占め、敗血症で起きるサイトカイン急増がCOVID-19により免疫力が弱い人や高齢者が死亡する主な原因でもあります。

The Lancetに掲載された2020年3月11日のある論文研究によると、研究で取り上げた中国のCOVID-19患者191人の59%が敗血症になり、死者全員が敗血症になっていました。これが最大の合併症で、次が呼吸不全、急性呼吸器機能低下症候群(ARDS)、心不全でした。