食事により認知症リスクが高くなるか下がるかの違い

Fact Checked(事実確認)
アルツハイマー病向け食事

早分かり -

  • 高脂肪、適度なタンパク質、低正味炭水化物から成るケトン食はアルツハイマー病につながりうる萎縮を予防するための決定的条件です。炭水化物が多いと認知症リスクが89%高まり、高脂肪食生活なら44%低くなることがすでに証明されています
  • お茶を週に三回以上飲んでも心臓血管病リスクと全原因死亡率が低下しました。週三回以上お茶を飲む50歳の人が心臓病になったり脳卒中を起こすとしても、これより少ない頻度でしかお茶を飲まない人より、1.41年遅延する傾向があります
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Dr. Mercolaより

2019年に公表された統計によると、効果を奏する処置法も治癒も従来ない、最も一般的によく見られるタイプの認知症であるアルツハイマー病は、2016年の540万人から増大してアメリカ人のうち580万人が罹っていました。

アルツハイマー病の進行のしかたはさまざまですが、しばしば短期的記憶力の減退に始まり、後には会話ができなくなったり、執行機能の障害が出てきます。

食生活は認知症のために重要な機能をする

対策を始めるのに早すぎることはないですが、頻繁に思い出せないことがあり一抹の懸念でもあれば、すぐに実行すべきです。高脂肪、適度なタンパク質、低正味炭水化物から成るケトン食は、脳の健康を保護し、アルツハイマー病につながりうる萎縮を予防するために決定的に重要です。

脳の健康に及ぶ高脂肪/低炭水化物食と高炭水化物食の影響を示した最も波紋の輪を広げた研究の一つは、高炭水化物食が認知症リスクを89%高め、高脂肪食が44%低下させることを明らかにしました。

その執筆者らによると、「炭水化物から比較的高カロリー、脂肪やタンパク質から低カロリーという食生活パターンは高齢者の軽度な認知障害や認知症のリスクを高める。」その他の研究は果物や野菜、お茶やティーに含まれる抗酸化物質フラボノールを豊富に摂り込むことが大切であることに注目しています。Reutersがこう報じています:

「921人の認知症がない被験者を平均年齢81歳になったときに開始して6年間追跡調査した。研究中に、220人がアルツハイマー病の疑いがあると診断された。

フラボノールを食事から最も多く摂った人は最も少なくしか摂り込まなかった人より、アルツハイマー病になるリスクがほぼ半減していた。… 最も多くフラボノールを食べた人の15%がアルツハイマー病を発症したが、最も少なくしか摂り込まなかった人の場合はこのリスクが54%まで高くなった。

この差異は、糖尿病や心臓発作あるいは脳卒中の既往歴あるいは高血圧などその他のアルツハイマー病のリスク要因を考慮しても維持された。」

全体としては、最も少ない四分位の人々は一日平均およそ5.3 mgのフラボノールを摂っていましたが、最も多く摂取していたグループは一日に15.3 mg摂っていました。フラボノールを最も多く摂った被験者は最も少なくしか摂らなかった人よりアルツハイマー病になるリスクが48%下がりました。

一部のフラボノールは他より効き目がある

特定のフラボノールが他のフラボノールより保護効果が高いかを特定することに研究者らは注目しました。これについて同定するため、被験者を以下の成分の摂取状況別に評価しました:

  • ケンフェロール
  • ケレスチン
  • ミリセチン
  • イソラムネチン

この観点ではケンフェロールが断然効果がよいことが判明しました。ケンフェロールを最も多く消費した人は認知症リスクが51%低下し、イソラムネチンとミリセチンでは38%リスクが低下していました。ケレスチンは強力な抗ウィルス性があり、免疫力を強くしますが、アルツハイマー病のリスクには効果が見られませんでした。

お茶をよく飲む人は長寿

関連するニュースとして、European Journal of Preventive Cardiologyの2020年1月号に、日常(週三回以上)お茶を飲むと心臓血管病のリスクおよび全原因死亡率が低下することが掲載されていました。

全体としては、研究から判明した事実が示しています。週三回以上お茶を飲む50歳の人が心臓病になったり脳卒中を起こすとしても、これより少ない頻度でお茶を飲む人より、1.41年遅延することがわかりました。全体としては、これらのよくお茶を飲む人は日常あまりお茶を飲まない人より1.26年長生きの傾向がありました。Science Dailyが次のように説明します:

「全くお茶は飲まないか普段あまり飲まない人と比較すると、日常お茶を飲む人は心臓病や脳卒中の発生リスクは20%低く、心臓病や脳卒中で死ぬリスクが22%低く、全原因死亡リスクは15%低いことが判明した。」

ケトン食がいかに脳の機能を保護するか

ケトン食に戻ると、この食生活をするといくつもの経路で認知症のリスクが下がります。手始めに、周期的なケトン食はインスリン感度を高め、これはアルツハイマー病において重要な要因です。インスリン感度とアルツハイマー病の相関性は非常に強く、この病気をときどき3型糖尿病と呼ぶこともあります。

たとえ血糖が若干上昇するだけでも、認知症のリスクが高くなります。糖尿病と心臓病もリスクを高めることが知られており、両方ともインスリン抵抗性が根本原因です。最適な健康のためには、インスリンレベルを3 mcU/ml (空腹時)未満に維持する必要があります。

糖分の多い食事とアルツハイマー病の関連性はDiabetologiaの2018年1月号に掲載された、ある十年を掛けて行われた研究で注目されており、血糖が多いほど、認知力低下が速くなることが示されています。

いくつもの研究からも、インスリン抵抗性が強いほど、脳の基幹的部位に糖分が少なく、これらの脳野は典型的にアルツハイマー病の影響を受ける領域です。

周期的なケトン食をしても身体は脳萎縮を予防しアルツハイマー病の症状を和げる脳の重要なエネルギー源(燃料)ケトンを生産し始めます。ケトンは脳内のニューロンや神経機能に損傷が発生してからも修復し、更新させる効能があります。

最後になりましたが以上の項目と等しく重要な点として、周期的ケトンダイエットは脳内のフリーラジカルによるダメージを減らし、炎症を抑えます。この効果もケトンが反応性酸素の発生量を減らし、炭水化物によるようなフリーラジカルによる損傷を発生させないので、大部分がケトンの効果です。

ベータヒドロキシ酪酸というケトンも主要なエピジェネティックな寄与因子であり、NF-kBを削減することにより酸化ストレスを急激に減少させるので、DNA発現を改善するのにともない炎症レベルとNADPHレベルを削減し、デトックスおよび抗酸化物質の生産を促します。

(明確に把握するため追記しますが、ケトン食は健康な脂肪も野菜も非常に多く摂る傾向があります。野菜の炭水化物なら制限無く食べても構いません。お茶にも制限はありません。

賢明な判断が必要と考えられる唯一のものは、果糖が非常に多いものもある果物についてです。果物から食べる果糖であっても、身体が主要な燃料として脂肪を代謝するようにうまく転換できるまで、初期段階では制限すべきです。どんな脂肪をもっと食べると効果的かについては、私の栄養計画の脂肪の節をご参照ください。)

トランス脂肪でアルツハイマー病リスクが高くなる

健康な脂肪と抗酸化物質が多い食事は認知症予防のためにとても有用ですが、トランス脂肪や精製、穀類が多い食事はその逆効果になります。Neurologyの2019年10月号に掲載されたある研究は、トランス脂肪の消費と認知症の発生率、アルツハイマー病を含む認知症の様々な亜種の相関性を特定しました。

その研究では日本の60歳以上の高齢者1,628人が対象でした。その10年に及ぶ研究の開始時に認知症の被験者はいませんでした。参加者の血清エライジン酸濃度 — 工業精製トランス脂肪のバイオマーカー - をガスクロマトグラフィー/質量分光分析計を使って計測しました。

これらの血中濃度に基づきコックス比例ハザードモデルを使って全原因認知症、アルツハイマー病、血管性認知症のハザードレシオを計算しました。その執筆者らによると:

「血清エライジン酸濃度が高いと全リスク要因に関し調整後の全原因認知症およびAD [アルツハイマー病]発症リスクが高くなることに有意に関連付けられた。

こうした関連性は総カロリー摂取量や飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸の摂取量を含め食事の要因に関して調整後も有意なままに留まった。」

このリスク増大が僅かでないのです。CNNが伝えるように、エライジン酸濃度が最も高い四分位の人は認知症になる確率が74%高かったのです。第二の最高濃度四分位の人はこのリスクが52%高いことがわかりました。

エライジン酸濃度を高くすることがわかっている様々な加工食品のなかでも、ペストリーが最も寄与し、次がマーガリン、キャンディー、キャラメル、クロワッサン、非乳製品クリーマー、アイスクリーム、コメ菓子でした。

酸化オメガ6 — 避けるべきもう一つの有害脂肪

トランス脂肪を避けることは明らかに必要ですが、Dr.クリス・クノベが加工油がほとんどの洋食に含まれる主な悪質な物質であることを示した説得力のある証拠を示しています。

その大部分は加工油に含まれる酸化オメガ6に関連しており、トランス脂肪よりさらに悪質であると思われます。さて、オメガ6脂肪(リノレン酸)はそれ自体、またこれだけで問題になるわけではありません。リノレン酸はナッツや種子、玉子などの食品にも含まれており、健康のために重要です。

問題なのは酸化オメガ6脂肪のほうで、ほとんどの人がこれを摂り過ぎであることです。オメガ6が豊富なサラダ油のほとんどの重要な危険性の一部について「This Fat Is Actually Worse Than Trans Fat」(この脂肪はトランス脂肪より実際に悪い)で採り上げています。

オメガ3対オメガ6比を均衡させて健康を守ることの大切さを長年私は強調してきました。最適なのは年一回オメガ3指数検査を受けて健康的範囲にあることを確認するのがよいです。オメガ3指数は8%を超え、オメガ6:3比は0.5~3.0であるのが望ましいです。オメガ3対オメガ6比のバランスが後者のほうに多く偏っていれば、以下の対策で補正する必要があります:

1. 加工食品やサラダオイルで高温調理した食べ物を避けて損傷したオメガ6を摂り込まないようにする。有害なオメガ6が含まれる一般的な食品にはコーンオイル、カノーラオイル、大豆油、水素処理あるいは一部水素処理された脂肪、マーガリン、ショートニングが挙げられます。

2. いわし、アンチョビ、ニシン、野生捕獲アラスカ鮭などから動物性オメガ3を摂り込む量を増やす、あるいはオキアミ油などのサプリメントを飲むことです。いずれでもこれらはすべてリン脂質と結合したDHAが得られます。

リン脂質と結合したDHA(ほとんどの魚油サプリメントに含まれるトリグリセリドではなく)は、アルツハイマー病になりやすくするAPOE4遺伝子を持つ人のためには特に重要です。この点について詳しくは「Phospholipid-Bound Omega-3 May Lower Alzheimer’s Risk in High-Risk Individualss」(リン脂質と結合したオメガ3はアルツハイマー病のリスクが高い人のリスクを下げると考えられる)をご参照ください。

コレステロールが少ないと認知症リスクを高める

アルツハイマー病のリスクに影響することが証明されたもう一つの栄養面の要因は低コレステロールです。総コレステロールが多いことについては多くの警告がありますが、低レベルでもこれと同じほど深刻な影響が及びます。実際に、いくつもの研究は、アルツハイマー病の予防のために特に、コレステロールの重要性を実証しました。

上級研究科学者ステファニー・セネフ博士によると、脳に脂肪とコレステロールが不足すると、アルツハイマー病の進行に決定的機能をすることを2009年の論文「APOE-4: The Clue to Why Low Fat Diet and Statins May Cause Alzheimer’s」(低脂肪食とスタチンがアルツハイマー病の原因になりうることを解明する鍵)のなかで詳しく論じています。

この論文で、HDLが多くLDLが少ないと脳内のアミロイドプラークの堆積リスクが下がることに関連すること、これらの事実は年齢やAPOE4遺伝子の有無とは関わりがないことを研究者らは特定しました。

れに反し、2008年に公表されたある研究は、遺伝子的にアルツハイマー病の素質がなく、LDLも含めたコレステロールが最高濃度の高齢者は記憶力が最もよいことを発見したので、高LDLが大きなリスク要因であるかに関してまだ判断しえないのです。

健康的な食習慣が脳の機能を保護する

今回採り上げた主な食生活要因をまとめると、健康的な脂肪やリン脂質に結合したオメガ3 DHA、果物や野菜、お茶やティーのフラボノールが豊富な食生活はアルツハイマー病から守ります。

脳の健康を悪化させ、認知症リスクが高くなる食事の要因には精製糖や穀類、トランス脂肪、工業精製サラダ油(破損したオメガ6が多い)、コレストロール不足が挙げられます。