COVID-19にアスピリンやモトリンを使用しないほうがよい理由

イブプロフェンの危険性

早分かり -

  • 2020年3月11日、The Lancetに掲載されたレターに、COVID-19は宿主のACE2受容体と結合することで感染するので、イブプロフェンとその他のACE阻害剤はACE2の発現が増大することにより、COVID-19感染を悪化させるという仮説を取り上げていました
  • イブプロフェンが敗血症患者の生存率を改善しないことも別の研究からわかっています。発熱により誘発される熱衝撃タンパク質は敗血症による酸化性負傷から保護しうるので、熱衝撃タンパク質を抑制する解熱剤には悪化させる危険性があります
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Dr. Mercolaより

新型コロナウィルスCOVID-19(SARSによく似ているのでときどきSARS-CoV-2とも呼ばれる)関連のニュースをよくフォローしてきた方なら、イブプロフェンの使用について相対立する情報が載った記事をおそらくご覧になったことがあるでしょう。

イブプロフェンでCOVID-19感染症が悪化するという人がいる一方、こうしたリスクはないという人もいます。例えば、2020年3月18日にCNNが、フランスのオリバー・ヴェラン厚生大臣がCOVID-19感染にともなう発熱や痛みの処置にイブプロフェン)などの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の使用に対して警告し、その代わりアセタミノフェン(パラセタモル)を推奨していることを伝えました。

イブプロフェンのリスクに関して対立する見方がある

CNNによるとベラン大臣の推奨は「公表された根拠がないという理由で一部の医療専門家の批判を招きました。」世界保健機関のタリク・ヤシャレビチ報道官はCNNに、この課題について調査中であるが、文献をざっと見た限りベランの推奨を支持しうる臨床データあるいは人口学的データは発見されなかったことを伝えています。

同様に、アメリカの国立アレルギー伝染病研究所(NIAID)はNBC Newsに、「イブプロフェンがCOVID-19の進行に影響しうるかについてさらに評価を要する」、さらに「イブプロフェンにより重症の合併症リスクあるいはCOVID-19の原因であるウィルスに感染するリスクが高まるという根拠はない」と伝えています。

欧州医薬品庁はほぼこれと同じ声明を出しました。しかし、同庁はフランス国家医薬品健康製品安全管理庁がこれらの薬剤は水痘(varicella)感染や一部の細菌感染を悪化させると考えられると報告した後2019年に、NSAIDの見直しを開始したことも指摘しています。

しかしフランス厚生省(連帯・保健省)は、COVID-19感染が確認されたか疑われるNSAIDを投与した患者において「重篤事象が」確認されたので、イブプロフェンは避けるべきという推奨を維持しています。

2020年3月14日、最新のCOVID-19処置ガイドラインでフランス厚生省は、「COVID-19関連またはその他任意の呼吸器系ウィルス性疾患に関連する発熱ないし痛みの処置にパラセタモルを使用すべき」であり、一日用量が体重1 kg当たり60 mgを超えないようにするよう強調しています。

一部の主流ニュースメディアはイブプロフェンを避けるという推奨が科学的根拠のない「インターネット上の流言」にすぎないとして無視していますが、全く無視し去るのは愚行の極みにしか見えません。

まず何より、フランスの厚生当局はNSAIDを感染した患者に投与すると重篤事象につながると言っている以上、注意を向けるほうが賢明ではないでしょうか? いずれにせよ、臨床検査には時間が掛かるので、現場から来る逸話的な事実に注意を向ける価値は、少なくとも研究が追い付くまでは意味がありそうです。

私と同様、イギリス厚生省(NHS)も誤っているかもしれないがこうした注意する立場に立つ側です。2020年3月18日にNHSが次のようにツィッターに投稿しています:「イブプロフェンでコロナウィルスが悪化するという説得力ある根拠はありません。しかし新たな情報を得るまでは、担当医がパラセタモルではあなたに合わないと言わない限り、パラセタモルを使ってコロナウィルスの症状を処置してください。」

上のMedCramのビデオで、Dr. ロジャー・セヒュールトがNSAIDの効能と副作用について説明しています。例えば、この薬ウィルス複製を阻止する効能がある反面、抗体生産まで阻止するので、非常に悪質なウィルスと闘っているときは悪影響があります。さらに、1918年のインフルエンザ大流行のときのアスピリン大量服用という宣伝と一般的使用が、1918年10月の死亡者数急増の原因であったことを示す、説得力あるデータも同氏は取り上げています。

COVID-19併存疾患から何が言えるのでしょうか?

この議論を盛り上げたのはThe Lancet Respiratory Diseases、2020年3月11日号に載ったレター「Are Patients With Hypertension and Diabetes Mellitus at Increased Risk for COVID-19 Infection?」(高血圧症や糖尿病患者はCOVID-19感染リスクが高いか)でした。

重症のCOVID-19感染症患者および今回の感染により死亡した患者に最も多くみられる併存疾患は高血圧、2型糖尿病、冠動脈疾患、脳血管疾患であることをそのレターが指摘しています。

これらの異常の共通項はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(血管を弛緩させ広げる薬)で頻繁に処置されている患者であることです。残念ながら、COVID-19症例での併存疾患を調べた3本の研究すべてが、これらの併存疾患に対する薬剤処置についてのデータを含んでいません。

併存疾患に関して言うと、2020年3月17日のイタリア先端衛生研究所(Instituto Superiore Di Sanita)はイタリアでCOVID-19により死亡した人の99 %以上はすでに病気であったことを指摘しています。この事実は死者の大半が80歳以上で起きていることを考えると驚くほどのことではありません。

イタリアの感染者平均年齢は63歳です。死者の約半数は3種類かそれ以上の既往症があり、残り半数は1つか2つの既往症がある人々でした。2,003人という発表ベースの死者数のうち3人しか既往症が無い人々でした。

提案されている機序

ACE阻害剤にCOVID-19とどんな関連性があるのか? Lancetのレターの執筆者らによると、問題なのは、ACE阻害剤はACE2の発現を促し、COVID-19は肺や腸壁、腎臓、血管内壁にある表皮細胞にあるACE2受容体と結合することで、宿主の細胞に感染することです。

従って、ACE阻害剤はCOVID-19感染リスクも合併症リスクも高める恐れがあるというものです。その執筆者らは、さらにイブプロフェンでACE2も増えるので、COVID-19の症状がある限りイブプロフェンを避けるべきという推奨は悪い考えではないと言えると指摘しています。

これと関連する付記としては、イブプロフェンはACE阻害剤と反応して悪影響を及ぼすので、ACE阻害剤を服用中の患者には、腎臓の異常を防止するためアセタミノフェンを服用するよう通常は勧められています。

The Lancetのレターの執筆者レイ・ファンとマイケル・ロス(スイス、バーゼル大学附属病院肺細胞研究科・肺病学)とジョージ・カラキウラキス(ギリシア、テサロニキアリストテレス大学医学校薬理学部)によると:

「ヒト病原体コロナウィルス(重症急性呼吸器症候群コロナウィルス[SARS-CoV]とSARS-CoV-2)はアンジオテンシン変換酵素 2 (ACE2)を介して標的細胞に結合する…

ACE2の発現はACE阻害剤およびアンジオテンシンIIのI型受容体阻害剤(ARB)で処置されている1型または2型糖尿病患者でおおきく増加している。

高血圧はACE阻害剤とARBでも処置されており、ACE2の発現を高めることになっている。ACE2はチアゾリジネジオンやイブプロフェンによっても増加する。

以上のデータに基づいて、ACE2の発現は糖尿病で高まっており、ACE阻害剤やARBによる処置がACE2の発現を高めることが示されている。その結果、ACE2の発現増大によりCOVID-19に感染しやすくなる。

従って糖尿病と高血圧をACE2刺激薬で処置すると重症から致死的COVID-19発症リスクが高まる…

さらに調べる必要がある側面は、SARS-CoV-2感染しやすい遺伝子の傾向であり、この場合糖尿病や脳卒中、高血圧症に関連しているACE2遺伝子多型が原因と考えられる…」

発熱は免疫防御の重要な要素

さて、発熱時にNSAIDやその他の解熱剤を避けるべき上記とは全く異なる理由があり、この事実は発熱が身体の免疫応答の一環として起きることに関係します。すなわち発熱によって病原体を殺すからです。

このためサウナで体幹温度が高くなると感染予防に役立つので、私がサウナをよくお勧めする理由の一つです。

体幹温度が高くなると白血球はウィルス感染した細胞を効率的に検出して殺すことができます。市販の解熱剤を飲むとこの重要なプロセスに干渉し、感染が継続しやすくなり、その過程でさらに損傷が増大することになります。

いくつもの研究がこの課題を調べた結果、発熱を抑える処置が病気を長期化させ、悪化させる可能性が高いという結論に至っています。体温が危険なほど高くならない限り、よりよい方法は病床でたっぷり汗をかき、水をよく飲むと、「汗で病を追いやる」ことができます。米国小児学アカデミーによる方針書「Fever and Antipyretic Use in Children」(小児における発熱と解熱剤の使用)によると:

「多くの親は子供が『平熱』を維持すべきだと心配するので、微熱あるいは全く発熱がなくても解熱剤を投与する。しかし発熱が病気なのではなく、感染と闘うために有益な効果を奏する生理的メカニズムである。

発熱自体が病気を悪化させたり長期的神経的合併症を起こす根拠は存在しない。このため、発熱した子供の処置において主な目的は体温を平熱にしようとすることではなく子供の全体的な快適性を高めることである。」

発熱は放っておけば死亡率を低める傾向がある

2005年に掲載されたあるランダム対照試験は、38.5℃を超えて発熱した重症患者をアセタミノフェンと冷却毛布で処置したら感染症が悪化し、発熱が40℃になるまで処置を受けなかった患者より死亡率が高まったことを確認しました。その執筆者らによると:

「患者44人を積極的処置群、38人を許容状態群に無作為に分けた。…積極的処置群では131件の感染、許容状態群では85件の感染があった。

積極的処置群では7人が死亡したが、許容状態群では1人が死亡したのみであった。同意による免責条項の課題およびリスクを最小限とする必要性に伴う死亡率の差異を原因として初回暫定分析後に研究を停止した。結論:重症患者の発熱に積極的処置を行うと死亡率が高くなる。」

2002年、Current Opinion in Infectious Diseasesに掲載された別の論文「Fever: Beneficial and Detrimental Effects of Antipyretics」(発熱:解熱剤の効能と副作用)からさらに引用させていただきます:

「すべての感染症ではなくても多くの感染症において発熱は有益な効果があることを豊富なデータが示している。

例えば、市中感染性肺炎患者に関するある調査では、37.8 ℃を超えて発熱し、白血球数10 000 個/mm超であった患者の死亡率が4 %であったが、発熱も白血球増加症もない患者で29 %であったことと対照的である。

大腸菌菌血症および緑膿菌敗血症による発熱患者は発熱のない患者に対して生存率が高いことも判明した。…数多くの動物実験か重症感染症において死亡率と体温の反比例関係が示された。

このような実験のうちある一件では、肺炎桿菌腹膜炎にしたマウスの体温を平熱から高熱へ意図的に高めた場合、生存率は0%から50%へ増加した。」

熱衝撃タンパク質は敗血症ショックによる負傷から保護する

サウナに入ると熱衝撃タンパク質が増えます。

「High Heat May Kill the Coronavirus」(高温でコロナウィルスが死ぬ可能性がある)でご説明したように、発熱かサウナによるかを問わず、体幹温度が上がると熱衝撃タンパク質が活性化し、ウィルス複製を実際に抑止します。

上記に引用させていただいた「Fever: Beneficial and Detrimental Effects of Antipyretics」(発熱:解熱剤の効能と副作用)に説明されているように、熱衝撃タンパク質は敗血症で発生するように、酸化性の負傷からも保護します。

COVID-19はウィルス感染症であり、重症の場合はサイトカインが激増し(敗血症と同様)するので、イブプロフェンをCOVID-19関連の解熱剤として使用するには少なくとも少々の警戒が必要なようです。