ギーのほうがバターよりよいでしょうか?

ギー

早分かり -

  • ギーは大昔から伝統的料理に油としても成分としても使われてきたが、アユルベーダではマッサージやハーブ軟膏に欠かせないものでもあり、薬としては発疹や火傷に効きます
  • ギーは牛乳から作るバターが開始剤であり、液状脂肪を乳固形分から分離し、乳固形分を除去しますが、この製法が多くの人の信じるようにバターより健康です
  • ほぼどんなタイプの浄化バターより長時間熱して作るギーは暗めの色をしており、風味が濃くナッツ風であるほか、煙点が高く、炒め物に簡単に使えるうえ、健康的でもあり、しかも自分で作ることもできます
  • ギーの成分である共役リノール酸(CLA)、酪酸塩という脂肪酸などの化合物は炎症や冠動脈疾患のリスクを下げ、消化をよくするようです
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Dr. Mercolaより

ギーが聞き慣れない言葉だと思う人のために浄化バターと言えばわかりやすいでしょう。ギーと普通のバターの一つの違いは前者にはバターほど多くの乳タンパク質がないことで、多くの健康推進論者がギーのほうが健康的なオプションであると主張します。純粋な生乳から作るバターから始め、ギー製造工程には加熱、乳固形分からの液状脂肪分離、これによる乳固形分のキャラメル化、さらに乳固形分除去(これでほとんどのラクトースが除去される)。

ギーはインドやパキスタン、東南アジアでは大昔から伝統的料理に油としても成分としても使われてきたが、アユルベーダではハーブ軟膏、マッサージやに欠かせないものでもあり、薬としては発疹や火傷に効きます。バターは健康のために悪いわけではありません(特に、1960年代に増大した人を誤らせてきた大衆市場製品であるサラダオイル、マーガリンその他数知れない劣悪品と比較すると)が、バターが原料のギーのほうが優れる選択肢です。

一つには、ギーはほとんどの浄化バターより長時間加熱され、暗めで、ナッツ風の風味がするほか、煙点が高く、炒め物に簡単に使えるうえ健康的でもあります。実際、ギーを食事に使うと心臓などいくつかの領域にメリットがあると考えられます。ギーは50%が飽和脂肪分なので、健康によいのですが、飽和脂肪を含め脂肪が体に良いことを医学界や栄養士のコミュニティーが気がつくまでは悪者扱いされていました。

興味深いことに、母乳の54 %は飽和脂肪です。こうした良質の脂肪は、正常な発育のために欠かせず、赤ちゃんはこれがないと正しく育ちません。米国心臓学会さえ一日の食事摂取量の5~6 %を飽和脂肪とすることを勧めていますが、これでは(最適な健康のためには50 %から70 %の間でもなるべく多い割合を健康な脂肪で摂ることが必要なので)少なすぎるのですが、バターはおいしくいただけ、この要件を満たせます。

このため、ギーがバターより優れる点は少なくとも「浄化」されている部分ですが、それでもまだ但し書きが続きます。今日米国では通常の「牛乳」生産には人間が摂り込むはずがない(べきではない)成分が含まれることを把握しておくことにも意義があります。ギーをギーにしているすべての特徴を知るにはまず牛乳について知ることが必要です。

古い牛乳だけではなく、牛乳からまず始めること

米国の農場で生産されるほとんどの牛乳は皮相的に病原菌を除去するため、高度に等質化と滅菌処理を経ていることは周知のことでしょう。しかし、超高温処理(UHT)という高温による過激な処理をすることでミルクの有効期限が長くなると同時に、自然の免疫促進性酵素やB6、B12、Cなどのビタミンをほとんど破壊します。

消化によい善玉菌までも壊滅され、その他いくつもの問題とともに便秘につながります。最も皮肉な事実としては、滅菌されても、最終製品から除去されないので、断片が残り、これが牛乳アレルギーの蔓延の原因になっています。有機消費者協会(OCA)の説明によれば:

「こうして処理された牛乳を飲むと、基本的に『死んだ』ものを飲んでいることになり、滅菌や等質化が栄養素やタンパク質を破壊し、健康的な脂肪を腐敗させ、体内ではフリーラジカルを発生させます。化学的組成を変成させるので牛乳が変質します。

ラクターゼやガラクターゼなどの酵素や、栄養素の同化に欠かせないリン酸塩は破壊されます。これらの栄養分がないと牛乳は消化しにくくなります。実際に滅菌牛乳にラクターゼが無いことがラクトース不耐性の原因です。残念ながら、膵臓はこれらの酵素を生産することができず、ストレスをその分余計受けるので、糖尿病その他の疾患のリスク要因になります。」

Sustainable Tableのサイトに、現代のプロセスが伝統的飼育法からあまりにもかけ離れており、農業生産とはもう呼べなくなっているという指摘がありました。このプロセスはまず工業的な、「ぎゅうぎゅう詰めの条件で飼育される家畜給餌事業」に始まります。乳業の場合、乳牛700頭ほど大規模になると、「高密度」とか「集約的」なCAFO操業になります。端的に言うとこうなります:

「20世紀の始め頃、工業的酪農場に家畜が増加したため不潔な操業が行われるようになりました。このため病原菌が猛烈に拡散し、実際に猛威を振るうようになったので、牛乳および感染した人を汚染しました。これが滅菌処理が普及した主な原因でした。

今日では、過密[高密度」家畜給餌事業体(CAFO)で生産されているほとんどの市販牛乳では、こうした過剰な密度で飼育されている条件が指数的に悪化し、CAFOは病原菌汚染の温床になったため、さらに滅菌処理が必要になりました。」

「過敏症」はカゼイン、ラクトース、グルテンによる

ギーからは乳タンパク質が除去されているので、製造工程でカゼインやラクトースがほとんど無くなります。Cambridge Dictionaryを引くと、ラクトースとは牛乳に含まれる一種の糖分であり、カゼインは生乳に含まれる主要タンパク質です。カゼインとグルテンの分子構造は類似しています。Healthy Eatingにこんな説明がありました:

「グルテンとカゼインはともにタンパク質ですが、グルテンは小麦や大麦、ライムギに含まれ、カゼインは牛乳や乳製品に含まれます。このうち一つまたは両方ともにアレルギーの人がいる一方、遺伝病であるセリアック病の人もいます。」

牛乳は赤ちゃんに与える最初の食事の一つであると言われ、子供に発生する最初のタイプのアレルギーの一つです。初期症状の一つが呼吸器系の異常です。2014年にオーストリアで最初に行われたある研究はカゼイン過敏症によるいくつかの症状に注目しています:

  • 発疹、発赤
  • かゆみ
  • 腹痛と腹部膨満
  • 吐き気/嘔吐、下痢
  • 咳、くしゃみ、喘息症状

残念ながらこれらは軽度の牛乳アレルギー(CMA)の症状です。ヒポクラテス時代まで遡るほど、胃腸や皮膚の異常は記録に残っていますが、20世紀初頭に牛乳消費による症候は頻繁になりました。下痢以外にも、全身性ショックのほか子供の肉体的発育の遅れも発生しました。

1994年、JAMA Networkが採り上げたある記事では、乳幼児の牛乳アレルゲンが0.5 %から7.5 %と言われていましたが、患者層によっては25 %にも及ぶと考えられ、不特定の症状や世界の異なる地域に分散していることが原因でしばしば見過ぎされています。別の研究では、牛乳は母乳の代用としてよく乳児に与えられているという事実が、こうした問題の増大の一部の説明要因になると説明しています。

有機の草で育ったバターから作るギーのほうがよい

有機の草で育ったバターでギーを作るのがよいのはなぜでしょうか? 抗生物質の過剰投与が抗生物質耐性につながり、さらに抵抗力の付いた病原菌が増え、新たな菌種が増えました。米国FDA(食品医薬品局)の保健社会福祉局の報告書によると、米国で使用されている抗生物質の80 %が日常的に「病気と闘う」ために家畜に投与されています。

このほか、ギーの品質は原料のバターを作るのに使う原料乳の品質で決まります。有機の草で育ったバターつまり遺伝子組み換え(GE)とうもろこしなどの穀物ではなく、草を食べて育った乳牛のものが最適な選択でです。

さらに、特に自分でギーを作るなら生乳を可能な限り使いましょう。ギーそしてバターにも該当する、最適な栄養素の中には、USDAのNational Nutrient DatabaseやNutrition DataによるとビタミンA、E、K、葉酸塩、コリンが含まれます。バターとギーの栄養分は次の点が違います:

  • バターの煙点は175℃前後ですが、ギーは250℃前後まで加熱してもまだ発煙しません。
  • 他のオイルと比べて、ギーには加熱されると毒性が出て動物実験ではがんさえ発生させることがある化合物アクリルアミドがバターより少ないです。
  • Medical News Todayによると、ギーは共役リノール酸(CLA)が豊富で、冠動脈疾患リスクを下げます。
  • ギーには酪酸という脂肪酸が含まれ、これは消化をよくすることが知られており、バターと同じく炎症を予防することもできるようで、このほか過敏性腸症候群(IBS)や腸管壁浸漏症も予防すると考えられます。
  • 酪酸は大腸がんやインスリン抵抗性の予防も助けると考えられるほか、その結果、2型糖尿病を予防するのに好都合です。

「ギーを食べるとよいタイミングは?」と訊いたほうがよいかもしれない

バターはマーガリンではないからだけではなく、有機で草で育った限り、健康的な食品としてもよいものです。しかし、人によってはギーのほうが優れます。どちらがよいかは個人の必要性次第です。結論から言うとラクトース感度が高いあるいは不耐性な場合、ギーのほうが断然よく、煙点がバターより高いことからして調理しても健康的な食品です。

ギーはスーパーマーケットや有機専門店ですぐ買えますが、有機の草で育った純粋はバターから自分で作ることもできます。Kettle and Fireに簡単な7つの手順による作り方の説明がありました:

有機の草で育ったバターを約1.25cm角に切り分ける。

中火でバターを溶かす。

バターから泡が出始めるまでぐつぐつ熱する。

二回目にぶつぶつ泡が出る頃までさらに10~15分加熱する。

牛乳の固形分が赤褐色になり、フライパンの底に定着し始めたら加熱を止める。

数分冷ます。

チーズクロスでこの混合物を濾して蓋が密閉式の容器に入れる。出来上がり。

調理の際は、バターと同じくギーをどんな食品にも使用でき、玉子や肉、野菜などなんでも自分の好みで使えます。ギーとバターの煙点を比較した話は確かに有効であり、この点で言う限り、ギーのほうがココナッツオイルやMCTオイル、オリーブオイルより優れると、Bulletproofに説明されており、さらに次のような説明もありました:

「ギーにはナッツ風味があり、バター自体よりバターらしい味がします。強い香辛料に対して抵抗力があり、インド料理やタイ料理の定番である訳がわかります。ギーは香辛料といっしょに調理すると香辛料から脂溶性風味成分や栄養素も引き出します。カレー、ソース、その他のゆっくり調理するあるいは時間を掛けてぐつぐつ煮るような料理に最適です。海塩を少々とで野菜に振りかけても最適です。しかも、ギーは冷蔵不要です。棚に入れておいても安定しており、数年はもちます。」