Dr. Mercolaより
健康な心臓に関して言うなら最も影響力がある栄養素はマグネシウムです。体内の大部分の細胞が健康的に機能するために必須であると同時に、マグネシウムは特に心臓、腎臓、筋肉のために重要です。
1937年とかなり昔に遡りますが、当時の研究者らは低マグネシウムレベルが心臓に重大なリスクになること、また、マグネシウム不足が心臓病を最もよく予測させる要因であるという警告を発していました。さらに近年の研究は、前臨床レベルでのマグネシウム欠乏が心臓血管の健康を損なうことを示しています。
重要な点は、ミトコンドリアはATPの生成にマグネシウムが必須であることです。さらにマグネシウムは細胞の代謝機能、ビタミンDの活性のためにも必須です。これらすべては健康な心臓の機能のために重要です。
マグネシウムは血管を弛緩させ、血圧を正常にし、炎症を抑え、内皮細胞(血管の内側を覆う内壁の細胞)機能を支持するので健康な心臓を支持します。
Scientific American誌は出版175周年記念のために最近アーカイブを掘り返して1969年6月号に発表された研究の大要を掲載しました:
「過去十年間にあった数本の研究は冠動脈疾患におる死亡率が地元の水道水の硬度と反比例することを示していた:水が硬いほど、冠動脈疾患発生率が低い。
New England Journal of Medicineに最近掲載されたある研究が軟水地区における冠動脈に起因する死亡はほぼすべてが突然死であるというエビデンスを報告している …」
1967年中にオンタリオ州で起きた心臓関連の問題により死亡した55,000人の個人の死亡診断書を見直し、次にこれらの死亡症例を地元の水道水の硬度に従って相関分析したところ、カナダの研究者らは日常的に軟水を飲んでいた人は不整脈(不規則な心拍)で死亡しやすいという結論に至りました。この興味をそそる相関性は何を物語っているのでしょうか?
ある理論は水中のマグネシウム濃度に注目しました。軟水は硬水よりマグネシウムが少ないので、軟水ばかり飲んでいるとマグネシウム欠乏につながりやすいです。(まさに硬水の定義そのものが高濃度の溶解金属 — および特にカルシウムとマグネシウムを含むものとなっています。)
2002年のある研究によると、マグネシウム豊富なミネラルウォーターでマグネシウムの合計必要日量の6%~17%を摂れることを示しています。しかし、2013年にInternational Journal of Preventive Medicineに掲載されたある論文は、よく見受けられる硬水と低心臓血管病リスクの相関性の精確なメカニズムについては今後の解明を待つしかないとしています。
しかし硬水に含まれるマグネシウムが多いことは有望な仮説であり、数本の研究はマグネシウムが豊富な水は重要な要因であることを指摘しています。同様の研究(だけではなくこうした相関性が特定されなかったとしている研究も含む)をいくつも載せているInternational Journal of Preventive Medicineに次のような説明があります:
「あるスウェーデンの研究で、骨格筋内のマグネシウム濃度は水中マグネシウム濃度が高い地域の住人ほど大幅に高かった。」
すでのご説明しましたが、マグネシウムはいくつもの異なるメカニズムにより健康な心臓を支持します。まず、マグネシウムは炎症を抑えるので、これが次に高血圧や動脈硬化を予防できます。さらに動脈を弛緩させ血液がどろどろにならないようにし、血流をよくします。
マグネシウムは身体のエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)の生成のためにも機能しています。言うまでもなく、十分エネルギーがないと、全身の細胞機能に支障があり、何重もの機能障害につながります。特に、非常に大量のエネルギーを消費している心臓が正常に機能するには十分にATPが必要です。
マグネシウムは細胞内のミトコンドリア数が増え、ミトコンドリアの効率が高まるために必須なので、ミトコンドリアの機能と健康にも影響します。
こうした基本的効能があるマグネシウムが不足すると高血圧、心臓血管病、不整脈、脳卒中、突然心停止による死亡のリスクが高くなります。
専門誌Open Heartに掲載された2018年のある論文も、前臨床状態の欠乏が心臓問題を引き起こすこと、また、大多数の人は現行の栄養許容規定推奨日量より300 mg多いマグネシウムが必要であると警告しています。その執筆者らによると:
「マグネシウムの推奨栄養許容摂取量(ほとんどの人にとって一日300~420 mg)が取れていればマグネシウム欠乏を予防できる反面、最終的な目的であるべき最適な健康と長寿には寄与しない可能性が高い。」
現在認識されているより多いマグネシウムが必要であろうという理論は、1日当たりマグネシウム摂取量を100 mg増やしたら全原因死亡率が10%下がるという2016年のあるメタ分析が裏付けました。
マグネシウムは脳の健康および認知症予防のためにも必須のものです。記憶力障害は脳細胞間のコネクション(シナプス)が減ると生じます。多くの要因が作用しますが、マグネシウムは特に重要です。米栄養学カレッジ客員で神経学者のDr.デイビッド・パールマターによると:
「今や、マグネシウムはシナプスの可塑性に関わる神経経路の活性のために必須の要素であることがわかっている。すなわち、マグネシウムは学習や記憶のプロセスの基盤をなす生理学的現象のために必須である。
マグネシウムのなかでも特定の形態、スレオン酸マグネシウムは脳に浸透し、このプロセスに関わる受容体を強化することが判明した。」
スレオン酸マグネシウム固有の脳への効能は専門誌Neuronに掲載された2010年のある研究が、マグネシウムは「ラットの学習能力、作業記憶、短期、長期の記憶力」を強化することを特定した」ことにより実証されました。その執筆者らによると:
「脳内マグネシウムの増加により短期的にはシナプスが機能し易くなり、長期的にはシナプスを増強し、さらに学習機能や記憶機能をよくすることが本研究によって示されている。」
マグネシウムはまたは、よく認知されているストレス軽減物質でもあり、セロトニンなどの気分を調節する神経伝達物質を触媒することで不安やうつ病の予防を助けます。
2015年に公表されたある研究は、マグネシウム摂取量が非常に低いと特に若い成人のうつ病と有意な相関性があることを特定しました。PLOS ONEに掲載されたある研究は、マグネシウムのサプリメントが成人の軽度から中度のうつ病に効能があり、処置後2週間以内に効能が確認されたことを実証しました。
体内のマグネシウムレベルを測定する最適な方法は赤血球内のマグネシウム量を測定するRBCマグネシウムテストです。人によってライフスタイルや健康状態が異なるので必要量に差があるため、マグネシウム欠乏の症状を追跡することもお勧めします。
以下にマグネシウム不足のよくある兆候や症状を挙げます:これより網羅的な症状一覧はDr.カロリン・ディーンのブログ投稿「マグネシウム欠乏の症状を計るには」をご参照ください。
自分のマグネシウムレベルを評価するにはトルソー兆候も利用できます。この兆候を検査するには血圧計のベルトを腕に巻いて膨らませます。収縮期血圧を超す圧力で3分間圧迫します。
上腕動脈を閉塞することで手や前腕の筋肉痙攣を誘発させます。マグネシウムが欠乏していると、血流が行かないことで手首と中手指節関節が曲がり、指が内転します。このような手や手首の位置の画像は論文「低カルシウム血症におけるトルソー兆候」の中の図1をご参照ください。
マグネシウム不足は成人でも十代でも非常に一般的であり、これは部分的にはほとんどの人が植物不足の食生活をしていることによるものであることをいくつもの研究が示しています。マグネシウムは植物の緑色を出す葉緑素分子を構成します。
しかし、豊富な緑葉野菜を食べていても、まだマグネシウムは不足しがちですが、これはほとんどの土壌からミネラルが枯渇しているためです。体内でマグネシウムが吸収されるためにはセレンや副甲状腺ホルモン、ビタミンB6、Dを十分取れるかに掛かっています。
エタノール、塩、コーヒー、ソーダに含まれるリン酸によって吸収がなおさら阻害され、さらに発刊やストレス、睡眠不足、重い生理、特定の薬物(特に利尿剤やプロトンポンプ阻害薬)、インスリン抵抗性、きつすぎる運動も体内のマグネシウムを枯渇させます。
研究によるときつい運動をたった6~12週間するだけで、骨格筋でマグネシウム需要が高まるのでマグネシウム欠乏につながります。
このため、ほとんどの人はマグネシウムサプリメントが必要かもしれません。マグネシウムの推奨日量(RDA)は年齢や性別により異なり、310~420 mgですが、多くの専門家は一日に600 mgは必要と考えます。
元素量にして一日に1~2 g (1,000~2,000 mg)ものマグネシウムを摂れば、多くの人がメリットを受けられると私は思っています。これは過剰なマグネシウムがあれば電磁場への暴露という避けがたいことを軽減することもできるからです(特にマグネシウムはカルシウムチャンネルを阻害する効果があるから)。この点について詳しくは私の以前の記事「EMF暴露の軽減方法」をご参照ください。
体内のマグネシウムレベルはマグネシウムサプリメントで容易に増やすことができます。私が気に入っているのは、スレオン酸マグネシウムです。この化合物は細胞膜通過効率が最も高く、ミトコンドリアや血液脳関門も通過します。この点については私の以前の記事「Cognitive Benefits of Magnesium L-Threonate」(L-スレオン酸マグネシウムの認知力へのメリット)をご参照ください。
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