Dr. Mercolaより
睡眠は時間の無駄では全くなく、体内の代謝や生物学的ホメオスタシスの維持に欠かせません。よく寝ていないと糖尿病や心臓病、神経萎縮、がんなどあらゆる慢性病になりやすい体質になります。
最近のある研究によると、睡眠不足で骨密度が下がり、骨粗しょう症 (脆い骨) - 米国では50歳以上の推定10.3%がなっている病気 - のリスクが高くなります。骨粗しょう症にともない転んだときに骨折するリスクも同時に高まり、特に骨盤骨折は高齢者の死亡率を高めることは周知です。
米国では推定4,340万人の高齢者が低骨密度で骨減少症になっており、このため骨折リスクが高く、結局骨粗しょう症に至る可能性大です。
年齢や性別、人種、家系の既往症、閉経(女性の場合)など骨粗しょう症リスクを高める変更しようのない要因はいくつもありますが、自分で管理しうる変えられるリスク要因もあります。
これには食生活、日光への暴露、ビタミンD濃度、喫煙、運動、飲酒、特定の薬の使用が挙げられます。睡眠もこれに加わります。
Journal of Bone and Mineral Researchの2019年11月号に掲載された、Women's Health Initiative(女性の健康イニシアチブ)からサンプリングした閉経後女性について分析した研究が、睡眠時間と骨密度の間に注目すべき相関性を発見しました。
平均すると一晩に5時間かそれ未満しか寝ないと答えた女性の場合、7時間以上寝ている女性より骨鉱物密度が0.012~0.018 g/cm2低いことが判明しました。これは全身と骨盤、大腿骨頸、背骨4か所の骨密度データです。短時間しか寝ない人はこれらすべての部位で骨密度が低かった。
さらに骨盤の骨粗しょう症リスクは22%高く、背骨の骨粗しょう症が28%高いことがわかりました。主執筆者であるバッファロー大学疫病学のヘザー・M・オクスバルコム助教授がThe New York Timesでこう説明しています:
「二つのグループで観察された相違はほぼ一年の骨老化に匹敵するものであった。これは大差とは言えないが、睡眠というもう一つの健康の側面も重要なことを伝えている。もっと良く寝るべきというメッセージを広める機会が少しでもあれば、他の肉体的、精神的健康面にも有用であろう。」
ビスフォスフォネート薬が骨を弱くすることを示す根拠は、2017年のある研究でわかりやすく説明されており、この研究では、素粒子加速器を利用してビスフォスフォネート薬で処置された骨盤骨折患者10人、この薬で処置されていなかった骨折患者14人、さらに骨折していなかった対照群6人から骨試料の内部組成を表す詳しい画像処理を行いました。
その結果、薬で処置されなかった患者に比べてビスフォスフォネート薬で処置されていた骨盤の骨は28%弱いことが判明しました。骨折無しの対照群と比較して対象群の骨盤は48%弱かった。
また、ビスフォスフォネート薬で処置された骨はこれで処置されていなかった骨折患者の試料より微小亀裂が24%多く、骨折の無い対照群より51%多かった。全体としてはビスフォスフォネート薬治療は「検査した標本において検出可能な機械的メリットは皆無」であることが判明しました。
その反面、研究者らはこの種の薬の使用が「骨強度を大幅に弱めること」および「こうした強度の減少は微小亀裂の亀裂の多さと骨量あるいは微小構造の改善が見られないことによる」ものであることを指摘しました。
Scientific Reportsに同年掲載された第二の論文では、ビスフォスフォネート薬に関連する微小亀裂の蓄積はおそらく骨再形成が過剰に抑制されたことによるものと思われると指摘しています。
ビスフォスフォネート薬ではだめなら、骨粗しょう症をいかに予防できるでしょうか? 既述の通り、自己管理しうるいくつかのライフスタイル要因が重要です。
毎晩少なくとも7時間寝る — これだけ寝れば骨盤の骨粗しょう症リスクが22%、背骨の骨粗しょう症リスクは28%下がる — 以外にも正しいタイプの荷重に耐えるトレーニングは強い骨の維持のために欠かせません。しかし、4つのことを忘れないでください:
従来式の筋力トレーニングがよくても非効率なら、いったい何をすればよいのでしょうか? 最適な代替方法はリスクやケガなく骨形成のための荷重療法の効果を生むレベルの力を出せるトレーニングセンターやクリニックを見つけることです。
Journal of Osteoporosis & Physical Activity誌に掲載された2015年のある研究によると、骨減少症と骨粗しょう症の女性(薬を飲んでいなかった)が骨形成に有用なウェートに耐える筋力トレーニングを行った場合、骨盤密度が14.9%増加し、背骨は16.6%増を、ちょうど24週間で達成できました。
高齢者や虚弱な人が安全にできる骨の健康に有益な別のタイプの運動は血流制限(BFR)トレーニングです。BFRは新種の生体トリックで、自分が一回でもやっと持ち上げられるほどの重量の僅か2~3割のウェートを使い、最大限のメリットが得られる筋力トレーニングが可能になります。
これは筋力トレーニングをしつつ、運動している四肢の静脈血の心臓への還流(動脈血ではなく)を制限します。この方法は少々血流を制限する程度に腕や脚にバンドを巻いて行うものです。
四肢が軽量負荷を受けつつ運動中に血液を滞留させることで、代謝的変化が起き、これがほぼ負傷のリスク無く力を強める効果があります。
さらにメカニズムを解明できるまではまだ研究が必要とはいえ、この方法で骨の代謝も改善できます。
当然のことながら、骨は生きている組織であって、常に新たな骨細胞が追加され、古い細胞が除去されており、基礎代謝の健康度は健康な骨の維持のための基本指標です。
Natural Medicine Journalに掲載された、「Naturopathic Approaches to Preventing and Treating Osteoporosis」(骨粗しょう症予防と処置の自然療法)という表題の論文が説明するように、強い骨を作り維持するために十分な栄養分を取る最適な方法は、常に健康的な食品を選ぶことである」としています。それでも栄養素によって重要度が異なります。以下に骨の健康に必須のものを挙げます:
• ビタミンD — ビタミンDは健康な骨のために欠かせないカルシウムとリンの吸収を調整します。
• ビタミンK (K1とK2) — ビタミンK1(フィロキノン)は植物や緑の野菜に含まれます。オステオカルシンは骨芽細胞(骨形成の原細胞)が生産するたんぱく質で、骨内部で骨形成プロセスにおいて主な成分として使用されています。
しかし、オステオカルシンは効果を発揮できるためには「カルボン酸塩化」されなければなりません。ビタミンK1はオステオカルシンのカルボキシル基反応の触媒である酵素の共通因子として機能します。Metabolismに掲載された2017年のある論文は、「この物質は骨芽細胞を骨細胞に転換させ、破骨細胞形成を制限もするようである」としています。
ビタミンK2(メノキノン)は腸内細菌が合成しますが、カルシウム、マグネシウム、ビタミンDとともに相乗効果を上げて強い健康な骨を作ります。
ビタミンK2はカルシウムを骨に運び、軟組織や器官、間接空間に堆積しないようにしています。ビタミンK2はカルシウムを骨の母材に結合させるために必須の、骨芽細胞が生産するたんぱく質ホルモン、オステオカルシンも活性化します。
ビタミンK2 (メノキノン-4)による骨折率阻止機能を評価した日本の試験7件から、このビタミンが骨盤骨折リスクを6%、脊椎骨折率を13%、脊椎以外の骨折リスクを9%減らすことを特定しました。
• カルシウム — カルシウムはビタミンK2、マグネシウム、ビタミンDと相乗効果を上げ、適切に機能するにはこれらすべての栄養素が必須です。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、ビタミンK2はカルシウムが動脈ではなく正しい場所 - 骨 - に至るようにします。ビタミンK2不足状態で高用量のカルシウムサプリメントを飲めば動脈硬化につながります。Natural Medicine Journalに以下の内容がありました:
「National Academy of Sciencesでは、骨の健康を維持するには、1,000~1,500 mg/日(年齢、体重、性別などによって異なる)のカルシウム(食事とサプリメントを含む)が必要であると推奨している。
カルシウムの体内蓄積量が低いと、カルシウムが骨から析出し、骨質量が減り、骨粗しょう症の発症や悪化につながるので、カルシウムを十分に摂ることは骨粗しょう症の予防のために重要である。」
草で育った牛乳の生ヨーグルトは、骨損失を少なくできることが研究で実証されたカルシウムの宝庫です。詳しい説明は私の「Eat More Yogurt and Avoid Osteoporosis」(もっとヨーグルトを食べて骨粗しょう症を予防する)をご覧ください。
• マグネシウム — マグネシウムはカルシウム、ビタミンK2、ビタミンDと相乗効果を上げ、カルシウムの吸収を助けます。Natural Medicine Journalがこう説明しています:
「血中マグネシウム密度が低いと骨密度が低いことと相関しており、数本の研究は経口マグネシウムサプリメントで骨密度を増やすことを支持している …
マグネシウム欠乏は副甲状腺ホルモンと1.25-ジヒドロキシビタミンDの生産を阻害し、骨の鉱化に悪影響を及ぼす。マグネシウム250~400 mgを毎日サプリメントで補足することが推奨される。」
• コラーゲン — コラーゲンは骨を強くし、骨粗しょう症を改善します。
睡眠の問題に戻すと、最近のある研究は、一晩に睡眠が6時間以下では心臓代謝リスク要因にともなう中年と心臓血管病や脳血管疾患の既往歴がある人の死亡リスクが増えることを示しています。
6時間未満しか普段寝ておらず、しかも心臓代謝リスク要因(高血圧やグルコース増加、2型糖尿病)がある人の全原因死亡率の調整後危険率は、日常6時間以上寝る人より2.14倍高いです。
さらに、心臓血管病や脳血管疾患による死亡率も1.83倍高いことが判明しています。心臓病や脳卒中と診断された人の場合、6時間未満の睡眠では全原因死亡率が3.17倍高まっていました。注目すべきは、がんによる死亡率も2.92倍増大していました。
寿命を縮める慢性病予防のために睡眠がいかに重要かを考えると、どんなことでも睡眠の支障があれば対処するのが賢明であり、毎晩8時間確実に睡眠を取るようにしましょう。多くの人にとって、このことは夜遊びの傾向を絶ち、ほどよい時間に就寝することを意味します。
朝6時に起きなければならない人は、寝付くまでの時間にもよりますが、遅くとも夜9時半から10時には床に就く必要があります。定時就寝が困難な方の場合、就寝時間を知らせるアラームを利用し、すべてシャットダウンして就寝の準備をすべき時であることのリマインダーとするのがよいでしょう。睡眠品質をよくする方法に関しては私の記事「毎日の睡眠を最適化する33の最適なヒント」をご参照ください。
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