Dr. Mercolaより
メチルスルフォニルメタンの健康メリット)に説明されているように、硫黄は体内で三番目に多いミネラルで、代謝やデトックスなどいくつもの体内プロセスにおいて重要な機能をします。 また、タンパク質と酵素の正しい形状や構造の維持のためにも必須です。
硫黄含有アミノ酸は健康やフィットネスのために重要な機能をする二つの物質グルタチオンとN-アセチルシステイン(NAC)の濃度を高めます。
グルタチオンはアミノ酸のシステイン、グルタミン酸、グリシンから成ります。身体の最もパワフルな抗酸化物質であり、どの体細胞にも含まれることから、「主役抗酸化物質」とよく呼ばれます。
抗酸化物質はフリーラジカルと闘う — フリーラジカルは細胞の回りを細胞と接触しながら動き回る高反応性の微粒子で、接触したものはすべて損傷します。ほとんどは代謝中に発生しますが、運動中や毒素、放射線、有毒金属への暴露によっても発生します。
フリーラジカルは非常に破壊力があるので、細胞はフリーラジカルを中和するように構成された防御ネットワークを持っています。この抗酸化物質と闘うネットワークはビタミンやミネラル、チオールという特殊な化学物質(グルタチオンとαリノレン酸)などを含む多くの化合物で構成されます。
グルタチオンは細胞内部にある点で他の抗酸化物質とは異なり、ビタミンCやE、CoQ10、αリノレン酸(に限らず)を含むその他の抗酸化物質の活性を最大化するユニークな機能をします。グルタチオンは細胞から毒素を解消し、放射線や化学物質、環境汚染物質の損傷的影響からも保護してくれます。
NACとはグルタチオンの形成のための前駆物質で、反応制限的栄養素です。グルタチオンは吸収されにくいので、グルタチオンの代わりにNACを摂り込んでグルタチオンを増やすのが容易です。
救急医療において、NACは過量服用によるアセタミノフェン毒性対策としての解毒剤として使用します。NACを直ちに投与するとアセタミノフェン毒性による死亡率がほぼ皆無になることは周知です。
アセタミノフェンによる肝臓障害は毒素暴露に応答して肝臓が分泌するグルタチオンを枯渇させるのが主な原因であると考えられています。
ついでにいうと、NACサプリメントは飲酒前に飲んでおくとアルコール摂取による損傷を最小限にする身体の「解毒準備」をも助けるので、忘年会の時期などこのことは役立つ豆知識になります。
NAC (200 mg以上)を飲酒の30分前に飲むとアルコールの毒性による影響を弱める効果があります。また、ビタミンB6も二日酔いの症状を軽減する役に立つことがあります。
NACの最もよくある用途は肝臓の支持ですが、神経保護剤としても有用です。ドーパミンニューロンを格納している脳野である黒質の中のグルタチオン欠乏と関連性があるパーキンソン病の処置用に科学者が研究中です。
死後解剖した脳を分析したある研究がパーキンソン病患者のその脳野からグルタチオンがほとんど検出されないことを示しています。後続研究からは黒質のグルタチオン欠乏はアルツハイマー病を含むその他のいくつもの神経萎縮病に共通することを特定しました。
NACが特に有望なその他の分野や、外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病、薬物依存症などの精神的健康障害の治療です。2019年11月29日のSelfHackedに掲載されていたある記事で、その他数十項目の健康メリットも考察の対象になっていました。
NACとグルタチオンのとても多くの効能を説明する一つの要因として、後生的疾患のメカニズム調節を補助するグルタチオンの機能があります。
下図はグルタチオンが遺伝子発現において病理学的変化に影響する仕組みを表しています。
2018年のある研究によると、NACサプリメントは高齢者の心臓血管の異常に効能があります。想像がつきやすいように、酸化ストレスはそのうち心臓血管の老化や機能停止を加速する代謝や機能の変化を誘発し、体内のグルタチオン濃度は加齢とともに減るので、これらのリスクが高まります。
その研究ではマウスにNAC単体またはNACとグリシンの組み合わせを与えました。7週間後にマウスの心臓機能を判定したところ、NAC+グリシン群は心臓血管機能の次の7つのパラメータが改善しました:
両群とも炎症性仲介物質濃度が減ったけれども、NACだけではこうした心臓血管メリットは検出されませんでした。NACとグリシンの組み合わせはミトコンドリア機能をよくし、老化にともない機能が劣っていく心臓内のミトコンドリア遺伝子を活発にしました。
その執筆者らによると、「本研究のデータからNAC+Glyサプリメントが老マウスの心臓の収縮機能を改善し、おそらく老人にとって重要な罹患率増加の予防効果があると考えられる。」
Scientific Reportsに掲載された別の近年の研究は、グルタチオン欠乏が肝臓内のビタミンD代謝を調節する遺伝子に後生的変化を誘発しうることを示しています。最近新たに出てきたエビデンスもグルタチオンの代謝が酸化還元(レドックス)反応の後生的調節において機能していることを示しています。
この論文によると、肥満はグルタチオンおよび25-ヒドロキシビタミンD3の不足と相関性があり — 特に2型糖尿病患者と肥満者 —、肥満のマウスにグルタチオンが欠乏した餌をやると、肝臓内のビタミンD代謝遺伝子とビタミンD受容体が鈍くなりました。このため酸化ストレスは高くなりました。
その論文の執筆者らによると、研究からわかった事実はグルタチオンサプリメントが肥満者のビタミンD欠乏リスクを下げるのに有用であるかもしれないことを示しています。グルタチオンになる前の発生率制限前駆物質であるL-システインのサプリメントもビタミンD濃度を高め、酸化ストレスを下げるとその論文は説明しており、グルタチオンとビタミンDの間の連関性を裏付けています。
すでにご説明した通り、運動でフリーラジカルが増え、これによる酸化ストレスが増える原因の一つです。きつい運動の間に十分休憩をはさむことを前提して、この酸化ストレスこそ運動が体によいことの理由の一部です。
この点を念頭に置いたうえで、2005年に公表されたある論文には「酸化と抗酸化の間の細胞バランスを効果的に調節することは、細胞の機能とDNAの完全性さらに遺伝子発現の信号伝達を考慮すると、重要である」とあります。言い換えると、過剰に運動すると害のみあって効果はありません。
前記の2005年の論文はさらに運動がグルタチオン濃度に、そして健康、フィットネス、病気リスクにいかに効果があるかを説明します。端的に言えば、集中運動中にグルタチオン血中濃度が大きく減る一方、酸化グルタチオンの循環濃度が増加するので、 運動で負荷が掛かったために発生したフリーラジカルを抑制するため筋肉内で消費されたことを示します。
フリーラジカルに対処するためのグルタチオンの意義を考えると、運動中にグルタチオン濃度の効果的調節はかなりの懸念です。運動すればするほど、グルタチオンのベースレベルが上がることはよいことです。
こうした適応によって身体は運動で発生するフリーラジカルの増加に効果的に対処できるようになります。グルタチオン濃度は運動だけでもそのうち増加しますが、グルタチオンサプリメントで増やすのは運動選手がよく利用する戦略です。
すでにご説明した通り、グルタチオンサプリメントは吸収性がよくないので効果はなく、 概してNACのほうがはるかに優れると考えられます。
その他の研究もNACサプリメントが運動中に筋肉の疲労を遅延するのを補助することで持久力がよくなることを確認しました。ある研究では、NACを煎じた液で疲労困憊までの時間が26.3%長くなりました。
NACの疲労減少と細胞の酸化還元(レドックス)改善機能も慢性疲労症候群(CFS)に苦しむ人のために潜在的なメリットがあることを示します。
米国疾病管理予防センター(CDC)が説明する通り、筋痛性脳脊髄炎(ME)ともいうCFSは「休憩してもよくならない圧倒的疲労」が特徴です。疲労はシャワーを浴びる、調理など日常生活の作業さえしにくくなるほど頻繁に起きます。
この病気におけるグルタチオンの機能については、CFS関係者の間では多くの人が利用している、最近お亡くなりになったメチレーション処置計画の開発者リック・ヴァン・コニィネンブルクPh.D.,の「A Simple Explanation of the Glutathione/Methylation Depletion Theory of ME/CFS」(ME/CFSのグルタチオン/メチレーション枯渇理論のわかりやすい説明)の中で説明されています。
ヴァン・コニィネンブルク博士によると、酸化ストレス「はおそらく慢性疲労症候群のうち最もよく解明された生化学的側面」であり、 酸化ストレスのために全身が圧倒されるほどになるには、グルタチオン供給に過度の需要負荷を及ぼす何かが原因なはずです。
不適切な抗酸化物質の摂取や過度の酸化促進性物の摂取、毒素暴露、肉体の負傷などいくつかの例は前記に一覧しました。長期的感情的ストレスも要因になります。
ビタミンB12は食物をエネルギー源のグルコースに変換するのを助けますが、疲労はB12不足症状の一つです。面白いことはCFSになった多くの人はビタミンB12が多くあります。身体がこれを適切に利用できなくなっているためで、その原因はグルタチオン不足です。
「このことを特定するための最適な検査はメチルマロン酸を含む尿有機酸検査です。B12が脱線している状況ではこの値が高くなり、CFS患者によく見られる現象です。
メチレーションサイクルは身体の硫黄利用およびグルタチオンなど硫黄含有物質の生産も調節しています。CFS患者にはよく硫黄代謝産物が異常に多いです。グルタチオンとB12、メチレーションサイクルの相互関連性を把握できると、慢性的なCFSの発生の仕組みをとらえやすくなります。
これらすべての要因は免疫系も弱めることになり、病原菌、ウィルス、真菌が優勢になります。CFS患者は並行して数種類の感染症も頻繁に起きています。グルタチオン不足で身体の自然なデトックス経路も障害を起こし、毒性が蓄積していき、持続的な機能停止につながります。
ではこの現象連鎖をいかに逆転させることができるでしょうか?
ヴァン・コニィネンブルク氏のCFSのための略式メチレーション治療計画概要についてはHealthRising.orgをご参照ください。この療法の要点は葉酸塩、ビタミンB12、マルチビタミン、SAMe(S-アデノシルメチオニン)、ホスファチジルセリンなどの特定サプリメントを利用することです。
同氏は計画説明の中でこれらのサプリメントごとの使用の背景にある理論やそのメチレーションサイクルへの影響、その他のサプリメントとの相互作用について説明しています。
ここから私がお勧めすることは、グルタチオンやNACサプリメントが必ずしも最適な方法であるとは限らないということです。CFS患者は経験豊かな臨床医にメチル葉酸塩、メチルビタミンB12も含む個人別の判定を行ってもらうとよりよくサポートされます。
しかし、それ以外の人にはNACを使用しても安全にグルタチオン濃度を増やすことができます。NACがいかに健康メリットになるかについて詳しくは(NACの多くのメリット)をご参照ください。この物質は経口で摂れる健康補助食品として一般に普及しており、比較的高価ではありません。残念なことに、グルタチオンと同様にNACはグルタチオンよりは吸収されやすくても経口で飲んでいたのではほとんど吸収されません。
いくつかの研究によると、NACの経口生体利用能は4%から10%しかないので、推奨用量は一日1,800 mgにも上ります。半減期もだいたい二時間なので、ほとんどの研究の被験者は一日に2~3回服用します。
最大安全用量はいまだありませんが、基本的には、人体にはよく耐性があり、ごくわずかな人が吐き気や下痢、便秘などの胃腸副作用が出ます。副作用が出たら用量を減らしましょう。胃腸副作用が出にくくなるには食事のとき一緒にこれも食べるのが最適です。
NACは強力なデトックス物質であるグルタチオンを増やすので、最初から多量に摂ると、ひどいデトックス症状が起きる場合があることにも注意しましょう。これを避けるには一日に一回400~600 mgの低用量で始め、だんだん増やしましょう。
抗うつ剤を飲んでいたりがん治療中の場合にも、一部の抗うつ剤や化学療法に干渉する場合があるので、主治医とNACの使用について話し合ってください。
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