疾病管理、アンチエイジング、寿命延長に有望な成体幹細胞

幹細胞療法

早分かり -

  • 克服すべき課題の一つは加齢にともないこれらの細胞が効果的に治療に利用できなくなることです。また加齢に伴い機能もしなくなっていきます
  • Dr. ビルポントは成体幹細胞を百万倍単位で増やしつつ、も異なる細胞の種類別に分化する能力を維持できることを目的としてこの技術と専門技術を使う会社を立ち上げました
  • 胚性幹細胞より成体幹細胞には明確な利点があります。免疫反応につながらず、自己細胞なので倫理的問題がないことです
文字サイズ:

Dr. Mercolaより

太古の時代から人間は若さの泉を求めてきました。この点では今も同じですが、探求方法や特定方法は確かに進歩しました。

こうした考えのうち一部は想像しうるなかで最も奇抜なサイエンスフィクション的シナリオを描き、意識を生体としての肉体に移すことさえ含みます。私としては自然なものごとの秩序からあまりにも逸れたくありません。

しかし私の中の科学技術の熱狂的ファンとしては極限的長寿化分野のアイデアや急速な進歩には興味をそそられています。私の視点から言うとこうした最も有望な技術の一つは成体幹細胞の利用です。

成体幹細は全身に存在する未分化細胞です。これらの細胞は損傷した組織の再生のために必要に応じて増殖して細胞を置換します。アンチエイジングや寿命延長の点でのこれらの細胞の価値は、主に無限に自己再生できる能力があること、これらの細胞が由来する器官のために必要なあらゆるタイプの細胞を生成しうる機能です。

Dr. ブリアント・ビルポント(Decoding Longevity(長寿の復号)の執筆者)は幹細胞を利用する画期的アンチエイジング療法では最先端の研究者です。同氏は30年以上この分野の先駆者として活躍してきました。

私は幹細胞技術は私たちの長寿実現、老化の必然的帰結である欠落していく部分の一部を置換できるようになるほど劇的な効果があるかもしれないと思っています。老化と長寿に注目したDr. ビルポントは発生生物学の勉学から始めました。

同氏:「発生を把握すれば老化がわかるかもしれない。」

後に同氏の注目点は遺伝子制御の側面に移りました。ミシガン大学老人学研究所教授であると同時に90年代初めにサンフランシスコベイ地区の新興企業Geron Corporationからの仕事を引き受けました。

「当時私がとても注目して研究していたテロメラーゼをその会社が商品化していました。同社には設立時から参加しました」と同氏は言います。「そこでヒトのテロメラーゼのクローンを作ることに私たちは全力を注ぎこみました。他の動物ではクローン化がすでにされていましたが、人間や哺乳類ではまだでした。」

テロメラーゼとは何か?

人体は10兆個ほどの細胞から成っており、その一つずつに細胞核があります。核の中に遺伝子を含む染色体があります。染色体は二本の「腕」で構成され、その一本ずつに一個のDNA分子があり、この分子は基本的には塩基という単位からなるビーズの鎖です。

平均的なDNA分子はおよそ塩基1億個分の長さがあります。染色体の終端から終端まで伸びしなやかで優美な感じで丸まっています。染色体の鎖の各端点にテロメアという部分があります。

染色体の端を解してみるとすると、テロメアは子宮内で受胎された時点におよそ15,000個分の塩基の長さがあります。受胎直後に細胞分裂が始まり、テロメアは細胞分裂一回ごとに短くなり始めます。テロメアが塩基およそ5,000個に短くなると、基本的には老衰で死にます。

テロメラーゼは染色体の終端部つまりテロメアを短くならないように修復する酵素です。

「テロメラーゼは受精卵の細胞でしか機能しないことです。成人になるとほぼ機能しなくなっており、例外は成体幹細胞のみです」と、Dr. ビルポントは説明します。「成体幹細胞にはいくらかテロメラーゼがあり – 胚性幹細胞のように完全でもないし、この細胞にあるものとも異なりますが、いくらかはテロメラーゼ活性が残っています。」

幹細胞のすばらしい所は何か?

Geron社でDr. ビルポントはヒトテロメラーゼを分離するプログラムを担当しました。同社はこれを行って成功した唯一の民間企業でした。Geronの発起人は今や胚性幹細胞を使った先駆者的業績で知られるマイケル・ウェストです。94年から95年頃、ウェストはテロメラーゼ以外にGeronの事業になる材料を探し始めました。

そこで幹細胞に絞り込んだ結果、体組織の再生を実務的現実に実現できる想像を絶するような潜在力があることがわかりました。

現在、学界でも業界でも行われている研究の大部分は、胚性幹細胞か人工多能性幹細胞(iPS細胞 )という第二のタイプのいずれかを素材にしています。一方、Dr. ビルポントは成体幹細胞は結果を生むために最も安価で最も効率的方法であると考えます。

それでも成体幹細胞には内在的なマイナス面もあります。免疫関連の問題の余地がない自己細胞でありながら、数が十分ありません。特に老化にともない成体幹細胞は減少し、機能もしなくなっていきます。さらにもう一つのハードルはこの細胞から作られる必要がある組織自体を形成しないことです。

こうした問題を解決するため、Dr. ビルポントは成体幹細胞を百万倍単位で増やしつつも、異なる細胞の種類別に分化する能力を維持できることを目的としてこの技術と専門技術を使う会社を立ち上げました。繰り返すと、この分野がとても面白いのは、成体幹細胞が多くの老化に伴う多くの病気を組織再生によって治せるあるいは少なくとも改善できる潜在力です。

寿命を延ばすためのテロメラーゼに反対する事例

テロメラーゼを使って人間の寿命を潜在的に延ばすために使うという原理に私は最初のうちとても好奇心を抱いていました。しかし数人の臨床医と話した後、全身に影響する遺伝子プロセスを利用すると潜在的に重大な懸念があることに気が付きました。しかし、Dr. ビルポントの成体幹細胞増殖法は一個の細胞タイプのみを標的にするので、こうして懸念がないように見えます。さらに説明してくれました:

「以下にその問題について説明します:全身のテロメラーゼ活性化によって体細胞の99%は影響を受けない、あるいは影響を受けるべきでないので、おそらくたいして効果はないと考えます。筋肉や神経、こうしたすべてのそれぞれの機能を果たす細胞である体細胞には自然な寿命があるのでその影響はむしろないほうがよいのです。少しは[寿命を]延ばすために何らかのことはできるかもしれません。しかし余白部分で少々のことができるだけです。細胞は死ぬので、再生が必要です。再生プロセスが必要になります。

以前、脳や心筋など特定の組織には幹細胞がない、新たに成長しないと考えられていたものです。これは間違っていました。今では幹細胞があることが判明しています。神経[脳細胞]の場合、この機能があることは記憶のために非常に重要です。全身に適用した場合であってもテロメラーゼの活性化が実際に有用な場合は自己の幹細胞で助けることになるので幹細胞のコンパートメントの中です。

幹細胞の成長と幹細胞のメンテナンスを刺激するために売り出してきた製品が当社にあり、テロメア機能はその一部です。老化自体と幹細胞には多くの側面があり、多くの経路が存在します。異なる経路から迫るる必要があります。この治療には魔法のような弾丸は存在しません。老化とはいくつもの経路があるプロセスなので、いくつもの方法で捉える必要があります。」

成体幹細胞の機序例

Dr. ビルポントは成体幹細胞の潜在的メリットを説明するため、年齢の外見的「目安」である皮膚を例に説明します。老化するにともない、皮膚は薄くなり、弾力性が失われていきます。これが皮膚の皺やたるみの原因です。さて、皮膚は新細胞が下層でできるに従い、古い細胞を捨てて常時再生しています。成体幹細胞はこれらの新細胞ができるために必要です。

前記の通りで加齢に伴い成体幹細胞は減ります。また、機能もしなくなります。その結果、皮膚の再生頻度は半減します。成体幹細胞を付加して若い頃のレベルに皮膚組織の再生を維持できるとすれば、若々しく見える皮膚を長年維持できるはずです。

この話は出来過ぎなので本当には聞こえないかもしれませんが、Dr. ビルポントは、身体の器官はこの技術で修復可能なことを示した実験と実地の根拠があることを指摘します。しかし一般的な老化の時計を止められるかについて結果は定かではありません。

三種類ある幹細胞

幹細胞にはそれぞれに異なるプラスの面とマイナス面がある主な3つの母集団が存在します:

1. 胚性幹細胞 — その名の通り、胚性幹細胞は人間の受精卵に由来します。幹細胞を回収するために受精卵を壊すので、胚性幹細胞の使用に関しては倫理的問題が持ち上げられてきました。

能力がありながら、未熟なことも問題です後期段階の組織に成熟させるようにプログラムすることは困難です。これらの細胞は個々の組織 - 肝臓や脳、筋肉組織等々 - から除去されるので、必要なタイプの組織を形成するように仕向ける方法を発見するのも困難です。胚性幹細胞は、稀とはいっても角化腫を生じさせるのでがんになる可能性を秘めてもいます。しかも自己細胞でないでの免疫反応も起こす可能性があります。

2. 人工多能性幹細胞(iPS) — 2008年に発見されたこれらの細胞は学界で大きく採り上げられました。この細胞は身体のほぼどの部位からも線維芽細胞(一種の細胞)を取って、幹細胞機能のために必須な4種類の遺伝子に導入する、いわば挿入します。このため元の細胞が胚性幹細胞—自己の胚性幹細胞に変換されます。

しかし、ここにもそれなりの問題があります。プラス面としては自己細胞なので免疫反応はありえません。しかし同時に腫瘍増殖の潜在性をはらみます。Dr. ビルポントの説明するように、ゲノムに遺伝子を挿入すると、常にがん遺伝子の近くに行ってしまう、このためがんが発生するリスクがあります。必要とする可能性がある様々な組織に分化して取り込むことも困難です。それでも多くの研究が進められている面白い分野です。

3. 成体幹細胞 — プラス面としては自己細胞なので免疫の問題がありません。また、倫理的問題もありません。これまでのところでは、がんリスクもないようで、この点は大きな利点です。マイナス面として、増殖が困難であり、効果を生むほど十分な数が存在しないことです。数をもっと増やせれば画期的になりるので、この点はDr. ビルポントが注力している主な構成要素です。同社はこれまでに成体幹細胞の増殖が可能になるかもしれない媒質と有望と思われる手順を開発しました。しかしその原理を実証できるまで1年から2年はかかるかもしれないと同氏は考えています。

幹細胞利用の現状

米国では細胞を取り出し、増殖し、人体に戻すことは違法です。FDAはこれを薬と見なします。しかし例えば骨髄を取り出し、幹細胞を分離することは合法です。この細胞を薬などで処理しないあるいは増殖しようとしない限り、合法的に精製した濃縮形態で人体に戻せます。こうした治療は米国でもその他の国にもすでに行われています。

分離して成体幹細胞を使った最も普及している治療の一つは膝の負傷用です。Dr. ビルポントによると成果は上々で、多くの人は実際に治りました。成体幹細胞療法は、背中に異常があるばあいにも利用された成功例もあり、特に関節のもないや骨成長のために効果があるようです。Dr. ビルポントはさらに成体幹細胞を利用してご自分の前歯の一本の周囲の骨損失を処置して成功しました。

糖尿病の治療にもうまく応用でき、人間の膵臓やおそらく心臓させ再生させることができると同氏は考えています。成体幹細胞技術の恩恵をおそらく受けられると同氏が考えるもう一つの分野は、動脈、静脈、毛細血管など循環系の全般的再生分野です。

自己免疫疾患や多発性硬化症(MS)にも効能があるかもしれません。今のところ、ユタ州のある医者が脳卒中患者に成体幹細胞を使用したら脳機能が再生したと主張しています。幹細胞はこれまで20年の間にがん患者にも応用されたことがあります。

例えば人の耳のほかにも、食道の複製に成功しました。腎臓や膵臓、肝臓、心臓などもっと複雑な器官をこの技術で複製する方法が間もなくわかることでしょう。

+ 出典および参考資料