Dr. Mercolaより
世界最大の汚染物質のことを考えたとき自分の着ている物にまで思い浮かばないでしょうが、アパレル業界はほぼ最悪の有毒業界です。この業界は莫大な水を消費するのに加え、繊維品の染色、処理に多くの危険化学物質を使用しており、これらの工程は工業による世界の水質汚染の20%に寄与しているほどです。
インドのパンジャブ大学アパレル業界研究所のリタ・カントさんによると、色は特定のアパレル商品を購買する主な動機です。「組成がどれほど優れていても、着色が適切でない限り売るための繊維品としては失敗するしかありません。」
安全で環境を害さない衣類の染色方法はありますが、繊維染料の大部分はほぼどんな生命体にも有毒です。
衣類を染めるとき化学物質の80%が繊維に定着し、残りは排出されます。問題は染料自体だけにはとどまらず、繊維に色素を定着させるための化学物質にもあります。カントさんによると:
「この業界の繊維の染色と仕上げ工程は世界で最も化学薬品に依存し、水系の最悪な汚染者(農業に準じる)であるため、莫大な汚染の問題になりました。今日産業界では3600種類の異なる繊維用染料が製造されています。
この業界は染色やプリントなど繊維品製造工程で8000種類以上の化学物質を使用しており、これらの化学物質の多くは人間の健康に直接的にも間接的にも損害を与えます。」
以下の物質は繊維染色に使用される有毒化学物質の例です:
硫黄
ナフトール
建染染料
硝酸塩
酢酸
銅、ヒ素、鉛、カドミウム、水銀、ニッケル、コバルトを含む重金属
フォルムアルデヒド系の染料定着液
塩素処理染み抜き剤
炭化水素系軟化剤
生物非分解性染色化学物質
莫大な量の有毒排液が繊維工場から排出されており、高温、高pHである場合が多く、このこと自体が損害を生みます。化学物質と混ざり合った排水が飲料水や土壌を汚染し、果ては酸素を枯渇させて海洋生物にも害を及ぼします。カントさんがさらにこう説明してくれました:
「紡績プラントの排液は光合成に必要な日光を水中に透過させなくします。このため大気と水の界面での酸素移転が阻害されます。水中溶解酸素は海洋生物のために必須なので、これが枯渇することが繊維品廃棄物の最も深刻な影響です。
このため水の自己浄化作用も阻害されます。この排液が土壌にまで広がると、土壌の多孔性が塞がれ土壌の生産性がなくなります。土壌の特性は硬化し、根が張れなくなります。
排水路に流れた廃水は下水管を腐食し、堆積して固着します。排水路や河川まで流出させたままであれば、井戸水を手で汲むポンプで得る飲料水の品質が劣化し、人間が消費できなくなります。排管の漏れにもつながるので維持費が嵩みます。こうした汚染水は細菌やウィルスの増殖培地になります。」
染色に使用する重金属のなかには発がん性のものがあり、汚染水や土壌を介して作物や魚を汚染します。染料の化学物質に長期的に暴露されるとがん、内分泌かく乱が人間や動物に発生します。
アゾ染料は最もよく使用されていると同時に、発がん性のアミンに分解されるので最も毒性が強いです。土壌協会の報告書「ファッションに渇いた喉?」によると、排水内にたとえ1 ppm未満の微量なアゾ染料があるだけで土壌の善玉菌が死に、農業生産性に悪影響が及び、水系の植生や動物相にも有毒です。
さらに、繊維品の染色プラントは、規制が甘く人件費が低い開発途上国に位置することが多いです。未処理あるいは処理不足の排水が通常近くの河川に垂れ流しとなっており、そこから海や海洋へ拡散し、水流に載って地球全体に漂っていきます。
繊維品の化学物質の推計40%が中国から排出されています。Ecowatchによるとインドネシアもアパレル業界の化学廃液に苦しんでいます。沿岸に何百もの繊維工場が集中するチタルム川は今や世界で最も汚染された河川の一つです。
この川沿いのある繊維工場からの排液をGreenpeaceが検査したところ、アンチモンやトリブチルリン酸、さらに有毒な内分泌かく乱性表面活性剤ノニルフェノールも検出されました。カントさんはさらに、約72種類の有毒化学物質が繊維品染色だけからの排水中で検出され、そのうち30種類は除去不可能です。この事実はアパレルメーカーや繊維メーカーにとってぞっとするような環境問題であることを意味します。」
アパレル業界は水質を汚染しているだけではなく、莫大な水量も消費します。一日に8,000 kgの繊維品を生産する繊維工場の消費水量は一日160万リットルに及ぶと、カントさんは説明します。さらに、なかでも最も水を消費するのは、衣類の原料である綿の生産です。
土壌協会(Soil Association)は織物繊維の生産が残す水フットプリントのうち綿生産が69%を占めており、たった1 kgの綿を生産するために10,000~20,000リットルの水を消費するとしていします。
Green AmericaもTシャツ一枚を製造するためにじゅうぶんな綿を栽培するのに、2,700リットルの水を消費すると説明しています(しかもこの消費量は染色や仕上げ工程の水消費を含まない)。綿は年間農薬200,000トン、肥料800万トンを消費する「ダーティーな」作物であると見なされています。土壌協会はさらにこう説明しています:
「綿生産は世界の耕作地の2.5%を使用しているが、世界の殺虫剤売上高の16%を占めます。さらに世界の合成窒素肥料やリン肥料の4%も占めます。綿の栽培には農薬が年に200,000トン、合成肥料が800万トン必要であると推計されています。」
回転が速いファッション業界は季節ごとに最新モード商品を買うように消費者を支配し、すでにいっぱいであることが多いクローゼットにさらに衣類が増えることになっています。こうした消費トレンドが原因でアメリカでは衣料品の購買額が増加しており、Green Americaの「Toxic Textiles」(有毒アパレル)によると、2016年に65点以上の衣類を平均的アメリカ人が購買していました。
同時にアメリカ人は一年にアパレル品を約30kgは捨てていました。米国環境保護庁(EPA)によると2015年には都市部固形廃棄物の6.1%がアパレルでした。15.3%すなわち250万トンしかリサイクルされず、廃棄物処理場には2015年にアパレルごみ1050万トンが運び込まれ、全都市部固定廃棄物の7.6%を占めます。
アパレルをリサイクルしても、「衣類生産に必要な資源の1 %未満しか新たな衣類の生産に再利用されていない」と、Green Americaと説明しています。衣類を寄付しても大多数はアパレル品「リサイクル業者」へ売られ他の国へ輸出されるので持続可能なソリューションではありません。
エレン・マッカーサー基金の行っているサーキュラー・ファイバー・イニシアチブは「破壊的変化の時機が到来した」線形システムとしてアパレル業界を言い表しています:
「繊維品生産システムはほぼ完全に線形的にしか動いていません。大量の再生不可能資源を調達して衣類を生産し、衣類は短期しか利用されないことが多く、その後材料は大部分が廃棄物堆積場へ捨てられるか焼却されます。衣類の低利用度とリサイクル欠如が原因で毎年5000億ドル以上に相当する経済価値が失われています。
さらに、この調達・製造・廃棄モデルがいくつもの環境的、社会的悪影響を及ぼしています。例えば、繊維品生産から出る合計温室効果ガス排出量は年間12億トンであり、これはすべての空輸と海運を合計した排出値より多いです。
有害物質が繊維工場労働者も衣類を着る人の健康も悪くし、環境へ拡散します。洗濯すると一部の繊維品からはマイクロプラスチックビーズが排出され、毎年50万トンぐらいが海洋を汚染しており – 化粧品から出るマイクロプラスチックビーズの16倍にも相当します。今のトレンドではこうした悪影響が容赦なく増大し続けており、将来壊滅的帰結に至るでしょう。」
速く替わるファッションを追わず、高品質のアパレルを選び古くなるまで着続けることで、この極めて汚染の多い業界への支持を最小限に食い止めることは消費者としてできることです。
もう着なくなった物があれば、友だちや家族が使うならあげましょう。また、オンラインやセカンドハンドショップから中古品を買う、売る、交換するようにし、低品質の「使い捨て」アパレルを必要以上に買うファストファッションのメンタリティーを止めましょう。
アパレルを買うならオーガニックでバイオダイナミックであるかGOTS認証品を選びましょう。GOTS (世界有機繊維規格)認証の有機綿は製造に使用しうる化学物質を制限し、優先すべき選択肢を提供しています。
私もSITO (Soil Integrity for Textiles Organically)ブランドの靴下と下着を使用しているのは、SITOは私たちの繊維生産改善とファストファッション終焉への世界的取り組みを支援しているからです。Dirt Shirt(ダートシャツ)とSITOブランド製品については上のビデオをご覧ください。弊社のウェブサイトから販売されるDirt Shirt一枚ごとの利益金100%を再生農業運動に投資しています。
Mercola-RESETバイオダイナミックオーガニックプロジェクトも現在インドで認証された55件の提携先オーガニック農業生産者をバイオダイナミック経営に切り替え、すでに約44.5haでバイオダイナミック綿を植え付けました。
RESET (Regenerate, Environment, Society, Economy, Textiles、再生・環境・社会・経済・繊維)はこのプロジェクトに参加するすべてのオーガニック・バイオダイナミック農業生産者からは従来の綿買取価格に割増金25 %を上乗せし、直接生産農家に支払われ、有毒アパレルのサイクルを断ち切るのを助けています。
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