植物系の食事は脳や栄養失調のリスクを高めるか?

Fact Checked(事実確認)
ベーガンのコリン欠乏

早分かり -

  • 脳の発達のために必要なビタミンBの一種コリンは人間が食事やサプリメントから摂る必要がある必須栄養素です
  • 玉子や乳製品、肉などの動物性食品はコリンが豊富です
  • 米国では成人の8%しかじゅうぶんなコリン(妊婦の8.5%を含む)を摂れておらず、植物系食生活の傾向はこの欠乏の蔓延を促すと考えられます
  • 放し飼い鶏の有機玉子はコリンが最も豊富です。固ゆで玉子一個で147 mgのコリンが取れます
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Dr. Mercolaより

多くの健康関連団体は植物系食生活が人間と環境のためになるとして勧め、もっと野菜を食べれば確かにメリットはあります。しかし植物系の食品が豊富な食生活を止め、厳密に植物系しか食べなくなるとリスクがあるようです。

厳格な植物系食生活による帰結は栄養失調にとどまらず、食生活に応じてコリンを含む栄養素欠乏は実際に起こりえます。脳の発達のために必要なビタミンBの一種コリンは人間が食事やサプリメントから摂る必要がある必須栄養素です。

動物性食品はコリンが豊富で、栄養と健康科学の専門コンサルタンティング会社Nutritional Insightの取締役エマ・ダービシャーさんはBMJ Nutrition, Prevention & Healthで食物系食生活へのトレンドが増大しているが、「コリン危機」につながるおそれがじゅうぶんにあるとみています。

コリンが必須な理由

肝臓は少量のコリンを生産できますが、これでは身体の必須量には及ばず、追加的に食事から摂らなければなりません。身体は細胞膜の正常な機能のためにコリンが必要で、神経伝達機能にも作用します。ダービシャーさんは次のように説明します:

「生理学的にコリンは神経伝達物質の合成をはじめ、細胞の構造やメチレーションまで人体の代謝において多くの機能をすることを含め、生涯いくつもの機能のために必須であり、コリンが欠乏すると肝臓病や子の認知機能障害、神経障害のリスクが増大する。

酸化コリン(代謝産物であるグリシンベタイン)は、遺伝子発現の調節、脳機能の調節のために主な機能をするDNAやヒストンのメチレーションに関与する主なメチルのドナーであり、 S-アデノシルメチオニン(SAMe)の合成のために必須である。

コリンは肝臓機能にも影響し、これが不足すると、脂質タンパク質の代謝障害、リン脂質合成障害、酸化的損傷につながる。」

妊娠中にコリンは胎児に輸送され、認知力の発達や認知効果のために機能します。「この栄養素は脳や脊髄構造を(細胞死と幹細胞拡散により)変化させるので、胎児の発育には特に必須であり、これが欠乏すれば、機能障害や神経管異常が生涯続くリスクもありえる」と、ダービシャーさんは説明しています。

成人になってからもじゅうぶんにコリンを摂れば認知力が改善し、コリンをじゅうぶん取れていない人より言語記憶や視覚的記憶がよくなることはわかっています。コリン不足による症状には記憶障害、持続的脳霧が挙げられます。

コリンはいまだ研究が進行中であり、この栄養素の新たな機能を発見し続けています。なかでもコリンは「遺伝子のメチレーション、発現、さらに細胞の機能」を変え、ゲノムの後生的修復因子であることが最近明らかになってきました。これが胎児の発育中や幼児期に不足すると、成人してから記憶能力やストレス関連の異常につながる生涯の影響が及ぶおそれがあります。

コリンは実際に、肝臓から脂肪を安全に運び出すために必須の極低密度リポプロテイン(VLDL)粒子の肝臓内分泌を促すことにより、脂肪肝の発生を抑制する主な要因であると見られます。

コリンはほとんどの人に不足

Nutrients誌に掲載されたある研究によると、米国では成人の8%(妊婦の8.5%を含む)しか医学研究所(Institute of Medicine)による適正日量摂取(AI)レベルの550 mg(男性)と425 mg(女性)(妊娠中は450 mg/日、授乳期は550 mg/日)のコリンを摂れていません。

特定の遺伝子因子を持つ人は他の人よりさらに多くのコリンを摂る必要があることはすでにわかっており、このことはコリン不足のリスクに晒されている人がさらに多くいることを意味します。

「コリンの必要量は数種類の遺伝子型の存在に依存し、こうした遺伝子型がある人は当面の推奨日量より多いコリンを摂る必要があることを示す根拠が増え続けている」と、ダービシャーさんは説明しています。

コリンを摂るなら動物性食品

動物性食品の単位重量当たりには植物性食品よりコリンが豊富であり、ビーフや玉子、鮭には最も豊富です。このほか、欧州でコリンを最も摂り易いのは肉、牛乳、穀物、玉子およびその加工食品、魚です。しかしこれらの食品があっても大部分の人はAI推奨日量のコリンが摂れません。

玉子が最もコリンを摂りやすいことは研究からもわかっており、玉子を食べないとこの必須栄養素を十分摂ることはできません。Nutrients誌に掲載されたある研究によると、玉子を食べる消費者のうち57%以上がAI推奨日量のコリンを摂れている反面、玉子を食べない人は2.4%しか摂れていませんでした。

コリンは玉子やサプリメントを摂らない限り、十分に摂るのが「極めて困難」であることが研究から判明しています。British Journal of Nutritionに掲載された別のある研究は、カナダで妊婦や授乳中の母親がコリンを主に摂っている食品は乳製品、玉子、肉であることを特定しました。

毎日少なくとも玉子一個を食べる女性のコリン摂取は多かったばかりではなく、玉子を食べない女性よりコリン推奨日量の2倍から8倍が摂れることが判明しました。

植物系食事主体のトレンドがコリン摂取に支障をきたす

ダービシャーさんはイギリスでは、国家食品消費データベースや主な食品調査、栄養ガイドラインにコリンが含まれていないほど、一般的に見過ごされていると説明します。同氏はこう説明します:

「コリンの重要性を示す根拠が増え続けるなかで、イギリスで見過ごされ続けることがなくなる必要がある。この点は、植物系食生活/厳密な菜食主義へのトレンドが加速するなか、さらにコリン摂取/レベルに悪い結果が出やすい状況にあることからして、重視しなければならない。

… 玉子や牛乳、肉は主なコリンの摂取源であり、これらの食品の消費離れが進むと、その摂取/レベルが想像以上に悪い状況になりうる。コリンが豊富な食生活の重要性、それを実現する方法に関し、ヘルスケア従事者や消費者に情報を提供する取り組みが必要である。

… コリンの必要量をを食品だけから得ることができなければ、サプリメントは特に妊娠期 などのライフサイクルの主な段階ではコリン摂取が乳児の発育のために必須である。」

この忠告は新しいことではありません。2009年、ノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究者らはコリン摂取がAI推奨日量よりはるかに低く、「食生活ガイドラインを策定し、コリンが豊富な食品の消費を促すことが必要である」と表明していました。ここでも、その研究者らは「北米でコリンが豊富な食品は100 g当たり430 mgが摂れる」玉子や肉であると説明していました。

コリンの健康的な摂取源

周知のとおり、放し飼いの有機玉子こそコリンの最も豊富な食材の一つです。固ゆで玉子一個にコリン 147 mgが含まれます。コリンが集中する黄身を必ず食べましょう。その他の健康的なコリンの摂取源:

天然捕獲アラスカサーモン

オキアミ油 — 2011年のある研究は、 69種類のコリン含有リン脂質がオキアミ油には含まれ、このうち60種類はホスファチジルコリン物質であり、これらは肝臓病(アル中患者の肝炎や肝硬変)から保護し、消化管炎症を軽減し、潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群による症状を和らげます

有機の放し飼い鶏

ブロッコリやカリフラワー、アスパラガス等の野菜

椎茸

草で育てた牛のレバー

たいていの人は食事からじゅうぶんにコリンを摂り、稀な状況でしか不足しないと思っている一部の人はいますが、自分のコリン摂取量が日量を得るのに十分かを知るためにコリンの食物摂取源を特定することが大切です。このことは特にベジタリアンやベーガンの厳粛な食生活をする人に当てはまり、この場合はサプリメントが必要です。

メランコリーにつながりやすい植物系食生活

ベジタリアンやベーガン食を健康のために選ぶ人は多いが、菜食主義を追跡したある研究による憂鬱な精神状態につながりやすいことが判明しています。ベジタリアン(少数のベーガンを含む)の男性9,668人に関するある研究で、ベジタリアンは職業的地位、家族の既往歴、子供の数などの変数により調整しても、肉食の人よりほぼ二倍沈鬱になりやすいことが判明しました。

その研究は因果関係を明確にできませんでしたが、こうした関連性が実際あることはいくつもの根拠から明らかでした。憂鬱気味な人ほど食生活の好みが変動しがちであるか、特に大豆すなわち多くの農薬を摂り込んだ人の場合、非有機産品ばかり消費している結果、フィトエストロゲンの血中濃度が高いことに関連していると見られることが原因で、こうした関連性は存在すると研究者が説明しています。

しかし栄養素の量のほうに多く関連している可能性が高いです。ベジタリアンはオメガ3脂肪やビタミンB12、葉酸が不足がちで、これがために憂鬱ぎみになりやすくするようです。ベーガンすなわち動物性産品をいっさい食べず、ビタミンB12のサプリメントを摂らないない厳格なベジタリアンが不足になりやすく、その結果、神経精神障害や神経系の異常をきたすリスクが高いです。

ベジタリアン100人と何でも食べる人100人を比較した研究は、ベジタリアンのビタミンB12レベルが大幅に低いほかにも、メランコリックになりやすく、末梢神経障害や感覚異常(ピンや針に刺されるような感覚)、精神異常発生率が高いことが判明しました。

強迫障害はB12欠乏(およびホモシスチン高濃度)にも関連していることが判明しました。特に神経系障害はコリンの「正常だが低め」の範囲すなわち258 pmol/ℓ(ピコモル/ℓ)を少し割る程度の摂取でも起きることがわかっています。148 pmol/ℓでは欠乏状態と定義されています。USDAに次のような説明がありました:

「欠乏すると赤血球細胞が大型化して数が減るタイプの貧血症につながる。さらに、歩行障害や平衡感覚障害、振動感覚欠如、混同、悪化すると認知症にさえつながる。身体は神経保護被膜を生産するためにビタミンB12が必要である。従って、B12が不足すると神経障害につながる。」

植物が豊富な食生活自体は健康によいですが、厳格なベジタリアンやベーガンの場合、コリン、オメガ3、葉酸、ビタミンB12のサプリメントが必要になる判断基準を必ず設定する必要があります。

菜食主義でなくてお、放し飼いの有機玉子やその他のコリンが豊富なな食品を食べてコリンを適切に摂れば精神衛生や全体的健康を保護できるようになります。