Dr. Mercolaより
腸内細菌は免疫系の一環でありあらゆる種類の細菌叢が健康の無数の領域で基幹的機能をしています。例えば、プロバイオティクスとしても知られる善玉菌には次のようなよいことがあります:
有益な細菌は大腸内で栄養素と付着箇所をめぐり競争して病原菌の増殖も制御します。病原菌その他あまり善玉ではない細菌が優勢になると健康を悪くするのでこの点は計り知れないほど重要です。
抗生物質は当然のことながらあらゆる種類の細菌を無差別に壊滅します。これは一種の「殺伐とした地球」式アプローチで、抗生物質は絶対必要な場合しか使うべきでない理由の一つです。ここで疑問は、抗生物質を飲んでいる間に腸内フローラのバランスを回復させるために最適な方法は何か? プロバイオティクス (健康的な細菌) サプリメントを飲むべきか、もしそうなら、どんな物がよいのか?
上のビデオで鍼術師でカリフォルニア州機能医療センターの統合医療臨床医であり副所長のクリス・クレッサー氏が細菌叢研究者のルーシー・メイリング氏に、抗生物質を続けた後にプロバイオティクスで腸の細菌叢を回復させるという標準的推奨に少々疑問を投げかけた2つの最近の研究に関してインタビューしています。
腸の健康状態を見極めるための標準的な方法はかつては便中の細菌の種類と数を特定することでした。しかし最近の研究から便中の細菌では結局よく腸内の状態を把握するのは無理なようであり、抗生物質を一定期間続けた後にプロバイオティクスの経口サプリメントを推奨することに疑義を投げかけています。
研究からわかったことは、便中のと腸内のフローラは腸管内腔 — 腸内空間 — と腸壁粘膜のフローラと異なることで、すなわち検便では腸内の実態を反映していないということです。
クレッサー氏が説明するように「腸内フローラの変化と健康や病気の状態に相関性を見出した従来のすべての研究宇は、おそらく全体のごく一部しか把握しておらず、それとはまったく異なることが他面には存在するようである。」
全体的にいうと、腸の細菌叢と便中の細菌叢にはたった20%しか相関性がないことが彼らの研究からわかりました。したがって、検便は病原菌の存在を検出するにはとても良い方法でしょうが、腸内フローラの組成まで正確に評価することはできません。
その研究はさらに経口プロバイオティクスを摂っても効果は一時的であることも確認しました。だからといってプロバイオティクスが無用なわけではありません。メイリング氏が説明するように「ランダム化対照試験で示された確かに多くのプロバイオティクスには有益な効能があり」ます。つまり以前考えられていたようには機能しないかもしれないということです。メイリング氏は次のように説明します:
「その研究者らは実際には大幅なコロニー形成がないことを特定した。その研究はマウスと人で行ったもので … マウスでは有意なコロニー形成がなかった。人の場合、人によって極めて異なる。
つまり、人によっては若干コロニー形成があったが一方では許容性のあるコロニー形成促進者に変わった人もいた。他の人ではプロバイオティクスのコロニー形成に完全に耐性があったが、彼らを総じて見てこのことは問題ではなかった。プロバイオティクスを飲んでいた人の小腸内では遺伝子発現が大幅に変わっていた。
このことはプロバイオティクスは確かに腸内にコロニーを形成しないが、一時的には遺伝子発現の変化や、飲食、消化の改善とさらにこうしたことの多くが免疫系を刺激することを含め、実に有益な効果が得られた。」
ひっくるめて見ると、プロバイオティクスのサプリが多種多様な遺伝子の変化を生んだわけで、19の遺伝子が発現を抑制され、194の遺伝子は発現が促進されました。こうした遺伝子発現の変化の多くは免疫系機能の改善に関連していました。
必ずしも最新なわけではない3つ目の発見は、腸内フローラは変化に耐える傾向があり、共生フローラ(相互に有益にも害悪にもならない共生関係を維持して協力し合う微生物)こそ、添加されたプロバイオティク菌種のコロニー形成を阻止しました。
クレッサー氏とメイリング氏が説明するように、このことは生後初期のコロニー形成は長期的な優勢勢力となる傾向があり、変性しにくいことから、生後直後、膣経由誕生と母乳の授乳により有益な細菌がコロニー形成することの重要性を強調します。
しかし、個人別には異なります。人によって腸内フローラはいわば「許容的」(新たな細菌のコロニー形成を受け入れやすい)と耐性があるのと異なります。現状ではこの個人差の原因は不明です。
しかし、最も想像していなかったような、直観とは正反対の事実として、一定期間抗生物質を服用した後にプロバイオティクスを飲むと腸内フローラが自然回復できなくなり、このことは以前の考えとは全く逆のことです。抗生物質の後のプロバイオティクスの効果を評価するため、その研究では被験者を — マウスと人 — 3群に分けました。
興味深いことにプロバイオティクス グループのほうが自然回復のため放置したグループより結果が芳しくありませんでした。プロバイオティクは抗生物質関連の下痢を予防した一方、プロバイオティクス添加がサプリメントを止めてから5か月まで正常なフローラの回復を遅らせたのです。その時でも細菌叢の多様性は最初の状態より大幅に低いままでした。
プロバイオティクスを受けず自然回復のため放置したグループの腸内細菌は21日以内に抗生物質投与前の状態に回復しました。クレッサー氏が指摘するように、この事実は抗生物質が2年まで腸内フローラを変性させうることを特定した研究と同じようなことを示しています。この場合、菌種のうち二三のみしか2年以内に回復できませんでした。
第三グループは最初の移植から1~2日だけで元の腸内フローラが回復して最も成果があがりました。クレッサー氏が説明するように、抗生物質の投与が必要になったり、自己免疫疾患などより深刻な病気が発症した場合、まだじゅうぶん健康なうちに便のサンプルを確保しておくのは事後的に有用になります。
では、この想像していなかったような結果をうまく説明できる原因は何でしょうか? この阻害効果の背景にある仕組みはどんなものでしょうか? メイリング氏は次のように説明します:
「この研究は実に賢い追跡研究を行っており、プロバイオティクスの錠剤を主に飲み、プロバイオティクス11菌種のうち4種類の属の増殖を支持したいくつもの異なる成長条件で培養した。
つまり、培地によってラクトバシラスが多かったり、たくさんのビフィズス菌がいるようにして培養した。培養開始から24時間後に研究者らはプロバイオティクスの周囲を囲む上澄み液、いわばスープを回収した。
それを人の糞便細菌叢の培地にしたトレイに添加した。その結果、ラクトバシラスが多いお皿から取ったこのスープ(上澄み)が自然な人の細菌叢を最も阻害することが判明した。これは特にラクトバシラス[乳酸菌]が回復を阻害しているかもしれない。」
スポアバイオティクスや、抗生物質の投与後に良いと私が(今でも)勧める善玉酵母菌サッカロマイセス・ブラウディの使用などその他の種類のプロバイオティクスが、抗生物質の投与後によいまたは悪い影響を及ぼしうるのかどうかを確認するにはさらに研究が必要です。
クレッサー氏が説明するように、投与システムが潜在的に相違を生む原因かもしれません。薬が消化系と小腸上部を通過するに伴い腸内フローラが生き残れるようにした、画期的投与システムを数社が開発しました。
それでもプロバイオティクスサプリメントが弱い抗生物質の投与後でも腸内フローラの回復を阻害しうるかももう一つの疑問です。この場合研究者らは利用可能な抗生物質のうち最も強力な2種類を組み合わせて使用しました。抗生物質の投与後まで待たずに投与しながらプロバイオティクスも飲み始めると結果に影響が出るかもしれないのかもまだ不明です。
腸内には約2,500種の微生物が生きており、その多くは共生しつつ身体を支持します。身体が必要な物質の産生、安全な排出のため有毒製品の代謝、あるいは免疫系と免疫耐性の回復または均衡の維持があり、炎症と闘う以上に深く影響します。
芽胞系プロバイオティクスつまりスポアバイオティクスはバシラスという微生物から派生したグループに属し、免疫耐性を劇的に増大させることがわかっています。ディートリヒ・クリングハート博士がこれについて「How Spore Biotics Can Help You」(芽胞系バイオティックスがいかに健康によいか)で説明しています。
芽胞系プロバイオティクスには生きているバシラス菌種が含まれておらず、芽胞のみ含みます(細胞壁やDNA保護殻、このDNAの機能機構)。その結果、これらは抗生物質から影響を受けず、抗生物質と同時に飲むと腸内フローラをより効果的に回復させることができるかもしれません。
さらに、腸内でバシラス菌種は糖分をビタミンCに変換もします。ビタミンCは感染予防効果があることでよく知られる栄養素であるほか、クリングハート博士によると、スポアバイオティクスは乳酸菌、ビフィズス菌その他腸内の善玉菌をスポアバイオティクスから出る電磁メッセージにより増殖を大幅に促します。
この点は全く独自の機能です。普通のプロバイオティクスを飲むと主に自然にしか機能しません。しかしバシラスの芽胞は実際にその他の有益な微生物の多くを強化もします。
バシラスの芽胞は強力な抗菌作用がある24種類の物質を産生します。しかし、無差別に滅菌しません。病原菌を抑止するので、全体的に価値ある寄与をしています。
以上の理由から、科学的事実が効能がないと反証するまでは、私は抗生物質を飲むならスポアバイオティクスを使用するよう勧めたいと思います。さらに抗生物質を終了した後に有益な酵母サッカロマイセス・ブラウディも私はお勧めします。これで 下痢など抗生物質処置による二次的合併症を防止します。
最後になりましたが他と同等に重要な点は、抗生物質を飲んでいるかどうかを問わず、食生活に伝統的発酵・熟成食品をもっと加えることを検討しましょう。食事は第一義的ではなくても主な腸内フローラの影響因子であり、発酵食品は腸内フローラを支持して最適化することがよく知られています。
プロバイオティクスサプリメントを飲むよりずっと安価であり、豊富な種類の発酵・熟成食品を食べると、多種類の有益な細菌が得られ、サプリメントよりはるかに大量に摂れます。
心身の健康のために、腸内フローラを育むことが必須
「善玉菌」を摂ると不安が和らぐ?
発酵食品はサプリメントより100倍多いプロバイオティクスを含んでいます。
腸内常在菌は健康状態の反映かもしれない
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