Dr. Mercolaより
食品の中には健康へのメリットをはっきり断言しにくい賛否両論ある物があります。カゼインがこの「グレー」ゾーンに該当する食品で、出所の品質と健康の主目的に合わせて慎重な検討を要します。
カゼインは生乳に含まれる主なタンパク質でタンパク質成分の80%を占めます。残り20 %がホェイです。 ホェイ(乳清)タンパク質は運動競技の記録や筋肉の成長によい健康的なフィットネスタンパク質であり、スポーツ栄養パウダー、バー、ドリンクによく含まれる成分です。
ホェイとカゼインの主な違いは、ホェイが消化が速く最適な回復のための食事になる一方、カゼインは消化が遅い異化阻止特性があるタンパク質であり、食品が無くても筋肉の分解を軽減するのを助けます。
ホェイ(乳清)には分岐鎖型アミノ酸ロイシン、イソロイシン、バリンが高濃度に含まれ、mTOR経路を活性化して筋肉成長の強力な刺激剤です。
カゼインのうち主な二種類はミセラー カゼイン — スポーツ栄養食品によく使われる形態 — とカゼイン加水分解生成物であり、後者はミセラー カゼインより早く消化され、速く吸収されます。
カゼインはさらに3種類に分類することもできます:生乳に含まれる自然のままの全乳カゼイン、チーズカゼイン、工業製カゼイン。フィットネス専門家で、「Unlock Your Muscle Gene」(筋肉の遺伝子を活発にする)等著作があるオリ・ホフメクラー氏が説明するようにこれら三種類のカゼインにはかなりの差異があります。
カゼインは通常、酸や熱処理により抽出しますが、この過程に主な問題があります。市販の多くのカゼイン製品は品質が劣悪で、有毒残留物さえ含む場合がります。筋肉成長のための有益なタンパク質としての価値に関しては詳細次第で、意見も科学的証拠も異なります。
ホフメクラー氏の説明によると、自然のままの全乳カゼイン(タンパク質のクラスターでありカルシウムやリン酸塩、クエン酸塩イオンと結合したミセルから構成される)は、「体内の酸アルカリ均衡を助け、過度な酸性状態を起こさないようにしている」ので、最も機能性があるが、同じ効果は酸性化効果が大きいほとんどの工業製カゼインにはありません。
さらにカゼイン感応性がある多くの人は品質がどれほど高くてもカゼイン サプリメントは避けたほうがよいです。カゼインのよくある副作用には胸焼け、鼓腸、アレルギー反応、後味の悪さなどが挙げられます。
カゼインなどのタンパク質サプリメントも腎臓や肝臓病の人に対しては、タンパク質の制限が大切なので、禁忌です。
この点を注意したうえで、誰でも身体が必要なだけの量にタンパク質制限によりメリットが得られると思います。運動選手やボディービルダーなら普通より多く必要でしょうが、長期的健康や長寿より肉体的実績を選択しているのでタンパク質を食べ過ぎると逆効果になります。
ほぼ最適なタンパク質摂取量は正味体質量1 kgに1 g程度のタンパク質であると考えられます。運動選手や妊婦その他の人は25%ほどさらに多く必要です。
身体が実際に必要な以上のタンパク質を食べるとラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)という重要な生化学経路を刺激することがあります。この経路は多くのがんにおいて重要な機能をしています。
身体が必要とするだけのタンパク質量に減らすと、mTORは阻害されたままとなり、がん発生確率を最小化します。
生乳から得られるカゼインは明瞭な同化特性があり、効果的な筋肉成長用のタンパク質です。吸収が遅いので、血流に数時間持続的なアミノ酸放出します。
このため睡眠中等長時間持続的同化モードに筋肉が維持されるように利用することが可能です。全乳カゼイン もロイシンという自然食品から得れば筋肉をとても付けられるアミノ酸が得られます。自然のカゼインに近い製品:
• 濃縮ミルクタンパク質(MPC)、ミルクを被膜ろ過して得る安定的な自然タンパク質。このろ過によりミルクの中のカゼインとホェイの比率にほぼ等しく含む最終製品ができます。
MPCは自然カゼインとほぼ同じ特性があり、pHが中性からアルカリ性で安定的な水溶性の状態では熱損傷に耐性があります。最適なMPCの原料は有機の草で育った乳牛から取れる生乳です。
• ミセラー カゼインはMPCと同じ方法で処理されますが、精密濾過法によりホェイをカゼイン ミセルから分離します。ミセラー カゼインは水に溶けにくいのでこの処理により官能価が下がります。
通常は、タンパク質粉を液体で再組成する必要があるので、完全に溶けないと官能価が失われます。
温かい液体を使うと溶解性を増やすことはできます。それでもミセラー カゼインも不安定で、長時間保管すると劣化しやすいです。ホフメクラー氏によると:「ミセルの相互作用によりタンパク質の架橋反応や脂肪粒子の表面への移動、カゼイン劣化につながります。
すなわちミセラー カゼインは他の工業製カゼインより優ると主張されても、まだ不安定で、自然のカゼインやチーズカゼインには劣ります。しかも塩やカゼイン酸ナトリウム、ポリデキストロース等のあってはならない添加物残留物を含む場合があります。」
ミセラー カゼイン製品を買う前によく調べ、製品販売者に最新の分析証明書と独立検査機関によるレポートがないか訊ね、製品のタンパク質完全性を立証するよう要求してください。
チーズカゼインは生乳カゼインとは異なりますが、これにも筋肉を増やす有益な特性があります。チーズカゼインはチーズの製造で作るカードからできます。カードとは製造プロセスから残った部分で完全な自然タンパク質です。
自然カゼインと同じくゆっくりかつ効率のよい栄養素放出が特長です。ホフメクラー氏によると工業製カゼインは避けるのがよいです。自然カゼインとチーズカゼインとは異なり、工業製カゼインは全タンパク質分離物のみでその大部分は強酸や熱処理による超滅菌乳から抽出されます。
この製造工程で通常の場合、メチオニン(必須アミノ酸)やシステイン(条件付き必須アミノ酸)が欠乏したタンパク質になります。これら二つのアミノ酸は処理中に分解されてしまい、これらの硫黄を含むアミノ酸は最適な免疫機能のために欠かせません。
さらに悪いことには、高温(超加熱)処理されたカゼインは大腸がんリスクを高めることがわかっています。これは完全に消化されない変性度の高いタンパク質です。その結果消化されなかったタンパク質は大腸にまで行き、そこで細菌がタンパク質を発酵させると発がん性のフェノール化合物に変換されます。ホフメクラー氏はこう説明します:
「技術的には、加熱したタンパク質は分子の完全性が変成するので発がん物質になり、さらに消化性がよくなくなり、窒素廃棄物が増加します。加熱したタンパク質の消化性減少により、大腸に到達する大量の窒素廃棄物が増えてそこで発酵されアンモニアやフェノール化合物に分解され、これらは両者ともがん促進要因です。」
このリスクは消火されにくいでんぷんやその他の溶解性繊維質をたくさん食べることである程度は減らせます。これらの食物は腸内の善玉菌の餌になり、大腸内での炭水化物発酵を促進します。善玉菌に餌を与えると大腸内のタンパク質発酵度が下がり — これにともない大腸がんリスクが低くなります。
すでにご説明した通り、筋肉を分解させにくくすることはカゼインの主なメリットの一つです。Authority Nutritionに掲載された最近の記事はカゼインのメリットとして言われることを数項目深く掘り下げ、この筋肉節約効果の科学的根拠を取り上げています:
「ある研究では、参加者にホェイまたはカゼイン タンパク質を与え、次に7時間以内のアミノ酸ロイシンの総分解率を測定しました。ホェイ タンパク質を食べたグループのほうがロイシンの総分解率が25 %前後高いことが判明しました。
すなわちカゼイン グループは7時間以内に代謝された総タンパク質量が減っていたことを意味します。すなわち正味タンパク質のバランスは改善したわけで、これこそ筋肉の成長と保持のために欠かせない要因です。結論:このタンパク質は非同化的です。この物質は消化が遅いので体内のタンパク質分解が削減され、アミノ酸が持続的に筋肉細胞に供給されます。」
予備研究でもカゼインは以下のように、筋肉を育てる、筋肉を節約する以外の健康的メリットがあると考えられることを特定しました:
私個人的にはカゼイン サプリメントを勧めません。有機の草で育った乳牛から取れる高品質ホェイ タンパク質を優先します。カゼインに私が反対する理由:
• カゼイン敏感性のある人が多く、こういう人の場合、たとえ高品質の最も高価な市販カゼインを使っても問題は起きる可能性が高い。
• 牛乳には糖分(乳糖)が多いので、自然の生乳を飲むと正味炭水化物量(総炭水化物から繊維質を控除した分)がすぐに増えます。(この点では牛乳よりバターのほうが、乳糖が少なく健康的な脂肪が多いのでお勧めです。)
• さらに、脳内にミルク由来のオピオイド受容体があり、牛乳タンパク質であるカゼインにはカゾモルフィンという天然オピオイドが含まれています。(牛乳やチーズ等の乳製品には「依存症」的になる場合があるのはこのためです。)
低用量ナルトレキソン(LDN)はこれらの受容体を阻止して免疫機能を高めるためにとても効果的なことは周知です。逆に、これらのオピオイド受容体を継続的に刺激することで免疫機能を阻害するリスクはあります。
ホームドクターでありウェストン・A・プライス基金(WAPF)の創設幹部、自己免疫疾患へのLDN投与では専門家のトーマス・コウワン医学博士が説明するように、外生オピオイド(体内で自然に作られず、外部から摂取したオピオイド)は免疫抑制剤である可能性があります。
欧州売春婦研究というよく知られるある研究ではHIVやAIDSの主なリスク要因は性的接触より、オピオイドへの暴露であることを実証しました。コウワン氏によるとがん患者にも同じパターンが見られます。がん患者は慢性的痛みに対してオピオイドの投与を受けると、免疫系が弱まり健康が急速に悪化します。
従って免疫系に問題があれば、カゼインを一切摂らないのが賢明であり、筋力トレーニングのために追加的なタンパク質が必要なときに限ればよですホェイ タンパク質はこれに優る代替物であると私自身は考えています。
• カゼインは確かに筋肉の成長に効果がある。しかし、ここには選択が必要になります:成果を上げたいのか、健康と長寿を優先するのか。
量を抑えて時々摂る限り有害になることはまず考えられず、運動の成績をよくするメリットはあるでしょうが、概して筋肉を増やすための「タンパク質過負荷」はがん(mTORを刺激するから)など長期的健康の問題リスクが高まるので、カゼインを過剰に摂ると、免疫機能に悪影響が及ぶ可能性があります。
• 以上と同じく、市販のカゼインサプリメントの多くは原材料や加工が原因で劣悪な品質です。タンパク質は長時間加熱すればするほど分解し、有毒になります。
プロテインサプリを摂るなら、高温処理(加熱処理)したカゼインが無い物であることを確認しましょう。この物質は加熱食品のなかで最も発がん性が高いです。これにはカゼインやホェイの分離物および カゼイン酸塩が含まれます。
超高温滅菌乳由来のホェイ タンパク質も避けましょう。ホェイメーカーがホェイが生乳のみから作られたことを証明する適合性証明書(CoC)を呈示できない限り、まず超高温滅菌処理製品です。
以上の通り、賛成論と反対論に配慮すべき状況です。筋肉を付けたいためにカゼインのサプリメントを使うなら、高品質品であることを確認するために少なくとも自分で調べてください。全乳、生乳の自然のカゼイン 、熟成チーズやコテージチーズに含まれるチーズカゼインが最適な選択肢です。その次にこれに似たMPCがよいです。
過度の使用は、特に熱処理やその他の劣等品質品を使用する場合、免疫機能低下や大腸がんを含む特定の健康の異常リスクが高くなる可能性があり、不利かもしれません。
こうした結論に反対論もあるでしょうし、カゼインの使用に反対するエビデンスの根拠を私はまだ確実に立証できていません。しかし、こうした限界を完全に修正するか破棄するだけの十分なエビデンスが得られるまでまたは得られない限り、私のカゼインサプリに対する疑惑は消えません。
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