運動を始めるのに遅すぎることがないことを研究が実証

高齢者の健康のための運動のメリット

早分かり -

  • 体を鍛えていない70~80代の高齢者でも同年齢の生涯運動選手と同じく筋肉を鍛えられる能力があること、従って引き締まった体づくりに遅ぎないことがある研究で証明されました
  • 筋力トレーニングsinaito筋肉は萎縮し、質量が減ります。筋肉萎縮 (加齢による筋肉質量の損失)は70歳以下高齢者の10%~25%、80歳以上では半分までに発生します
  • 筋肉萎縮を防止するために何もせずにいると、30歳から80歳までの間に筋肉の質量がおよそ15%減らざるをえません
  • 血流制限トレーニングはほとんどの人にとって最適な筋力強化戦略になりうる一方、高齢者や鍛えたことがない人にとって、従来式筋トレでよく使う重量のごく一部で済むので楽に効果があります
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Dr. Mercolaより

運動が最適な健康のための基本であることは明白で、これまで運動したことがないとか高齢であるからといって始めるには遅すぎることはありません。高齢者でも日常フィットネスを始めると大きく進歩できることはいくつもの研究が何度も実証してきたし、最近の研究はこの認識をさらに裏付けています。

身体を鍛えたことがない高齢者も筋肉をつける能力は変わっていない

イギリスのバーミンガム大学の研究者らが行った研究では70歳代と80歳代の生涯運動選手と組織化されたフィットネスプログラムに参加したことがない同年齢の男性を比較しました。

その研究の目的は鍛えたことがない人が生涯運動する人が可能なほど筋肉をつける能力があるかを見極めることでした。Neuroscience Newsに「優秀な運動選手は長年体力が卓越しているので筋肉がつきやすいであろうと研究者らは予測していた」とあります。

その答えは元気づけられるもので、控えめに言っても運動前後の筋肉生検から運動に応答して筋肉がつく能力は両者で等しいことが判明しました。

高齢者は筋力トレーニングでおおいに得るものがある

私の母は亡くなる数年前フィットネスプログラムのメリットを受けるのに遅すぎることがないということの実例そのものでした。母は74歳のとき筋力トレーニングを始めました。三年後に筋力や行動範囲、平衡感覚、骨密度、精神的明瞭さがおおきく改善していました。

筋力トレーニングせずに筋肉は萎縮し、質量が減ることを認識することが重要です。加齢に伴う筋肉質量の減少を筋肉萎縮といい、その進行を止めるために何もしないでいると、30歳から80歳までの間に筋肉の質量がおよそ15%減らざるをえません。筋力トレーニングには以下のようなメリットもあります:

歩く能力の改善 — トレーニングを12週間行った65歳以上の高齢者は脚力と忍耐力が改善し、休憩せずに従来より38%長く歩くことができました。

日常行動力の改善 — 16週間「自重のみ」のウェートトレーニングを行った後、60歳から77歳の女性の筋力が大幅にアップし、速く歩けるようになり、椅子から立ち上がる、買い物を持ち歩く等の日常行動能力が改善しました。

関節痛の緩和 — ウェートトレーニングは筋肉、腱、関節近辺の靭帯を強化し、関節から応力を解消し、傷みが和らぎます。さらに行動範囲も広がります。

血糖の制御改善 — ウェートトレーニングは2型糖尿病患者の血糖制御を助けます。2型糖尿病リスクも下がります。

ある研究では筋力トレーニングを週に少なくとも150分すると、座りがちなライフスタイルに比べ糖尿病リスクが34%下がりました。ウェートトレーニングと有酸素運動(早歩きやジョギング、サイクリング、水泳、テニス、ボート等)を組み合わせるとこのリスクが59%下がりました。

脳の健康改善と脳の老化遅延 — 筋力トレーニングは成長因子の産生も増やし、細胞の増殖、核酸、分裂が盛んになります。

こうした成長因子の中にはニューロンの成長、分化、生存率を高めるものがあり、このため筋肉を鍛えると脳にもメリットがあり、認知症予防に有用です。

ビデオは英語のみ

血流制限トレーニング — 高齢者に最適な方法

高齢者の筋肉萎縮すなわち筋肉質量の減少は大きな課題です。70歳以下の高齢者の10%から25%、80歳以上の半数は筋肉萎縮のために障害を受けていると推定されます。

両親が亡くなる前に血流制限について知らなかったことは私の人生で最大の後悔いの一つです。両親は重篤な筋肉萎縮がありました。私が両親のために血流制限をもっと早いうちに利用していたなら、もう10年は生きれたはずだと本当に思っています。

私はずっと前から超スローモーのウェートトレーニング(筋トレの高強度バージョン)を含む高強度運動を勧めてきましたが血行制限トレーニングは特に高齢者や鍛えたことがない人のためにこれより優れる方法であると確信しています。

それは従来式の筋力トレーニングで通常使うウェートの20%から33%だけで筋力と筋肉質量を課大きく改善できるからです。

血行制限こそ蔓延する筋肉萎縮に対処するためへの最適な戦略のひとつであり、競技選手でない大多数の人にとってこれだけで十分な筋力トレーニングといえるでしょう。

血流制限の基本

血流制限トレーニングでは近位腕および/または脚の動脈流入を部分的に制限し、静脈の血流を完全に制限しながら筋肉を鍛えます。静脈の血流制限は運動する間、四肢に弾力性バンドを着けて行います。

バンドは静脈流が心臓へ戻らないように遮断するのに十分きついことが必要で、これで静脈血が運動する四肢の領域に「溜まる」ようにしつつ、動脈血は流れる程度に緩いことが必要です。その最適な圧力は四肢から戻る血流を100%制約するために必要な圧力として定義される動脈閉塞圧の約半分です。

閉塞トレーニングバンドとよく呼ばれる幅広の非弾力性バンドを使用しないでください。こうしたバンドは危険で、場合によっては血圧を上げ、血栓リスクが高まります。

バンドがじゅうぶんにきついことを確認する方法の一つは運動前後の四肢の周囲を測ることです。運動後にこの長さが少なくとも約1.25から2.5cm増えていればよいです。

もう一つの方法は手の平の親指下領域を強く押さえて直ぐに放し、白くなった領域がピンクに戻るまでの時間を測るます。

3秒以上かかればバンドがきつすぎます。白い個所がすぐピンクに戻ればバンドをきつくする必要があると思います。この毛細管再充血圧はひざ下の組織でも確認できます。最適なのは約2秒かかることです。

血流制限のメリット

静脈の血流を制限することにより運動中の筋肉に比較的低酸素の環境を作りますが、これが成長ホルモンやよく「フィットネスホルモン」と呼ばれるIGF-1等のホルモン産生を含む生理的効果がいくつも生じます。さらに血管内皮成長因子の増加因子(VEGF)も増加し、これが血管の成長や内壁(内皮細胞)の改善のためになります。

スプリントやヘビーウェートトレーニング等の高強度運動はⅡ型筋繊維(速筋)を活性化するので筋肉のサイズが大きくなるとして勧められてきました。低重量での従来式ウェートトレーニングではⅡ型筋繊維が活性化されませんが、血流制限でこの効果も得られます。

血流制限でⅡ型筋繊維が活性化する理由は、Ⅰ型筋繊維(遅筋)は血行制限により生じる低酸素状態では疲労しきるからです。このためⅡ型筋繊維が燃えて高濃度の乳酸を産生し、これが代謝の魔法の多くを起こします。

血流制限トレーニング中に前半でⅠ型筋繊維が疲労しきり、運動を続けるにはⅡ型筋繊維が必要になります。近日中に血流制限トレーニングについてもっと詳しくビデオ付きの記事をアップ予定ですので、当面は私の以前の記事「血流制限で筋肉を迅速かつ安全で容易に増やす」をご参照ください。

かねてから一酸化窒素ダンプを私は勧めてきましたが血流制限のほうが決定的な代謝メリットを得られるはるかに効果的な方法なので、今後は勧めないことにします。これは新たなピークフィットネス運動の一形態です。この運動を始められるように網羅的なトレーニング推奨事項やビデオの完成を待ちきれません。

歩きの効能を過小評価しないこと

歩きは高齢者を含め年齢を問わず有益な運動です。歩きは定期的にペースを速めるだけで高強度運動にも変えられます。血流制限トレーニングといっしょに行うこともでき、私は海浜を歩きながらほぼ毎日行っています。

松本市にある信州大学医学部大学院の野瀬博教授博士チームが行った研究はゆったりした歩きと早歩きを規則的に組み合わせると高齢者に有益であることを実証しました。

野瀬博士のプログラムは5回のインターバルを利用します:3分早歩きし、1から10のきつさ尺度のレベル6~7を目指し、次に3分ゆっくりと歩き、合計30分、週3回行います。

その結果、同じ時間数一定ペースで歩いた人より、インターバルで歩いた人のほうが有酸素フィットネスが大幅に優れ、脚力や血圧が5カ月後に改善しました。30分の歩きを一貫して着実なペースを維持した人はこれらのパラメータにほぼ変化がありませんでした。

最適な自分の運動頻度を見極める

ビギナーはウェートトレーニングを週3回以上しかも日を空けても行わないほうがよいのですが、週によっては休憩が多いほうがよいときもあるでしょうし、上達するに連れ休憩の日を増やす必要もあるでしょう。

血流制限はこの際さらにメリットがあり、最小限のウェートでできるので筋肉の損傷が最小限で済み、早く回復します。血流制限は週たった2回~3回でよく、自分のトレーニング目標に応じて変えられます。

ご自分の最適な運動頻度を自分の身体や症状を視ながら決めてください。基本的には24時間後に疲れが残っていない程度のスケジュールを目指し、元気が出て健康だと感じる程度にし、次の運動を前回より難しくしないことです。まだよく回復していない典型的症状は以下の項目を含むトレーニングし過ぎの症候群と同じようなものです:

  • 成果が下がる — 運動するたびに筋肉が早く疲れる。
  • 運動の翌日以降も倦怠感が残る — 筋肉全体の痛みや過労、頭痛、運動後数日続くことがあるりさえない気分を含むインフルエンザのような症状がある場合もあります。
  • 倦怠感が運動の合間に継続し、元気がでない日の方が元気のある日より多くなる。

回復するとおそらく以下のようなことが感じられます:

  • 毎回運動するごとに少しずつ前よりできるようになる — 毎回感じることはなくても、前回よりきつさが減る感じがしたり、時と共に反復回数を増やせるようになる。
  • 翌日少し疲れを感じるが、元気だという感覚で活気ある調子のよい状態になる。