プロピオン酸カルシウムが糖尿病や自閉症につながる理由

腸と脳

早分かり -

  • プロピオン酸は腸内細菌による発酵の結果産生する副産物ですが、食品のプロピオン酸カルシウム添加により腸内細菌叢が変成し、神経行動的及びインスリン抵抗性を発生させます
  • プロピオン酸カルシウムは「概して安全(GRAS)」と指定されている添加物ですが、法律では食品メーカーごとに安全判定基準を設けることを認めており、化学物質を同名称にて表記することを容認しています
  • 食品添加物は最初から安全試験をろくに受けていない一方、化学物質が組み合わさって消費されると予想以上に悪い健康上の懸念があることを示す根拠が増え続けています
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Dr. Mercolaより

食品が調製中に変成される程度は連続的に変化します。蔓や地面、茂み、木々から直接採取しない以上、何らかの加工を経ています。加工は冷凍や缶詰、乾燥といった基本的なものから、食品がおおきく変成する高度処理まであります。後者はよくガソリンスタンドで購入されるものです。

残念ながら、アメリカ人は加工食品を好むだけではなく、57.9%の食品は高度加工されたものです。2013年のある研究は、2型糖尿病に係る国民医療費が$1400億に及び、たばこ製品による害悪から生じる医療費$900億よるはるかに多く、糖尿病は加工食品主体の生活から直結しています。

高度加工食品と最小限の加工食品の糖分量には大差があります。高度加工食品のカロリーの21.1%は糖分によるものですが、未加工食品には精製糖や添加した砂糖も含まれていないことをデータが示しています。過去数十年間で食品の選好が変化したのにともない、健康の異常件数も増大の一途です。

自閉症と糖尿病の増加率は公衆衛生上の懸念事項

疾病管理予防センター(CDC)による最近の統計によると、米国成人のうち1億人が糖尿病または前記糖尿病となっています。そのレポートは2015年のデータに基づくもので、当時は3030万人が糖尿病で、8410万人が前記糖尿病となっていました。

糖尿病は主な死因で、心臓病、脳卒中、腎臓病を含む最多10疾患で見られるその他3項目の死因に寄与していると考えられます。全米糖尿病協会によると、150万人のアメリカ人が毎年新たに糖尿病と診断され、20歳未満の193,000人が糖尿病と診断されました。

糖尿病関連の金銭的負担を示す最近のデータは、2017年に$3270億が出費され、直接医療費は$2370億で生産性低下による事業の損金額が$900億に上ることを示しています。年齢と性別で調整後の統計は糖尿病の人の平均医療費は糖尿病でない人の医療費の2.3倍多いことを示しています。

自閉症スペクトラム障害 (ASD)はスペクトルのどの辺りにあるかによって異なる反復行動や、意思疎通や社交の困難等継続的社会的不適応が特徴です。その症状はよく生後二年以内に認識できます。

自閉症は予想以上に蔓延している

しかし2つの独立的研究チームが親へのアンケートから得たデータを解析したところ、それぞれ別個に異なる結果が出ました。これには研究時点には自閉症のために治療を受けていなかった29.5%の子供を含みます。

Pediatrics誌に掲載された一番目の調査結果は子が自閉症であると40人に1人の親が答えたという結果でした。

Journal of the American Medical Association誌に掲載された2番目の研究は自閉症の蔓延率が州別に大きく異なることを特定しました。治療を受けた子の43.3%が行動の治療、6.9%が薬のみを服用し、20.3%が両方とも受けました。

補完的所得支援(SSI)プログラムで使用されデータ出所を評価したところ、2004年には自閉症障害が原因で8.08%の利用率であったものが2014年に20.53%へ増加しました。

さらに、自閉症障害の分類は2番目に多い給付金受給率となっており、SSI給付金を自閉症が原因で受給する子供の数が減る兆しは全くありません。

自閉症障害を悪化させるプロピオン酸カルシウム

自閉症発症に単に一要因のみが関わっているわけではないとはいえ、プロピオン酸カルシウム(E282)は症状を悪化させることはわかっており、自閉症発症に機能していると考えられます。

プロピオン酸カルシウムは保存料やカビ防止剤としてごく一般的にフルーツや肉パッケージ、チーズ、パンに噴霧されている食品工業ではよく使われる添加物です。

その化学物質はカビ防止にとても効果的ですが、腸内細菌には悪影響があり、このため自閉症の症状が悪化します。プロピオン酸カルシウムはプロピオン酸のカルシウム塩であり、現状では概して安全(GRAS)に分類されています。

FDA(食品医薬品局A)によると、メーカーが定める「現段階の優良製造工程」以外には制限なく食品に使用できる添加物です。EUの食品安全当局はプロピオン酸カルシウムが数種類の菌種に対して効能がある家畜飼料に使用される認可済み抗微生物保存料として認可しています。

米国では牛の餌に追加的カルシウム摂取源としてまたいくつもの感染症の治療用にも使用されています。この化学物質の抗微生物作用は腸に入った時点で終わるわけではありません。

酢酸、プロピオン酸、酪酸は腸内細菌の発酵作用で生成される短鎖脂肪酸です。これらの脂肪酸は食物、腸内細菌、エネルギーの間で複雑な役割を演じることによりエネルギー代謝にいくつもの有益な効果があることがわかっています。しかし過剰なプロピオン酸は自閉症で顕著に共通する行動の異常を誘発させます。

プロピオン酸は腸脳軸に悪影響を及ぼす

ある研究では、自閉症関連の胃腸内細菌(クロストリジアとバクテロイド)がプロピオン酸を生産しており、齧歯類に投与すると逆行的行動、自閉症 に類似する電子写真でわかる神経炎症性の変成を生じさせるようです。

プロピオン酸は腸内細菌が消化性繊維質を分解する際自然に発生します。プロピオン酸カルシウムは人間の生理機能と両立しうると想定された概して安全な添加物に指定されました。プロピオン酸の代謝率はいくつもの遺伝子や腸内フローラ及び環境要因から影響を受けます。

しかし、過剰にあると神経行動的影響が出ることがわかっており、特に、腸内細菌の異常が元でプロピオン酸過剰になった自閉症患者に該当します。これらの症状は健常人には容易に検出できませんが、多量に暴露されると健常人にも自閉症に似た逆行的症状を起こさせると考えられます。

腸内細菌は最適には悪玉菌と善玉菌のバランスが取れている必要があります(いわゆる有害な細菌は過度に増加すれば問題しか引き起こしませんけれども)。一種類の細菌だけ異常に増殖すると、他の細菌が飢えるほか、特定化学物質を過剰に生産するようになります。

有害な細菌が善玉菌よりはるかに多く増殖すると、その結果としての炎症が自閉症に関連する胃腸の異常に寄与します。このため腸脳軸も刺激され、行動的及び不安などの心理的問題が生じます。プロピオン酸は血液脳関門を通過できます。

防カビ剤食品添加物がインスリン抵抗性を増大させる

プロピオン酸を栄養阻害因子として見た2番目の研究はインスリン抵抗性と高インスリン血症につながる多重の異常が発生しうることを特定しました。この研究はハーバードT.H. Chan公衆衛生校の研究者らがリードしてブライガム・アンド・ウィメンズ・ホスピタル及びイスラエルのシェバ医療センターとの協力で行いました。

プロピオン酸を投与されたマウスの交感神経系が直ちに活性化することがわかりました。このためグルカゴンとノレピネフリンが増大しました。このマウスの肝臓細胞多くのグルコースを生産したので高血糖症になりました。このマウスに人間が日常食べる程度の量のプロピオン酸を長期的に与えたら肥満とインスリン抵抗性が発生しました。

その研究者らは健常人の参加者14名を募り、無作為に二群に分けました。一群は1 gのプロピオン酸を添加物として投与され、別の群はプラセボ入り食事を食べました。食後15分、30分、4時間以内に血液サンプルを取りました。

実験食を食べた参加者はノレピネフリンとグルカゴンが大幅に増加していました。

食品添加物は健康の懸念リスクを高める

FDAは4,000種類の成分データベースを維持しています。これは「食品成分の部分的リストにすぎない」とFDA自体が認めるもので、「FDA以外の機関から得られた情報の在庫に含まれたからといってFDAの認可やその使用が評価されたことを意味しません。」

世界保健機関では「数千種類の食品添加物が使用されており、その全てが食品の安全性を高めたり訴求力を高めるためなど特定の目的で使用されている」としています。多くの添加物が健康の懸念に関連してきたにもかかわらず、見直しも認可もないままGRASステータスを付与されてきました。Washington Post紙の報告によると:

「FDAは、法律では食品メーカーが自社の安全性判断を認められているが、『企業は新たな成分を開発する際は同局に相談してほしい』としている。結局のところ、FDAは食品メーカーは『食品が安全で合法的であることを担保する』義務があると言っている。」

残念ながら、個別の化学物質を隔離しての評価はほとんどない一方、益々多くの研究が、組み合わせて摂取すると健康への悪影響がさらに重篤になりうることを示しています。デンマーク技術工科大学国立食品研究所による評価から化学物質は微量でも組み合わせて用いられると各物質の悪影響が増幅しうることを特定しました。

さらに、食品メーカーは合成風味料等の化合物を個別表示せずにラベル表記が認められています。2018年末頃FDAは天然資源防衛委員会及び環境作業部会(EWG)からの請願に応じて今後食品添加物として使用できなくなる7つの合成化合物リストを公表しました。

これらの添加物は動物実験で発がん物質であり、焼き物(パン等)、アイスクリーム、キャンディー、チューインガムによく使われます。

腸内細菌が強いと健康リスクが下がる

腸内細菌は最適な健康状態にするために行うことができる最も大切なことの一つであると考えられます。腸内フローラは皮膚、肺、乳房、肝臓等いくつもの内臓器官の機能に影響します。腸内細菌が阻害されると、免疫機能障害に直結し、重篤な結末につながります。

例えば、がんに使用するチェックポイント抑制剤や免疫系を刺激することで機能する一連の免疫療法薬は腸内細菌に依存して効能を発揮するようです。

+ 出典および参考資料