Dr. Mercolaより
うつ病は米国で最も蔓延している精神異常の一つで、昨年中に1570万人の成人 — 米国の人口のほぼ7% — がが少なくとも1回はうつ病の主たる発症にかかりました。
患者の多くは黙りきったままこの病を被っており、時には内面は暗黒に囚われていても家族や友人、同僚に対しては幸せそうなふりをします。上のビデオでダグ・レディン氏がこれまで10年間うつ病であった頃の自分の経験談を述べています。
レディン氏及びおそらくその他数百万人の最大の苦の一つが二重人格を演じているという感覚があることです。同氏は友人が自分のことをお調子者と思うだろうと考え、自分の中に抱え込んでいる秘密を言い表すのが怖かったと説明します。
同氏の最悪の時期は蝕む悲しさではなく、むしろうつであるが故に友人や家族、さらに仕事さえ失うのではないかという恐れでした。
うつ病の米国人の半分程度が治療を受けませんが、このことは危険な意思決定であるといえます。しかし、「完治」のために抗うつ剤に依存するのは誤った行為であり、危険にもなりうることです。
うつ病に苦しむ方はこの病気の根底にある原因に対処するための支援になる処置を含め助けを得ることが必須です。うつ病は治療しないでおくと人生を楽しむ能力がなくなるほか、脳が物理的に変成します。
具体的に言えば、抑うつ状態の再発が繰り返すと感情や記憶の中枢である海馬 が小さくなるので、早期処置、特に十代において処置することが重要です。
記憶とは単に日付やパスワードを覚えることに限られるわけではなく、自意識の発達と維持のために主な機能を果たします。
つまり海馬が小さくなれば悪影響が及ぶのは繰返しによる暗記だけに留まりません。自意識に関連する行為も変化し、海馬の縮小とは感情機能や行動機能の全般的損失を意味します。
この損傷は逆転しうることはプラスの面ですが、それを行うには自分の状況に関して対策を取ることが必要です。
一般通念とは異なり、うつ病は抗うつ剤で「是正」しうるようなセロトニン不足等の脳内化学物質の不均衡によっては起きないと考えられます。モノアミン仮説ともいうセロトニン不足仮説は幾度も疑問に付されてきました。
Nature Reviewsに掲載されたある批評的考察には次のような説明があります:例えば神経科学を取り上げると、「近年、化学物質の均衡が崩れるからではなくニューロンネットワークでの情報処理に問題があることがうつ病の根底にありそうであることが示されている」そうです。New England Journal of Medicineに掲載されたある研究はこれをさらに進めて説明しています:
「… 血漿、尿、脳髄液をはじめうつ病患者の死後の脳におけるノレピネフリンやセロトニン代謝産物に関するいくつもの研究は伝えられるこれらの脳内化学物質の欠乏をいまだ信頼しうるほどには特定できていない。
… うつ病における臨床的に異なるあらゆる形態の異常を説明しうる単一のメカニズムというものはない。モノアミン酸化酵素理論で抗うつ剤の活性の多くについて説明がつくが、遺伝子要因、ストレス、 社会心理的要因もうつ病に作用する。」
セロトニン不足仮説にまつわる疑惑があるので抗うつ剤を使ったうつ病治療の問題の一つが浮き彫りになります。SSRI薬は神経伝達物質セロトニンが再取り込み(神経末端に戻る)されないよう阻害する機能をします。
このため脳内で利用可能なセロトニンが増え、そのために気分が改善されると言われます。しかし、ヘルスケア調査ジャーナリストロバート・ホワイテイカーの説明によると、1983年に国立精神衛生研究所(NIMH)がうつ病患者のセロトニン濃度が下がっているかを調査しました。
当時の結論ではうつ病患者のセロトニン作動系に問題があるというエビデンスが存在しないということでした。
2009年に公表されたある研究は、うつ病が実際に脳内の連鎖的事象のかなり初期的段階で始まることを示すことを特定したので、低セロトニン仮説は誤りであることを示すエビデンスがさらに増えました。本質的に薬は原因ではなく結果の方に焦点を当ててきたのです。
しかし製薬企業は低セロトニン理論のほうがこの「アンバランス」という責めを直すための抗うつ剤を積極的に使用することを正当化するので、この理論に従って売り続けました。
抗うつ剤は抗生物質以外では最もよく処方される種類の薬であり、アメリカ人の10人に1人(さらに50~64歳の女性の4人に1人)が服用しています。
多くの人はこうした錠剤がうつ病症状を処理するために最も利用しやすいものであることを前提にしますが、実際には、抗うつ剤と偽薬の差異はほとんどなく、大多数のうつ病患者には効きません。
あなたご本人またはお子様がうつ病と診断されたとしたら、認知行動療法(CBT)を含む多くの治療方法を利用できます。11本の研究について体系的に批評検討したある論文が抗うつ剤とCBTの間に統計的に有意な効果の差異がないことが特定されました。
さらに、PLOS Medicineに掲載されたあるメタ分析では、最も重篤なうつ病患者しか抗うつ剤に対して何らかの応答を示したにすぎす、しかもその応答とは微々たるものでしかないことが実証されています。こうした効果の無さをこの薬の副作用と並べて考慮すべきであり、この薬にはいくつもの副作用があります。
例えば、SSRIを服用すると骨折リスクが倍増することをある研究が示しています。これはセロトニンが骨の生理機能にも関わっているからです。薬でセロトニン濃度を変えると、骨密度が下がり、骨折リスクが高まります。
閉経後の女性に関するある大規模研究が三環系抗うつ剤あるいはSSRIの服用する患者は脳卒中で死ぬ確率が45%高いことを特定しました。
一方ではこうした薬を服用する女性の場合、全体的な死亡率が32%高くなており、その他の研究からは抗うつ剤を使用すると動脈が太くなり、すなわち心臓病や脳卒中リスクが高くなることに関連することがわかっています。副作用のなかでも最も懸念される - 全体として見れば特に反社会的 - のが自殺の考えや暴力行為であり、特に若者においてはよく知られている副作用です。
まだご存知でない方のために、エモリー大学のヘレン・メイバーグ精神医学教授が率いたある研究は今後高度化されカスタム化される処置計画に向けて道を開くと考えられます。
メイバーグ博士はうつ病患者が薬投与のために最適なものかどうかあるいは心理療法のほうが適するかを予測するのに利用しうる脳内のバイオマーカーを特定しました。もしかするといつか患者別に適する処置を受けることができるようになるかもしれません。
重篤なうつ病の方は必ず専門家の助けを求めてください。軽度な症例については、重篤症例で行われるような専門的処置に加えて、着手点は - 身体と生活の - 均衡を取り戻すことです。
抗うつ剤を現在飲んでいるが止めたい方は知識豊富なヘルスケア従事者のお世話になって段階的に止めるようにしてください。抗うつ剤をいきなり止めると重篤な精神異常や肉体的異常につながりやすいです。特にお子様の場合、薬を試すよりライフスタイルを修正することに損はなく、得るものはあります。ライフスタイルの変化がいかに症状を自然に和らげるかがわかって感心するでしょう。
運動 — 運動は、新たなニューロンの生成以外にも、鎮静効果がある神経伝達物質GABAを分泌させるニューロンも含め、セロトニンやドーパミン、ノレピネフリン等の強力な脳内化学物質濃度を上げるので、ストレスの影響を一部和らげてくれます。また、運動熱心な人の多くは、運動後に「ランナーズハイ」とも呼ばれる、多幸感を得る状態になることもあります。心拍数を上げて体を動かすことがとても良いことだと感じるようになると、良い意味で病みつきになる可能性があります。
感情解放テクニック(EFT) — EFTは日常生活の中で不可避なストレス要因への身体の応答を実際に再プログラムするのを助けるのでとても効果があります。これには、重大な不安の原因となる、 現実のストレス要因と想像のストレス要因の両方が含まれます。以下のビデオで、EFTセラピストのジュリー・シフマン氏がうつ病軽減のためのEFTについて説明します。
EFTは誰でも自宅で身に付けられる一方、持続的不安やうつ病等の重篤な問題の自家処置は危険であり、お勧めできず、必要な軽減効果を得るならEFTのプロにご相談ください。
腸内細菌叢の最適化 — 腸と脳は、互いに影響し合いながら、協調して機能します。このため腸の健康は精神衛生に深く影響しこの逆に精神的に健康なら腸の健康にもよく影響します。これはさらに、食生活がいかに精神衛生と密接に関連するかを示す理由でもあります。
以前のある研究はプロバイオティクのラクトバチルス・ラムノサスが脳の特定の野においてGABA濃度を高め、ストレス誘因ホルモンであるコルチコステロンを下げること、これにより不安やうつ病関連の行動が減ることを示しました。ビフィドバクテリウムロングムNCC3001というプロバイオティクスも大腸炎を感染させたマウスの不安に似た行動を正常化することがわかっています。
したがって、善玉細菌のはたらきによって腸内細菌叢を最適化することは非常に有用な治療戦略です。これは糖分及び加工食品を全く摂らず、多くの非でんぷん系野菜を食べ、加工サラダ油を避け、健康的脂肪を食べることによって達成できます。また、発酵野菜をたくさん食べたり高メリットのあるプロバイオティクを食べると健康的な腸内フローラを復元するのに有用です。
オメガ3脂肪 — 食事にオキアミ油のような動物性のオメガ3脂肪の高品質摂取源を含むことをお勧めします。オメガ3脂肪のEPAとDHAは情緒安定のために基幹的な機能を果たし、ある研究は、オメガ3を食べた学生の不安が20%と劇的に減少したことを示しました。
ハーバード大学病院精神病医アンドリュー・ストル氏はうつ病治療のために動物性オメガ3の使用を根拠づけるエビデンスを編纂した、初期研究のリーダーの一人でした。同氏にはこの分野における実績をまとめた「The Omega-3 Connection」という素晴らしい著作があります。
ビタミンD — 日常よく陽に当たることでビタミンD濃度を最適化する。ビタミンDは気分のために極めて重要です。ある研究では、ビタミンD濃度が最低の人々が健康な適量のビタミンDを摂取した人より11倍うつ病になりやすいことが判明しています。
ビタミンDを得るための最適な方法は日光に当たることあるいは高級日焼けベッドを使用することです。ビタミンD3サプリメントはこうした手段にアクセスできない場合はよろしいでしょうが、ビタミンD血中濃度を定期的に監視する必要があります。
砂糖と加工食品を減らす — 砂糖や穀物が多く入っているのに加え、加工食品には脳の機能や精神的状態に悪影響を及ぼすグルタミン酸ソーダ(MSG)や人工甘味料等様々な添加物が含まれます。30年以上前のウィリアム・ダフティー著「The Sugar Blues」(シュガーブルース)が砂糖と鬱の関連性を詳しく解き明かしたこの話題について素晴らしい著作です。
睡眠 — 適切な睡眠を取る。最適な食事と運動をしてもよく寝ていないとうつ状態になりやすいです。睡眠と抑うつ状態は密接に関連しているので、睡眠障害は抑うつ状態というラベルを張られる症状の複合体を実際に定義した言い方でもあります。
抗不安薬も睡眠障害によく処方されます。睡眠改善のためには私のGuide to a Good Night's Sleep for 33 simple tips(夜よく寝るための33のヒント)をお読みください。日常生活のルーチンや睡眠場所を少し調整することで、途切れることのない安らかな睡眠を確保することができます(さらに不安症状も和らげます)。
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