Dr. Mercolaより
これまでに熱すぎたり寒すぎて目が覚めたことがあれば、いかに極端な温度が睡眠の質に影響するかおわかりでしょう。しかし温度が微妙に変化してもよかれあしかれ睡眠に影響します。
体温周期は睡眠覚醒周期とともに推移しており、寝ている夜間に下がり、日中は上がっています。体幹温度が下がると寝て、これが上がるときは寝ないのが普通です。
さらに、寝付くと、体幹温度はさらに下がりますが、末梢皮膚温度(皮膚への血行を調節して体感温度を維持している)は高止まりになります。
体幹温度と末梢皮膚温度ともさらに、裸で寝るかパジャマを着て寝るか、寝ている間の快適寝具を使うかによる等睡眠環境の外的要因によって影響されます。
ひっくるめてみると寝つきが悪ければ熱環境に注意し、必要なら変更すると寝やすくなるかもしれません。
パンツだけ履いて裸で寝る、しかも掛け物なしで、ナイロンウェブ製のベッドで研究のために寝た人は周囲温度21℃という試験経験上最も低い温度では最もよく寝れませんでした。
熱や寒さへの感度は人により異なっても、周囲温度が低いと概して温かいより参加者の睡眠にマイナスの影響がありました。さらに、このことはパジャマを着て掛物を被って寝る多くの人の寝方を考慮していません。
Journal of Physiological Anthropologyに「現実生活の状況で掛物や寝着を使用するので、睡眠は若年者でも高齢者でも寒さへの暴露ではなく熱への暴露により実際に邪魔される」と、研究者らが報告しています。
湿度の高い熱への暴露は睡眠にともない普通は下がるはずの体幹温度が下がらなくなるので、最悪であると考えられ、このため目が覚めやすくなり、急速眼球運動(REM)睡眠が減り、徐波睡眠(SWS)が減ります。研究者らがさらに説明します:
「湿気た熱への暴露はおそらく湿度による汗応答の差異が原因で熱ストレスを高める。
周囲湿度減少で汗が蒸発し易くなり、このため放熱する一方、湿度が上がると汗が蒸発しにくくなり、皮膚は湿気たままになる。汗が垂れ、皮膚の湿気が増えると汗腺減数分裂が脱水を阻害するので発汗応答が減る。」
さらに重要な点は、湿めった熱暴露は睡眠初期に睡眠後期に反して発生するとさらに睡眠に悪影響があります。夜間数時間エアコンを点けるなら、寝に着くときにすると効果があります。
夜間暑いとたとえわずかな熱への暴露でも目が覚め、しかもすでに熱耐性が衰えている、特に高齢男性はよく眠れません。
熱への暴露は寝始めの期間に影響し、寒さへの暴露が主にREM睡眠が発生する睡眠後期に影響します。ほぼ裸で寝る人の場合睡眠阻害は身体の体温調節応答が抑止されると生じます。しかし、寒さは実際の生活状況ではたいていの人がパジャマや掛物を使って夜間の温度低下を相殺するので、大きな影響はないと考えられます。
Journal of Physiological Anthropologyのある研究によると、実際の生活状況においてパジャマや寝具を使用するので、温度範囲13℃から23℃では睡眠に大きな差異は認められませんでした。
そうはいっても、寒さへの暴露は睡眠段階に影響しないように見えても、自律的心臓の動作に変化をきたしており、この変化は研究者らが心臓異常が寒い冬の温度のときにもっともよく起きることを示したほど大きくなります。実際、虚血性心臓病による死亡率はより寒い家と制限された寝室の暖房と相関性があることを研究が示しています。
このことを考慮すると、Journal of Physiological Anthropologyに掲載された研究者らが「寒さへの暴露による影響は実際の生活状況では熱への暴露より大きく、このため、寒さへの暴露による睡眠やその他の生理的パラメータへの影響を考察する研究の継続が必要である」と言っています。
主観的実感を計測した765,000人のアメリカ人から集めたデータが夜間温度の上昇により自己報告による寝不足感が増加したことを示しています。 その他の研究も高温が睡眠のさまざまな側面に悪影響し次のような事態を引き起こすことを特定しました:
涼しい部屋で寝ると睡眠が邪魔されないようで、これは全米睡眠財団(NSF)が示すように、最適な寝室温度はだいたい15.5℃~19.4℃です。
極端な温度は(熱くても寒くても)覚醒させる熱調節防御機構を活性化しやすいので避けるべきです。 NSFがこう説明しています:
「室内が温かいより涼しいほうが寝やすい。サーモスタット設定が推奨より低すぎても高すぎても落ち着かなくなり、夢を見る期間[REM]の質を落とす。寝室を洞窟と見なすのが有用なようで、静寂で涼しく、暗いことが最適な休息のために最適である。」
皮膚温度を高くすると眠くなります。これは睡眠調節に係る脳の野でニューロン活性が増大するからです。
皮膚温度がたった0.4℃上昇するだけ夜間の覚醒状態を抑止し、若年者、高齢者、不眠症の人の睡眠を深くします — 体幹温度が変化しなくてもそうなります。その効果は高齢者では特に顕著であり、研究者らがBrain誌の中でこう説明しています:
「高齢被験者は0.4℃皮膚温度を上げるだけの誘因で、夜間の徐波睡眠部分がほぼ倍増し、早朝目が覚めてしまう確率が0.58から0.04へ下がるために十分であるほど、顕著な感度を示した。
従って皮膚を温めると徐波睡眠の減少と早朝起床リスク増大という高齢者によくある睡眠問題が大きく改善された。」
この科学を自分の寝室で活用するにはいくつもの方法があります。簡単な方法の一つが寝る前にシャワーを浴びることです。10分間40℃のお湯でシャワーすると皮膚温度が上がり、被験者は寝つきが早くなり、睡眠効率が改善し続けました。
就寝前に足を熱めのお湯に浸けるのも早く寝つけるようにすることがわかりました。ソックスを履いて寝るのももう一つの方法です。ある小規模研究で、参加者がソックスを履いて寝たら、速く寝つけ、睡眠時間が伸び、夜間目が覚めることが減りました。
興味深いついでの話題 — 不眠症の人に冷水が循環する特殊キャップを被せたらよく眠れるようになりました。この場合おそらくキャップが頭を冷やしたからです。不眠症患者の多くは「夜に自分の脳を『オフ』にする」ことができないため眠りにつけないと言います。余計な脳の活性が脳を熱くしすぎて寝つけなくしていましたが、キャップでこの問題が解決しました。
涼しい部屋で寝るとよいもう一つの理由は褐色脂肪に有益な効果があることで、この脂肪は体感温度を維持するためにカロリーを燃やして熱を発生させます。涼しい(19℃)部屋で4週間寝たらある研究のボランティアの褐色脂肪が倍増し、同時にインスリン感度も改善されました。
震えは褐色脂肪に熱を発生させ、カロリーを燃やさせるメカニズムであると考えられますが、震えがあっては寝るにはよくありません。寝るために最適な温度範囲を特定するのが必要です — 不快なほど涼しくなくて、寝やすく褐色脂肪が増える程度の涼しさです。
精確な最適睡眠温度は人それぞれですが、涼しい部屋で薄めのシーツと毛布だけで寝るのが皮膚の温度を暖かく維持するために基本的に十分であり、涼しい睡眠温度の効能を得られ快適です。
成人は平均一晩に7~9時間寝る必要があり、ほとんどの場合約8時間で順調です。これだけの睡眠時間を達成しにくい人または夜間頻繁に眼が覚める人の場合、寝室から始め、睡眠衛生をよくするために手順を踏んで行い始めましょう。しかし温度は一つの要因にすぎません。
しかし完全な暗闇の中で寝るようにしてください。光は(夜間照明や目覚まし時計のでさえ)生物時計とメラトニン及びセロトニンの分泌に悪影響し、睡眠を妨害します。
朝、明るいブルーライトが豊富な日光は、体に起きる時間になったという信号を送ります。夜、太陽が沈み暗くなると、体は寝る時間になったという信号を受け取ります。最適には、電磁場 (EMF)を消し、寝室への電力をブレーカーで切断して就寝し、WiFiは夜間オフにしましょう。
これは単なる初めの諸策にすぎません。睡眠を改善する他の方法には中立的睡眠姿勢、早寝、パートナーが睡眠の邪魔になる限り寝室を別にすることが挙げられます。これらの課題にすでに対処したことがあり、未だに睡眠に悩まされる人は、私の33個の健康的睡眠のヒントをご参照ください。そこにはよく眠れるようになる、さらに全体的健康改善ための網羅的リストを掲げています。
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