10,000歩を目指せば本当によいのでしょうか? 新たな目標値が実はあります

歩く

早分かり -

  • 世界保健機関(WHO)によると不活発な習慣は世界の成人死因の第4位だそうで、早死の5.1%~12.5(平均9%)はこのためによるものなので、もっと歩くとこのリスクを下げるためにかなり効果があります
  • 一日10,000歩以上歩くとよいというのは科学的根拠がありません。これは1965年に万歩計という商品を販促するために日本で行われたマーケティング活動に基づいています
  • 死亡リスクを下げるのに必要な歩数を特定しようとしたある研究が高齢者は一日4,400歩でもメリットを得られることを示しました
文字サイズ:

Dr. Mercolaより

たいていの成人は一日に10時間かそれ以上は着座しており、研究によるとこの不活発レベルでは一日の最後に運動してもその分を補うことはできません。実際に健康を維持するには軽度でもほぼ連続する動作を起きている時間帯にすることが必要です。

よい効果があることが証明されている一つの戦略はもっと立ち上がることです。毎日もっと歩くことは短期にも長期にもおおいに見返りが得られるもう1つの主要な戦略です。

世界保健機関(WHO)によると不活発な習慣は世界の成人死因の第4位だそうで、早死の5.1%~12.5(平均9%)はこのためによるものなので、もっと歩くとこのリスクを下げるためにかなり効果があります。しかし正確にはどれくらい歩けばよいのでしょうか? よく一日10,000歩がよいと言われますが、この数値はどこが出所なのでしょうか?

まやかしの10,000歩の勧め

フィットネストラッカーを使用していれば歩数がカウントされているはずです。おそらくあなたの一日の目標値も10,000歩であるはずです — これは根拠のない魔法の数値です。この数値には起源はありますが、出所は健康研究でも科学研究でもありませんでした。

一日10,000歩以上歩くという発想は実際には山佐時計計器社が1965年に万歩計という商品を販促するために打ち上げたマーケティングキャンペーンから来ています。

米国の企業はこのアイデアをその後近年になってから採用して自社のフィットネストラッカーを販促し始めました。では10,000歩に科学的根拠がないなら、毎日目指すとよい歩数はどれほどでしょうか? ブライガム・アンド・ウィメンズ・ホスピタルの研究者イーミン・リー氏がその解明に乗り出しました。

健康でいて長生きするには一日に何歩歩けばよいのでしょうか?

リー氏チームは起きている間に7日間加速度計を身に着けることに同意した62~101歳の平均年齢72歳の女子健康研究から抽出した18,289人の女性を対象とする研究を企画しました。

このうち16,741人がそのデバイスを指示通り着用し、データ解析用に返却しました。データには一日の合計歩数を含んだほか、その強度の尺度もいくつか含んでいました。主な結果の尺度は全要因死亡率でした。

2019年5月にJAMA Internal Medicineのオンラインで公表されたその研究は一日平均2,718歩歩いた女性とは対照的に以下のことが判明しました:

  • 一日4,363歩[メディアン]歩いた女性はその後4年以内に死ぬ確率が41%低かった
  • 一日5,905歩歩いた人はその後4年以内に死ぬ確率が46%低かった
  • 8,442歩だった女性はその後4年以内に死ぬ確率が58%低かった

一目見ると歩くほどよいように見えますが、結局は「絶好調の」ゾーンがあることが判明しました。さらに解析した結果一日約7,500歩でメリットが最もあることが判明しました。換言すると、歩くメリットは約4,400歩と7,500歩の間で累進的に上がり、これを超すと横ばいになります。

高齢者にとっては強度より歩数が重要

強度が高いほど死亡率が下がることもわかりました。しかし毎日の歩数で調整するとこの相関性は多かれ少なかれなくなりました。その研究者らは次のように説明しています:

「高齢女性のうち一日わずか約4400歩の人は一日約2700歩の人と比較して死亡率が大きく低下していた。

一日さらに歩くと、死亡率が累進的に下がり、その後一日約7500歩で横ばいになった。歩く強度は一日の合計歩数を考慮すると死亡率低下とは明らかに関連していなかった。」

研究結果に影響したのではないかと思われるこの研究の限界には、歩数の正確さ(歩行計には誤差がある)、及びその研究はガーデニング等他の動作や活動を考慮していないことでした。

また、死亡率以外にも潜在的メリットを対象にせず、さらに、その結果が男性や若者にも等しく当てはまるかは明らかではありません。これらの疑問点を明確にするにはさらに研究が必要でしょう。

多くの研究はウォーキングが健康と寿命を増進することを確認

活発でい続けるという点に関しては何もしないより何かしたほうがよいと言うのは簡単ですが、研究から、自覚できる違いに気づくまでの最低限の活動レベルが通常は存在します。ほとんどの研究は - ある程度までは - 少ないより多く活動したほうがよいことも示しています。

言い換えると、適正用量にすることが肝要です(この用量は研究により異なり、特定しにくい)。それ以前の数件の研究がウォーキングの異なる尺度が貴重な健康的メリットを示しており、よくある病気の多くから保護することを確認しました。

例:

American Journal of Preventive Medicineに2018年1月出版されたある研究は一週間にたった120分のウォーキングでも高齢者の場合不活発でいるより死亡率が下がると考えられることを特定しました。

一週間にウォーキングなどの軽度な運動を150分行うというガイドラインに沿うかこの二倍行うと全要因死亡率が20%下がります。その研究者らによると、「ウォーキングは呼吸器系疾患による死亡率と最も密接に相関性があり、次が心臓血管病による死亡率、その次にがんによる死亡率が続き」ます。

2018年に実施され、British Journal of Sports Medicineに掲載された、イギリスで50,225人のウォーキングする人を対象にしたもう一件の研究は、ウォーキングのペースは早死にリスクと関連しているが、これが活動総量から独立的かについては不明なままであることが判明しました。

ゆっくり歩くのと比べ、自己報告された平均歩行ペースでのウォーキングは全要因死亡率の20%低下(平均)及び心臓血管病による死亡リスクの24%低下と関連性がありました。早歩きすると全要因死亡率が24%、 心臓血管病による死亡リスクが21%下がりました。

2012年に公表された研究は、早歩きすると体重に関わらず余命が延びることを特定しました。その研究者らによると:

「一週間に最大75分の早歩きに等しいレベルの肉体活動は余暇活動なしの場合に比較して余命が1.8年延びることと関連していた。これより高度な肉体活動は余命がさらに延びることと関連しており、最高レベルで4.5年延び、一週間に450分以上の早歩きに相当する。

どのBMIグループにおいても大幅な余命延長も見られた。合同解析した場合、活発であると同時に正常体重(BMI 18.5–24.9)なら、不活発で肥満(BMI 35.0+)なのに比べて余命が7.2年延びた。」

2012年の世界心臓病学会議で発表されたデータによると喫煙者でさウォーキングなどして肉体活動に取り組むと、余命がほぼ4年延びると考えられることがわかっています。肉体運動を続けた元喫煙者は平均余命が5.6年伸び、全要因死亡率が43%減ることをMedical News Todayが伝えています。

肉体的に活発だった喫煙者は不活発なままでいた喫煙者より55%より多い確率で喫煙をやめる傾向があること、喫煙再開率が43%減ることがわかりました。

2015年に公開されたあるノルウェーの研究でも、死亡リスクを下げたいなら規則的運動は喫煙を止めるのと同様に重要なことがわかりました。この研究は約5,738人の高齢男性を最長12年追跡した結果、— 軽いウォーキングであっても — 30分の運動を1週間に6日間行った人は約40%死亡リスクが下がりました。

着座ライフスタイルの人より中度から活発な活動をする人は約5年長生きしていました。1週間に軽い活動を1時間未満した場合、この研究による限り死亡率には全く効果がありませんでした。つまりより長く行きたいのであれば「用量」を正しくする重要性を再確認した結果です。

2003年のある研究は不活発な人より一週間に少なくとも2時間歩いた2型糖尿病患者は死亡率が39%低く、心臓血管病による死亡率が34%下がっていることを特定しました。一週間に3~4時間歩くと最も効果的で、全要因死亡率が64%下がっていました。

その研究者らによると:「ウォーキングは様々な糖尿病患者全員について死亡率低下と関連していた。一週間に少なくとも2時間は歩くことを納得しうるなら61人のうち1人の死亡を予防できると考えられる。」

同様に、他の研究もウォーキングが2型糖尿病患者において血糖管理及び血圧管理を改善し、心臓血管病による糖尿病患者の死亡リスクが下がることも確認しました。

ウォーキングのメリットを受けられる患者は閉鎖性肺疾患(COPD)患者です。ある研究で、COPD患者のうち一日に約3.5km以上歩いた人は重篤な異常のために入院する確率が約半減していました。

2014年に公開されたある研究は、毎日のウォーキングで60歳以上男性の脳卒中リスクがほぼ用量に比例して、ウォーキングのペースに関わりなく、減少することを特定しました。

一週間に3時間以下しか歩かなかった人と比べると一週間に4~7時間歩いた男性では脳卒中リスクが11%低かったのです。さらに8~14時間歩いた人では脳卒中リスクが37%;低く、15~21時間歩いた場合32%減少、22時間以上歩くと64%低下していました。

ウォーキングは高強度運動でありうる

ウォーキングはさらに高強度トレーニングへの優れる導入にもなりうるのです。これは年齢や体力に係りません。このことはある日本の研究がゆっくりした散歩と速いペースのウォーキングを組み合わせると一定ペースで歩くより大きなフィットネスの効果があることを実証したことからわかっています。

日本の高齢者向けに研究者らが開発したウォーキングプログラムは3分早歩きし次に3分ゆっくり大股で歩くことを反復します。この歩きを5セット合計30分、週に3回以上ウォーキングすると有酸素フィットネス、脚の強度、血圧に大きな改善が見られました。

毎日もっと立ち上がり歩くこどで誰でもメリットは得られる

たとえ運動しても、いつも座っていることが慢性病や早死にの端的リスク要因であり、数種類の致死病リスクが大きく増えることを認識すべきです。

American Journal of Epidemiologyに2018年6月に掲載されたある研究が次のように説明しています:

「長時間余暇時間に座っていること(一日3時間未満に対して6時間以上座っていること)が全原因、心臓血管病、がん、糖尿病、腎臓病、自殺、慢性閉鎖性肺疾患、固形物や液体による間質性肺炎、肝臓病、消化性潰瘍その他の消化系疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病、神経障害、筋骨格障害による死亡率が高くなることに関連していた。」

一日10,000~15,000歩歩くことはよいと考えられる

Nature誌に2017年に掲載されたある研究によると、米国の成人は平均して一日4,774歩歩きます。717,527人のスマートフォンの加速度計値に基づく世界平均は一日4,961歩であることが判明しました。香港の住人は一日6,880歩で世界一でした。

基本的ルールとして、着座を1日に3時間までに制限すること、毎日より多く歩くようにするようお勧めします。現在行っていると思われる別の日常運動に加えて歩くことも私はお勧めします。今回取り上げたJAMA Internal Medicineの研究で実証されたように高齢者は4,400歩でさえメリットを受けられる一方、若者はもっと歩く必要があるでしょう。

+ 出典および参考資料