ヨガで脳の健康と機能を改善

ヨガ

早分かり -

  • ヨガは、ストレスの低減、ワーキングメモリに関わる脳の領域の強化による認知機能低下の抑制、脳の機能と神経可塑性の全体的な改善、ボディイメージの不満や不安の低減などに役立てることができます
  • ある証明では、ヨガには抗うつ薬や心理療法に似た効果があり、神経伝達物質に影響を与えてセロトニンを増やすことで不安や攻撃性を減らす可能性があることが示唆されています
  • ある研究では、複数の脳の領域において経験豊富なヨガ実践者の灰白質の容積が対照群よりも大きいことが示され、神経保護的効果があることが示唆されています
  • クンダリニー・ヨガに12週間参加した高齢者には、うつ状態と視覚空間記憶において統計学的に大幅な改善が見られました
  • ヨガは幼児期のトラウマや性的虐待の治療における貴重なサポートツールにもなり、ボディイメージの不満に対する大学生の年代の女性の苦労をサポートして身体と健康的な関係を築くことも分かっています
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Dr. Mercolaより

ヨガのようなローインパクトのエクササイズには、多くのメリットがあります。エクササイズによる身体的なメリットを提供できるだけでなく、ヨガは、ストレスの低減、ワーキングメモリに関わる脳の領域の強化による認知機能低下の抑制、脳の機能と神経可塑性の全体的な改善、ボディイメージの不満5や不安の低減などに役立てることができます。

意識的な呼吸するエクササイズにも、似たような効果が多くあります。ヨガは、あるアサナ(ヨガの姿勢)から別のアサナへ身体をゆっくり動かしながら、全神経の集中を必要とする動く瞑想の一形式であると考えることができます。新しい動き、呼吸の方法、身体の合図に対する反応の仕方を習得するたびに、心と感情も動き始めます。

ヨガは多くの精神疾患を改善する可能性があります

事実、ヨガは様々な一般的な精神疾患をサポートすることが示されています。2013年に発表されたメタアナリシスは、メンタルヘルスに対するヨガの効果を評価している100以上の研究を評論しており、ヨガには軽度のうつ、睡眠の問題、統合失調症(薬物治療中の患者)、注意欠陥・多動性障害(薬物治療中の患者)に対して肯定的な効果があることを発見しました。

この評論に引用されている研究の一部は、抗うつ薬や心理療法に似た効果があり、神経伝達物質に影響を与えてセロトニンを増やす可能性があることを示唆しています。研究では、ヨガが囚人の不安や攻撃性を減らすことも発見されました。

週1回のヨガを10週間続けたところ、収容参加者はストレス減少を感じていると報告しました。また、実行制御のテストにおけるスコアも改善されており、周囲に対する思いやりと注意が高いレベルを示していました。

重要なのは、この実践によって、刑務所内暴力に寄与することが分かっている衝動性も減少したということです。研究著者のミゲル・ファリアス(オックスフォード心理学者)によれば、「不安と攻撃性が減少した囚人は、釈放されたときにうまく社会復帰することができるはずです。」

ヨガの神経保護的効果

研究では、身体的な活動によって年齢を重ねても聡明でいることができ、これはヨガなどの活動についても同様であることが繰り返し証明されています。全体的に見て、認知機能を最適化したいのであれば、活動しないことが最大の敵です。「Frontiers in Human Neuroscience」ジャーナルにある2015年の研究では、以下のとおり報告されています。

「中枢神経系に対する長期的・定期的なヨガ実践の効果は、最近になって複数の脳の領域において、経験豊富なヨガ実践者の灰白質(Gray Matter、GM)の容積が対照群よりも多いことが示されるまで研究されておらず…

それにも関わらず、一定の脳の構造を持つ人たちが、何らかの理由で、ヨガの実践に惹きつけられているかもしれないため、これらの研究の横断的性質によって、この差の原因を確信を持ってヨガの実践にあるとすることは許されません。

最新の報告では、データセットを再確認し、ヨガ経験の年数、週当たりのヨガ実践の総時間、ヨガ実践の異なる条件が特定の脳の領域に影響を与えるかという問題に取り組んでいます…

私たちはMRIを利用して、ヨガ実践者と対照群における加齢に伴う灰白質(GM)の減少を比較しました。また、ヨガ経験と週当たりの実践の増加がGMの容積に与える影響を試験し、週当たりの実践のどの条件が最も脳の容積に寄与するかを評価しました。

対照群が十分に立証済みの加齢に伴う脳のGM減少を示した一方で、ヨガ実践者は示しませんでした。これは、ヨガが、加齢に伴う減少から脳を保護することに寄与することを示唆しています。

ヨガの経験年数は、左海馬のGM容積(島皮質、前頭弁蓋、眼窩前頭皮質)の差と大きく相関関係がありました。これは、ヨガが脳を副交感神経優位でポジティブな状態に向けて調節することを示唆しています… ヨガの潜在的な神経保護的効果は、一部の有益な効果に神経基盤を提供する可能性があります。」

2018年に発表された最近の研究でも、対照群とヨガ実践者の脳の構造と機能に差が発見されています。ここでは、ワーキングメモリのタスクの間に「灰白質の容積と脳の活性化を評価するために」、MRI(核磁気共鳴画像法)が使用されています。著者によれば:

「左海馬に灰白質の容積の差が観察され、対照群と比較して、経験豊富なヨガ実践者の方が大きい容積を示していました … 機能的MRIの結果では、スタンバーグ課題の符号化段階において、対照群と比較してヨガ実践者の背外側前頭前皮質の活性化が低いことが明らかになりました …

この結果は、定期的・長期的なヨガ実践と、ヨガの実践で改善されることが示されていた、実行機能(特にワーキングメモリ)に関わる特定の脳の領域の構造・機能の差との関連性を示唆しています。

ヨガで神経結合を改善

2016年に発表された別の研究では、標準的な記憶強化トレーニング(Memory Enhancement Training、MET)と比較した、高齢者の認知機能の低下と神経結合に対するヨガの影響が調査されました。年齢が55歳を超えた25人の参加者が研究を完了し、12週間、うち14人がヨガ介入に参加し、11人が標準的なMETに参加しました。

全員、認知症の前兆である軽度の認知機能障害の診断を受けています。METグループは、1週間に1時間、メンタル・エクササイズを教えられて行い、さらに家庭でも1日15分間行いました。

ヨガグループは、1週間に1時間、クンダリニー・ヨガクラス(詠唱と視覚化を伴うため、記憶改善の可能性を理由に選ばれた)に参加し、さらにマントラの使用と流れる手の動きを伴うキルタン・クリヤ瞑想の教えを受け、家庭で1日15分間行いました。

いずれのグループも異なる脳の領域の経時的な伝達または神経結合を追跡するために、認知機能テストと機能的MRIを受けました。参加者全員が一定程度の改善を見せるなかで、ヨガグループには大きな改善が見られました。

コントロールされた呼吸の神経生理学的効果

ヨガ同様、瞑想とコントロールされた呼吸も集中力を高めるテクニックとして知られています。コントロールされた呼吸の神経生理学的効果を調査した2018年の研究では、この効果の重要なファシリテーターとして青斑核(脳の注意と不随意の呼吸の両方に関わる)が特定されました。

「瞑想における集中の対象は無関係でなくてはならず、大切なことは集中する行為であって、集中の対象(この場合は呼吸)ではないと提案する人もいます。」 と、著者は書いています。

「しかし、ブッダはアナンダ・スートラではっきりと述べています。「呼吸を意識した集中の展開から、その実践の繰り返しから、肉体の揺れも震えもなくなり、心の揺れも震えもなくなります。」

スヴァートマーラーマによれば、ハタ・ヨーガ・プラディーピカーでは…「...呼吸が乱れるときは、心が不安定になっています。しかし、呼吸が落ち着いているときは、心も安定します」…

パタンジャリは、ヨーガ・スートラにおいて…「これらの実践と8段階の4つ目であるプラーナーヤーマのプロセスを通じて、心は真の集中に向けた適合、資格、または能力を取得または開発します」と教えています…

呼吸による集中が伝統的な実践において重要なことは明らかですが、神経生理学的な視点から呼吸と注意はどのように互いに影響を与えているのでしょうか?…

興味深い可能性は、呼吸系と注意系が重複する解剖学的な位置で、2つの系の間の情報伝達が双方向的に発生するように、呼吸系と注意系が神経レベルで連結することです。

この評論では、呼吸と注意を連結した力学系として説明しています。特に、これらは第三の自律型振動系である青斑核(Locus Coeruleus、LC)を通じて、情報伝達による連結を阻害する自律型振動系として説明することができると仮定しています。

呼吸と心は繋がっている

つまり、呼吸と集中は同期(2つの生体系の連結)によって繋がっています。LCは、睡眠・覚醒状態を含む、脳機能の制御において重要な役割を果たす神経伝達物質ノルアドレナリンの主要起源です。著者は、ノルアドレナリンが瞑想の多くの効果の説明に寄与する可能性がある、他の研究も引用しています。本書の考察部分で、著者は次のように書いています。

「注意、認知、覚醒におけるLCの関与、トップダウン型制御への感受性、同時発生する化学感受性の呼吸機能、LC発火に対する潜在的な呼吸誘発型の迷走神経性の影響について分かっていることを考慮に入れ、私たちはLCを呼吸と注意状態の連結の促進において必要不可欠なノードであると仮定しています。

この連結が双方向性であることを強調することは重要です…LCに対するボトムアップ型呼吸の影響をこの画像で紹介することで、LCをこれら2つの系の間における情報伝達の連結体として想像し、この系を双方向に連結されたものとして視覚化することができます。」

分かりやすく言えば、彼らがここで話していることは、通常、散逸した集中と注意の欠如は浅く不安定な呼吸を促す傾向があり(トップダウン型制御への感受性)、これが不安を高め、集中力を失い、呼吸を調節不全にするサイクルを生み出すという事実です。

ただし、これは呼吸を調整して、心の集中と呼吸の2つを双方向で連結させることで制御することができます。片方を調整することで、もう片方も調整できるのです。心の方がコントロールが難しいというだけのことです。

周知のとおり、これらの2つの機能(注意と呼吸)の間にあるのはLCで、これは中継器として機能し、呼吸が落ち着けば心も落ち着き、逆もそうなるように、2つの間で往復して情報を伝達します。

あなたのためのヨガ?

ヨガがもたらす多くの身体的・精神的なメリットは、もちろん検討する価値があります。また、ヨガの形式には多くの選択肢があるため、実際、自分の状態に最適なものが見つかることが約束されています。

トラウマ感受性のヨガの出現はその証でもあり、おそらく身体的・精神的虐待に遭った多くの被害者に前向きになる方法を提供します。MindBodyGreen.comでは、11の異なるスタイルのヨガについて概要を紹介しています。その他のスタイルについては、ヨガ・ジャーナルのウェブサイトでご覧いただけます。