事故死を受けて睡眠薬の錠剤に黒枠警告ラベルが貼られることになりました

睡眠薬の錠剤に黒枠警告が貼られる

早分かり -

  • 2019年4月30日に米国の食品医薬品局(FDA)は不眠症薬の一種である鎮静催眠薬類には今後、副作用には負傷や死亡につながりうる睡眠中食べる、歩く、運転するあるいはいくつもの活動を始める等睡眠中に危険な行動を含むことを記載した黒枠警告ラベルを貼ることを義務付けました
  • これまで26年間にこの種の薬を飲んだ患者に「複雑な睡眠中行動」が起きた報告書が66件あり、このうち20件は死亡事故でした
  • 数件の研究でも睡眠薬の錠剤で死亡リスクが上がることを特定しましたある研究では年間に18錠剤未満の用量でさえ死亡リスクが360%高まることがわかっています
  • 睡眠薬の錠剤では通常の場合せいぜい5~30分と、数分しか睡眠時間が延びないことも多くの研究ですでに証明されています
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Dr. Mercolaより

寝つきが悪い人は多くいます。SleepHealth.orgのサイトにはアメリカ人の成人のうち70%は一月に少なくとも一晩はよく寝ていないと言っており、11%は毎晩じゅうぶん寝るために苦労しているそうです。この団体は次のように説明しています:

「眠い状態は注意力、反応時間、学習能力、察知力、気分、手と目の連動、短期的記憶力精度に悪影響する。眠い状態は業務上事故、自動車衝突事故、交通事故が増えている原因として特定された。」

しかし睡眠薬の錠剤は睡眠不足と同様に危険であると考えられます。

事故死に関連する市販睡眠薬

これまで26年間にこの種の薬を飲んだ患者に「複雑な睡眠中行動」が起きた報告書が66件あり、このうち20件は死亡事故であったと、というFDAの報告があります。これらの報告には次の内容が含まれます:

不慮の薬の過剰服用

転倒

火傷

溺れかけや溺れ事故

極寒への暴露、これによる手足切断

低体温症

一酸化炭素中毒

睡眠中の患者が運転したための自動車事故

拳銃で自分を打った負傷

不慮の自殺未遂

ある研究は、日常的に、催眠性睡眠促進剤(ゾルピデムやテマゼパム、エスゾピクロン、ザレプロン、ベンゾジアゼピンバルビツール酸系催眠薬、鎮静抗ヒスタミン薬等)を飲んでいた人は使用しない人より2.5年以内に死ぬ確率が高く、この関連性は用量により異なることを明らかにしました。

年間0.4~18回分の用量が処方された患者の死亡リスクは360%上がり、年間18~132回分の用量を服用した者はこのリスクが443%上がった一方、用量が132回を超えた人では5.36倍(536%)も死亡率が高まりました。多く服用した人はがんリスクも高まることが判明しました。

睡眠薬の錠剤にはほとんどまたは全く効能はない

こうした薬のリスクを鑑み、睡眠薬の効能が高々無視できる程度しかないことに気づくことが重要です。2010年に、十年遅れてやっとのことでFDAは1995年に同局に提出された業界出資調査を分析しました。

その研究はティレノールPM及びエキセドリンPM等市販睡眠薬の効果を評価しました。アセタミノフェン(鎮痛薬)とクエン酸ジフェンヒドラミン(睡眠薬)の混合剤であるこれらの薬は偽薬よりわずかに効く程度でしかないことが判明しました。

2010年2月16日にコンシューマヘルスケアプロダクツ協会(非処方薬メーカーの利害団体)に当てた通達の中で、FDAの非処方製品管理部部長Dr.チャールズ・ガンリーは次のように述べています:

「軽度の痛みと関連する限り、ときどき生じる不眠の解決のために睡眠薬としてアセタミノフェンとジフェンヒドラミンを組みわせた服用を支持しうる根拠はないに等しい。」

他の多くの研究はひどい結果を示しており、睡眠薬の錠剤の効能について深く疑義を生じました。例えば、Consumer Reportsが依頼した二名の薬安全性専門家によるある調査から、偽薬と比較して睡眠薬ベルソムラが寝付くのを平均でたった6分早め、睡眠時間を約16分だけしか延ばせないことが明らかになりました。

ベルソムラユーザーは翌日眠気が残ると苦情を言い、自動車事故も若干多く起こしましたた。安全医薬品実務研究所(ISMP)の2015年第一四半期と第二四半期を対象にした報告書によると、Merckの自社試験では用量40 mgのベルソムラ錠が睡眠時間を偽薬より控えめな23分しか延ばさないことを示しました。

FDAが翌日の運転に支障をきたす懸念があるとして初期用量として主張した用量10 mgでは偽薬より睡眠時間が5分しか延びませんでした。その薬が発売された年であった2015年の2月から7月まで、1,016件もの消費者によるベルソムラに対する苦情がFDAに届け出られました。

その多数42%は効能がないと苦情を言い、32%は悪夢や幻覚、睡眠まひ、睡眠中歩行を報告し、28%は翌日の眠気、頭痛、目まい、倦怠、健忘症、記憶障害、22%は興奮、不安、震撼、脚不穏症シンドローム、筋肉けいれん、5%はうつ状態、自殺の考え、自殺未遂を報告しました。

本当に効能があるのは何か?

睡眠薬の錠剤では自然によく眠れなくなるので、それに頼るよりも、寝室を暗闇にする覆いを設置する等寝やすくする真の解決策に出費したほうがはるかに効き目があります。

しかし有用な場合がある一つのサプリメントはメラトニンです。2015年に時々生じる睡眠障害や不眠症に対する市販の睡眠薬3種類(抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミンやドキシラミン)、メラトニン、バレリアン)の効能と安全性についての系統的な批評研究は次のことを示しました:

「不眠症と診断された高齢者において特に長期間放出型調製剤としてのメラトニンは(偽薬に対して)睡眠計測値特に寝付く時間や睡眠の質に対して優位な耐性を伴いつつ最も一貫した有益な効果があることが判明した。対照的に、ジフェンヒドラミンや即時放出型メラトニン、バレリアンの臨床検査データからは効能が限られていることが示された。」

注意:多くの睡眠薬は翌日支障をきたす

最後に、多くの睡眠薬は半減期が長い、すなわち血中の薬の生体利用能が半減するまでの時間が長く、翌朝もうろうとして、完全に目が覚めた感じがしなくなることを把握することも重要です。

例えば、ISMPが報告したところでは、ベルソムラの半減期は12 時間であり、反復使用すると蓄積します。7日間一回当たり40 mgのベルソムラを飲むと、その半減期が高齢男性では12~17時間、高齢女性では12~20時間長くなりました。

「用量40mgを飲む多くの患者は治療効果が24時間継続する場合も考えられ、潜在的に日中の眠気が残る」と、ISMPは注意を促します。同様に、ベナドリル(ジフェンヒドラミン)を含む睡眠薬の半減期は健康な成人では2.4~9.3時間に及びます。

Mental Health Dailyが説明するところでは、「ベナドリルは最後の服用後に全身の循環から100%解消されるまで13.2時間から2.13日を要すると推計」することができます。それまでは認知力支障が起きやすく、事故を起こしやいです。

睡眠改善による健康の最適化

睡眠薬の錠剤では、高々15分までというほどほぼ効能がないことを念頭に置くと、潜在的リスクを買うだけの価値があるでしょうか? 日常生活のルーチンや睡眠場所を少し調整することで、リスクが増すことなく、途切れることのない安らかな睡眠を確保することができます。まず手始めに下表のヒントを参考にしてください。

わずかでも睡眠不足ならば、高品質の睡眠は健康と生活の質で最重要な要素のうちの1つであることを考え、以下のヒントのいくつかを実践するようお勧めします。

日中の光への暴露を最適化し、日没後の光への暴露を最小限にすること — 松果体は日中の明るい日光を浴びた時間と夜間の完全な暗闇の対比に基づいてメラトニンを生成します。

1日中暗闇にいれば、身体は相違を検出できないため、メラトニン生成に適しません。体内のマスタークロックのリズムを「固定」するために、昼間の屋外光への暴露時間を少なくとも30〜60分確保するとよいです。

陽が沈んだ後、人工の光になるべく当たらないようにし、身体のメラトニン分泌を支援し、眠くなり易くします。または夕方になったらブルーライト遮断眼鏡を使用しましょう。

これなら完全な暗闇または、可能な限りそれに近い中で眠るために有用です。足元を照らす光が必要なら低ワットの黄色かオレンジ、または赤灯を取り付けましょう。これらの帯域の光は、白光やブルーライトと異なりメラトニン分泌を止めません。塩ランプはこのために最適です。

平穏なまどろみを阻害する精神状態に対処する — 睡眠障害は肉体的か感情的あるいは両方が原因かを問わず、必ず何らかのことが原因です。不安と憤怒は睡眠と相反する2つの精神状態です。責任感に圧倒される感覚もよくある睡眠阻害要因です。覚醒状態を促している原因を特定するには、目が覚めた状態で横たわっている間に想念を分析して、何が主題なのかを探してください。

感情解放テクニック(EFT)を習得した多くの人は、寝るのに想像以上に有用であると言います。一つの戦略は今自分の懸念事項一覧を書き、各課題を「タップ」してください。実演は下のビデオをご覧ください。

寝室の温度は21℃以下に保つ — 多くの人は夜間自宅を暖かくし過ぎています。Sleep.orgによると最適な睡眠のための推奨室温は約15~20℃であり、全国睡眠財団(National Sleep Foundation)では温度が23℃を超えたり12℃より下がると睡眠を阻害すると注意しています。

就寝前遅くとも1時間前以降はテレビを見たり電子機器を使用しない — 電子機器はブルーライトを発し、これが脳をまだ昼間であると騙します。

普通なら、脳は夜9時~10時にメラトニンを分泌し始めるので、電子機器はこのプロセスを阻害します。夜にテレビを視たり携帯電話やコンピュータを使用せざるを得ないなら、ブルーライト遮断眼鏡を使用しましょう。

就寝時間の90~120分前に熱い風呂に入る — これにより体幹温度が上昇し、風呂から出ると急激に低下するため、眠る準備ができたという信号が体に送られます。

寝室の電磁場(EMF)を最小限にする — EMFは松果体とメラトニン分泌を阻害し、その他有害な生体への影響があります。最適なのは寝ている間はワイヤレスルーターをオフにすることです。結局、寝ている間にネットにアクセスは不要です。

睡眠前のリラックス習慣を作る — 毎日決まった時刻に就寝起床すると睡眠を安定させるのに有用ですが、日常就寝前のルーチンすなわち「寝るための儀式」を行うのも意義があります。

例えば、就寝前に何かを読むと、身体が夜読書は寝る時刻であるという信号を送っていることを覚ります。睡眠のスペシャリストステファニー・シルバーマンPh.D.は心が落ち着く音楽を聴いたり、ストレッチやリラグゼーション運動をすることを勧めます。太極拳や認知行動療法も「臨床的に優位な不眠症改善」を生むことが判明しています。

アルコール類、カフェイン、ニコチンを含むその他の薬剤を避ける — 睡眠を邪魔する最大の2つの要因はカフェインとアルコールで、これらは不安を増大させる要因でもあります。カフェインの影響は4~7時間継続する場合があります。紅茶やチョコレートにもカフェインが含まれます。

アルコールは寝つきをよくするでしょうが、睡眠が断片的になり、回復できない睡眠になってしまいます。形態を問わずニコチン(煙草や電子タバコ、噛み煙草、パイプ煙草、喫煙を止めるためのパッチ類)も刺激剤なので、就寝直前に一服すると不眠症が悪化します。その他多くの薬も睡眠を邪魔します。