Dr. Mercolaより
カッピングは数千年前に及ぶ中国起源の古代治療法です。エジプト、ギリシア、ローマや中東文化にもカッピングを行っていた古代の記録が残っており、 カッピングをアル・ヒジャマーと呼んでいるサウジアラビアにも普及していました。
BMC Complementary & Alternative Medicine誌に掲載された医療文献を批評したある2010年の記事によると、カッピングは、1950年代に中国と元ソ連の共同研究チームが臨床効能があることを確認後、中国の病院では正式な治療法として確立したもので、伝統的中国医療においては今でも標準の処置法です。
カッピングはサイズの異なる吸着式カップを体に吸い付けさせます。吸い付けると皮膚表層まで血液が吸い上げられるので、あざのようになります。中国で行われるようなカッピング療法には主に7種類あります:
保持式カッピング — これは最も普及している手法で、ガラスのカップを少量のメチル化蒸留酒で拭い、瞬間火を付けてカップ内部を熱することにより負圧を作り、火を吹き消すや否やカップを皮膚に当てます
ウェットカッピング (出血カッピング) — 鍼のつぼにエッジが三角の針で小さな傷を付け、そこにカップを被せます
スライドカッピング — 最初にカッピングする範囲に油を塗り、カップがずれるようにします
空洞カッピング — この方式ではカップを付けて吸着したらすぐに取り外します
針カッピング — 鍼の針を対象点に刺し、カップを針に被せます
薬物あるいはハーバルカッピング — 竹のカップを鍋に入れてハーブといっしょに30分沸騰させ、吸い付けます。沸騰したカップから出る湯気が火の替わりに吸着効果を生み出します
水カッピング — ガラスまたは竹のカップに温かい水を1/3ほど入れ、すぐに皮膚に吸い付けます
カッピングで血行が盛んになり、治癒を速め、痛みを和らげ、筋肉痛を和らげると言われます。2010年にBMC Complementary & Alternative Medicineに掲載された批評記事で、1959年から2008年までに公表された73件のランダム化対照試験のほとんどが「痛みや帯状ヘルペス、その他の疾患に潜在的効能があることを実証した」そうです。
それでもまだ多くの懐疑主義者がいます。Forbes誌に掲載された、スティーブ・サルツバーグ氏による最近の記事「The Ridiculous and Possibly Harmful Practice of Cupping」(カッピングの阿保らしく有害でもありうる療法)はカッピングをあまり歓迎していません。サルツバーグ氏は、2016年のオリンピックの開催中に水泳のマイケル・フェルプス選手がカッピングには効能があるとして注目を集めた際も、カッピングを侮辱する記事を掲載しました。
「カッピングは阿保らしい。カッピングに効能があることを示す科学的あるいは医学的エビデンスは全くなく、ある程度の有害性リスクを明らかに伴う」と、サルツバーグ氏は書いており、数百件の研究を「阿保らしさ」で一蹴しています。
「Cupping Therapy: A Prudent Remedy for a Plethora of Medical Ailments」(カッピング療法:多くの病気に効能がある賢明な療法)、2015年にJournal of Traditional and Complementary Medicineに掲載された論文、はカッピングが「気の流れを復元する等により体内の生体場のアンバランスを補正することにより効果を上げると考えられる」と、説明しています。
「Pharmacological Actions」(薬理学的作用)の項目の下でこの論文は7方式のカッピングが有用であると考えられる病気の例を取り上げています。例えば、ウェットカッピングは慢性にきび、慢性的背中下部の痛み、手根管症候群やいくつもの頭痛の処置に効能があるようです。
カッピング療法と鍼術を組み合わせて行うと中度までの不眠症が解消されたり、線維筋痛、鬱状態の改善に効能があることは立証済みです。ウェットカッピングとハーブ療法を組み合わせると急性痛風関節炎がよくなったり、急性軟組織負傷の治療にも効能があると考えられます。
カッピングは運動選手の間では鎮痛効果や記録を伸ばす効果があるので人気があります。フェルプス選手以外にも、オリンピックの水泳選手コディー・ミラーやダナ・ボルマーさん、さらにオリンピック体操のアレックス・ナドゥール選手もスポーツによる典型的みみず腫れがありました。ボルマー選手やミラー選手は2016年の記者会見でカッピングに効能があることを実感したことについて説明しました。
オリンピック開催中にナドゥール選手もUSA Todayにカッピングは「自分を健康的でい続けさせてくれるこを秘密にしていた。他の何に費やしたお金よりもお金の使い甲斐があった」といっています。Journal of Functional Morphology and Kinesiologyに2016年に掲載されたある論説「Could Cupping Therapy Be Used to Improve Sports Performance?」(カッピング療法はスポーツ記録を伸ばすのに利用可能か)では、いくつもの研究や注記を引用しています:
「仮説として、カッピング療法により『停滞していた』血液が皮膚から吸い出されることにより、血液循環とリンパ循環が盛んになり、痛みを伴う筋肉の緊張が解消する。近年伝統的カッピングに注目が集まってきており、カッピングがいくつもの痛みに効果がありうることを示すエビデンスが増え続けている ...
カッピング治療では血液やその他の腸内液を真空によって皮膚から引き出す。伝統的カッピングは局部の鬱血や腫れ、首の領域の結合組織の癒着がある患者に主に使用される。即ちカッピングは組織を圧力から解放し、首領域をこうした有害な鬱血状態から解放し、このため循環やリンパの流れもよくなる。
慢性的首の痛みがある患者では、循環が機能していないので、カッピングで正常な循環状態に回復させうる。循環がよくなると次に酸素の供給と細胞の代謝が改善され、炎症性物質あるいは毒性物質量が減る。このことは、カッピングが痛みのある領域で圧迫により痛みを感じ始める強さが増すという有意な効果を持つことも説明しうるものと考えられる。
筋肉けいれんや鬱血、血行低下は虚血性の痛みを起こす。皮膚や組織に蓄積した炎症性物質はさらに毒性の刺激に対して過敏にさせるが、このことは圧迫からすぐに痛く感じやすくなることに反映される。
伝統的カッピングは毒素や炎症性物質を対象領域から排出させ、正常な循環を取り戻させると考えられるので、この事実は圧迫痛の閾値に対する局部的効果を説明するものと考えられる。血液量低下に局部の血管拡張が伴うと、肉体的な交感神経による反射によって副交感神経系の活性が盛んになり、このことは被験者の言うリラグゼーションと整合的である。」
カップリングの効能を示す研究の多くで共通して痛みの軽減について言及されています。
2016年にEvidence-Based ComplementaryとAlternative Medicineに掲載されたある研究は、カッピングで慢性的首や肩の痛みが介入しないときより大幅に減ることを特定しました。カッピングを行った群では、首の痛みの強度スコアは9.7から3.6へ減少しました。
対照群の痛みは9.7から9.5へ減りました。その研究は皮膚表面の温度や血圧の変化を含む計測可能な肉体への効果も評価しました。カッピングを受けた人の場合、統計的に有意な改善が見られました。
カッピングを進行性筋肉弛緩と比較した2013年にPLOS ONEが行った研究は、どちらの処置も12週後に慢性的首の痛みを持つ患者から、同様な痛みを軽減する効果があることを発見しました。しかし、カッピングを受けた人は進行性筋肉弛緩法を行った人より多くの「全身の快適さ」や痛みをすぐに感じにくくなったことを報告しています。
イスラエルのネゲフにあるベングリオン大学上級講師レオニド・カリチマン博士は物理療法やリューマチ治療について150本以上のペーパーを公表してきました。カッピングが局部の炎症を起こすことでサイトキン生産を促し、このため免疫系の応答を変調できるそうです。
Journal of Bodywork and Movement Therapiesに掲載された同氏のカッピング研究に関する批評論考の中で、カリチマン氏と共著者のエフジェニ・ローゼンフェルド氏が次のように説明しています:
「力学的にはカッピングが血行を盛んにするが、生理学的にはカッピングで免疫系を活性化し、機械的受容線維を刺激するので、痛みが軽減される。
カッピングが筋骨格の痛みを減らすことが実証された初期科学研究がある。カッピングは安価で非侵撃性かつ低リスク(訓練を受けた施術者が行えば)な治療方法なので、筋骨格医療に採用するとよい。」
カッピングの治癒力の根拠となっている精確なメカニズムを説明しうる、さらに深い研究があるとよいですが、いかにとかなぜとか問う以前に多くの患者がカッピングの効能に満足しています。
国際カッピングセラピー協会の執行理事ジェシカ・マクリーンさんが指摘するように、 「この処置を受けた人が実際に速く回復するので、科学的根拠にはこだわらず、結果が出ることが重要だと人は思います。」 以下の逸話的成功談はDesert News Utahによって報告されました:
「マスター・ルーで鍼治療とカッピングセラピーを背中下部のヘルニアを起こしていた数枚の椎間板のために受けた33歳のマリアに効きました。それまで多くのことを試したが、痛みがあまりにひどくなり動けないときもあったほどです。『カッピングと鍼を受けたとたんに緩和された』そうです。『それ以外の処置にはもう決して戻りませんでした。』とマリアは言っています。
マリアは多くのボックスを持ち上げ動かすうちに背中を痛めたのです。彼女は痛みがすぐに和らぎ、しかも長続きする効能がある鍼とカッピング処置は「リラックスして」受けることができると言っています。施術者のルーさんは、彼女が一週間に3回のアポを受けた後、次に使い過ぎのため痛みがまた起きたとき戻ればいい状態になる、と言っています。」
カッピングは容易に行え、バキュームセットをオンラインショップから$30足らずで買えます。しかし、訓練を受けた伝統中国療法の施術者に掛かることを強くお勧めします。伝統中国療法の免許を持つ医者なら最小3,000時間のトレーニングを受けており、安全かつ効果的にカッピングを行う方法を心得ています。保持カッピング(火で熱するカッピング)は適切なトレーニングと資格証明がない人から受けてはなりません。
部位によっては過度のサクションを適用しないように注意する必要があります。背中と腿はサクションが強くても安全に処置できますが、自分で行っていることをよく把握していない限り、首回りはカップリングによるリスクを伴います。
カッピングは顔面や頭に対しては行いません。頭痛がすれば首肩や背中の筋肉を処置するのが普通で、カップをこめかみやおでこには当てません。カッピングは特定の重篤な病気の場合も禁忌です。
結局カッピングはあなたには効くでしょうか? 試さずに諦めるよりまず単に試すことです。カッピングが痛みに効く他のセラピーに代わって役立つ療法であることを研究や逸話的証拠が示しています。また、症例によっては標準外ですが、カップリングのみによる処置も効きます。
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