Dr. Mercolaより
近年、健康とか病気と呼んでいるものの大部分は ミトコンドリアの機能に行きつくことが益々明らかになっています — これはアデノシン三リン酸 (ATP)という生物的機能のために必須の物質の生産に不可欠な細胞内の小さい組織です。
ミトコンドリアがよく機能していないと、慢性の萎縮性疾患リスクが急増します。想像できることですが、ミトコンドリアの最適化は寿命を延ばす戦略のために必要条件です。
体内で最もエネルギー需要が高い脳(全身で消費されるエネルギーの最大20%を消費)は、機能障害を起こしたミトコンドリアによるエネルギー生産の障害から最も悪影響を受けます。研究者らは現在、ミトコンドリアこそ、人の脳が加齢関連の病気になり易くなる根本原因であることを示しています。
Cell Reports誌の5月号に掲載されたここで取り上げる研究は「加齢の影響を最も受ける脳に関する生体エネルギー面の説明」を支持しています。加齢にともない、ミトコンドリアは数と機能ともに減少し、この加齢にともなう機能停止はATP生産阻害及び酸化損傷によります。
大半の研究方法は細胞に化学物質でストレスを与えて細胞の老化を刺激しますが、サーク遺伝学研究所のラスティー・ゲージ氏が率いるサークグループは皮膚細胞を直接ニューロンに変換する、「誘発ニューロン」あるいはiNsと呼ばれるゲージ氏が開発した画期的手法を応用しました。iNsによって研究者らはミトコンドリアに対する自然な老化の影響を追跡することが可能になりました。
ここで取り上げた研究でチームは新生児から89歳までに及ぶ個人から皮膚細胞を収集し、各ドナー別にiNsを作成しました。次に様々な方法を利用し、各集合においてミトコンドリアを分析しました。
興味深いことに、皮膚細胞のミトコンドリは年齢差がほとんどない一方、細胞をニューロンに変換すると、大きな格差が現れます。
高齢者のiNsにあるエネルギー生産に係るミトコンドリアの遺伝子が発現しなくなっていました。 ミトコンドリアの密度も下がり、断片化が進んでおり、生産するエネルギーも減っていました。高齢のiNsではミトコンドリア細胞膜の電位が若いiNsより平均43%低かったのです。
サークのスタッフ科学者で共同の通信研究執筆者の一人ジェローム・マーテンズ氏は「機能面、遺伝子面、形態面と多くの側面を観察したらどれも欠陥がありました」と言っています。その執筆者らは異なる細胞の種類の間でのミトコンドリアの老化し易さが対象細胞の酸化性リン酸化反応レベルによって異なるようであること、また、「ニューロンの代謝特性がこうした細胞をミトコンドリアの老化から特に影響を受け易くしているようである」ことにも注目しました。
食物をエネルギーに変換するほかにもミトコンドリアにはもっと基本的に重要な機能があります。
例えば、予定されている細胞死であるアポプトーシスを調整しており、このプロセスは、排除されないと腫瘍に変わる可能性がある機能障害を起こした細胞が死ぬようにしている仕組みです。細胞のライフサイクルでは必然的に損傷します。この損傷が特定の閾値に達すると自己破壊せよという信号が細胞に送られます。
ミトコンドリアはこの閾値に達したかを判定し、その後の細胞の自殺プログラムを起動します。
ミトコンドリアが機能障害を起こすと、そのダメージの閾値に達した時点を正しく判断できなくなり、あるいは損傷した細胞にアポプトーシスのトリガー信号を送れなくなります。その結果は明白です: 重度の障害を負った細胞がうろつき回ることになり、蓄積し、さらに機能障害が進みます。
さらに、アポプトーシスの多重発生が可能となるためのエネルギー入力が必要です。従って、ミトコンドリアが細胞死のための閾値に達したことを判定でき、アポプトーシス信号を送れても、エネルギーが不足していれば、欠陥細胞は生き残り、増殖し続けます。端的に言うならこれが機能停止したミトコンドリアががんを起こすことになる原理です.
ミトコンドリアの損傷はいくつもの経路で発生しますが、そのほとんどはスーパーオキシドフリーラジカルという — 電子輸送経路(ETC)から抜け出てて酸素と反応して発生する物質が起因です。これは普通の正常なプロセスですが、スーパーオキシドが健康なレベルよりさらに高いレベルで発生すると、ミトコンドリア内のDNAを損傷します。
ではなぜミトコンドリアの中でETCから電子が過剰にリークし始めるのでしょうか。 端的に言えば、代謝が柔軟でなく、脂肪より高い比率で炭水化物を燃やすことによっており、このため電子が余計に漏れ出て、酸素分子と反応してスーパーオキシドを発生します。
スーパーオキシド(過酸化物)という名の通り、この分子は実際に損傷させるもので、危険だが比較的軽度であると思われることでしょう。以前はこの過酸化水素への変換と鉄との反応(フェントン反応)がヒドロキシルフリーラジカル(遊離基)を生成して損傷を主に引き起こすものと考えられていました。
今世紀になってからこの見解が根本的にくつがえされました。今では水酸基とはいえは損傷を与える、そう遠くまでは移動せず、タンパク質一個分しか移動せず、水酸基による損傷は比較的限られています。過剰なスーパーオキシドの発生による主な問題は、一酸化窒素と反応して過酸化亜硝酸という体内で最も危険な分子と考えらえる物質が発生することです。
このテーマに関して私は数千ページの文献を数百時間かけて読み、ピアレビュー済みのある専門誌のために30ページの論文を書き上げたところで、この論文では分子生物学を応用して大部分の慢性病を把握して治すことがいかに可能かについてのコンセプトを掘り下げて論じています。その専門誌に掲載された後で、今年後半には当サイトに公表することができればよいと考えています。
ここで手短に言っておくと、脂肪を燃料とせず、過剰なスーパーオキシドを生産し電磁場(EMF)に暴露される限り、DNAや細胞のタンパク質さらに細胞膜の破壊という悪いことが全て出そろうことになります。
このため体内に放出される一酸化窒素が急増し、ほぼそれと同時にスーパーオキシドと結合して過酸化亜硝酸が大量に発生し、このため細胞やミトコンドリアのDNA、細胞膜、タンパク質を幾重にも破壊します。
どんな生物学的損傷は懸念のあるものとはいえ、炎症の急激な増加やほぼすべての萎縮性疾患につながるDNA螺旋の破損こそ最も懸念のある問題です。ありがたいことに、身体には損傷したDNAをPARP (ポリADPリボーズ・ポリメラーゼ)という一群の酵素が修復する機能があります。燃料が十分得られる限りこれは効果が高い修復システムであり、損傷をよく修復します。
ではその燃料とは何でしょうか? 近年ニュースなどで聞きかじったことがあるかもしれませんが、そのエネルギーはNAD+というものです。過剰な過酸化亜硝酸がPARPを活性化してDNAの損傷を修復するときにNAD+を消費し、これが切れると損傷を修復できなくなり、これこそまさしく現代社会で見られる病気の大部分の根本原因である可能性が高いです。
EMF及びその暴露を軽減する方法については以前詳しくご説明しました。ここでのポイントは EMF暴露と主燃料を脂肪にできないことが組み合わさり、今検討している生物学的破壊のドミノ反応を引き起こすことを把握することです。
そこで、脂肪を主な燃料源にする食生活に最適化するように動機づけられたはずです。私の書いた本「Fat for Fuel」(脂肪を燃料に)には身体に脂肪を主燃料にするよう仕込むことで過剰なスーパーオキシドの発生を抑えることを目指す戦略を詳しくご説明しています。
現在までに明白になったことは、その食生活とは先祖の食生活とは縁を切ることです — かつての食生活は不自然な加工食品及び過剰な添加糖分、過剰な正味炭水化物、合成脂肪であり — これが損傷の大半を引き起こします。
高炭水化物の加工食品中心食生活だと身体は脂肪を主燃料として効率的に代謝できなくなり、脂肪そしてケトンを代謝すれば炭水化物よりはるかに効率的なエネルギー生産につながり、酸化ストレスが減ります。従って、ミトコンドリアの健康を最適化するための食生活の基本戦略とは、正しい燃料を食べることです。
効率的な脂肪燃焼が可能になると、ミトコンドリアに掛かる酸化ストレスが自然と低下し、ここがポイントです。その他の効果的な戦略にはカロリー制限(絶食)とエクササイズ(下記参照)が挙げられます。
食べる時間帯ももう一つの重要な要因です。ミトコンドリアを日常的に害する最悪の習慣は就寝前の食事です。最適には、就寝の遅くとも三時間前までに一日の最後の食事を済ますことです。
身体が最も食を必要としていないとき(睡眠前なので)に食べると、結局フリーラジカルが余計にできて漏れ、ミトコンドリアのDNAを損傷します。特に過剰な炭水化物はスーパーオキシドの生産を促す電子を補給することになります。
これに輪をかけて、鉄分が多い方の場合 — 鉄不足よりはるかに蔓延している — 大量のスーパーオキシドと結合するとヒドロキシルフリーラジカルが生成され、これが最も有害なものの一つなのです。こうしたヒドロキシルフリーラジカルを生成する化学反応はフェントン反応といいます。
補酵素Q10 (CoQ10) またはその還元(さらに吸収性アップ)型のユビキノールは40歳以上の方に合います。CoQ10はミトコンドリアによるエネルギー生産プロセスに深く関わっている物質であり、CoQ10が余分にあるとよく機能するミトコンドリアようにするために効果的な治療戦略であると多くの専門家が見なしています。CoQ10は信号伝達分子であり、細胞膜を損傷から保護します。
ケルセチンという水溶性植物性化学物質フラボノイドの一種である抗酸化物質は特定の果物や野菜に含まれています。抗酸化性のほかにもケルセチンは抗発がん性、粥腫発生阻止機能がありますが、ここでの主題に関連する点としては、NAD+量を増加させることもできます。
パウダルコは何世紀もがんやマラリアの治療に利用されてきました。フラボン類、ケルセチンアルカロイドその他、NAD+量を増やせる栄養素が豊富です。
ピロロキノリンキノン (PQQ)はビタミンに似た物質でCoQ10の仲間であり、ミトコンドリアの生体生成を促します。ミトコンドリアが多いほど、細胞はエネルギーをより多く生産でき、機能も全体としてよくなります。PQQが十分にあるとミトコンドリア拡散を促進します。
ベルベリンもミトコンドリアの機能をよくし、アデノシン一リン酸活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)を活性化する強力な物質で、ミトコンドリアのオートファジー(自食作用)を促し、ミトコンドリアの生体生成を促進します。さらに、パーキンソン病につながるような酸化ストレスからも保護します。
マグネシウムはATPの生産のために基幹的な機能を果たしており、ミトコンドリアの修復においても必須の付帯要因です。
D-リボーゼはADPが変換される際に必要とする五炭糖です。砂糖ではあっても、この糖は血中グルコースに影響せず、糖尿病患者でも安全に消費できます。リボーゼは細胞に入るとADPとATPの生産に必須のアデノシン基に変換されます。
身体はDリボーゼを生産できますが、極めて遅い反応工程です。Knowウェブサイトによると、D-リボーゼはよく心臓血管病、脳卒中、心臓発作、慢性的倦怠患者の発生率を制限す要因です。
この物質は無毒で、過剰摂取はほぼありえないので、脳卒中や心臓発作の後や慢性的倦怠がある方の場合、食事計画に含めるとよい実に重要なサプリです。心臓の術前にD-リボーゼを飲むと再灌流による障害に関連する損傷を軽減するのにも有用です。 ミトコンドリアの機能停止は誰でもある程度はあるので、日常よく運動する場合、全身の健康のためにも有用です。
素足で歩くことにより、成人病や慢性疾患を予防し、炎症を抑制
年とともに衰える目を若返えらせることが判明したビタミンD3
脳の老化を遅延することが実証されたレスベラトロール
タンパク質を摂り過ぎると老化やがんにつながる仕組みと理由
このウェブサイトの閲覧を続けとクッキーの使用、改訂個人情報保護方針、サービスの提供条件に同意したものとみなされます。
同意する