汗かくと毒素は出ていく

サウナに入っている男性

早分かり -

  • サウナで発汗すると、血行が改善し、血圧が下がり、認知力がよくなるばかりか重金属毒素、尿素、ビスフェノールA、フタレートの排出を含め、大いに健康へのメリットを得られる最も簡素な戦略の一つです
  • サウナに入るとミトコンドリアの生体生成を促し、熱ショックタンパク質を最適化し、心臓血管の異常や脳卒中リスクが下がります
  • 汗に含まれる化学物質が周囲の人に恐れや嫌悪感を伝えていると考えられること研究のデータが示しています
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Dr. Mercolaより

健康に関していうと、最も単純な戦略で相当大きな効果が得られます。サウナに入って汗をかくのは心臓血管リスクを下げ、ミトコンドリア機能をよくすることを含め多くの健康へのメリットがある一つの簡単な変化です。また、認知症リスク削減とよく相関性があります。

フィンランドのことわざに「サウナはフィンランドの薬、お金がない人の薬屋」というのがあります。サウナは約 2,000 年来フィンランドではストレス解消や健康改善のために利用されてきました。

サウナの健康メリットについての研究の大半は、サウナがテレビ同様に生活の一部であるフィンランド発であることは想像がつきやすいです。 一般の家庭、オフィス、工場にもあり、フィンランドの生活から切っても切り離せない物です。

心臓血管や神経的効能のためばかりではなく、サウナはトレーニング後の弛緩のためや記録を伸ばすための手段として運動選手が利用します。サウナにあるもう一つの大切な側面はデトックス効果です。

サウナで発汗すると重金属やその他の毒素の多くを排出することが可能なことを十分に多くの研究が実証してきた一方では、Journal Environmental International に掲載されたあるレターのためにサウナのデトックス効果に関して議論が再燃しました。

発汗によるデトックス効果は誤信であると専門家が主張

肝臓と腎臓しか身体が毒素を排出する経路はないとする専門家もいます。その主張の要点は、サウナで環境毒素や重金属の解毒が可能であるというのは誤信以外の何物ではないということです。議論の中で一部の人はまた、どんな誤信の要点には一抹の真実がよくあるものであることを指摘しており、汗でデトックスというのも例外ではありません。

Environmental International に掲載された通信のやりとり の筆者らは発汗で身体から排出しうる毒素の量は微々たるもので、農薬や難燃剤、ようやく禁止されたポリ塩化ビフェニル類 (PCB) 等の人体に存在して定着する有機化合物などの汚染物質の量はとても少ないので問題にするほどではないと指摘します。

しかしこうした毒素や既知の発がん物質は病気の原因なので使用が禁止されています。主筆者によると、高強度運動を45分行う人は典型的に、毎日の普通な状態での発汗量を含めて合計で2ℓ発汗します。この汗には議論の対象である汚染物質がナノグラムのさらに10分の1未満しか含まれていないと言われます。

従って、一日に食品から摂り込んでいる化学物質の1%でさえ排出するには発汗では不十分であるとその主筆者は考えます。皮肉にもまたおそらく本当のことを明かすかのように、こうした主張は毒素による負荷が本質的には端から無意味であるという主張と全く矛盾しています。

もう一人の筆者は赤外線サウナはとても気持ちよく30分座ったら意気高揚してよかったが、その感覚は運動後のエンドルフィンの急増と似ており、高揚感以外にサウナがデトックスの助けになったという発想を裏付ける科学的根拠はないとその人は考えています。

しかしこれらの記事は広く読まれても、サウナが環境毒素や重金属を排出するのを助ける効果を実証してきたいくつもの科学的根拠や研究による根拠を反映しているわけではありません。

発汗で身体から毒素は排出される

汗には尿の名前のもとになっている尿素という物質が含まれています。Journal of Biological Chemistry に掲載されたある論文で、研究者らは汗1ccに最大1.12 mg の尿素が溶けていると推計しています。これは微量に聞こえますが、平均的な人で一日に最大 700 cc の汗をかくので、このことは汗といっしょに出ていく尿は尿の一日排出量の最大7%に相当することを意味します。

検出しうる量の金属は排出されていると研究からもわかっており、研究者らは,発汗はヒ素やカドミウム、鉛、水銀を排出する安全で効果的な経路であると考えています。このメタ分析は回収した汗と濃度を解析した24件の公表研究を検討しました。そこでわかったことは、毒素の負荷が大きい人ほど概して血漿や尿内の濃度より多い量を汗で排出しうることです。

発汗による経皮排泄は尿による排泄に匹敵する以上の効果があることを以上の研究は実証しました。注目すべき点としては、カドミウムは血漿中より汗の中のほうが濃度が高く、水銀濃度はサウナを頻繁に利用すると清浄になりうることでした。

もう一件の研究では、20 人の参加者から血液、尿、汗を評価し、約 120 種類の化合物について分析した結果、異なる液体に異なる量が含まれていることがわかりました。研究の筆者らによると:

「多くの有毒元素は発汗により優先的に排出されているようである。組織に蓄積されると推測される一部の有毒元素は参加者の一部の汗からは必ず検出されたが、血清からは検出されなかった。発汗誘発は人体からの多くの有毒元素を排出する効果的方法であるように思われる。」

ビスフェノールA (BPA) はいくつもの人の健康の異常を起こす蔓延した汚染物質です。BPA の血液中、尿中、汗中の相対濃度を評価することを目的としたある研究では、BPA が汗の中からあるいは参加者の 80% から検出され、血清や血液、尿からは BPA が検出されなかった一部の人でさえ汗からは検出されました。

研究者らは血液や尿を使った生体監視では総負荷を過小評価するおそれがあり、汗を分析してBPAの排出を評価すべきであるとの結論に至りました。

フタレート類に含まれる化学物質は日常の消費財に含まれており、一部の人やグループでは多量に暴露されています。フタレートへの暴露と病気の間には統計的に有意な相関性があることをいくつもの研究が実証しました。ある研究では、研究者らは汗によるフタレート及び代謝生産物の排出効果を評価しました。

一部のフタレート類は汗からは検出されたが、血清からは保持及び生体蓄積が示されることを研究者らは特定しました。その結論は、発汗を誘発すると有毒なフタレート化合物が排出されやすくなり、汗の分析をすれば2エチルヘキシルフタレートが生体蓄積していることを実証するのに有用であるということでした。

発汗は感情を伝える

発汗は老廃物の排出のための重要な方法ですが、研究者らは汗にはもう一つの機能があることも特定しました。汗は 3 種類の腺のうち一つを通して出ます。これらはアポクリン汗腺、エクリン汗腺、アポエクリン汗腺です。アポエクリン汗腺は1987年に初めて発見され、アポクリン汗腺がある個所にしかありません。

人体は体温調節のために発汗します。しかし、辛い物を食べたり、かなり負荷を受ける感情的になる状況に身を置くと汗は出始めます。感情に誘発されて発汗した人の汗の匂いによりその人の感情が他者に伝わるので、コミュニケーション手段となっていることを研究者らは特定しました。

ユトレヒト大学でのある実験で、心理学者らは恐怖または嫌悪感を刺激するように制作したビデオを見せた 10 人の男性から汗のサンプルを集めました。次に女性 36 人に汗のサンプルから感情状態を嗅ぎ分けるようにお願いしました。

その研究者らは恐怖感が起きる状況でかいた汗を嗅いだ女性の表情も恐れている表情に変わったことを特定しました。嫌悪感を生むような状況でかいた汗のサンプルを嗅がせたときも結果は同じでした。

つまり汗は感情状態を伝える効果的手段であることが示されました。興味深いことに、汗を嗅いでいる間の女性の表情は臭いの主観的知覚とは無関係でした。

従って、サンプルは不愉快であると評価した場合でも、表情は嫌悪感を表す場合がありえます。恐怖の状況で出た汗のサンプルを嗅いだ女性は単語連想の課題をうまくこなした、ライス大学による一件の研究を含め他の実験でも同様の結果が出ました。

ドイツの心理学者及び神経学者が行ったある実験では、不安な男性から出た汗を嗅いだ女性はコンピュータゲームでリスクが高い判断をするようになりました。以上の研究のいずれも、汗を嗅いだ結果として自分の行動や意思決定の変化に参加者が気づいていたかは判断していませんが、ここから言えることは、精神的状態について汗は情報を伝えると考えられます。

発汗はエクササイズの代用ではない

集中運動やサウナに入ると汗をかきますが、このためサウナに入れば集中運動と同じような効果をいくらか得られるはずであると思われるかもしれません。残念ながら、サウナで汗をかくだけでは減量できないし、筋肉も鍛えられません。

発汗はその本質からしてフィットネスの目標ではありません。集中運動で出る発汗は体内温度の調節のためです。サウナを利用すると成長ホルモンの分泌を自然に促し、スポーツの記録が伸びたり、回復を早めるのに有用であり、体外への老廃物排出以外のメリットが必ずあります。

しかし日常のフィットネスに動作、筋力トレーニング、柔軟トレーニング、カーディオトレーニングを含めることは大切です。

サウナはデトックス以上の効果がある

体内細胞には体内で生産されるエネルギーのほぼ 90% を生産するミトコンドリアが存在しており、これはどんな筋肉の収縮弛緩、生化学的多重化、細胞の再生その他のために必須のものです。

ミトコンドリアは体内からがんになりうる損傷した細胞を除去するのに有用なプログラムされた細胞死のためのコーディネーターとしても機能します。しかし、ミトコンドリアはフリーラジカルによって損傷を受け易く、常に再生が必要です。サウナに入ると短時間に身体にストレスが掛かり、このためミトコンドリアが増えます。

体の中から温まるので細胞の中の熱ショックタンパク質最適化 (HSP) のために必須の遺伝子が活性化されます。損傷した HSP が蓄積すると脳やその他の血管系にプラークが発生しやすくなります。

HSP は長寿に関わっており、骨格筋萎縮の予防に必須です。フィンランドの研究者らは一回平均 15 分、週に 4 回から 7 回サウナを利用する男性は認知症リスクが 66% 、アルツハイマー病のリスクは 65%、週一回しかサウナに入らない人より低いことを特定しました。

サウナに入ると炎症や血圧も下がり、血管の機能を改善し、リラグゼーションや体調のよさがさらに増すと考えられます。ある研究データが 熱への暴露と脳由来神経栄養因子 (BDNF) の間の相関性を実証しています。

この要因のために脳の幹細胞も活性化され、新たなニューロンに変換し、神経の健康を促す他の化学物質分泌を増やします。熱の中でのエクササイズにより BDNF がさらに増え、サウナを含む熱ストレスは脳の健康のためによいことを示しています。

さらに、研究によると一週間に 7 回フィンランド乾式サウナを利用していた男性は 1 回しかサウナに入らなかった人より致死的な心臓障害による死亡リスクが半減していました。喫煙や血圧、コレステロール濃度などの交絡要因を考慮したときも、研究結果は同じでした。最も大きなメリットはサウナに 1回当たり 19 分以上入っていた人に見られました。

このことは心臓や筋肉への血行が盛んになることを含め熱ストレスに体が慣れると心臓の健康によいことを示しています。1,600 人以上の男女についてサウナの効果を評価した別の研究 では、サウナで汗かくと炎症を軽減し、動脈硬化を和らげ、循環系全体に血行をよくすることで脳卒中リスクが下がり易いことがわかりました。

サウナに週7回入った人はリスクが62 %下がりました。

自分に合った方式のサウナを選びよく注意する

サウナにはフィンランド式、遠赤外線、近赤外線を含め選べる種類があります。赤外線サウナと伝統的なフィンランド式サウナの違いは、フィンランド式では身体の表面から中へ温めるのに対し、赤外線では体の芯から外へと温まることです。

水には吸収されない波長で近赤外線サウナには組織に効果的に浸透するのでさらに効果があります。

近赤外線帯域は ミトコンドリアの中にある吸光分子発色団と水の分子が反応して健康に効果が出ます。近赤外線には癒しや修復効果もあり、他の生体機能を最適化するのを助けます。

近赤外線サウナを利用するメリット及び注意点について詳しくは、私の以前の記事「サウナで脳卒中リスク低下」をご参照ください。