産前のサプリメントが自閉症発生率を低下しうる

ビタミンを飲んでいる妊婦

早分かり -

  • 出産前の葉酸が豊富なビタミンや妊娠前の鉄の服用により、年長の子供が自閉症と診断された家族で自閉症リスクを低下させることを研究が実証しています
  • 自閉症になる家族のリスクが高まっていることがデータに示されていても、自閉症の遺伝子が検出されませんでした。自閉症の発病は多くの要因に左右されており、遺伝子特性と環境物質との接触によっても影響を受けるものと科学者らは考えています
  • さらに、研究によればサプリメント一日 600 mg のオメガ 3 脂肪ドコサヘキサエン酸(DHA)を妊娠中に補給すると子供が肥満による高血圧になりにくくなることがわかっています
  • 自閉症の子供の腸内細菌は極めて異なっており、このためワクチン耐性に大きく影響しているようです。生後 20 日間に子供の腸内細菌叢を改善すると自閉症リスクを下げるのにも有用なようです
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Dr. Mercolaより

出産前のケアは過去 100 年間に劇的に変化しました。75 年前まで米国女性の 66% は鎮痛剤なしで自宅で出産していました。現代の産科は院内出産へのトレンドを促しました。産科の第一の課題は出産中の鎮痛薬の使用及び母親と子供のために安全なことを特定する取り組みに関する議論でした。

院内出産が標準になる以前は看護婦が出産前のケアプログラムの開始では積極的に働いていましたが、データが出産前のケアにより乳児死亡率が低下したことを示しています。血圧、尿、体重の日常評価は出産前のケア訪問では行われていました。その時以来、スクリーニング検査が他の母性リスク要因のために追加され、異常な胎児の発達の指標のために追加されました。

1980 年代までには出産前のケアは促進と予防ではなく主に合併症の迅速な治療にフォーカスしました。現在の出産前通院は通常の場合は最初の三カ月に行われるパターンですが、研究者らは現在妊娠前のケアの効果を調査しています。

妊娠前のケアには病気の予防や母体と胎児の健康を促進するための手順について女性にアドバイスすることを含んでいます。JAMA Psychiatry に掲載されたこの種のある研究は出産前ビタミンと自閉症のリスクの関係を自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断された子供がすでにいる家族において調べました。

自閉症と遺伝的特性

自閉症は社会的スキル、意志疎通、反復的動作の課題を特徴とする様々な異常をカバーします。自閉症とはスペクトラム障害のことであり、すなわち、症状が尺度のどこに当たるかに応じて分類されます。

Autism Speaks によると一種類の自閉症があるのではなく、遺伝子や環境要因が組み合わさって影響を受ける多くの亜種が存在します。人によって学習方法、思考方法、問題解決方法に影響する強みと課題が明瞭な集合となっています。

症例によっては ASD 患者はかなりのサポートを要する一方、他者は独立して生活でき、高度の職務機能を担っています。この異常の発症には胃腸障害を含め、いくつかの要因が影響していると考えられます。

大部分の子供において ASD の症状は 2 ~ 3 歳までに現れますが、関連する発育遅れの症状はもっと早く現れる場合があります。1970 年代に研究者らが一卵性双生児がしばしば ASD を共に発症していることを特定して以来、この異常には遺伝子要因があることは知られてきました。

遺伝子の容疑者を見つけるために長年研究が行われた結果、研究者らは様々な種類の遺伝子変異を掘り下げました。未だに、自閉症遺伝子というような物は存在しない点で科学者らは一致しています。しかし、脆弱 X 症候群及びレット症候群を含む自閉症と極めて関連性が深い遺伝子異常がいくつか存在します。男の子のほうが女の子より自閉症になるリスクが高いです。

自閉症の女の子のほうが男の子より多くの DNA 変異が起きていることも科学者らが発見しました。これらの結論やその他の結果からすると女の子のほうが遺伝子変異に対する抵抗力がいくぶん強いようで、発症に至るには大規模な遺伝子の変化が必要なようです。

出産前ビタミンで自閉症スペクトラム障害リスクが下がる可能性がある

一卵性双生児の一人に自閉症がある場合、もう一人もそうなる確率は 80% あります。二卵性双生児の場合二人とも自閉症になる確率は 40% ありますが、この確率は ASD の症状を実証するために再発性の兄弟姉妹に関する別の複数の研究において特定された先天性に近い値です。

ある研究で研究者らは 463 人の妊婦を募集し、ASD が同家族内で再発する確率が 24% あることを特定しました。さらに近年、研究者らが 241 の家族を追跡したところ、母親が出産前ビタミンを摂らなかった子供の 32.7% が自閉症になることを特定しました。

研究者らは母親が出産前ビタミンを服用すると ASD になった子供の兄弟姉妹における自閉症のリスクが下がり得るかについて把握するのが目的でした。この家族標本の場合はカリフォルニア大学デービス校(UCD)のマインド研究所で募集したもので、若い兄弟姉妹は 2006 年 12 月 1日から 2015 年 6 月 30 日までに生まれた人たちでした。

その子供たちの最終臨床評価は 3 歳の誕生日の 6 カ月以内に完了し、電話インタビューで母親たちは妊娠中に出産前ビタミンを使用したと報告しました。研究者らによると、ほとんの母親たちは妊娠中出産前ビタミンを飲んでいたと報告した一方、87 人(36.1%)だけ出産前ビタミンを妊娠直前 6 か月以内に摂ったということでした。

この後者のグループの子供のうち 14% のみ ASD と診断されましたが、妊娠前にビタミンを摂らなかった母親たちの子供の 32% がこの異常を発症しました。妊娠一か月目の間に出産前ビタミンを摂ったと答えた母親たちも ASD の子供が生まれる確率は低かった反面、出産前ビタミンを全く摂らなかった母親たちではこの確率が高ったのです。

研究者らは妊娠一か月の間に出産前ビタミンを摂ると ASD が低下すると考えられるが、結果を確認して用量が ASD 発症に及ぼすインパクトを分析するための追加研究は必要です。Nationwide Children's Hospital の自閉症センター児童精神医・医療所長であり、この研究には関与していなかかったDr.パンクリー・ヴァンダナ氏はそれが重要な研究だったと考えています。

出産前ビタミンを摂っていた母親たちの子供たちは認知得点が高く、最終的に ASD と診断されても重篤な症状は少なかったのです。ASD リスクは出産前ビタミンに鉄と葉酸の用量が高かった母親たちでは大きく低下しており、このことは用量による効果が一部ありうることを示しています。

葉酸塩が豊富な食品か葉酸塩サプリメントを検討すべき

米国では 59 人の子供のうち 1 人はある種の自閉症と診断されています。UCD の研究者らによるとこの障害を持つ子供の兄弟姉妹は一般人より 13 倍も ASD になる可能性があるそうです。その研究の結果は葉酸を含む出産前ビタミン摂取に基づいたものですが、葉酸塩と葉酸は相当異なる物質であることを把握することが重要です。

しばしば二つの用語は同義で用いられ、中には本質的に同一の物質であるとさえ主張する人もいますが、大きな違いがあります。葉酸塩とは水溶性ビタミン B の B9 のことです。テトラヒドロ葉酸の派生物質として食品に自然に含まれ、代謝サイクルに入り、小腸の粘膜の中で代謝されます。

葉酸は栄養補助食品と食品強化剤として製造されている酸化された化合物です。こちらはまず肝臓で代謝され、次に酵素の働きによってテトラヒドロ葉酸塩という形態に変わります。

しかし肝臓の中でこのために必要な酵素が少ないと、体内に代謝されていない異常に高濃度の葉酸が循環することになります。この高濃度では大腸がんの蔓延リスクが増加いし、前立腺がんリスクが高くなることとも関連していることがわかっています。

言い換えると、自然食品から摂る葉酸塩のほうがはるかに葉酸補給した加工食品(あるいは葉酸サプリメントを摂る)より健康的です。

天然の葉酸塩はロメイン・レタス、ほうれん草、パセリ、ブロッコリ、カリフラワーに含まれています。最もこれが豊富な食品は子牛の肉と鶏のレバーです。サプリメントで摂るなら葉酸ではなく、5 -テトラヒドロ葉酸(5-MTHF)がラベルに記載されている葉酸製品を使用するように検討してください。

出産前のオメガ3サプリメント及び子供の高血圧

別の近年に行われた研究の中で研究者らはドコサヘキサエン酸(DHA)という海産物から取れるオメガ 3 脂肪酸の妊娠中消費及び、この摂取と子供の肥満による高血圧の間の関係を評価しました。

カンザス大学の研究者らはリスクが低い妊娠中の女性に臨床検査を実施しました。グループの半数に毎日 600 mg の DHA を含む出産前サプリメント、残り半数に偽薬を割り振りました。研究者らの意図は妊娠中の介入結果と 6 歳までの子供の発育追跡測定でした。

偽薬グループでは、データが肥満の次に期待された血圧上昇を示している一方、血圧と肥満の同時増加は DHA 投与グループでは見られませんでした。血圧上昇の格差は統計的に有意でした。

米国で販売されている出産前のサプリメントの多くは DHA を含みますが、大部分が 600 mg 未満しか含んでいません。就学年齢及び若い成人のほぼ 20% は、疾病管理予防センター(CDC)によると、肥満です。このデータは 6 歳児までを追跡したものですが、研究者らは低血圧が子供以降も続くといいと考えています。

この研究の共著者でカンザス大学のジョン・コロンボ Ph.D.がこの研究は健康及び帰結として現れる子供の行動を最適化するために出生前にすべきことについて想いあぐねている小児科医と母親たちが対象であったことを説明しています。同氏はさらに説明を続けています:

「出産前環境は生後環境で予期される物に向けて胎児の代謝をプログラムします。DHA の既知の効果には生後に体重増加が多い場合に正常血圧を維持する心臓機能のプログラミングが挙げられます。」

妊娠前と出産前のケアの重要性

健康な妊娠は健康な出産と健康な子供時代を促進するための最適な方法の一つです。妊娠前と出産前のケアで健康な妊娠の確率が高まります。妊娠しようかと検討している方なら葉酸塩を自然食品や 5 -MTHF サプリメントを毎日飲む量を増やして健康な妊娠を促進し、オメガ 3 濃度を最適化するための手順を始めることです。最適には、オメガ 3 指数が 8% をターゲットにしましょう。

喫煙を回避する、飲酒を避け、楽しみのための薬をやらず、処方薬を医療的に必要なものだけに削減し、家族やパートナーの既往症について学習しましょう。どんな医療に係る異常も制御し、健康的な体重にするよう取り組むことも重要です。

妊娠かなと思ったらヘルスケアプロバイダーに相談して出産前のケアを開始する予定を立てましょう。医者は身体検査、体重測定、尿検査から始めます。

自分の既往歴や感染症、血液型も検査に含まれるでしょう。規則的に出産前のケアをしておけば妊娠中や出産中の合併症リスクが下がり、子供の成長に伴う健康のためによい基礎ができます。

産前産後の腸の健康を保護する

ASD の診断は過去数十年で急増しており、いまだに科学者らや公衆衛生担当官がその原因について議論を続けていますが、何かが極めて間違っています。数件の推計によれば、30 年前は自閉症になる子供は 10,000 人中 1 人でしたが、今や 50 人に 1 人になりました。

腸・心理合併症(GAPS)治療要領は私の見方では最も有意義な処置戦略の一つであると思いますが、この他にも手段があります。GAPS の栄養要領はご子息が自閉症と診断された Dr.ナターシャ・キャンベルマクブライド氏が生み出した方法です。

妊婦の損傷した腸内細菌と子供の発育障害特に自閉症の間に強い相関性があることを同氏は把握しています。誕生後最初の 20 日間での腸内細菌叢の確立状況は赤ちゃんの免疫系の成熟のために重要な役割を演じています。

重要な点として、腸内細菌の異常は赤ちゃんの免疫系を弱くし、ワクチン反応リスクが高くなります。キャンベルマクブライドさんによると GAPS の子供において毒素が腸内で発生して全身を巡り脳に侵入するといいます。このため神経系が連続的に負荷を受け続け、正常に機能しなくなり、感覚情報を処理できなくなります。

その他の研究者らは発見された事実の裏付け研究を行っています。例えば、2013 年のある研究は自閉症の子供の腸内細菌叢が健常な子供とは大きく異なっていることを確認しました。顕著な点としては、異常のある子供ではビフィズス菌などの善玉菌が少ないことです。自閉症と診断された子供たちは有毒な揮発性有機物質(VOC)の濃度が著しく高いこともわかりました。

この点については、「GAPS Nutritional Program: How a Physician Cured Her Son's Autism」(GAPS栄養計画:息子の自閉症を治した内科医の方法)をご参照ください。ここには私のキャンベルマクブライドさんとのインタビューが含まれています。私の「No-Nonsense Guide to a Naturally Healthy Pregnancy and Baby(自然に健康な妊娠と赤ちゃんのための放っておけない案内書)にも詳細が記載されていますのでご参照ください。