レスベラトロールは悪質細胞を自己破壊させる

レスベラトロールの細胞

早分かり -

  • 実験用マウスを使ったあるスイスの研究が、レスベラトロールは悪質細胞の自己破壊を誘発するので - 少なくとも高用量を経鼻投与する限りは、肺がん治療に効果があると考えられることを示しています
  • その研究者らはレスベラトロールで治療したマウスで腫瘍負荷が45%減少したこと、未処置のマウスより腫瘍が少なくより小さくなったと報告しています
  • フリーラジカルを中和する能力があるので、レスベラトロールは老化防止効果、抗がん性、抗炎症性、抗菌性、抗酸化性、神経保護特性があることでよく知られています
  • レスベラトロールはブルーベリー、ダークチョコレート、ぶどうの皮、赤ワイン等の食品から得られるとしても、生体利用能が低いのでサプリメントを摂る方が効果的な方法です
  • 生体利用能に優れ、レスベラトロールと同じ効能があるプテロスチルベンは試してみたいもう一つの強力な植物化合物です
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実験用マウスを使ったあるスイスの研究 は、ぶどうの成分レスベラトロールを高用量で経鼻投与する限り肺がん治療に効果があると考えられることを示しています。その研究者らはレスベラトロールで治療したマウスで腫瘍負荷が45%減少したこと、未処置のマウスより腫瘍が少なくより小さくなったとも報告しています。

レスベラトロールが悪質細胞を自己破壊させる機能を持つことを示す有利な結果が出ているものの、さらに研究が必要です。この点は主に、レスベラトロールは経口で投与した場合、代謝され数分で無くなるからで — 肺まで届くまでの時間がありません。

プテロスチルベンは試してみるとよいレスベラトロールと同じ効能があるもう一つの植物化合物です。この物質はブルーベリーに含まれる主要なポリフェノール抗酸化物質で、同じ特性を多く持つといってもプテロスチルベンは生体利用能が高いのでレスベラトロールより優ります。

肺がん:世界中で最も致死性のがん

世界保健機関(WHO)内の世界がん観測局(The Global Cancer Observatory)によると、世界で最も致死率の高いがんである肺がんが2018年中に170万人の命を奪ったそうです。肺がん死は乳がんやすい臓がん、前立腺がんによる死者数を合算したよりも多いのです。

注目すべき点として、米国肺学会が喫煙は全肺がん死の80~90%に寄与していると示しています。2004年に米国の公衆衛生局長官は、喫煙男性の肺がん発生率は非喫煙者の23倍、喫煙女性ではこのリスクが13倍高いことを示す報告書を発行しました。

まだ喫煙したことがない人でも肺がんのリスクはあります。2006年に米国の保健社会福祉省(HHS)が発行したある報告書が、非喫煙者は自宅や職場で二次喫煙に暴露されている限り肺がんになる確率が20~30%高いことを肯定しています。

その統計に基づくと、たばこ使用を禁止する必要性を継続的に強調するための明確なニーズが存在します。あなたが喫煙者なら、このことは喫煙を止める必要性を強調しているさらにもう一つの目を覚ますべき注意喚起です。

レスベラトロールとは何であって何によいのか?

レスベラトロールと肺がんに関するスイスの研究の筆者らが、この物質は「最も研究されている天然産品の一つであり、特に、がん化学的予防特性」6が注目されていると説明しています。実際に、この化合物に関する11,000件以上の研究が国立衛生研究所(NIH)のPubMed.govウェブサイトから検索できます。

科学研究でレスベラトロールがこれほど人気が高いので、その注目を集める理由をお知りになりたいことでしょう。レスベラトロールに対する大きな興味は主に強力な抗酸化物質として機能しうる点です。抗酸化物質は老化防止効果や健康増進特性で、特にフリーラジカルによる損傷の防止に関してよく知られています。

今回取り上げたビデオで説明しているように、レスベラトロールは体内で呼吸、エクササイズ、新陳代謝といったような普通の活動中に発生するフリーラジカルを中和して制御する能力があります。フリーラジカルが過剰に存在すると老化や多くの病気に寄与しうることになります。

具体的には、レスベラトロールは植物の病気耐性や病気、急激な気候の変化、過剰な紫外線等のストレス要因により寿命を延ばすようにできているポリフェノールです。想像し易いと思いますが、人も同じような脅威に直面しており、レスベラトロールは植物の健康ばかりではなく、人間の健康を増進する潜在力があります。

レスベラトロールは植物系食品の中でもブルーベリーやぶどうの皮、ザクロ、ラスベリー、赤ワイン、さらにダークチョコレートや生カカオ等の食品に含まれています。しかし、ワインを少々多めに飲むとレスベラトロールの老化防止効果や神経保護特性を得られるであると思えば、それは当たっていないことにご注意ください。

研究者らはレスベラトロールの肺がんに対する効能について慎重に楽観的

既述の通りですが、スイスのジュネーブ大学(UNIGE)で実験用マウスにレスベラトロールを投与して実験した科学者チームが肺がん治療への有用性を示唆しています。

「レスベラトロールを使い、煙草の煙に含まれる発がん物質により誘発される肺がんの予防をマウスモデルで試みました」と、UNIGEの薬学部助教授ミュリエル・キュウンデPh.D.が説明しています。

その研究は25週間に渡り一週に3回処置したマウスの4つのグループを取り上げています:処置無しの対照群、第二のグループは発がん物質のみを投与され、第三のグループは発がん物質とレスベラトロール治療を受け、第四グループがレスベラトロールのみを投与されました。

この研究の結果がよかったので、キュンデ氏がこう説明しています:「従ってレスベラトロールは肺がん予防効果があると考えられます。」 投与したレスベラトロール溶液はマウス1匹に約1.2 mgまたは体重1キロ当たり約60 mgに等しい量でした。その結果について研究者らがこう説明しています:

  • レスベラトロールで治療したマウスは腫瘍増殖率が27%減少し、未処置のマウスよりできる腫瘍が小さくなっていた
  • 処置したマウスでは一匹あたりの腫瘍負荷が45%減少した
  • 発がん物質を投与しなかった2つの群を比較した場合、レスベラトロールで処置したマウスの63%にがんは発生せず、未治療マウスでは13%に留まった
  • 試験管内実験からは、レスベラトロールの化学予防メカニズムはおそらく悪質細胞が破壊されることで知られるプロセスである細胞死(プログラムされた細胞の死)に関連している

レスベラトロールは経口投与した場合低生体利用能のため効果は限られる

実験用マウスで得られた結果にも拘らず、レスベラトロールは肺がんの人にも効果がるのかは不明瞭で、それは主として代謝され解消されるのが速いからで — 肺に到達する前に無くなってしまうからです。レスベラトロールの生体利用能が低い点に関して、Annals of the New York Academy of Sciencesに掲載された2011年のある研究の筆者がこう説明しています:

「人のレスベラトロール経口吸収率は約75%だが、これは主に経上皮浸透によるものであると考えられる。腸と肝臓での強力な新陳代謝により経口での生体利用能が1%よりはるかに低くなる。レスベラトロールの用量増加や反復投与してもこの点が大きく変わるとは見られない。

血漿と尿での代謝分析からはその主な代謝生成物がグルクロニドとレスベラトロールの硫酸塩であることが判明した。しかし、還元ジヒドロレスベラトロール共役は高度に分化した未知の生成物に加え、経口レスベラトロール用量の50%を占めるものと考えられる。

新陳代謝の主な場所は腸と肝臓(期待通り)であっても、大腸細菌による新陳代謝は従来考えられていたよりも重要であると考えられる。」

このことを念頭に置いて、UNIGE(ジュネーブ大学)薬学部の科学者であり現在の研究の主筆エイメリック・モンテイリエ氏がこう説明しています:「このため私たちにとって課題とは、難水溶性であるとはいえ、経鼻投与を可能にするためには大量なレスベラトロールが溶解可能であると考えられる調製剤を特定することだった。」

レスベラトロールに関連する健康上のメリット

レスベラトロールが以下のような健康へのメリットがあることを以前の複数の研究が示しています:

フリーラジカルと闘う

脳内の血流を改善し、脳炎を抑止する

細菌性、抗酸化性がある

うつ病から保護する可能性

老化防止効果

カロリー制限の効果に似た働き

学習と記憶を改善

神経保護効果

レスベラトロールを摂り易い物

レスベラトロールはすでに説明したように食品から微量を得ることはできますが、ミュスカディン・ブドウは — 特に皮と種に最高濃度を含んでいます。すでにご説明しましたが、ブルーベリーやラスベリーからも摂れます。

自然の果物には果糖が含まれるので、程々に食べ、健康な人でも一日に果糖25 g に抑えることに注意してください。がんや糖尿病等の慢性病と闘っている方はよくなるまでは一日の果糖摂取量をさらに15 gかそれ未満に制限するようにしましょう。

食品からレスベラトロールを治療効果のあるだけ摂ることはまず無理なので、自然食品由来レスベラトロールのサプリを検討されるとよいかもしれません。私の場合日常的にミュスカディン・ブドウの種エキスと皮エキスを主に含むサプリを飲んでいます。

そのサプリ一回分に50 mgのレスベラトロールが含まれますが、一杯約224gのワインを39杯飲んで得られるのと同量のレスベラトロールに相当します。レスベラトロールに対する耐性が体内にできるのを防止するため、摂り方を周期的にするとよいと思います — 例えば、平日に飲み、週末に休む等。

レスベラトロールの研究と肺がんの次は何?

経鼻投与法が確立した今、UNIGEのチームは レスベラトロールで予防処置を適用しうる人を選ぶために有用な潜在的バイオマーカーを特定する作業を行っています。

その研究の筆者らがこう説明しています:「この研究は[レスベラトロールの]経口での低生体利用能を克服できる効果的方法を提供し、今後の臨床研究で利用しうるかについて再評価を促したい。」

興味深いことに、その科学者らはレスベラトロールが噴霧器や電子タバコで利用できるような開発に成功すれば、今及び以前の喫煙者に潜在的に効能がありうるとしています。電子タバコベープには健康への害があるので、喫煙の安全な代替策として私はお勧めできません。この点を念頭に置いた上で言うと、その研究者らがこう説明しています:

「以前の喫煙者に対しては、喘息用のβ-2-交感神経模倣薬の投与に使用されるのと同じネブライザーを容易に考えうる。

[レスベラトロール] を含む電子タバコは薬理学的ながんの化学的予防活性のメリットを従来の煙草製品から電子タバコに切り替えるよう推進しつつ組み合わせることが可能であると考えられる。」

レスベラトロールの代替物質: プテロスチルベンがさらに優れると考えられる

レスベラトロールの他にも、プテロスチルベンというあまり知られていない抗炎症物質も注目に値します。この物質はブルーベリーに含まれる主なポリフェノール抗酸化物質です。レスベラトロールと同様、プテロスチルベンもスチルベンですが、はるかに生体利用能が高いです。

レスベラトロールの生体利用能は20~25%と考えられる一方、プテロスチルベンではこれが80%もあり、身体はこの物質をより効果的、効率的に利用できることを意味します。専門家のなかにはこれら2つの化合物は一緒に消費するとさらによく、相乗的に作用し、健康を増進し、病気の予防を助けると考える人もいます。テロスチルベンに関しては、2013年の抗酸化特性について検討したある研究の筆者らがこう説明しています:

「プテロスチルベンの抗酸化活性は抗発癌、神経病の調節、抗炎症、血管疾患の軽減、糖尿病の回復に効果があるものと考えられてきた。

プテロスチルベンには、神経や心臓血管の異常、代謝異常、血液系疾患を含む多くの人間の病気に多くの予防的、治療的特性があると考えられることを示す確固とした根拠がある。

レスベラトロールとプテロスチルベンを始める前にヘルスケアプロバイダーに相談してください

すでにご説明した効能以外にも、Evidence-based Complementary and Alternative Medicine誌(実証に基づく補完的・代替的医療をテーマにした専門誌)に掲載されたある研究が、プテロスチルベン日量250 mgでも血圧を下げるのに有用であると考えられることを示しています。さらに、実験用マウスに関する実験では不安を軽減することがわかっています。

レスベラトロールとプテロスチルベンについてのニュースは有望なようですが、その健康への効能についての潜在性が真にどの程度あるかについて妥当性を検証するためにさらなる研究が求められます。これらの物質のサプリメントを摂る前に、まずご利用中のヘルスケアプロバイダーにご相談するようお勧めします。