病気や有害化学物質にあふれる工場養殖鮭

木の板に乗った生の鮭

早分かり -

  • 2017年にスコットランドの養殖場で記録的な大量死が暴露されました — 養殖鮭25,000トン、推定1500万から2000万匹が死に、死亡率26.7%となっています
  • 死亡率は、2002年に5,000トン、2011年に10,000トンだったのでその後も増加の一途を辿っているようです
  • スコットランド議会の気候変動土壌改良委員会は養殖鮭を取り巻く由々しき多くの問題を特定した報告書を発行し、指摘された問題に取り組まない限りこの業界が「環境に修復不可能なダメージを与えうる」という結論を出しています
  • 養殖鮭はスコットランド最大の輸出食品産業で、年間輸出額$7億8900万とこの業界は2016年の輸出量163,000トンから2020年には200,000トンへ拡大しつつあります
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鮭は(エビに次ぐ)世界第二の人気があるシーフードで、年間一人当たり約900g+が消費されています。1 鮭の風味が大好きな人は多いですが、その人気の主な理由は健康への効能がよさそうだというイメージに関連しています。有益な動物性オメガ3脂肪が豊富な摂取源として鮭はとても健康的な食品でありえるものです。

しかし、同時に最悪の食品選択にもなりうるもので、その差は詳細に存在します。野生捕獲したアラスカ鮭は健康的な脂肪が豊富で汚染物質が少ない健康にいい鮭である一方、養殖鮭はその反対です。不幸なことに養殖鮭は世界の鮭消費量の75%を占めており、1990年から2015年までの間にその消費量は1,000 %増加しました。2

養魚場で発見されたダンプカー2台分の腐食した鮭

スコットランド・サーモン・ウォッチのドン・スタニフォード氏が撮影した上のビデオはスコットランドにある2つの鮭養殖場でダンプカーに腐った鮭が詰まれている様子を映しており、その養殖場は一つがマリーン・ハーベスト社の所有する施設であり、もう一つはスコットランドサーモン社の所有施設です。

「これこそ工場養殖の現実を映し出しています — これがバッテリー工場的鮭養殖の下腹です。感染病はこの業界に蔓延しており、養殖鮭ストックの約1/5が死につつあります。これらのタンクに入った魚は店頭に向かうのではなく、ひどい感染や病気で死につつある鮭のそばを泳いでいたものです」と、3あるニュースリリースの中でスタニフォード氏が述べておられます。「これらの魚は恐ろしい感染症や疾患のために死につつあります。」

ビデオに写っている鮭がなぜ死んだかは明らかにされていませんが、鮭養殖場は処分前に死んだ魚を安全な方法で保管することが義務付けられています。4 スコットランドでは毎年どれほどの養殖鮭が死んでいるのでしょうか?

2018年3月にスコットランド・サーモン・ウォッチがスコットランド議会に提出した報告書によると、記録的な量の死んだ鮭が2017年に暴露され — 養殖鮭25,000トン、推定1500万から2000万匹が死に、死亡率26.7%に匹敵するそうです。5

死亡率はその後も増加の一途を辿っているようで、2002年の5,000トンが2011年に10,000トンになっていました。死因に関しては2017年に病名の長いリストがスコットランドの鮭養殖場から報告されていましたが、その中には次のような項目が挙がっています:6

サケ科エラポックスウイルス

微胞子虫

エラ疾患の病理

エラの複雑な問題

グラム陰性短桿菌

拡散性エラ疾患

アメーバ性エラ疾患

膵臓病

真菌

心筋症症候群

出血性若サケ症候群

心臓骨格筋炎症(HSMI)

エンテリック・レッドマウス病

貧血

養殖鮭が「環境に修復不可能なダメージを与えうる」

養殖鮭はスコットランド最大の輸出食品産業で、年間輸出額$7億8900万と7、この業界は2016年の輸出量163,000トンから2020年には200,000トンへ拡大しつつあります。8同業界は養魚として水産養殖が雇用を生み出すと同時に持続可能な食糧源を供給するので有益であると主張していますが、保存派やさらに政府機関でさえこれと逆のことを指摘しています。

2018年にスコットランド議会の気候変動土壌改良委員会は養殖鮭を取り巻く由々しき多くの問題を特定した報告書を発行し、指摘された問題に取り組まない限りこの業界が「環境に修復不可能なダメージを与えうる」という結論を出しています9。以下はその報告書に含まれた最も深刻な問題の例です:10

フナムシ

フナムシは鮭の鱗に寄生する海洋性寄生虫で、その皮膚や血液を食べ、致死傷を負わせる場合があります。高密度で鮭を大量に養殖する養魚場はフナムシがたいへん発生しやすく、鮭養魚場にいるフナムシが野生の鮭に感染して母集団に損害を与えるリスクがあります。

「母集団レベルでのダメージがあるかについては最終的な根拠をスコットランドで特定するのは困難であるとはいえ、ノルウェーにおけるいくつもの研究が野生のサケ科の魚に及ぼすフナムシの負荷は気候変動の影響をすでに受けてきた野生母集団には追加的な負担になることを示している」とその報告書は説明しています。11

養殖鮭の餌や水に添加される薬剤はフナムシ増加を予防するのに有用かもしれませんが、問題を根絶させる解決策にはなっておらず、単に絆創膏を貼るだけのことです。

「これらの処置はほぼすべてが高価であり、完全に高価を示すものはなく、たいていの方策は反復する必要がある」とその報告書が説明しています。12 「また、フナムシの母集団も多くの既存の薬剤や治療薬に対して抵抗力をつけてきているようである。」

スコットランドサーモン社は同社で死んだ鮭の写真を公表させまいとしてきたほか、2016年にはフナムシその他の病気が原因で$130万を超す損失があったと主張しています。それに反し、2017年には当期利益$3800万と報告していました。13 鮭を生きたまま文字通り食うことができるので、この魚にとってフナムシは繁栄上の問題となっています。

スコットランドの動物福祉団体OneKindは、フナムシの問題やその他の繁栄上の懸念事項を管理できるまでは鮭養殖の拡大を止めるように要求しています。

キャンペーン担当者サラ・モイズさんがThe Ferretにこう述べています:「今や魚は痛みを感じる動物であること、痛感を持つことが周知の事実です。このためこうした被害は全くもって受け入れがたいだけではなく、この業界の定評は動物の世話の放棄という別の報告によってダメージを再度受けることになりました。」14

病気が野生鮭にも蔓延するおそれがある

スコットランド議会の報告書は養魚場は病原菌や寄生虫の増殖と拡散のために「有利な生息環境」となっていると指摘しています。水流が病原体を養殖魚から野生種の鮭へ拡散させます。

「一部の病気は直接感染や逃げた魚により養殖魚から野生魚へ、あるいは野生魚から養殖魚への感染として伝染していることを示す根拠が存在し、養魚場が増加し大規模になると、養魚場の生体セキュリティや病気予防の改善が生産量拡大より早く進まない限り、野生魚が感染するリスクが高まりうる」と研究者らは指摘しています。15

養魚場の廃棄物で埋まる海底、海洋生物への危害

陸上における集中家畜飼育経営体(CAFO)と同様に、養魚場は法外な量の廃棄物を生み出し、これが海底に沈み、水中酸素濃度を下げるだけではなく、海底に生きる生物(底生生物)を物理的にじりじりと死に追いやっています。

養魚場の下や近くにある海底の海洋生物系は大被害を受け、産業用サイトが放棄されれば回復は望めるとしても、完全に元通りに回復するまで2年以上を要します。さらに、長期的損害が発生しているかを明らかにするには養魚場のそばや保護生息域で海洋生物を監視してもじゅうぶんではありません。

養魚場が原因で栄養素の過剰供給、藻の異常発生につながる

アンモニアやリン酸を含む栄養素が増大することは鮭養殖場近辺で観測されており、このため生物界の均衡が崩れ、水質を悪化させ、藻の異常発生の原因になっています。

薬剤その他の化学物質が生態系に害悪を及ぼす

養殖鮭のフナムシや真菌感染、細菌感染の処置に使用されている薬剤その他農薬や抗生物質を含む化学物質は周辺の生態系のリスクにもなっています。

例えば、ブリティッシュコロンビア州は水産養殖会社Cermaq Canadaに230万リットルの農薬Paramove 50をフナムシ駆除のためにクレイオコットサウンドにある14個所の鮭養魚場で使用することを認可しました。

この農薬はアメリカイチョウガニ、エビ、ニシン等その他の海洋生物に対しても有毒であるだけではなく、鮭の免疫系を抑制することも判明しており、このため鮭がますますウィルスにやられやすくなっています。これに伴い、近辺の野生鮭が致死的病気にさらに暴露されることになります。

「生産増加のためさらに既存のまたは新規開発の薬品を投入せざるを得ないようである」と、その報告書は報告しています。「これらの化学品を入江規模で底生性や外洋性生態系の構成要素に対して長期使用することによる低レベルの影響を適切に予測することは現在できない。」16

脱出した養殖鮭が野生種と交配する可能性

スコットランドだけで146,000匹の養殖鮭が養殖場から海へ逃げていると推計されており、この数値は過小評価されている可能性が高いです。ノルウェーでは養殖鮭の遺伝子が野生種と交配したことは確認済みです。17

アザラシ等の捕食者に及ぶ危険

多くの海洋哺乳類や鳥にとって鮭養殖場は生贄の魅力的な摂取源です。工業的養魚場によるほとんど知られていない被害者はアザラシであり、イギリスのアザラシ保護法に従い「必要なときには」養魚場や漁師が射殺することが法律で認められています。18

アザラシ保護行動団体(SPAG)のキャンペーン理事長アンディー・オッタウェイ氏19によると、過去6年間にスコットランドだけでも1,600頭のアザラシが主にMarine Harvest ScotlandやScottish Sea Farms社などの工業的養魚事業者によって射殺されました。

養魚場の一部は音響装置を使う等致命的な手段を使わずにアザラシを脅かして追い払い、籠から死んだ魚を除去して動物を誘い込まないようにするための行動に出ました。それでもハイイロアザラシ群は全世界の個体数が400,000頭まで減少しており、そのうち1/4がイギリス領海に生息しています。

養殖魚は不健康な食品

養殖鮭には質の悪い脂肪酸が含まれているだけではなく、通常は野生捕獲した魚よりはるかに高濃度の汚染物質が含まれています。環境作業グループ(EWG)が米国の食料品店から買った養殖鮭を試験したところ、養殖鮭には平均して以下のような内容の汚染物質が含まれていました:20

  • 野生鮭より16倍多いPCB
  • 牛肉の4倍のPCB
  • 他の海産物の3.4倍のPCB

さらに、野生アトランティックサーモンの切り身半分には約3,996 mgのオメガ3、341 mgのオメガ6が含まれている21一方、等量の養殖アトランティックサーモンには驚くなかれ1,944 mgものオメガ6が含まれています。22

米国の平均的食事は加工食品が原因ですでにオメガ6に偏り過ぎているのに加えて養殖鮭では、この不健康なアンバランスが是正されるどころかさらにひどくなります。

この問題の一部は養殖鮭に与えられる魚の餌にはフィッシュミールやトウモロコシのグルテンミールから大豆ミールや羽毛粉に及ぶまでありとあらゆる物が含まれていることです。23 商用魚の餌の生産に使われるフィッシュミールには魚から検出された毒素が蓄積されているだけではなく、さらに持続可能性を脅かす問題を突きつけます。

野生捕獲した魚の約25% — 海産物約2000万トンに及ぶ — が養殖鮭の餌であるフィッシュミールの生産に投入され、その結果24野生の魚の備蓄は大きく減少してきています。

崩壊する養殖魚市場

環境や人間の健康に潜在的に大被害をもたらしうる養殖魚に関しては指摘されてきているようです。

Nasdaqの報告では主要な重量等級品が減少しているためノルウェー産養殖鮭の価格は下落の一途だそうです。2018年11月末に1kg当たりの平均価格は$5.80でしたが、対先月比では10%以上の下落、12週間前とは8%の下落となっています。25

健康で環境と整合的な鮭をお求めなら、アラスカ産ソックアイは養殖禁止されているので「アラスカ 鮭」や「紅鮭」を探すとよいです。「アトランティックサーモン」というラベルがあるアトランティックサーモンは典型的に養殖魚です。

お値段が重要な方は(野生鮭は養殖魚より高価)、「アラスカ 鮭」ラベルの鮭缶は鮭の切り身に代わるあまり高価ではない代替品になりうるでしょうが、お求めの健康への効能や風味はまだあるようです。