タンパク質を摂り過ぎると老化やがんにつながる仕組みと理由

タンパク質の摂り過ぎ

早分かり -

  • 長生きしたいなら、健康的な脂肪を多く、正味炭水化物を少なく、高品質のタンパク質を適量食べることです。タンパク質は体脂肪抜きの正味体質量1 kg当たり1 g前後に抑えるべき
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Dr. Mercolaより

老化防止の専門家ロン・ ローズデール医師(M.D)はタンパク質を食べすぎる危険 — について警告を発してきた最初の人々の1人であり、この見方は長年多くの批判を受けてきましたが、今やますます多くの研究からこの見方が正しいことがわかってきました。

同氏は1995年に私にインスリンの重要性について把握するのを助けくれ、近年はタンパク質とmTORの重要性について教えていただきました。

その本質的な点として、体が脂肪を燃やすのを助ける食品は健康にメリットがある可能性がかなり高く、砂糖を燃やす食品はそうではなさそうだということです。その理由は砂糖が「汚い」燃料であり、脂肪やケトンは脂肪をこれよりきれいに燃やして酸化性損傷をほぼ起こさないからです。

ホルモンとホルモン間のシグナリングがここで基幹的機能を果たしており、これらのホルモンは何を食べるかによって決まります。ローズデール氏によると「今日は明日食べる必要がある物が何かを示すホルモンをコントロールする物を食べるべき」なのです。

端的に言うとこの仮説は「カロリーを摂る、カロリーを出す」の独断を完全に無視し去り、身体が糖分ではなく脂肪を燃やすようにするホルモンや成長因子を支持する食品にフォーカスしています。

タンパク質の制限 — 最適な健康のための重要な栄養戦略

低炭水化物食生活は今から40年以上前に初めて登場しました。具体的には低炭水化物食生活で減量しやすかったのです。

当時、ほとんどの人は炭水化物の代わりに多くのタンパク質を食べるように推奨していましたが、こうした低炭水化物高タンパク質の食事(アトキン食等)は減量には確かにうまく機能しました。

大部分の専門家は「低脂肪の神話」を支持し、脂肪が肥満や心臓病を促すと思われていたので、脂肪はほとんど全面的に回避されました。しかしローズデール氏は糖尿病患者を治療する必要があり、このため高脂肪食生活をその目的のために推進した僅かな人々の1人でした。

過剰なタンパク質やアミノ酸による主な問題の一つは再生ではなく成長を刺激するmTOR(エムトア)を刺激するからです。脂肪によるカロリーはmTOR、レプチン、インスリンを刺激しませんでした。これらは本質的に新陳代謝的にフリーなカロリーだったからです。

ローズデール氏が発見した事実は健康的な脂肪が多い食事は糖尿病や心臓病の患者にとてもよい効果があることでした。その後タンパク質を制限することが健康特に老化に影響するもう一つの重要な要因であることも発見しました。

パレオ(原始的食事)が長生きを促さない理由

Dr. ローズデールはパレオ食は生殖がうまくいくように最適化できる食事を模倣するには有用かもしれないが、長生きと生殖機能は両立しないので、長生きには必ずしも役立たないという意見です。

進化論的観点から言うと、栄養素は生物によって a) 成長、複製、生殖またはb) メンテナンスと修復により長生きするのを助けるかのどちらかのために配分される必要がありました。

ルールとして自然は生物が複製し生殖できるだけ十分に生きさせますが、生殖後も生き続けることにはあまり注意を向けないので、私たちは年を取り、死ぬのです。ローズデール氏によると「私たちに必要なことはこの科学を生殖後に応用すること」だそうです。

長生きは修復メカニズムを強化することに掛かっている

細胞の損傷と修復は常時競合しています。損傷のほうが身体の修復と再生能力より大きい場合、劣化します。「損傷が起きるやいなや可能な限り早急に修復できれば、長生きできるはずです」と同氏は言います。

このメンテナンスを維持できなくなる理由は、修復メカニズムも時間が経つにつれて損傷を受けるからです。そこで、長生きできる確率は、損傷が起きるのを食い止められない以上、修復メカニズムを強化することです。呼吸しているだけでも酸化と損傷が発生します。

幸いにも、ヒトを含む全ての生物は細胞が栄養素の欠損(飢餓)を生き抜くことができるメカニズムを有しています。しかしこれはこの問題への回答の一部にすぎません。

食品はa)長生きを助ける修復、または、b)生殖のいずれかに影響し、身体には生来的に栄養素の使われ方を決めるのを助ける「栄養素センサー」が具備されています。

インスリン、レプチン、インスリン様成長因子(IGF)は新陳代謝、成長、細胞の分化、細胞の生存を調節する栄養素センサーホルモンの例です。ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)こそこれら全ての栄養素センサーを統括しているものです。

ローズデール氏によるとmTORは体内で最も重要な信号伝達経路です。これは細菌を含むほぼ全ての生物にある古代からの経路です。

mTORが長寿のために非常に重要な理由

mTOR経路は体内の全ての利用可能な栄養素センサーの指揮者的機能を果たしており、細胞が今複製すべきか生存し続けて栄養素が今後じゅうぶんにあるようになった最適な時期に複製するかのいずれかを決定します。

後者は長寿を可能にするメカニズムの一部を成し、カロリー制限が生物の長寿にはとても効果的であると考えられます。ある実験でマウスの寿命はカロリー制限食生活によってIGF受容体を阻害したら二年から四年まで延びました。

ローズデール氏の講演中に引用された別の研究は、成長ホルモンを阻害する薬の化合物を使用することにより、老化の兆候を逆転させることができ、この点は若返りのために成長ホルモンを摂る高齢者もいるので、すぐにはわかりにくいように思えるでしょう。

ローズデール氏がこう説明しています:「成長、生殖、長寿の間にはどうやら二分法があるようです」また、インスリンとIGFの間に相互作用が存在することも指摘していらっしゃいます。インスリンレベルが高いとIGF受容体(成長ホルモンの一種)を刺激することによって部分的に健康を害します。

インスリンレベルが高いと当然のことながらインスリン抵抗性につながり、新陳代謝に悪影響を及ぼします。しかし成長ホルモンを促進することにより、成長と長寿を同時に促すことができないので、インスリンが多いと効果的に寿命が縮みます。これは二者択一の問題です。

カロリー制限、寿命、甲状腺機能

ちなみに、ここではホルモンについて取り上げたので、2005年のある研究が「カロリー制限によるよくある一貫した効果には、体脂肪特に内臓脂肪の減少、血中インスリンとIGF-1濃度の減少、インスリン感度の増加、体温低下、脂肪抜きの正味体質量低下、甲状腺ホルモン低下、酸化ストレス低下が挙げられます。」

ローズデール氏によるとこの事実は、高脂肪低炭水化物のケトン主体食にすれば甲状腺ホルモンが低下し、甲状腺の病気について懸念が起きる可能性があるので重要です。(甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度が正常である限り)こうした懸念は妥当ではありません。ローズデール氏によると、この状態はむしろより健康です。

IGF濃度の決定要因としてのタンパク質摂取

寿命に関する限りIGFは主役です。IGFを阻害することにより長生きにつながり、がんのリスクが減ります(思い出してください、がんは悪性細胞の拡散が暴走した現象です。拡散から修復とメンテナンスへエネルギーの向かう方向を変えるとがんは増殖しなくなります)。

ではどんな栄養素がIGF濃度を決定するのでしょうか? タンパク質です。タンパク質の摂取が多いとIGFが増加し、低いと減少します。

ローズデール氏のご説明の通り、低炭水化物/高タンパク質食と低炭水化物/高脂肪食の間には大きな違いがあります。

前者はIGFを上げますが、後者はこうなりません。低炭水化物革命の初期、高タンパク質と高脂肪は区別されておらず、脂肪があまりにも悪者扱いされたので、たいていの人は炭水化物の代わりにタンパク質を食べるようになりました。これは減量には効果がありましたが、悪影響も明らかにありました。

それ以来研究が進められ、低タンパク質食だとハエの寿命が延びることが発見され、その根本原因とはミトコンドリア機能の改善とmTOR阻害です。その研究の筆者らによると、「ハエの長寿化を担う分子メカニズムは人間の老化や肥満、糖尿病、がん等の病気に関して重要な意味を持つ。」

ラパマイシン、mTOR、がんのリスク

mTOR阻害因子であるラパマイシンはがんも阻害する抗真菌物質です。興味深いことに、この物質は免疫抑制剤でもあり、医療においては器官の拒絶を防止するため臓器移植の間に免疫機能を抑制するために利用されています。

研究によると腎臓移植患者は — 免疫機能低下にも拘らず —がん発生率が下がり、この効果はラパマイシンの保護的効果によるものと考えられています。

強い免疫機能はがんを無くすための前提なので、直感的にわかりにくいように見えるので、これらの発見された事実は何か他の、かなり強力な事が作用していることを示しています。

その「何か」こそmTORです。mTORを阻害することにより、ラパマイシンは免疫機能が低下しているときでもがんを強力に阻止します。その他にmTORに影響するものは何でしょうか?

アミノ酸とグルコースは直接的にTORに影響し、このため炭水化物とタンパク質が健康や老化に悪影響するのです。インスリンやその他の成長因子は全てTORを増強するので、インスリンと IGF を低く維持することが極めて重要になります。

TORが成長と修復を調節することを思い出してください。TORが増強されるか減衰するかに応じて成長が促進されるかメンテナンスと修復が促進されるかのいずれかに至ります。TORを抑圧すると、メンテナンスと修復が強化され、このため長寿につながります。

エクササイズと絶食がメンテナンスと修復の遺伝子発現を促す

繰り返すと、mTORは栄養素の可用性を検出し、エネルギーをそれに応じて配分します。従って食生活こそ寿命に大きな影響を及ぼします。

グルコースとアミノ酸は複製と生殖のために必要な栄養素であり、燃料です。グルコースとアミノ酸、インスリンさらにIGF等の成長因子を低く維持すると、mTORが抑圧されるので、メンテナンスと修復の遺伝子発現が促されます。

TORはオートファジー(自己貪食)において重要な役割も演じており、このプロセスは身体が毒素を含む残骸を除去し、損傷した細胞の構成要素を再利用する過程です。これに似たプロセスがミトファジーであり、ここでは損傷したミトコンドリアが浄化され、新しい健康なミトコンドリアに置換されて、このプロセスもmTORが主に調節しています。

身体のオートファジープロセスを増強することによって炎症を抑え、老化を遅くし、生物的機能を最適化します。オートファジーはストレスに応答して起きます。エクササイズはオートファジーを促す一つの方法です。絶食という方法もあります。

過剰なタンパク質がオートファジーを停止しmTORを刺激することでがんリスクを高める

mTORの刺激要因の中でもアミノ酸は最も強力な刺激剤です。従って、タンパク質を食べすぎることもオートファジーが速く止まるので、身体は残骸や損傷した細胞を効果的に解消できなくなります。

ローズデール氏によるとグルコースとインスリンレベルを低く維持ために正しいことを全て行ったとしても、mTORはタンパク質の食べ過ぎで上昇したままとなります。

同氏はまた、ほぼすべてのがんはmTORの活性化と関連しており、mTORの活性化を必ず防止すべきであると説明していす。このため私は毎日タンパク質を正味体質量に応じて40~70 gまでに抑えるようにお勧めします。

その公式として言えば、体脂肪を除いた体重1 kg当たりタンパク質1 gに制限することを検討してください。自分の正味体質量を求めるには100から体脂肪のパーセントを控除します。例えば、体脂肪率が30%の場合、70%が体脂肪を除いた体重です。このパーセント(ここでは0.7)に現在の体重を掛け合わせると体脂肪を除いた体重(キロかポンド)が求まります。

タンパク質の摂取源

赤肉や豚肉、鶏肉、魚介類約28 g当たり平均6~9 gのタンパク質に相当します。

たいていの人にとって最適な量は肉や魚介類を一日に70 g前後(ステーキなら約250~ 300 gに相当)に抑えると、これに含まれるタンパク質が一日に18~27 gに相当します。

玉子一個当たり平均して6~8 gのタンパク質を含んでいます。玉子2個で作ったオムレツからタンパク質12~16 gが得られます。

チーズをこれに加えるならタンパク質も計算に含める必要があります(チーズの成分表示に注意)。

種子類やナッツ類1/4カップにタンパク質が4~8 gを含みます。

煮豆1/2カップにはタンパク質が平均約7~8 gが含まれます。

調理した穀類1カップに平均 5~7 gのタンパク質が含まれます。

たいていの野菜約28 gにはタンパク質が1~2 g含まれます。

タンパク質制限は正味炭水化物の制限よりはるかに重要でしょうか?

mTORはグルコースとインスリンレベルが低くても高い場合があり、mTORはエネルギー配分、成長、修復を調節するので、ローズデール氏は今ではタンパク質制限のほうが正味炭水化物(総炭水化物マイナス繊維質)の制限よりはるかに重要であると考えておられます。この理論はすでに実証されました。

しかし高脂肪食がテストされなかった点は注目に値します。そのテストでは炭水化物対タンパク質しか検討しておらず、これらから選択するとすればタンパク質制限のほうが炭水化物制限より重要です。しかし、繊維質ではない炭水化物を多く食べることには多くのデメリットがあるので、これでは最適な解決策にはなりません。

最適な代替策として、正味炭水化物の代わりに高品質の健康的な脂肪を食べつつ、タンパク質を(上記の通り)身体が必要な最小限に制限するとよいでしょう。