マイナスなことがない水だけの断食と同じ全効能が得られる絶食模倣型食事

絶食型食生活

早分かり -

  • 絶食は効果的な老化防止策で、身体が細胞を保護し、再生、若返らせる能力を発揮させます
  • 絶食模倣型食事で炎症や炎症による病気が減り、がんはほぼ50%削減されます。認知力と免疫機能も改善されます
  • 全体的に絶食模倣型食事で糖尿病、心臓血管病、がんのリスク要因が減り、老化マーカーが改善します
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Dr. Mercolaより

私たちはほとんど誰でも健康で長生きしたいと思っています。しかし細胞の保護、再生、若返りを促す身体の能力を発揮させる最適な方法は何でしょうか?

南カリフォルニア大学(USC)長寿研究所の研究員であり所長のヴァルター・ロンゴPh.D.が20年以上このテーマについて研究してきたのでこの質問にお答えいただきます。

同氏の発見したことは近年発刊された本「Longevity Diet: Discover New Science Behind Stem Cell Activation and Regeneration to Slow Aging, Fight Disease, and Optimize Weight」(長寿の食生活:老化遅延、闘病、体重最適化のための幹細胞活性化と再生の背景にある新科学)で詳しく説明されています。この著作はまた、同氏お勧めの項目を裏付ける研究の枠組みも紹介しています。

ロンゴは職業人生の初期や博士課程研究中にこの分野で当時パイオニアだったDr.ロイ・ウォルフォードとカロリー制限について研究しました。カロリー制限は食べる食品の種類を問わず、毎日カロリー摂取量を制限するものでした。

一般的ルールとして、普通のカロリーより少なくとも30%少なく摂り、体格指数(BMI)が約19になるまで継続します。言うまでもなくこの指数では極端に過ぎます。これでは、効能があっても、二三の問題も実際に発生します。結局、彼らは間歇的絶食の一形態で絶食模倣型食事と名付けた食生活が長期的カロリー制限の欠点なく持続的効能があることを発見しました。

砂糖こそ強力な老化促進剤

酵母に対する飢餓の影響を研究したロンゴは砂糖が老化を加速するRasとPKA(プロテインキナーゼ)として知られる2つの遺伝子を活性化することにより部分的に老化と早死にを加速することを発見しました。

酵母に対するこれらの初期発見はぜん虫、ハエ、ネズミ等他の動物やラロン症候群(成長ホルモン受容体が欠如している稀な遺伝子異常)のエクアドルにいる一群の人々にも該当することを実証した研究があります。この症候群の人々は身長約1.2m以上に成長できません。

しかし興味深いことにこの遺伝子異常が糖尿病やがん等の慢性病からも保護するようでもあるのです — しかも食生活は最適とは言い難いものであってもそうなのです。ロンゴによると今や人の成長ホルモンと成長ホルモン受容体がTORとMPK(マイトジェン活性化プロテイン キナーゼ)シグナル伝達経路をともに調節しているので、その発見された事実が他のほとんどの人に当てはまると思われる根拠があります。

インスリンのほかにも必要な成長ホルモンでも、あまり多すぎるとよくない

筋力トレーニングは通常は健康を最適化するための手段として勧められていますが、この種のトレーニングの効果の一つは成長ホルモンの増加です。では、成長ホルモンの必要性と健康への効能と同時に寿命を短くする影響をいかに調節できるでしょうか? ロンゴがこう説明しています:

「インスリンがわかりやすい類例です。インスリンは必要ですが、これが常時過多だとインスリン抵抗性や糖尿病につながります。同様に、成長ホルモンもそれほど多くなく、IGF-1とインスリンという下流部分を見るわけです。成長ホルモンの活性度は概して言えばIGF-1の濃度によってだいたい把握でき、ラロン病の人の場合成長ホルモンの活性が低く、IGF-1が極めて少ないです。

低タンパク質な食事をすると成長ホルモンの生産が減りますが、一方では成長ホルモン受容体の活性が確かに高く、IGF-1は低いのです。従って、これらは相互補完的に作用しているのが常ですが、場合によってはばらばらになることがあります。つまり成長ホルモンはTOR(ラパマイシン標的タンパク質)に直接、またインスリンに作用し、おそらくほぼ考えうる全ての経路において作用しているようです。つまり、これらは確かに同じ物ではありませんが、IGF-1を計測するのははるかに簡単です。」

タンパク質制限のメリット

私と同じようにロンゴもタンパク質の消費を大きく減らすことを勧めています。私はほとんどのアメリカ人がタンパク質を食べすぎていて健康が最適ではないことをよく警鐘を鳴らしてきました。ロンゴの推奨はタンパク質を体重1ポンド(約0.454kg)当たりの摂取量0.31~0.36gに制限することです。

つまりたいていの人にとって食べるタンパク質の量をこれまでの摂取量より約2/3だけ減らすことを意味します。体重が150ポンド(67kg前後)の人なら一日に食べるタンパク質の量が50gしか必要ないことになります。

私がこれまでよく言及したことがあるように、このことがお勧めな理由はタンパク質が老化と高齢による疾患に関わるmTOR(エムトア)シグナル伝達経路と相互作用する態様と関連しています。タンパク質は成長ホルモン、IGF-1(インスリン様成長因子)のシグナル伝達経路を制御しており、後者がさらにTORのシグナル伝達とPKAのシグナル伝達も制御しています。

TOR経路が — 低タンパク質食やメトフォルミン等の薬、サプリメントのバーバリンにより — オフになると老化の猛威から保護されることになります。近年ではTORとPKAのシグナル伝達経路をオフにすると再生を盛んにすることもすでにわかっています。

つまり、タンパク質をたくさん、概してたくさん食物を食べると同時に成長ホルモンとTORが多いと、再生能力が保留されてしまいます。

これらの阻害因子を除去すると、幹細胞がオンになり、このため再度食事を与える時期においいては身体が大きく再生と若返りの段階を経ることになります。このことは部分的に、間歇的絶食や絶食模倣的な食事が慢性的なカロリー制限よりはるかに優れる理由です。

「魔法」が実際に起きるのは飢餓の期間を経た後に又食べ始めた段階です。

カロリーをカットしているだけで再度食べ直さないと、身体が回復することができなくなります。従って、空腹によりオートファジーによる浄化プロセスが起動され、幹細胞を活性化すると同時に、再度食べ始めると再建されるので、最適な健康にするには両方のことを行う必要があります。

ロンゴによると、絶食模倣型食事こそこの理由を基に真にがんの解決策であって、これは「異常な細胞を選択的に除去することができることを明らかに示したのです。実際に多くの損傷した細胞がなくなる」そうです。

タンパク質を食べる量を増やすとメリットがあると考えられるタイミングと理由

しかし核心は詳細な説明の中に存在しており、身体に断続的にタンパク質を追加して供給する(体重0.454kg当たり0.3g強)ことで同化的刺激を与えると、筋肉の質量を維持でき、最適な筋力トレーニングを行うことができるようになります。

一般的なガイドラインとして以上の理由から私がお勧めするのは、筋力トレーニングをする日にはタンパク質の摂取量を約25%増量することです。しかし筋力トレーニングをしない日に体重約0.454kg当たり0.3g強より多く摂っても特に筋肉を着ける効果はないと思われます。

高齢者や虚弱な方の場合は筋肉の委縮(加齢による筋肉の損失)を防止するためにはタンパク質を多く摂る必要があるでしょう。但し、がぜん大量に摂るわけではありません。ロンゴの推奨は、たいていの人において正味体質量が減り始める65歳前後からはタンパク質を10~20%多めに摂ることです。

「私の考えでは高齢者や虚弱な方が正味体質量を維持できる限り、心配する必要はありません。しかし体質量が減り始めたら筋トレとタンパク質を両方とも少々増やすことは欠かせません。」

絶食 — 長寿のために強力な新陳代謝的措置

私は当初は躊躇していましたが、水だけの断食こそ最も効果的な新陳代謝的介入措置であると信じています。これに匹敵するものは本当に無くて、その理由は細胞が保護された「老化防止モード」に切り替わるからです。

絶食はオートファジー(自己貪食)を促進し、幹細胞が活性化することにより細胞の構成要素を新たに生成された機能する構成要素に置き換えます。私の場合今は毎月5日間は水だけの断食をしており、多くの人にお勧めしています。但し、ご自身が適切に準備していただく限りとしています。

水だけの断食が私にとってし易くなった鍵を握る手順が少なくとも一カ月を掛けて20時間の間歇的絶食という習慣を確立することでした。

投薬中の方は担当医に相談して安全性を確実にする必要があります。一部の薬は食事を摂ることが実際前提になっているし、身体の化学的特性が正常化したとき有毒な場合があるからです。降圧剤や低血糖症薬剤を服用中の方は特に過剰投与の危険があります。

断食中でもサプリメントは継続するほうがよいです。マグネシウムを飲んでいる方の場合、断食中に下痢になる可能性があることを念頭に置いてください。高品質の塩も消費する必要があります。特定の健康の異常があれば絶食を安全に行うために医療的なより厳密な監督も必要です。

一方、ロンゴ氏は水のみの絶食や20時間の間歇的絶食を毎日行うことにはあまり賛同しておらず、理由としては、間歇的絶食が13時間を超すと胆石のリスクが約5%増すほか、その他の予想していなかったような副作用のリスクも増えることもありえるからであるとしています。さらに、20時間の毎日の間歇的絶食は100歳以上の人には使用すべきではないとも注意されています。

水だけの断食とも絶食模倣型食事の対比

ロンゴの絶食模倣型食事は水のみの断食ではありません。ロンゴの絶食模倣型食事の場合、カロリーカット式の絶食とは異なり、毎月5日の間、1日のカロリー摂取量を800~1,100キロカロリーに制限します。このアプローチは小食ルールを守り続ける率を大幅に高めます。多くの人は水だけの5日絶食にはついていけそうもないからです。低カロリー食もメリットを維持しつつ副作用の可能性が低いです。

「およそ10年前にがん患者から研究を始めました。(米国の)国立がん研究所が絶食模倣型食事法の研究開発に出資した理由は単に継続できるかどうかの課題があるだけではなく、安全性の問題もあるからでした。

まず、水のみの絶食または極めて低カロリーの絶食はクリニックでしか実施されていなかったのです。今では一般人も行えるでしょうが、一つの理由のためにクリニックで行っています。

この食事法では新陳代謝に劇的変化が起き、多くの人にとって危険になりえます。副作用として高血圧や低血糖症が考えられます。絶食模倣型食事の目的は人々が行い易くすることであったばかりではなく、問題が生じるほど極端な状態にまで進まないように確実にすることでしたが、この問題が発生することは臨床研究で確認されました。

水だけの断食をしてはならず、絶食模倣型食事をすべき人には極度に痩せた(体格指数が低すぎる)または拒食症の妊婦、70歳以上(であって例外的に健康でない限り)、虚弱体質の人、肝臓や腎臓の異常がある人が含まれます。

慢性病がある方の場合、担当医に相談し、体の状態を密接に監視してもらう必要があります。

老化防止戦略としての絶食模倣型食事

ロンゴはその本の中で筋肉質量をより多く維持できたことと筋肉萎縮が減少したことを示した絶食模倣型食事にトレッドミルでの運動を組み合わせた動物実験を紹介しておられます。興味深いことに、いずれの戦略も単独では効果がなかったのです。

この実験ではマウスに低カロリー食を毎月間を置いて4日間ずつ2回与えました。この間は普通に食べさせました。

その結果、内臓脂肪が無くなり、筋肉質量は減りませんでした。ロンゴ:「絶食模倣型食事はこの事実からしてほとんどの他の食事法で常時脂肪と水を与え減量中に筋肉が減るものより抜群の効果があります。「ロンゴの研究は絶食模倣型食事が炎症や皮膚炎などの炎症性疾患も削減することを示しています。

がんはほぼ50%減りました。重要な点としては、がんも大幅に延期され、多くの腫瘍は悪性ではなく良性でもありました。認知力も高まりました。絶食模倣型食事を毎月2回与えたマウスは普通の給餌を受けたマウスより認知力がはるかに優っていました。

もう一つ改善が見られたのは免疫系で、若返ったのです。全体的に糖尿病, 心臓血管病やがんのリスク要因が削減され、老化マーカーが改善されていました。

ロンゴ:「従って、予想がつくように、この食事法は実際に複数の系統を追及しており、複数の系統での再生や若返りを促し、成果が改善することになりました。」