Dr. Mercolaより
γ-アミノ酪酸 (GABA)という一種のアミノ酸は中枢神経系(CNS)の中の主な阻害性神経伝達物質です。すなわち身体はGABAを利用して脳内の神経活動を抑制し、これが落ち着きやリラックスした気持ちにつながります。
アルプラゾラム(Xanax)やジアゼパム(Valium)等多くの抗不安薬や睡眠薬は脳内にGABAを増加させることによって効きます。ヴァレリアン等一部の自然な鎮静効果があるハーブ類もGABAを増加させることによって効きます。
毎晩何百万もの人が寝付くまで苦労しており、10%の人は慢性不眠症になっています。この症状は寝付きにくさや睡眠を維持するのが困難であったり、朝目が覚めるのが早すぎることを含みます。
GABAの最適濃度を維持することがじゅうぶん休める睡眠や不眠症予防のために必須であると考えられています。
健全な夜の睡眠とは(必ずしも順序はこの通りでない場合もあるが)次のような段階を経ます:
この第三と第四段階で脳波が遅くなる睡眠(深い睡眠時期)が想像以上に重要なのです。低周波睡眠はコルチゾル(ストレスホルモン)濃度と炎症度が低くなる睡眠段階です。
深い眠りは心理的な長期記憶保持機能と同じように、以前接触した病原体の免疫系による記憶力を高めるという特殊な役割を持っています。
すなわち、深い睡眠ができてよく休めると、免疫系は抗原と次回接触したときはるかに迅速にまた効果的に応答することができます。GABA受容体(具体的にはGABA-A受容体)が活性化すると睡眠に有利になります。
その反対にGABAが少ないと深い睡眠が妨害され、目が覚めやすくなったりしばしば一睡もできない夜があったりして、この不可欠の低い波長の睡眠が欠如してしまうのです。
不眠症に苦しむ人の理由の一つはおそらくGABA濃度が低いことです。Sleep誌に掲載された研究は原発性不眠症の人はGABAの濃度が対照群よりほぼ30%少ないことが発見されました。
GABAが低い人は寝付いた後も目が覚めやすい傾向もありました。その研究者らによると、「本研究は正常な睡眠を取れる対照群とPI [原発性不眠症]の人の脳内の神経化学物質の相違点がわかった最初の根拠を示している。」
他の研究でもGABAサプリメントの使用から良好な結果が出ています。ある研究でGABAと、身体がアミノ酸トリプトファンから生産される5-HTPを含む調製アミノ酸が寝付くまでの時間を縮め、睡眠時間を伸ばし、睡眠の質をよくすることが発見されました。
2016年に公表された別の研究も、GABAと5-HTPを組み合わせると寝つきの速さ、睡眠時間、睡眠の質を含む睡眠を促す効能を発見しました。
5-HTPという化学物質は脳内と中枢神経系においては神経伝達物質セロトニンの生産を促進することによって作用し、気分をよくし、睡眠を促すようです。この物質はGABAと相乗効果があるようです。
GABAのサプリメントには工業用溶剤ピロリディノンその他化学物質から作られる合成品と伝統的韓国のキムチ発酵に使用される善玉菌ラクトバチルス‐ヒルガルディーによる発酵から作る自然な形態のものと異なるタイプがあります。
近年の研究は自然のGABAには異なる睡眠促進効果があることを実証しました。研究者らは参加者が100mgの自然GABAあるいは偽薬を服用後に脳波記録法(EEG)を使用して脳波を計測しました。
GABAを服用した人は寝付きが速く、質のよい長時間の睡眠ができました。この人たちは朝に起床時も対照群よりエネルギッシュな気持ちがしていました。
2015年のある研究も発酵生産によるGABAは寝付きを速くし、ラフマ(Apocynum venetum)の葉エキス(AVLE)と合わせて服用すると、非REM期睡眠を5%長くすることを発見しました。
食品にはGABAは含まれていませんが、多くの食品にグルタミン酸塩/グルタミン酸が含まれています。身体はグルタミン酸塩からGABAを作るので、この物質が豊富な食品を食べるとGABA濃度を最適化するのを助けると考えられます。
グルタミン酸塩/グルタミン酸が自然に豊富な食品には、草で育てたタンパク質が多い肉、放し飼いで草等食べさせた玉子や鶏肉、生の草を食べさせた牛のチーズ、野生捕獲した魚、さらに海藻類、熟したトマト、きのこ類が挙げられます。
さらに、発酵野菜やケフィール等の食品はGABA濃度に著しく作用する善玉菌が豊富です。
例えば、プロバイオティックのラクトバチルス・ラムノサスは、脳のある部位でのGABA(生理学的、心理学的作用の制御に深く関わっている抑制性神経伝達物質)濃度に影響を及ぼし、ストレスに誘発されて発生するコルチコステロンというホルモンを減少させ、不安や鬱に関連する行動を抑制する効果があることがわかりました。
ビタミンB6が不足するとGABA合成が弱まるので、食事は野生捕獲したアラスカシャケや有機の草で育てた牛の肉や放し飼いで自然に育てた鶏、ひよこ豆等ビタミンB6が豊富な食品を含むようにご注意ください。
緑茶にはLテアニンが含まれるので緑茶を飲むのもよく、このアミノ酸は、血液脳関門を通過し、精神特性を有します。
テアニンは、GABA濃度(セロトニン、ドーパミン、アルファ波の活性とともに)を増加させ、精神的、肉体的ストレスを軽減し、リラックス感を生みます。ウーロン茶もGABAを増やすことで知られています。
食品以外にも、エクササイズは欠かせません。日常のエクササイズは不眠症の最もよい対策であり、その理由の一つはGABAが増えるからです。ある研究でエクササイズをさせた動物の脳がGABAを分泌する新たなニューロンを含んでいました。
睡眠をもっと必要としている方々はGABAのみの対策をとればよいです。概していうと、私の詳説している33の健康的睡眠のガイドラインをお読みなると適正な睡眠の衛生を確保できますが、手始めに次のような習慣の変化からお始めになるとよろしいかもしれません。
以下のことを試された後でもまだ寝つきが悪い場合は、自然のGABA(に加えメラトニンか5-HTP)を検討するとよろしいかと思います。
夕方以降、特に、就寝前の少なくとも1時間前にはテレビの視聴、パソコン等の使用を止める — これらの機器は青い光を放ち、このため脳がまだ昼間であると勘違いします。
普通なら、脳は夜9時~10時にメラトニンを分泌し始めるので、これらの装置から出る光がこのプロセスを阻害します。American Medical Association (AMA、全米医療協会)でさえ今や次のように説明しています:
「夜間の電光が人の概日リズムを狂わせ、いかに概日リズム阻害が人の健康に直接悪影響を及ぼし、細胞周期調節、DNA損傷応答、新陳代謝等生理学的側面に影響する基礎研究のおかげで、急速に理解度が進歩していることが記録されている。」
明るい日光を必ず浴びるようにする — 松果体はメラトニンを生成するのですが、それは、日中の明るい日光を浴びた時間と夜間の完全な暗闇とのほぼ対比を元にしています。1日中暗闇にいる場合は、違いが判らないため、メラトニン生成に適していません。
完全な暗闇または、可能な限りそれに近い中で眠る — 極めて微量の光さえ寝室にあると、体内時計と松果腺のメラトニンおよびセロトニンの分泌を妨害してしまいます。ラジオ付き時計からのわずかな光でさえ眠りを妨げるため、夜はラジオを何かでカバーするか、すべて部屋の外に出してください。
電子機器はベッドから最低90cm離してください。窓も掛け布や毛布で覆い、外からの入光を避けるべきです。これができなければ、アイマスクを付けて寝ましょう。
夜間起きたときに光源が必要な場合は、低ワット数の黄色、オレンジ色、または赤の電球を取り付けます — これらの帯域の光は、白や青の帯域の光と異なりメラトニン分泌を止めません。塩ランプは、このためには便利です。
寝室の気温は21℃を超えないように維持してください — 多くの人は自宅を暖かくし過ぎています(特に二階)。研究によると睡眠に最適な室温は15~20℃です
就寝時間の90~120分前に熱い風呂に入る — これにより身体の中心部の温度が上昇し、風呂から出ると急激に低下するため、眠る準備ができたという信号を体に送ることになります。
大きな音がする目覚まし時計は使わない — 毎朝、揺り起こされるのは、とてもストレスを感じるでしょう。常に十分な睡眠を取っていれば、アラームを必要としないでしょう。
可能な限り午前中に日光浴する — 概日リズムは明るい光でリセットする必要があります。朝10~15分日を浴びれば、「その日が始まった」という強いメッセージが体内時計に送られ、後で弱い光信号で混乱する可能性が低くなります。老化にともないさらに日光に当たる必要があります。
寝室内の電磁場(EMF)に注意 — EMFは松果腺とメラトニンの生成を阻害し、他の負の生物学的影響ももたらします。自宅の中の様々な場所のEMFレベルを測定するにはガウスメーターが必要です。最適なのは寝ている間はワイヤレスルーターをオフにすることです。睡眠中にインターネットは必要ありません。
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