チェス グランドマスターズはトップの運動選手と同じくらい長寿を享受できる

チェス グランドマスターズ

早分かり -

  • 人類は若さの泉を何世紀も探求し、現代に至るまで時間を逆戻りさせようと若返りクリーム、エクササイズ、万能薬が追い求められています
  • 50件以上の研究に関するあるメタ分析が長寿とチェス グランドマスターズの関連性と潜在的にこれほどの成功を実現する内在的要因と関連していることを発見しました
  • 知性は長寿と関連しているとはいえ、必ずしもすべての研究が最優秀選手レベルでの認知能力とチェスプレーの相関性を実証できたわけではなく、このことがグランドマスターズの長寿の理由ではないかもしれません
  • 健康な睡眠、高栄養価の食事、エクササイズ、日々の活動、慢性的ストレスの解消によっても長寿は可能であると考えられます
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Dr. Mercolaより

人類史の部分をなす若さの泉探求は何世紀にもさかのぼります。この泉の探求に最も密接に関連する人は16世紀スペインの探検家フアン・ポンセ・デレオンであると考えられ、伝えられるところでは、聖アウグスティヌスが設立されたフロリダにその泉あるものと考えたのでした。

この伝承は伝説的であり続けるでしょうが、今日では学者がポンセ・デレオンは政治的優位を求めており、長寿は探求していなかったと考えています。

老化防止万能薬や療法の探求は今でも衰えていません。テロメレスが発見された1930年代に科学研究がこれらに近づきました。1973年にアレクセイ・オロヴニコフはテロメレスが細胞分裂のたびに完全に復元できなくなるので経時的には短くなっていくことを発見しました。

つまり年を経るにつれてテロメレスが短くなります。1984年にはカリフォルニア大学サンフランシスコ校のエリザベス・ブラックバーンPh.D.が染色体がテロメレスと酵素テロメラーゼによって保護される仕組みを発見しました。

しかし長寿の個々人についてはいまだにはっきりした科学的説明がありません。100歳まで生きている個人の異なるグループについて研究した研究者らは特定のパターンがないことに一致しています。

その上で、科学者らは長寿のチャンスをよくする数種類の要因を特定しました。近年のある研究がチェス グランドマスターズはトップの運動選手らと同じく長生きすることを実証しました。

チェスプレーして長生き

54本の専門家による見直しを経た研究に関するあるメタ分析は野球、アメフト、サッカー、バスケットボール、サイクリングのトップスポーツ選手の寿命に関するデータを評価しました。

なぜ運動選手のほうが一般人口より長生きするかについては考えが一致していませんが、研究者らの結論としては、概してスポーツでトップレベルに達した選手は長生きしやすく、平均で4~8年普通より長生きするということです。

これらの結果は、肉体的トレーニングがいかに肉体的健康の改善になるかはすぐ想像がつくので、驚くほどのことではありません。近年の研究が、チェス グランドマスターズも同じ程度長生きすることを初めて実証しました。

研究者らの目的は国際的チェス グランドマスターズの全体的及び地域別寿命を普通の人と比較し、他のオリンピック メダリストの寿命とも対比しました。

公開データを基に28か国、1,200人以上のチェスグランドマスターズと15,000人以上のオリンピック メダリストからデータを集めました。このデータに基づいて研究者らは地域、年齢、性別で調整した平均毎年生存率を計算しました。

これに基づいて期待余命の推計を行う情報が得られました。オリンピック メダリストと チェス グランドマスターズのデータを比較した研究者らは平均余命に差がないことを発見しました。

しかし、両方のグループとも普通の人より長生きできることもわかりました。例えば、25歳のときチェス グランドマスターだった人は同地域に住む同性の平均的25歳より6.3年長生きすることが予想されました。この研究はトップ運動選手、チェス選手、普通の人の寿命を比較するために高度統計手法を利用した初のケースでした。

研究者らはグランドマスターになったかオリンピックメダルを初めて獲得してから30年後と60年後の各グループの生存率を比較しました。グランドマスターズがなぜ長生きできるかについてと結果について以下のように注釈しています:

「グランドマスター(GM)になるには選手はそのために必要な健康改善(喫煙や飲酒のカット、栄養改善、日常の心臓血管エクササイズ等)を行って認知能力をよくしたいと思っているからであると考えられる。

チェスのトレーニングではチェス選手が肉体的活動に参加する機会が少ない座業のライフスタイルが中心である懸念がある程度あったが、このことは既存の根拠からして裏付けられていない。

プロのチェスプレイヤーの場合は肉体的エクササイズと健康な食生活はGMの間ではよく知られることであり、また、世界選手権参加者らは世界選手権の試合準備や試合中にフルタイムの栄養士や肉体トレーナーを雇用するのが通常である。

チェス選手が行う健康エクササイズやフィットネス運動の頻度はオリンピック種目で活躍する運動選手の頻度より少ないが、チェス選手が普通の人より肉体的健康レベルが高いことがわかるデータが存在する。

チェスゲームでの最後の詰めの後も人生のゲームは続くばかりではなく、チェスのような頭脳スポーツで優れるとこのゲームを長年プレーする確率が高い。」

グランドマスターズのほうがずっと頭がいいか?

グランドマスターズのほうが長生きする理由を示す一つの推論としては、チェスはより高レベルの知性を要求し、知性だけでも長寿を促す独自の効果がある合併要因の1つを成すというものです。

過去には人の知的レベルとチェスプレー能力には相関性がないことを示す研究が存在していました。しかし、以前の研究の中のある分析は認知力がチェス上達を可能にする主な要因であることを示しています。

心理学者は何世紀も知性の機能について研究してきており、パズルピースのように専門性、トレーニング、練習の間で区別する試みをしてきました。ミシガン州立大学の研究者らは、特にチェススキルの客観分析と認知能力の尺度を含む2,300本の学術記事のメタ分析を実施しました。その主任筆者である博士課程の学生アレクサンダー・バーゴイン氏がこう説明しています:

「おそらくチェスだけが専門性に関して最も研究の対象になっているようだが、チェスの技能と認知能力の関係について示す根拠は定かでない。知性とチェススキルに関する半世紀分に値する研究を分析した結果、 認知能力がチェス技能の個人間格差に有意に寄与することを発見した。」

そのメタ分析は研究者らが知性とチェススキルの相関性についての科学的根拠を系統だてて調査した初の試みでした。その研究は知性が標本全体に関するスキルと相関することを発見しましたが、最も若く、レベルが低い人ほどもっともその効果を得られることがわかりました。

これらの事実はミシガン州立大学ザック・ハンブリック氏のエキスパティーズ・ラボで発見されたことの一つです。ハンブリック氏がもう一つ説明してくれました:

「ある天才が比較的容易にチェス選手になれるが普通の人はこれより長期間要すると仮定しましょう。つまりここでの考え方は練習をもっと行い、もっとスキルを身に着け、ゲーム知識がつくと、認知力の限界を克服できると考えられるというものです。」

さらに、このことはチェスについては当てはまるがあらゆる活動については必ずしも該当しないと付け加えています。以前のある研究では、研究者らが一般的知性に関連している作業記憶力と認知能力が、最も練習したピアニストでも演奏のとき初めて楽譜を見るだけで演奏できることを予見できることを発見しました。簡単に言うと、作業記憶力と認知能力は何時間も練習するより、本番で初めて楽譜を見てプレーできるミュージシャンの能力をよりよく予想させるのです。

グランドマスターズは試合のために肉体的スタミナが必要

今回取り上げている記事がチェス グランドマスターズのほうが長生きする理由を見極めるために行われたものではなくても、プロのチェスプレイヤーにとっては競争のためのトレーニングプログラム、エクササイズや健康な食生活の重要性を含むプレイヤーの試合のための要求事項に関する知識に基づいて研究者らによっていくつか根拠のある推論が行われ、さらに、チェスプレーが長生きと相関する経済的、社会的成長につながるという証拠が得られました。

チェスプレーは選手がゲームに集中し、時には数時間選手の注意力を注ぐスタミナを要求します。この集中力を持続させるために選手は良い栄養、適度な睡眠とエクササイズによってスタミナを改善しようと取り組みます。その研究の筆者らはチェスプレーが認知症リスクを減らし、脳の構造を物理的に変えることも説明しています。

選手は認知能力をよくするために喫煙を止め、エクササイズをし、飲酒量を減らすことも考えられます。これらの要因は世界選手権の試合に備えて栄養士やトレーナーをフルタイムで雇うことがしばしばあるグランドマスターにとって極めて重要です。これらの項目ごとに長寿と密接な相関性があり、チェス グランドマスターズの長寿に影響する要因であると考えられます。

切り離せない関係にあるエクササイズと長寿

グランドマスターズが普通の人より肉体的にしっかりしており、このことが長寿と密接に関連するもう一つの要因であることを示す根拠がいくつも存在します。エクササイズは早死にと関連する冠動脈疾患、心臓発作、糖尿病、高血圧のリスクを下げるのに役立ちます。

ある研究はとても活発な65歳の人たちがさらに障害なく5年を生きれることを発見しました。もう一件の研究も50歳以後の肉体活動を増やしても寿命がさらに長くなりうることを示しています。

毎日30分エクササイズする人は座ってばかりいる高齢者より長生きするので、高齢者はこれらのメリットを受けることができると考えられます。73歳であっても肉体活動は長寿につながります。

米国国立がん研究所とハーバード大学のある共同研究の中で研究者らは661,000人以上の成人から集めたデータを含む、6回の継続健康アンケートから得られたエクササイズの習慣についてのデータを集めました。このグループに関する14年分の死亡記録を比較したら、エクササイズしない人が早死にリスクが最も高いことが判明しました。

一週間150分というエクササイズのガイドラインを満たしていた人は14年の対象期間中に死ぬリスクが31%低いことがわかりました。

しかし、一日に1時間ちょっとのエクササイズを行ってガイドラインの3倍運動した人が最も生き延びたのです。これらの人たちは全くエクササイズしなかった人より早死にする確率が39%低かったのです。もう一件の同様な研究もこれと同じ結論に至っています。

長寿につながる5つの知的健康の決心

長寿はときとしてはほとんどの人が求めるものですが、健康や寿命にとてもよい効果がある人生を変える選択をするためにオリンピックメダリストやチェス グランドマスターである必要は全くありません。以下は検討する価値があるいくつかのパワフルなメリットがある生活の変化です。

睡眠 — アメリカ人のほぼ33%が一晩に7時間未満しか寝ていないと推計されています。米国では8300万人を超す成人が毎日睡眠不足で働いています。このペースが速い世界においては退職してからでないと十分に眠れないと考える人もいますが、他の要因と同じく睡眠が健康と長寿のために必須のものであることを科学研究が実証しています。

睡眠不足は応答時間の遅延、うつや認知症などの神経的異常の増大、2型糖尿病リスク増大、免疫機能障害につながります。

栄養 — 50年以上私は自分の健康を最適化するための食品や栄養を摂るように情熱的に取り組んできました。食べるニーズを超えてエクササイズし過ぎることは単にできないので、食生活こそ健康管理のための基幹的戦略の一つであることは明らかです。

究極的には、身体は食べた栄養を使ってエクササイズの習慣で燃料を燃やし、心が創造的で生産的になれるのです。優れるエクササイズプログラムや適正な睡眠量、さらに最適な保湿をしても、食生活が貧弱であれば自分の取り組みからフルにメリットを得られなくなります。

ストレス — ストレスは心理的に体験されるものであるとは限らないので、心理的ストレスという用語は実際には誤解を招きます。慢性ストレスは免疫系に干渉し、後成的変成を起こし、全身の炎症につながります。肉体的危険が切迫しているので突発的ストレスが必要な場合はともかく、慢性ストレスは時間が経つにつれダメージを与えます。

ストレスが激しい地位で勤務する人は口論中に心臓発作で死ぬ確率が普通の活動の間より21倍高いことを研究が実証しています。心臓発作は月曜日には他の曜日より多く発生しており、このため仕事のストレスに関連すると考えられる月曜心臓異常と呼ばれます。ストレスは糖尿病や少なくともがんを含む12種類以上の他の重篤な帰結にもつながります。

エクササイズ — エクササイズは筋肉、肺、心臓、関節、骨に多くの生物学的効果があります。エクササイズするとプラーク形成を削減し、遺伝子の変化や、気分の制御と気分を高める効果があることでよく知られる神経伝達物質の放出を促すので、最適な脳の健康のためにも必要です。

エクササイズは既存の脳細胞を保全し、新しいニューロンの発達を促し、脳を大きく育てる効果があります。

日常動作 — 定期的なフィットネスやエクササイズは最適な健康のために必要ですが、座ることが多いだけでも心臓血管病のリスクが高まります。座っている姿勢から立ち上がるという単なる動作でさえ座りすぎによる健康を破壊する影響を相殺する効果があります。