Dr. Mercolaより
空調環境の中で生活することは快適さを維持するという効能がありますが、実際には驚くべき影響が健康に及びます。
過酷な条件に身を晒すことが極めて有益なことを示す説得力ある証拠がいくつもあります。実際に、温度の極端な変動は多くの生体機能の最適化に役立つようです。
冬に向かう頃から、定期的に寒冷な空気当たることで健康増進に効能があります。
寒冷な空気に身を晒すことや寒冷による体熱産生が減量を助け、褐色脂肪組織(BAT)の誘発により糖尿病その他慢性病リスクが下がります。
BATは信じがたいほどミトコンドリアがたくさん詰まっており、ミトコンドリアの機能改善を助けます。体脂肪の生理学的機能の一つは、BATの新陳代謝が活発な限り身体を加熱するための燃料になることです。
この発熱作用はATP生産からミトコンドリアを離脱させて実際に熱を産生することで実現されています。寒冷に定期的に身を晒すことで褐色脂肪の中にミトコンドリアが豊富な組織ができ、体内で発熱するのを助け、実際に血糖値を下げ、インスリン抵抗を軽減します。
ベージュ脂肪は褐色脂肪の派生体であり、白色脂肪から作られ、身体を温め、より多い活性的かつ受動的メタボリズムを維持します。実際に数十年以来健康に関して研究してきた結果、脂肪を主な燃料として燃やすことこそ健康の保全と維持に欠かせない事であるという結論に私は至りました。
Bioscience Reports(生化学の専門サイト)に掲載されたある研究は低温療法 — 寒冷に身を晒す療法 — のBATと骨格筋(両方とも発熱部位)内のミトコンドリア組成に及ぼす効果について分析したものです。その研究は次のように説明しています:
「ミトコンドリアは細胞内の局部エネルギー需要の増大に応答して細胞内で劇的に再構成可能なとてもダイナミックな組織である。
ミトコンドリアの組成(クリステの密度、コンパクトさ、長さ、形、サイズを含む)は活性度を反映しており、このため細胞レベルのエネルギー状態も表す。哺乳動物の体内発熱に関わっている器官が寒冷への適用に応答して新陳代謝率を上げるものと思われる。」
BATと筋肉は両方とも熱を生成するが、そのメカニズムは異なります。BATにおいてミトコンドリアの新陳代謝により発熱します。筋肉において、ミトコンドリアの新陳代謝はエネルギーを筋肉に供給するだけの二義的役割しか演じていません。
つまり、ミトコンドリアの新陳代謝はBATにより体内発熱に直結しているが、骨格筋内の発熱には間接的にしか関与していません。
これらを合わせると異なる発熱過程のために身体は一定の体幹温度を維持できます。身体がますます低温に慣れるに従い全身の新陳代謝率を上げる反応が起きます:
酸素の消費が増える
筋肉のミトコンドリア内で酵素活性が増進される
線維芽細胞成長因子21、IL1α、ペプチドYY、腫瘍壊死因子α、インターロイキン6が誘発され寒冷への異なる生理的適合要素の調整とBAT・筋肉間の交差通信において重要な役割を演じるようです
インスリンとレプチンレベルが下がる
BATがさらに褐色になる
ミトコンドリア数が増える
寒冷による体熱産生でミトコンドリア数が増え、その全体的な機能を改善する時事は低温療法に関連する健康の効能の多くについての説明要因です。例えば寒冷による体熱産生によって次の効果があります:
関節の組織を強化する
新陳代謝を増大して減量を助ける
血液循環を改善する
抑うつ状態や不安の症状を少なくとも50%軽減する
関節や筋肉負傷の回復を早める
関節炎による痛みをおよそ90分一時的に軽減する
負傷後の痛みや腫れを軽減する
炎症と酸化ストレスを軽減するので認知力衰弱や認知症のリスクを軽減する
炎症を軽減する
湿疹症状をよくする
物理療法の効能を高める
うなじに適用した場合はおよそ30分間偏頭痛に関連する痛みを減らす
筋肉の機能と強度を改善する
脳内ノレピネフリンの分泌を増加して精神的な集中力と注意力を高める
ノレピネフリンは約5℃の水に20分ひたるか14℃程度の水に数分つかるだけで倍増する
ノレピネフリンの増加の他、寒冷による体熱産生はRNAと結合するmotif 3やRBM3という寒冷ショックタンパク質の脳内生産を高めます。興味深いことに寒冷に身を晒すと、シナプス(ニューロン間の接続)は劣化しても、RBM3がこれを完全に再生します。
この事実は熊やリス等冬眠する(ハイバネート状態になる)動物において確認されており、RBM3が増加すると、少なくともげっ歯類動物においてはアルツハイマー病の発病が大幅に遅れることを研究が示しました。
ヒト細胞に対して行われた研究でも、脳細胞が寒冷に晒されるとRBM3が活性化し、そのために必要な温度降下がたったの約0.8℃でよいこともわかっています。
寒冷による体熱産生に神経保護効果がありそうなことはさらに研究が必要ですが、こうした初期研究が示唆しています。
寒冷による体熱産生方法は何種類かあります。一部の高級スパやジムにはサウナと並んで低温療法ブースがあります。寒冷による体熱産生は自宅でもできます:
アイスパックやコールドゲルパックを当てる
凍らせたタオル(単にタオルを濡らして冷凍する)を当てるか氷で部位をマッサージする。
冷たいシャワーを浴びたり水とお湯のシャワーを交互に浴びる
氷水に浸かる
薄着での寒中トレーニング
サウナや運動後に普通の水のプールに飛び込む
冷たい海水で泳ぐ
冬に自宅の暖房サーモスタットを15℃ぐらいまで落とす
寒冷による体熱産生処置は数分以上続けてはならないことを銘記してください。または、回りの気温に慣れた後は10~20分までとすることです。妊婦、児童、高血圧や心臓が弱い人は行わないでください。
寒冷により急性血管収縮を起こし、これが高血圧や心不全の人には危険になります。瞬間冷たいシャワーを浴びるのはいいかもしれませんが、氷浴その他極めて寒冷な天気の中に長時間いることは避けましょう。
原則的に身体に耳を傾けることを忘れないで下さい。高温や低温に対する耐性は個人差があり、極端なことをすると害になる危険があります。以上のことを前提にして、時が経つにつれて寒冷に慣れていき、長時間でも低温に耐えられるようになります。
「アイスマン」ことウィム・ホーフ(Wim Hof)さんはその好例です。数十年にわたって毎日寒冷に慣れていった人です。その結果身体が多くの熱を産生できるようになったので、正常の域を超えて長時間寒冷に耐えられるようになりました。
繰り返すと、より多くの熱を産生する能力はBATの増加による直接的な効果であり、二義的には骨格筋でより多く熱産生するようになった結果です。脂肪組織にミトコンドリアが増えるほど、より多くの脂肪を燃やせるようになり、身体がより多くの熱を産生できるようになり、このことはすなわち、長時間寒冷に耐えられることを意味します。
BAT新陳代謝を改善する最も簡単な方法の一つは冷たいシャワーを浴びることで、毎日でもほぼ毎日でもできることです。初めてのときは緊張するのですがこれも身体自体が体熱をバックアップしようとしている試みの一環なのです。初めてのときこの本能的反応を抑えてむしろリラックスしてください。BATができるのにどれだけ時間がかかるかはまだ解明されていませんが、BATが季節的組織であることだけはわかっています。
冬になると身体は保温のためにこれをより多く生産するようになります。夏には少なくなります。肝心なことは、どれほどの頻度で褐色脂肪を活性化していますか?
環境の刺激なしに、すなわち異なる極端な温度差に身を晒さずに、身体は新陳代謝によってこの脂肪を産生できない、つまりそうする理由がないのでエネルギー豊富な組織を作りません。氷のように冷た水で毎日一年リンスすればBAT新陳代謝を日常的に活性化する簡単な方法です。
もう一つ覚えておきたい但し書き:強度トレーニングをしいてる方の場合、酸化ストレスが反応性酸素種(ROS)を生み出し、これが筋肉質量の増大を実際に促します。
強度トレーニング後1時間以内に寒冷に身を晒すと、この有益なプロセスをダメにしてしまいます。強度トレーニングの直後には寒冷暴露(冷水や冷たいシャワーや氷風呂等)は避けてください。
その反対に運動後サウナを少々使うと実際に筋肉質量が増えます。このためデトックスにも効き、ミトコンドリアの機能全体に有害な毒素を汗で流し去ることができます。ロンダ・パトリック(Rhonda Patrick), Ph.D.が前回のインタビューで説明しています:
「次のことを把握することが大切です:運動は身体へのストレスです。つまりROSが体内に発生します。炎症を発生させているわけです。しかしこの炎症は短時間の急増であり自分が望むことなのでよいことです。[炎症がピークに至るまで]運動後1時間かかります。
この期間がストレスの多いときです。しかし1時間経つと、ストレス応答が作動し、効能のある炎症応答が出始めます。長期間活性化されたままになるこれらのよい遺伝子全てから抗酸化応答が出始めます。
ここで何が起きるかというと、寒冷状態のため抗炎症応答も起きるのと同時に、運動による炎症も少々は必要なので、抗炎症応答があまり早く起きないことが重要です。炎症は抗炎症応答のために余裕を持って発生するほうがよいのです。この点は強度トレーニングのために重要です。
強度トレーニングの間に骨格筋により多くのタンパク質を生産するためのメカニズムの一環として炎症は起きるのです。これを鈍くすれば、強度トレーニングの効果は得られなくなります。
では1時間や2時間たてばそれが可能になるのでしょうか?研究によればこれは可能になります。寒冷に暴露したり冷水に漬かり、実際に幾分かの機能改善が可能になります。」
健康改善に関していうと多くの最も単純な戦略でかなりいい効果が得られます。身体を低温に日常的に晒すことで健康の最適化におおいに役立つような生物学的に有益な各種の変化が身体に生じます。
私が在宅しているときはほぼ毎日行っていることの一つが30分約80℃弱の遠赤外線サウナに入り、冷水プールに飛び込んで5往復することです。夏には水温が25℃くらいありますが冬には5℃を割ります。冬にプールから出た時の爽快感は実に素晴らしいです。信じられないくらい元気が出ます。
この種の温度の極端な変動に自分を晒すことでミトコンドリアの機能が改善し、このため私たち研究家の間ではよい健康、病気予防、長寿のための基本的側面であると認識することができました。
ミトコンドリアは細胞内のエネルギー発生装置であり、これがうまく機能していなかったり損傷していると、新しい健康なミトコンドリアで効率的に置換されなくなり、数多くの健康上の問題が生じます。低温療法は一種効果的な形態のミトコンドリア治療です。
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