運動は免疫系を将来のがんから守る

免疫系を運動で保護する

早分かり -

  • ある3カ月間の研究で、化学療法を終えたばかりのがん生存者が運動すると、免疫細胞の効能が強くなり闘病力が増えることがわかりました
  • 研究者らとがん関連機関はがんリスクを低め、がんを治りやすくするために最も重要な方策として日常の運動をますます勧めています
  • 運動すればインスリンレベルも下がるのでがんリスクが下がります。がん細胞の増殖と転移がしにくくなるような低糖分環境が体内にできます。運動するとがん細胞の細胞死(予定される細胞死)を促す証拠を見つけた研究もあります
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Dr. Mercolaより

ほとんどの人と同じくあなたもがんリスクを低めようと思うとき、運動しようとはまず思わないでしょう。

実は、運動ががんリスクを低めるのに役立つだけではなく、がん患者でさえ速く治りうること、またがんの再発も予防しうることはわかっています。

旧来のがん治療による副作用を軽減することも研究が示しています。

The Integrative Biology of Exercise VI (運動の統合生物学第VI回学会)の予備研究では運動ががん生存者の再発を抑えるのにとても効果がある理由やがんリスクを軽減し得る理由に注目が集まっていました。

運動は免疫系の「がん監視」を強化する

化学療法を完了した16人のがん生存者は3カ月間の研究に参加しました。個人別にプログラムしたフィットネスプランには次を含みます:

  • 筋力トレーニング
  • 耐久性トレーニング
  • 心臓血管によい運動
  • 柔軟性、バランス、姿勢によい運動

研究者らは参加者の血液中の免疫細胞を12週間のプログラムの前後で検査しました。その結果、T細胞が「ナイーブ」T細胞と呼ばれる疾病とより効果的に闘う形態に変化したことがわかりました。

Medical News Today は次のように説明しています:

「ビレック主任研究員は、運動すると、役立たないT細胞が減り、役立つT細胞が増えることが示されたと説明している。

この研究はがん患者とがん生存者のための運動のメリットがはっきり示されただけではなく、健康な個体にメリットがあることも示した点で重要である。

しかし、改善された「がん監視」-免疫系ががんの発生を阻害する力-の改善はがん患者やがん生存者にとって特に有益である。

ビレック氏の結論:「運動すると確かに効果がある。運動が実際に免疫系を強くし、がん監視能力を潜在的に改善するのであれば、患者に日々の活動プランを立てて生活の中で最優先するように情報を提供することが重要である。」

運動を医薬品と見なす

免疫細胞をより効能のある闘病効果がある形態に変え、血中の免疫細胞循環を改善するのに加え、運動には高いインスリンレベルを下げる効果もあり、結局がんリスクを下げることになります。

がん細胞の増殖と転移がしにくくなるような低糖分環境が体内にできます。アポトーシス(プログラム細胞死)は運動すると促されがん細胞を死滅させることも示されています。

ここでの鍵は運動を緻密な手段として利用する方法を把握することです。私の見方では、最大のメリットを達成するために慎重に処方すべき「薬剤」として運動を見なすとよいです。

こうするとメリットを得られるだけ十分な恩恵があり、怪我しない程度に行い、全身の構造のバランスを維持し、強度、柔軟性、有酸素・無酸素の身体健全度を維持するために正しい運動を行うようになります。

医者らによる最適な方法は運動を特定の「用量」と間隔で処方することです。これを適切に行うにはがん専門医が個人別トレーナーとの関係を確立し、患者のためのトレーニングセッションを処方するとよいです。

がん患者は運動についてがん主治医と相談したり、安全で効果的なプログラムを患者別に作成することができる訓練されたフィットネスのプロと共に取り組むように強くお勧めします。

遺憾ながら、多くの政府系健康ガイドラインは有酸素運動にしか焦点を当てていません。こうした偏向性はむしろ最適な健康を阻害することにつながります。

強度トレーニング、無酸素運動、体幹を鍛える活動、ストレッチ等異なる種類を摂り込んで日常的に運動することが重要です。

しかし最も重要なことは高強度の一気に力を出す運動を一週間に一回から二回でも含めるようにして、鼓動数を20~30秒間無酸素閾値まで上げ、次に90秒間下げるように穏やかな動きにするか休憩することです。こうした運動を行うとヒト成長ホルモンが自然に増産されるようになります。

運動ががんを予防する証拠

1980年代に運動ががんを予防し得るという見解がそれに値する注目を浴び始めました。

2000年頃にBritish Medical Journalに掲載され、運動とがんの関係を探ったある研究によると、運動はがんリスクに直接影響する複数の生体機能に効果があることがわかています。

次のような改善が挙げられています:

心臓血管の容量増加

エネルギーの均衡

肺活量

免疫機能

大腸の運動性向上

抗酸化防御

ホルモンレベルアップ

DNA修復

がん関連団体が運動を標準処置に含めることを推奨

日常運動している乳がん患者と大腸がん患者では運動をしない人より再発率が半減したこを以前の研究がすでに示しています。

Macmillan Cancer Supportも、運動が旧来のがん治療によくある副作用の一部を軽減することに注目しています:

疲労軽減と体力アップ

ストレス、不安、気分の落ち込みやうつの管理

骨の健康増進

心臓の健康改善(一部の化学療法薬剤とX線治療は長年経ってからの心臓病につながる危険がある)

筋力強化、鎮痛効果、行動力改善

健康な体重の維持

睡眠の改善

食欲増進

便秘防止

がん患者のための運動のヒント

がんその他の慢性病患者の場合、日常の運動を自分の状況、体力や健康状態に合わせて計画することが重要です。

定期的な運動プログラムに参加することもできます -- いろいろな運動を組み合わせた活動を行う:強度トレーニング、体幹を鍛える運動、ストレッチ、有酸素と無酸素運動 -- これ以上変化をつける必要がない程十分です。

しかし運動の強度を下げたり時間を短くする必要があるときもあると思います。常に身体に耳を傾け、休憩が必要だと感じたら、休息する時間を取る方がよいです。

一日にたとえ数分でも運動するほうが全くしないよりいいことを念頭においてください。スタミナが増し、日々さらに次のレベルに挑戦することができるようになります。

もし極めて免疫系が脆弱になっている場合、ジムまで出かけるかわりに自宅で運動することもできます。運動が免疫系を強くすることを覚えておいてください。従って慢性病やがんの方でも運動プログラムを継続することは極めて重要です。

以上の推奨にも拘わらず、痛みや慢性病の悪化により運動できない身体の状態なら、身体から感じる兆候に従って運動を減らさざるをえないこともあります。身体が改善のための運動を枯渇しているときでも、現在の制限を超して行うと悪化するおそれがあります。

がん予防はライフスタイルの選択から始まる

砂糖、特にフルクトースを避ける。糖はどんな形態であっても、健康を損ねがんを促進します。しかし、フルクトース(果糖)は明らかに有害なもののひとつで、できるだけ摂らないようにしましょう。

ビタミンD濃度を最適化する。ビタミンDは体の細胞に大きく影響し、がんに対抗する強力な天然物質の一つです。ビタミンDはがん細胞に侵入でき、アポトーシス(細胞死)を誘発します。がんに罹ったら、血中ビタミンD濃度は70~100ng/mlが理想的です。副作用をもたらさず、がん治療と相乗的に作用します。

タンパク質を制限する。mTOR伝達経路の重要性に最近の研究が注目しています。この経路が活性化すると、がんがますます増えます。この経路を静めるため、脂肪を除いた体重1kgあたりのタンパク質摂取量を1 gに制限するのが賢明です。ほとんどの人の場合この範囲は一日にタンパク質40~70 gに相当し、これは現在摂っている量の約2/3に当たります。

発酵していない大豆食品を避ける.未発酵の大豆には、イソフラボンとも呼ばれる、植物性エストロゲン(フィトエストロゲン)が多く含まれます。数件の研究によると、大豆はヒトエストロゲンと相乗作用し、乳房細胞の増殖を促進し、これによって変異やがん細胞化のリスクを増大するということです。

インシュリンとレプチン受容体の感度を改善する。これを行うための最適な方法は砂糖と穀物を避け、炭水化物を減らし、繊維質の豊富な野菜を増やすことです。ピークフィットネスを特に活用した運動を行うこと。

健康な体重の維持。栄養価を高める食事を正しく摂り、運動をすれば実現できます。脂肪がエストロゲンを生成するので、余分な体脂肪を落とすことが重要です。

緑野菜のジュースを1/2~1リットル毎日飲む。詳しくは私のジュース作りを参照してください。

クリル油のような高品質の動物性オメガ3脂肪を豊富に服用するオメガ3欠乏はがんに共通する基底要因です。

クルクミン:これはターメリックに含まれる高濃度の有効成分で、がんの治療にとても役立ちます。例えば乳がん転移の予防に大きな可能性があります。

お酒を飲み過ぎない、あるいは、1日1杯程度にとどめておきましょう。

できるだけ電磁場を避ける。電気毛布さえがんリスクを高めます。

乳がんのリスク要因がある人の場合特に、合成ホルモン補充療法を避けること。乳がんはエストロゲン関連のがんです。Journal of the National Cancer Institute(全米がん協会誌)で発表された研究によると、ホルモン補充療法利用の減少につれて乳がん発症率も下がるそうです。(避妊薬を服用する若い女性のリスクと似ています。合成ホルモンを配合する避妊薬は、子宮頸がんおよび乳がんに関連があります。)

閉経期の症状が重い場合、代わりにバイオアイデンティカルホルモン補充療法を検討しましょう。これは、体内にあるものと分子的に同一のホルモンを利用するので、体のシステムを崩壊させることはありません。かなり安全な代替療法です。

BPA、フタル酸や他の外因性エストロゲンを避ける。これらはエストロゲンに似た物質で、乳がんリスクを高めると考えられます。

ヨウ素欠乏に気をつける。ヨウ素欠乏 と特定の種類のがんとの相関性が多くの研究で証明されています。デビッド・ブラウンシュテイン博士は 著書「Iodine:Why You Need It, Why You Can't Live Without It」の中で、乳がんにヨウ素の摂取を支持しています。強力な抗がん性を持ち、乳がんおよび甲状腺がん細胞の細胞死を引き起こすことが明らかにされています。

肉の直火焼きを避ける。木炭や火炎で焦がした肉は乳がんリスクを高めます。でんぷん質の多い食品を焼いたり、ローストしたり、揚げたりした時にできる発がん物質、アクリルアミドもがんリスクを高めることが分かっています。